2024/09/03
コラム
曲がるから安心。進化したバンディット落し込み×高橋哲也
2023年の10月下旬。玄界灘に訪れた高橋哲也さん。手にしたロッドはバンディット落し込み。まずサビキ仕掛けで小魚を釣り、それをそのままの状態で底付近まで落とし、掛かっている小魚でヒラマサ、ブリ、根魚などの大型魚を狙う落し込みの釣り。この釣りで釣果を大きく左右するのがロッドとリールの存在だ。今回は、バンディット落し込みに注目し、高橋哲也さんにそれぞれの使い分けをうかがった。
高橋さんが考える、落し込みの魅力とは
落し込み釣りとは、中層にいるイワシやアジ、サバなどの小魚をサビキ仕掛けで掛け、そのまま海底付近に仕掛けを下げ、小魚を大きい魚に喰わせて釣るというもの。その時、その場所で大型魚が捕食しているものをエサにするので、とても合理的な釣りである。
しかし、大型魚とのやりとりは大胆なファイトになる反面、小魚を掛けるサビキ仕掛けの釣りを考えると、実は使うタックル的には、多くの矛盾を抱える。サビキ仕掛けは糸の結び目が多く、小さいハリを使う。そのためハリ外れ、口切れ、ハリス切れの起こる可能性が高い。これを防ぐ必要があるので、パワー一辺倒のロッドは使えない。
高橋さんに落し込みの釣りの魅力を聞くとこう答える。
「とにかくスリリング。試行錯誤しながらなんとか仕留めたときの達成感が一番。失敗を完全に排除することができない釣りなので、それが、また落し込みに行きたい、チャレンジしたいという気持ちにさせます」
理想的な落し込みの竿とは
落し込みのロッドに求める性能について、高橋さんはこのように考える。
「曲がってくれる部分は、メチャクチャ曲がってほしい。ただ、曲がったあと、ここで絶対勝負をかけるというバット部分は、強靭であってほしい」
新しくなったバンディット落し込みのラインナップは5モデル。数々の落し込み竿がリリースされてきたが、高橋さんが一番に求めていたのは竿の調子だ。ただ、一本で足りるものではない。魚の大きさに応じて変える必要があるからだ。L215は7:3調子。M250は7:3調子。MH245は7:3調子。MH250は5:5調子。H235は7:3調子。
ブランクスはUDグラスとカーボンを適所に採用しているが、全体的には柔らかい。だがジワジワとバットにくるほど強くなる。高橋さんはこの感覚を求めたので、MH250の場合はあえてUDグラスのみで仕上げるということも行った。さらにスパイラルXコア、ハイパワーXで締め上げることによって、操作性の高い強靭なブランクスが完成したのである。
狙いは大型魚だが、釣り方は繊細そのもの
落し込みは、サビキ仕掛けに小魚が掛からないと始まらない。そのため、小魚を掛けるための穂先は、とてもしなやかでありながら高感度であることが必要。ただ、穂先だけに頼らず、リールを使うことも大事、と高橋さんは言う。
サビキ仕掛けを海中に落とすときには、スプールの回転数をサミングで調整しながら一定のスピードで落し込む。そうすることで、穂先が上下に振れず安定する。落し込むときに小魚が掛かるとそれが抵抗になるので、穂先が跳ね上がる。その後に穂先を下げ、エサである小魚が付いたのかを確認するのだ。それをしっかりできたうえで、仕掛けを大型魚が待つ底付近まで落し込んでいくのである。
こだわりが満載されたグリップまわり
ファイト中のロッドの持ち方は重要だ。サビキ釣りでは繊細なアタリがとれるように構え、大型魚狙いのときはパワーファイトに移行する。そのため、バンディット落し込みは、グリップまわりの設計にこだわっている。
「どんなにいいブランクスでも、グリップ、つまり足回りがちゃんとしていないと、魚を掛けたときに不安定になる。バラシの原因は釣り人が慌てることが原因になっている場合が多いので、落ち着いた状態でやり取りをするためには、ロッドをしっかりとホールドできることが重要。そのためにバンディット落し込みは、グリップまわりをこだわって作り、そのひとつとして、グリップエンドの長さが長くも短くもなく、適度な長さになっているんです」(高橋さん)
サビキ仕掛けに小魚を掛けるまでは、グリップエンドを脇に挟んでリールをパーミングする。この状態で大型魚が掛かった場合。まずは竿尻を足の付け根に当て、片手でフォアグリップを握り、片方の手で巻き上げとドラグ調整を行う。海底付近では障害物や岩礁との接触を避けるためにドラグを強く締めるが、それらをかわした後は少し緩め、ハリス切れ、口切れをしないように魚を寄せてくるのがバラさないコツだ。
それぞれのバンディット落し込み
バンディット落し込みは、ライトタイプのLから、M、MH、Hまである。ライトな落とし込みから、一般的な落とし込みまで、しっかりと目的を持って、すべての竿がその調子を出してくれるので選びやすい。それぞれのモデルについて高橋さんは下記のように解説する。
「【L215】は短めの落し込み仕掛け。オモリが軽い40~60号を使った身近な海でのライトな落し込みに。調子は7:3。【M250】は6:4調子寄りの7:3調子。ハリを小さくしたときにバラシにくい、クッション性に優れたモデル。【MH245】は多くの方が使われる7:3調子でありながら、しなやかな穂先を持つ。バットはジワジワと理想的に硬くなってくるので、安心して幅広い仕掛けを使って、落し込みを楽しめるモデル。【MH250】は竿の真ん中まではグーッと曲がり、さらに曲がりながら、フロントグリップ付近でガンと曲がりを抑えるパワーがある。かなりのクッション性を擁した調子。そのためドラグを締め気味のファイトを楽しめる。【H235】はラインナップの中で一番硬いモデル。魚のサイズが大きなときに、サビキの号数を上げて強気のドラグ設定で挑むことが可能。ただ、海底付近の障害物や岩礁をかわしたあとは、ドラグを緩めて安全なファイトを行うのがいい。大きい魚を無事に上げるのには、中層だけは適正なドラグ調整をするのがいい。それと、バンディット落し込みは、実はリーズナブル。やってみたいという人が手にしやすい価格。それいて申し分ないほどの性能なので、これから落し込みをやってみたいという人に、オススメです」
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