2024/09/13
コラム
深海の大物アブラボウズ
「キンメやアコウを釣りながら狙ったことはありますが、専門で狙うのは初めて。とても楽しみです」
深海大物釣りの作法
鈴木新太郎さんが小名浜港へ到着したのは午前1時半。辰紀丸(しんきまる)はここから4時間かけて漁場へ向かう。
「底をちゃんと取ることができれば、アブラボウズはだれでも釣れるよ」
そう語る櫛田勝己船長がアブラボウズを狙うようになったのは2010年ごろから。職漁、遊漁で実績をあげ、その噂を鈴木さんも知るところとなり、念願かなっての釣行となった。
小名浜沖、水深480m。
合図に遅れぬよう入念に準備した鈴木さんが投入を済ませると、ポイントへ仕掛けが入るよう船長は船を操る。
オモリが着底したらビーストマスターMD12000のテクニカルレバーで一気に10m以上巻き上げて糸フケを取って底ダチを取り直す。さらに数回、電動巻き、あるいはハンドルを駆使して底ダチを取り直すと、ある段階でオモリが「トン」と明確に底を打ち、道糸が立ってくる。これが船長の言う「底をちゃんと取る」状態。意外に難しい深海の基本作業だ。
「何か気配がありませんか?」
鈴木さんがそう言ってディープソルジャー205Ⅱの穂先を注視していると前アタリのような動きが出始め、次第に明確なアタリとなった。
強いアタリが出たらまず電動リールで数m巻き、竿先が消し込んだら竿を数回あおってアワせる。船長のアドバイスにならい、鈴木さんは電動巻きに続き渾身のアワセを入れる。
ディープソルジャー205Ⅱが強烈に引き込まれ、脈動する。鈴木さんはまだ見ぬ大物を想像しながらドラグと巻き上げ速度を調整する。
竿と道糸には常に重量と緊張が加わっており、時折強い引き込みに見舞われる。どれくらいの大きさなのか、本命なのか……。想像、緊張、そして喜びを噛み締める珠玉の時間が過ぎていく。その間、ビーストマスターMD12000は音も動きもブレることなく着実に、圧倒的に巻き上げ続ける。
やがて青い潮の向こうに小さく黒と白の影が見え始める。たぐる度に大きくなる影は海面直下で巨大な魚の姿となり、ついに海面を割る。
「この瞬間、本当に感動しますね!」
このあと数回、最大50kg超級のアブラボウズと出会うことになる鈴木新太郎さんは、深海の大物を釣り上げるたび、感動を口にするのであった。
【深海は一投入魂】
【オモリを立てる?】
【アブラボウズのアタリと電動ファイト】
タックルの作法
深海の大物。最もタフな条件で余裕を感じさせるのが〝本物〟
食の作法
アブラボウズの煮付け
〜フワッフワの身と濃厚な味わい〜
【取材協力】福島県小名浜港・辰紀丸
関連記事
RELATED COLUMN