2024/08/09
コラム
荒れる海面に強いダイペンとして昇華させるために。初冬の長崎県江島エリアで行われた開発秘話を紹介。
![荒れる海面に強いダイペンとして昇華させるために。初冬の長崎県江島エリアで行われた開発秘話を紹介。 荒れる海面に強いダイペンとして昇華させるために。初冬の長崎県江島エリアで行われた開発秘話を紹介。](/ja-JP/content/fishingstyle/article/2024/240730_v2/img/mv.jpg)
ロックショアで青物を狙うために、ダイビングペンシルは欠かせないアイテム。そのルアーのプロトタイプを手に長崎県の江島エリアに訪れたのはシマノのフィールドテスターである上津原勉だ。今回の目的はルアーの性能を確かめる実釣テスト。ひとつのルアーが生み出される過程で、現場でアングラーが試行錯誤する様子をお届けしたい。
テストは12月の江島エリア。沖磯で青物の反応を確かめる。
上津原さんが釣り場として選んだのは長崎県の江島エリア。
位置としては、五島列島の上五島と長崎県の佐世保のちょうど間に位置するエリアで、魚影が濃く豊かな海が育まれている。この江島エリアの沖磯へは、佐世保から出ている渡船で渡してもらう。そのため熊本県在住の上津原さんにとっては、アクセスしやすく通い慣れた場所でもあるという。
そんな江島エリアの沖磯を目指して、渡船に揺られること約1時間30分。目的の磯へ到着した。
![今回の釣り場は長崎の江島エリア。上津原さんもまだ通い込めていないという未知な部分も多い釣り場だ。 今回の釣り場は長崎の江島エリア。上津原さんもまだ通い込めていないという未知な部分も多い釣り場だ。](/ja-JP/content/fishingstyle/article/2024/240730_v2/img/01.jpg)
今回の釣り場は長崎の江島エリア。上津原さんもまだ通い込めていないという未知な部分も多い釣り場だ。
ずらりと並ぶルアー達。わずかな違いが生み出す大きな変化を探る。
今回テストするプロトタイプのルアーというのが「コルトスナイパー グラノダイブ 200F フラッシュブースト」である。現在ではすでに「コルトスナイパー グラノダイブ 175F フラッシュブースト」が存在しているので、そのサイズアップ版だ。
このサイズアップの意図に関して上津原さんは「私のスタイルとしてダイビングペンシルは大きめを使うことが多いです」とのこと。さらに「通っているエリアと狙っている魚の大きさのことを考えると200mmサイズは使いやすいですね」とサイズアップしたルアーの必要性について教えてくれた。
もちろん、単なるサイズアップでは意味がないので、ここに上津原さんなりのこだわりを意識して使用する。
準備中、タックルボックスにズラリと並べられたルアー達。
色は統一されており、形も似ていて遠目では違いが分かりづらいが、オモリの配置や角の丸みなどが異なり、すべてアクションが違うという。
「この違いを投げ分けて魚たちに正解を聞いていくイメージですね」と上津原さんが意気込みを語ってくれた。
![オモリの自重や配置が異なりどれも違うアクションが出る。これでも絞り込めたほうで初めはもっと多くのサンプルがあったとのこと。 オモリの自重や配置が異なりどれも違うアクションが出る。これでも絞り込めたほうで初めはもっと多くのサンプルがあったとのこと。](/ja-JP/content/fishingstyle/article/2024/240730_v2/img/02.jpg)
オモリの自重や配置が異なりどれも違うアクションが出る。これでも絞り込めたほうで初めはもっと多くのサンプルがあったとのこと。
魚からの反応が最も良いものを探す。徹底した現場主義を貫く理由とは。
またルアーを作り上げていく上で、上津原さんが大事にしていることがあるという。
それが徹底した現場主義。実釣してその釣果に基づく情報を積み重ねることが大切だと教えてくれた。そのこだわりの1つがアクションを確かめている時の言葉に隠れていた。
「アングラー目線でいい動きだなと思っても、それが魚にとって正解でないときがあります。その時にどれだけ現場で魚に聞いて確かめられるかが大切ですね」とのことで、上津原さんらしいストイックさが垣間見えた瞬間であった。
そして今回テストしている「コルトスナイパー グラノダイブ 200F フラッシュブースト」であるが、そのルアーの完成イメージとして、いくつかの目指すポイントがあるという。次の項目ではその点について詳しく触れていきたい。
![現場主義を貫く上津原さん。釣れそうに見える動きが必ずしも魚にとっていい動きとは限らないと語ってくれた。 現場主義を貫く上津原さん。釣れそうに見える動きが必ずしも魚にとっていい動きとは限らないと語ってくれた。](/ja-JP/content/fishingstyle/article/2024/240730_v2/img/03.jpg)
現場主義を貫く上津原さん。釣れそうに見える動きが必ずしも魚にとっていい動きとは限らないと語ってくれた。
コンセプトを守りながら性能を磨き上げる。ルアーの強みを引き出すために。
まず上津原さんが「コルトスナイパー グラノダイブ 200F フラッシュブースト」で目指すのは、荒れた海面に強いダイビングペンシルであるということだ。
これは青物をダイビングペンシルで狙った経験がある方にはわかりやすいと思うが、誘い出しのアクションをした際に、ルアーがうまくダイブせずに海面を滑るように動いてしまうことがある。いわゆるエラーアクションと呼ばれるもので、海面が荒れていると、相性の悪いルアーではそのエラーアクションの発生率が顕著になる。
そんなときでも快適に使えるようにこだわっているのが、今回の「コルトスナイパー グラノダイブ 200F フラッシュブースト」だ。
![荒れた海面でもエラーアクションしにくいのがこのルアーの特徴。ルアーを作り込んだ立場として、使った人がこの性能を実感してくれたら嬉しいと上津原さん。 荒れた海面でもエラーアクションしにくいのがこのルアーの特徴。ルアーを作り込んだ立場として、使った人がこの性能を実感してくれたら嬉しいと上津原さん。](/ja-JP/content/fishingstyle/article/2024/240730_v2/img/04.jpg)
荒れた海面でもエラーアクションしにくいのがこのルアーの特徴。ルアーを作り込んだ立場として、使った人がこの性能を実感してくれたら嬉しいと上津原さん。
前へのスピード感と左右へのキレを追求。上津原さんがこのルアーに込めたこだわりとは。
さらに、アクションにも上津原さんなりのこだわりがある。
それが素早くダイブさせてもスピード感を保ったまま前に進みつつ、左右へキレよくダートすること。
上津原さんの経験上、特にヒラマサは速い動きに反応してくることが多いので、この点を重視したいとのことであった。本来、前へ進む力と横へ動こうとする力は相反するもの。
このように異なる要素をひとつのルアーに求めようとすればアクションが破綻してしまうことも少なくない。特に今回のルアーは上津原さんのこだわりでスピード感も重視しているため、なおさらバランスを調整するのが難しいところだろう。
そんな背景もあって、今回はわずかにバランスや形状の異なるプロトタイプを持ち込んでいる。現場で小さなことを積み重ねて、ひとつの完成版としてルアーが生まれているのだ。
![ルアーのコンセプトを守りつつ性能に磨きをかけていく。求められるシチュエーションで強みを発揮できるルアーとして完成度を高めていく。 ルアーのコンセプトを守りつつ性能に磨きをかけていく。求められるシチュエーションで強みを発揮できるルアーとして完成度を高めていく。](/ja-JP/content/fishingstyle/article/2024/240730_v2/img/05.jpg)
ルアーのコンセプトを守りつつ性能に磨きをかけていく。求められるシチュエーションで強みを発揮できるルアーとして完成度を高めていく。
魚から期待通りの反応をキャッチ。釣れている状況だからこそ試せることがある。
こうして数あるプロトタイプの中でも、上津原さんの中で完成度の高いものを1つ選んでキャストを開始した。
するとこれが見事に的中し、7kgクラスのヒラスを早々にキャッチすることに成功する。
さらに続けてキャストを繰り返すと、またヒットして続けざまに同じクラスのヒラスを追加することに成功した。
この過程の中で、アクション違いのプロトタイプもキャストしてみたが、わかりやすく反応がなくなってしまう。やはりヒットが集中するのは上津原さんの中で完成度が高いと感じているプロトタイプである様子だ。
ここで上津原さんは、試しに「オシア ヘッドディップ 175F ジェットブースト」を投入した。このルアーのアクションの特徴に、現在テストしている「コルトスナイパー グラノダイブ 200F フラッシュブースト」と比較して直進性はないものの、左右へキレよく幅広いダートをするという特徴がある。
あえて違うタイプのルアーを入れて、魚の反応を確かめるのが狙いだ。
するとこのルアーに対しても、狙い通りにヒラスがヒット。
このことから、この日のヒラスは左右へのダートアクションに反応が良いことがわかり「コルトスナイパー グラノダイブ 200F フラッシュブースト」へのアクションの方向性にも確かな自信が持てた結果となった。
![プロトタイプの中でもっとも手応えを感じているルアーにヒット。魚からの反応が明らかに変わった様子であった。 プロトタイプの中でもっとも手応えを感じているルアーにヒット。魚からの反応が明らかに変わった様子であった。](/ja-JP/content/fishingstyle/article/2024/240730_v2/img/06.jpg)
プロトタイプの中でもっとも手応えを感じているルアーにヒット。魚からの反応が明らかに変わった様子であった。
![続けざまにヒラスをキャッチ。この後はあえてルアーを変えてみたがパタリと反応がなくなったのも現場ならではの検証だった。 続けざまにヒラスをキャッチ。この後はあえてルアーを変えてみたがパタリと反応がなくなったのも現場ならではの検証だった。](/ja-JP/content/fishingstyle/article/2024/240730_v2/img/07.jpg)
続けざまにヒラスをキャッチ。この後はあえてルアーを変えてみたがパタリと反応がなくなったのも現場ならではの検証だった。
1つのルアーが現場で細かく突き詰められていく。完成版に期待せずにはいられない。
最後に上津原さんがプロトタイプの「コルトスナイパー グラノダイブ 200F フラッシュブースト」と「オシア ヘッドディップ 175F ジェットブースト」を比較した理由についてもう少し深掘りしておこう。
まず「オシア ヘッドディップ 175F ジェットブースト」であるがこれは前述した通り、左右へのダートアクションを得意としている。
そして本題の「コルトスナイパー グラノダイブ 200F フラッシュブースト」はダートのアクションだけでなく、前方への鋭い直進性も兼ね備えているのが大きな違いだ。
この違いは荒れた海面での使いやすさに影響してくるわけで、「コルトスナイパー グラノダイブ 200F フラッシュブースト」はそんなときでも使いやすいアクションを目指して試行錯誤が積み重ねられている。
「完成版はそんな状況でも頼れるルアーとして、しっかりとした立ち位置を築きたいですね」とのことで、さらなるブラッシュアップに期待が高まるばかりであった。
すでに完成度の高いプロトタイプはまだまだ未完成の領域。完成版はいったいどのような実力を秘めたルアーになるのか、その日を楽しみに待ちたい。
![「オシア ヘッドディップ 175F ジェットブースト」は左右へのダートが得意なルアー。同じ状況で試すことでプロトタイプのダート性能が確かなものだと感じられた瞬間であった。 「オシア ヘッドディップ 175F ジェットブースト」は左右へのダートが得意なルアー。同じ状況で試すことでプロトタイプのダート性能が確かなものだと感じられた瞬間であった。](/ja-JP/content/fishingstyle/article/2024/240730_v2/img/08.jpg)
「オシア ヘッドディップ 175F ジェットブースト」は左右へのダートが得意なルアー。同じ状況で試すことでプロトタイプのダート性能が確かなものだと感じられた瞬間であった。
![完成版の登場に期待は高まるばかり。ひとつのルアーが生み出される過程で現場で細かな試行錯誤が繰り返されていることを感じていただけると嬉しい。 完成版の登場に期待は高まるばかり。ひとつのルアーが生み出される過程で現場で細かな試行錯誤が繰り返されていることを感じていただけると嬉しい。](/ja-JP/content/fishingstyle/article/2024/240730_v2/img/09.jpg)
完成版の登場に期待は高まるばかり。ひとつのルアーが生み出される過程で現場で細かな試行錯誤が繰り返されていることを感じていただけると嬉しい。
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