2020/04/07

コラム

【第4回:上津原勉】ロックショアキャスティングでヒラマサとガチンコ勝負(前編)

年々、人気の高まりを見せるショアジギング。しかし、相手は気まぐれな回遊魚だ。重いメタルジグをキャストし続けても、チェイスさえないことも日常茶飯事だ。1日の釣りのなかで、何を考え、何をすればよいのか。このコーナーは、名手の釣りを追ったドキュメントストーリーである。釣れないときこそ、すべきことがある。

沖磯からヒラマサを狙う

漆黒の闇に包まれた未明の港。しかしその一点だけは煌々とライトに照らされ、光の中をたくさんの人影が忙しく動き回っていた。ここは熊本県の高浜港。天草エリアでも屈指の大物場。今回は熊本県在住の上津原勉さんと、2日間の日程でヒラマサを狙う予定である。


– 渡礁したのは、高浜地区を代表する実績磯、大ヶ瀬の一角である「コッカケの水道」。12月中旬の寒グレシーズン真っ只中に、一級磯に乗れたことは幸運であった。
「天草エリアでも、この高浜は最もヒラマサの実績が高い釣り場のひとつです。ヒラマサ以外にもヒラスズキやヤズ(ハマチ)なども釣れます。コッカケの水道は水深があって、比較的ヒラマサがよく釣れる磯なのですが、今日は風が北から北西に変わる予報なので、午後からはやや波立ってくると思うんです。できれば速めに勝負をつけたいですね」

ターゲットは“磯のスプリンター”とも称されるヒラマサ。高浜の磯で釣れるのは5kgまでの中型が大半だが、20kg、30kgといったモンスターが喰ってくる可能性もある。

– 夜明けまでまだ時間がある。上津原さんはゆっくりタックルの準備に取りかかった。この日、上津原さんが磯へ持ち込んだタックルは3セットだ。
「メタルジグ用とプラグ用、そしてヒラマサが小さなベイトについたときのためにライトルアー用も1セット用意しました。最近のヒラマサはキビナゴなどの小さなベイトを追っているようなので、朝イチはまず100〜120gのメタルジグで広範囲を探って、キビナゴにつく前の魚を狙います」

上津原勉さんは熊本を拠点として精力的に釣行を繰り返す現場主義のアングラー。伊豆諸島や男女群島でも大物を仕留めている。

ショアジギングがメインの釣行であっても、上津原さんは必ずプラグ用のタックルを用意しておく。プラグはシャローエリアや表層付近を重点的に狙いやすいことに加え、海面直下に潜るダイビングペンシルや激しく水飛沫を上げるポッパーなどは、メタルジグにはないアピール力がある

 

– メインタックルとなるメタルジグ用とプラグ用のラインは、PE4号と比較的太め。
「これはいつ来るかわからない大物に備えてのラインセレクトです。悔しい思いをしないために、釣れている魚のサイズよりも、自分が取りたい魚のサイズに合わせています」

「コッカケの水道」には暗いうちに渡礁した。ゆっくりとタックルのセットに取りかかる。

【Check point!】
スペーサーPEのすすめ

リーダーとメインラインの号数差が大きいと、キャストの際にメインラインがガイドに絡みやすくなる。ナイロンリーダーならばしなやかさが絡みをある程度回避してくれるが、剛直な糸質を持つフロロカーボンリーダーは太くなるほど絡みのリスクが高くなる。
この不快な糸絡みは、リーダーとメインラインの間に「スペーサーPE」と呼ぶやや太めのPEラインを入れると大幅に軽減できる。特に軽いプラグ系ルアーを使うときは効果絶大だ。


上津原さんの場合、メインラインがPE4号のときはスペーサーPE10号にフロロカーボンリーダー24号、メインラインが6号のときはスペーサーPE12号にフロロカーボンリーダー30号というのが一応の目安。リーダーとメインラインの間に生じる太さ(硬さ)のギャップを、スペーサーPEが緩和するという仕組みだ。

メタルジグタックルではあまり出番はないものの、キャスト時の射出スピードを付けにくいプラグには絶大な効果を発揮するスペーサーPE。スペーサーPEの長さは2〜3ヒロほど。リーダーも2〜3ヒロ取るので、キャスト時はリールに巻き込んだ状態になる。

魚がキビナゴにつく前に勝負

水道の出口付近で第一投。ボトムを取っておおよその水深を把握するとともに、ラインに掛かるテンションで潮の向きや速さをチェックする。


– タックルを準備し終える頃には白々と夜が明けてきた。いよいよ実釣開始である。まず結んだメタルジグは「コルトスナイパーロング」の120g。カラーはフルグローだ。
「マヅメなどのローライト時は、ぼんやり光るグロー系が強いですね。僕自身グローカラーをかなり信頼しているので、シルバー系が一般的な日中であっても、反応がないとグロー系に変えることも多いんですよ」

朝イチに結んだのは「コルトスナイパーロング」の120g。グローはマヅメ時などの光量が少ない時間帯だけでなく日中でも効果がある。

– 本命ポイントは磯名でもある水道。ここは周囲より水深があり、潮通しもよい。グレや石物の実績も高いポイントである。しかし、上津原さんは数投しただけで釣り座を移動した。
「南からの潮が水道に押し込まれているんです。この流れだったら、水道を出た先から、沖に見える離れ磯周辺を狙ったほうがよいかなと。磯からの回遊魚狙いでは、潮が当たる場所が狙い目なんですよ。このような場所はベイトが溜まりやすく、ヒラマサから見てもベイトを追い込みやすい場所といえます」

潮の動きを見極めた上津原さんは、わずか数投で水道に見切りをつけて先端へ移動した。回遊魚釣りは潮探しゲームなのである。

– 釣り座を変えて間もなくだった。
「チェイス!」


ボトムからワンピッチジャークで巻き上げてきたメタルジグにヒラマサがついてきたらしい。チャンスである。

潮は左から右へゆったり流れている。狙いは右前方に見える離れ磯周辺。潮が当たる部分をピンポイントで攻める。

【Check point!】
磯では「流れが当たる場所」を狙う

回遊魚は、ベイトを“逃げられない場所“へ追い込んで捕食するという習性がある。逃げられない場所とは、水面や根際のことである。ベイトを水面へ追い込んだときはボイルという現象が起こるので、ここを狙えばよいだろう。ボイルが見られないときは、ベイトを追い込みやすい根際やカケアガリ、それも潮が当たる場所はベイトが寄せられやすいので、特に狙い目となる。


潮当たりのよい場所であれば、その手前は浅くてもかまわない。なぜなら、後方にベイトの逃げ場がないほうが魚にとって都合がよいからだ。このような場所は、深場からベイトを追った回遊魚が一気に浮上してくる。


当て潮の磯際などは格好のポイント。カケアガリ付近は表層系のプラグへの反応もよいので、ボイルが出なくてもダイビングペンシルやポッパーなどで積極的に魚を誘い出したいところだ。

刻々と変化する潮を見て、潮が当たる場所を重点的にチェックする。磯際のカケアガリ付近はプラグへの反応がよいポイント。様々なルアーを試してみよう。

磯揚がりまで粘るも結果はいかに……。

– その後も散発的ではあるがボイルが見られる。メタルジグで表層をジャカジャカ巻きで攻めたかと思いきや、今度は磯際のカケアガリに沿ってダイビングペンシルを引く。しかしヒラマサからの反応はない。
「どうにもルアーには反応してくれませんね。さぁどうするか……」

潮が変わってからは再び水道の中を攻める。あらゆる手を尽くしてもヒラマサからのコンタクトはない。

– 魚はいるけれど、ルアーを追ってくれない状況は多々ある。こんなときは基本に立ち戻るのが得策。メタルジグでしっかりボトムを取ってから巻き上げてくる。
「メタルジグの利点は、海面から海底まで自由自在に攻められることですね。メタルジグじゃないと攻めきれない状況が少なくないし、回遊魚狙いで1つだけルアーを選べと言われたら、やはりメタルジグを選ぶでしょう。メタルジグは鉛の塊ですから、釣り人が操作しないと動いてくれません。良くも悪くも自由なルアーなんですよ。だからきちんと狙いを絞って、意図を持って操作する必要があります。だから喰わせたとき充実感が大きいんですよね」

単純にジャークを繰り返しているように見えても、上津原さんはラインから伝わる情報で潮の向きや速さ、水深や地形の変化など多くのことを感じ取っている。釣れない時間帯だからこそ、やるべきことがある。

– 満潮を迎え、潮が北から南に流れる下り潮に変わった。こうなると狙い目となる潮が当たる場所が極端に少なくなる。
「できれば潮が上っている間に結果を出したかったんですよ。ここからは磯に当たる潮を探しながらの釣りになりますね」


風向きは北西に変わったものの、釣りにくくなるほどの強風でなかったのは幸いだった。しかし、下りの本流は水道を挟んだハナレ磯のはるか沖。かすかな反転流が当たるハナレ磯周りを攻めてみたが手応えはない。


– 見回りに来た渡船の船長に聞くと、地方の磯でフカセ釣りの釣り人がヒラマサを仕留めたという。
「地方だったか……」と上津原さんは苦笑いを浮かべたが、時すでに遅し。それにオキアミにヒラマサが喰ったからといって、ルアーを投げて釣れる保証はない。


どんな釣りにおいても、自分がいる釣り場で、自分の道具でいかに喰わせるかが重要なのである。


– メタルジグのカラーも、グローからゴールド系、シルバー系とこまめにローテーションした。
「フルタイム使えるグロー、斜陽角の浅いマヅメにはゴールド系など、カラーに関しては一応の選択基準はあります。ただ今日はヒラマサが反応してくれないので、とりあえずこだわりなくカラーをローテーションして、どれが当たるか探っている状態ですね。カラーをチェンジした途端にヒラマサの反応が変わることもありますからね」


しかし、この日は磯揚がりまで粘ってみるもヒラマサは喰ってこなかった。翌日に期待である。


(次回に続く)

「喰わないですねぇ」と言いながらも手は忙しく動いている。ルアーローテーションは釣りの目先を変えるだけでなく、集中力の持続にも効果がある。

【Check point!】
リーダーはフロロかナイロンか!?

上津原さんは、対象魚や使用ルアー、フックセッティングなどによって、フロロカーボンリーダーとナイロンリーダーを使い分けている。
フロロカーボンは初期伸度が小さく、フッキングパワーを伝達しやすいという特性があるので、キハダやスジアラといった口周りの硬い魚を狙うとき、パワーが3点に分散されるトリプルフックを使うときなどに多用する。


一方のナイロンは、水へのなじみがよいという特性がある。ナイロンは糸質がしなやかなでルアーの動きを干渉しにくいこともあり、ダイビングペンシルやミノーを使うときに有効。フロロカーボンは沈みがよい反面で水切れもよく、表層で激しいアクションを加えるとルアーが海面から飛び出してしまうことがある。「沈み」と「なじみ」はまったく違う要素なのである。


ナイロンリーダーを使いたいが根ズレも気になるポイントでは、ナイロンリーダーの先に1ヒロほどフロロカーボンを結ぶこともある。

ショックリーダーの素材を使い分けることにより、釣りの精度が高まることもある。FGノットのハーフヒッチ部分を長く取るのは、メインラインとの太さの段差を極力抑えるための工夫だ。

タックルデータ

メタルジグ&プラグ+αの3タックルシステム

上津原さんがコッカケの水道で使用したタックルは3セット。
メインは下記①のメタルジグ用タックルと②のプラグ用タックルだ。③のライトルアー用は、ヒラマサがキビナゴなどの小さなベイトについたときに、10cm前後のミノーや30g以下のメタルジグを投げるフォロー用としてセットしている。

 

ジギングが主体の釣りであっても、表層を重点的に狙いたいときやシャローエリアを攻めるときなど、ダイビングペンシルやポッパーといったプラグが有利な場面は多々ある。回遊魚の時合は短い。ベイトを磯近くへ追い詰めた数秒でチャンスタイムが終わってしまうこともあるので、2つのタックルをセットしておくことで、瞬時に2つの釣りを切り換えられるメリットは大きい。

上津原さんがコッカケの水道に持ち込んだタックルは3セット。メタルジグ用の「コルトスナイパー エクスチューン S100XH」、プラグ用の「同S106XH/PS」をメインとし、ヒラマサが小さなベイトについたときにライトルアー用の「同S100MH」を使う。

メインタックルのラインは「オシア8」の4号。不意に訪れるビッグチャンスに備え、やや太めをセレクトした。

メタルジグは「コルトスナイパーロング」の120gを中心に使った。グロー系、シルバー系、ゴールド系は上津原さんの基本ローテーションカラーだ。

この日使用したプラグ系ルアー。左から「コルトスナイパー ロックポップスリム140F AR-C」「同ロックダイブ160F AR-C」「同ロックフラット150S AR-C」「同ロックスプラッシュ140F AR-C」「ロックウォーク110F AR-C」「ロックドリフト100F AR-C」。

プロフィール

上津  原勉(うえつばら つとむ)

ソルトモニター

“怪我をせずに家に帰る”をモットーにルアーをはじめとして磯の釣り全般をこなすロックショアアングラー。ショアマグロではセルフランディングに強くこだわる。ウルトラトレイルランナーとして自身の限界と向き合い、心身を鍛えて磯の大物に挑み続けている。

※記事内で紹介されている製品は、旧モデルの可能性がございます。

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この記事で使用している製品

ロッド

コルトスナイパー エクスチューン

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ステラ SW

ルアー

コルトスナイパー ロング

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コルトスナイパー ロックダイブ160Fジェットブースト

ルアー

コルトスナイパー ロックドリフト100Fジェットブースト

ライン

オシア 8 PE

ライン

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