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2020/04/16

コラム

激戦必至のシマノジャパンカップ!連覇を狙う友松信彦は数多のライバルたちと熱い戦いを繰り広げる!

数多の猛者との対決を行うシマノジャパンカップ、連覇を狙う友松信彦さんは頂点に上り詰めた技術を駆使し、2連覇という更なる高みへと歩んでいく。

●前回記事はこちら
シマノジャパンカップ2連覇V4友松信彦、頂点の技術。

穂先やり取りの会得

友松さんが掲げた2つ目の課題。「ミスをしない釣り」とは前述の潮読みやコマセワーク、キャスティング、仕掛けトラブルといったさまざまな事柄に当てはまるが、一番は「魚をバラさない」ことだ。その意識は極めて慎重なやり取りを見ればわかる。磯釣りは掛けても取れないことが多々ある。やり取りも技術の差がはっきりと出る。そして不意の反撃をくらってバラした1尾が、勝敗を分けてしまうのが競技である。友松さんはこれまでの大会でそのことを痛いほど実感している。
ミスをしない釣りには3つ目の課題である穂先やり取りの会得が絡んでくる。「穂先やり取り」とは聞き慣れない言葉だろうが、友松さんの造語である。この技術を意識したのは2017年大会の決勝時だった。最終決戦に勝ち上がったのは、田中修司さんと幸喜一樹さん。檜舞台はサザエ島「手代の地」。優勝したのは田中さんで、そのやり取りに友松さんは感銘を受けた。田中さんの釣り座の前には大きなシモリがある。その沖で良型を掛けたのだが、田中さんは竿を思い切り曲げて根から浮かそうとはしなかった。むしろ穂先を曲げる程度の微妙なテンションでいつの間にか寄せていた。それはまるで穂先でやり取りするような技術。これを友松さんは学び取ったのだ。田中さん自身は「ハエ根返し」と呼ぶ技で、魚を暴れさせず根に沿って泳がせるように〝いなし〟て引き寄せるのである。

沖で掛けた魚はしっかりとバットに乗せて引きをいなす

穂先やり取りの一連の流れを追うと次のようになる。

1、沖で魚がヒットしたところで思い切って竿を絞る。この時グレは体力が充分にあるので突っ込みも激しい。竿が絞りきれないほどの力で引くならイトを随時出して対応。愛機BB-XテクニウムのSUTブレーキが生きる場面だ。そのうち暴れている魚が落ち着く瞬間を見極める。魚は浮かそうとするほど下に突っ込もうとするが、安心できる海底付近にくると引き込みが落ち着く。
2、そこで竿を曲げすぎないようにする。穂先に乗せるくらいのテンションでイトを巻き取り寄せていくと、魚はヨタヨタ泳ぎで溝や根に沿って泳ぐようになる。
3、魚が頭をゴンゴンと振り出したら突っ込もうとするサイン。首を振らないようにイトを送って再び引きをリードする。
4、魚は水面近くなるほど下に突っ込む。そこである程度浮かせたところで頭を横に向けることを意識する。魚は根が近づくほど根に向かって走ろうとするが、あえて穂先を根のある側に倒すこともする。竿を倒して魚を横向きにしたままいなすのが肝要で、フルパワーで上方向にためるほど反動で魚の下への突っ込みも強くなってしまうからだ。
5、突っ込まない程度の微妙なテンションでやり取りすれば、根のギリギリでもヨタヨタ状態で泳ぐ。それでも根際で突っ込み体勢になり、これはヤバイとなった時は一瞬イトを出して沖に走らす。SUTブレーキであれば魚が加速体制になる前に瞬時にイトを送ることができ、ハンドルが逆回転しないので振動によるロッドの暴れもない。よって魚がすぐに落ち着く。こうして穂先のテンションを利用し、時にイトの送り込みを繰り返して浮かし、タモに導くのである。

手前に寄せてくる時は、魚を突っ込ませないためにも穂先を曲げるくらいの微妙なテンションをかけ、ヨタヨタ状態にしたまま寄せていく

この「穂先やり取り」を会得するのに友松さんはある実験をした。取り込んだグレにハリを掛けタイドプールで泳がせるのだ。竿は使わず、ハリスを手で持って力加減を調整すると、魚が暴れず頭を向けてついてくる。力の入れ方によっては、まるで犬の散歩をするような感じでグレの引きをコントロールできることが分かった。そしてこの力加減を実際のファイトシーンでも再現すればよいと思い至ったのである。

根際ではサオを寝かせて魚を横に向かせてやり取り。それでも突っ込み体勢になったならSUTブレーキを活用して瞬時にイトを出し、魚を加速させない

穂先やり取りをするには言わずもがな竿の性能も重要である。硬すぎれば魚は暴れてしまうし、ただ軟らかいだけの竿は根に潜られてしまう。つまり、竿の反発に魚がついてくるようなブランクスの竿が理想である。友松さんの愛竿「ファイアブラッド グレ クォーターマスター 1.2号 510」はまさに理想の性能をもつ。
「コアブランクス採用のこの竿は、曲がりに応じて魚が素直についてきます。暴れ方が断然違うんです」
もうひとつ魚を暴れさせないアイテムとして挙げられるのがショックリーダーである。磯釣り専用PE「リミテッドプロ PE g5+サスペンド」の0.6号を愛用する友松さん。遠投沈め探り釣りの高度なホバリング操作は極細PEだからこそできるともいうが、PEの難点は伸びがなく魚が暴れやすいことにある。特にフロロカーボンハリスを直結で使用すると魚が非常に暴れやすい。これを緩和し、アワセ時のショックも和らげるアイテムが「リミテッドプロ NYLONショックリーダー サスペンド」。友松さんは2.5号をPEとハリスの間に5m取って使用している。

予選5試合目。森井陽さんとの全勝対決

再び大会当日に話を戻す。1日目の予選3試合を終えた時点で友松さんの暫定順位は2位だった。1位は徳島の名手、森井陽さん。3戦全勝選手はほかに3位・幸喜一樹さんと4位・赤木寿成さんである。森井さんは重量差の貯金が3777g、友松さんは1974g。2人は予選最終戦となる5試合目で運命的な直接対決が待ち受けている。

友松さんの4試合目の相手は鈴木祐介さん。40cmオーバーを2尾釣りあげて友松さんに迫った

4試合目で友松さんは静岡県伊豆市に住む東日本勢の鈴木祐介さんと対戦。鈴木さんは40オーバーの良型を2尾釣りあげ友松さんに迫ったが、7尾のリミットメイクを果たしてかつ大型を揃えた友松さんが878g差で勝利。一方、森井さんは4試合目で沖縄のうえ原康平さんと対戦し2343g差をつけ、安定感のある釣りで勝ち点を重ねた。こうして迎える5試合目は全勝対決となり、勝ったほうが決勝のステージに立つことは確実になった。
釣り場は「屋根尾島の長瀬」。この磯では4試合目に幸喜一樹さんと安西優さんが激闘を繰り広げ、幸喜さんが予選4試合を通じての最高釣果6048gを釣りあげた。大型が揃う最高の舞台で大一番を迎える。

予選4試合目で6048gの釣果をあげた幸喜さん

森井陽さんとの激闘は屋根尾島の長瀬で行なわれた

釣り座となるのは長く突き出た根の北面。潮は岬の先端をかすめるように北に向かって流れ、左の湾奥から右の岬方向に引かれ潮が発生している。試合途中に満潮の潮止まりを迎えることから、優先権のある森井さんは潮通しのよい先端釣り座を選択。少しでも潮が残っているうちに先端を攻めようとの目論見である。そして友松さんは潮のたるい湾奥側の釣り座でスタート。

予選5試合目にして大きな山場となった友松×森井戦

森井さんは00号のウキを使用。ウキ止メを付け、きっちりとウキ下を決める半遊動仕掛けでタナを細かく刻んで探る。友松さんはフロロハリス10mに通した000号ウキをフロロの自重で押し込む得意の仕掛けだ。前半の釣り座は森井さんが有利と思われたが、良型クチブトを連発させたのは友松さんだった。ほぼ一投一尾のハイペースで竿を曲げ、50cmに迫る大型も混じる好釣果で早々にリミットメイク。

前半に良型ラッシュでリードする友松さん

一方の森井さんは潮の中を最初は探るも大型が出ず、深く入れるとマダイがヒットするなど本命を引き出せない。それでも何度も投入ポイントを替え、大型グレのタナを探り当てると猛チャージ。良型を2尾、3尾と追加。後半も勢いづいた森井さんが大型魚のヒットを量産。対する友松さんは入れ替えできる大型魚を求めて深ダナを重点的に探っていく。

森井さんもパターンをつかんで猛チャージ

後半は森井さんが良型ラッシュ

連発する森井さんに対して友松さんの沈黙時間が長い。岬をかすめるように流れていた潮は潮止まりと同時に沖に離れ、その本流に引かれる潮は刻一刻とめまぐるしく変化した。友松さんは潮筋を替え、タナを替え、集中して大型の沸く位置を捜した。やがて沈黙が破られファイアブラッド グレ クォーターマスターが弧を描いた。沖で充分にいなした後は、穂先やり取りで寄せる。すると、まるで抱卵魚のような重量級が浮上。この魚が居喰いでヒットしたことから「タナは浅い」と判断。するとカラマン棒下とハリスの真ん中に2つ段打ちしていたジンタンg7を外し、ウキを入れ込む速度をスローに調整する。竿一本強のタナでウキをホバリングさせるのがよいと判断すると、再び連発モードとなり、その後は両者一歩も譲らぬ竿の曲げ合い。鬼気迫る激闘が繰り広げられた。

タナが深すぎたことに気付いてから仕掛けの浮力を調整し再びラッシュとなった友松さん

大量釣果のうち両名とも6尾は確実に35cmオーバーをキープし1尾のみ24cmクラスと話す。こうなると勝敗は検量するまで分からない。検量所では、まず森井さんがフィッシュバッカンの魚を出す。型ぞろいの釣果に選手スタッフが沸き立ち、検量結果は5330g。続いて友松さんがドドッとザルに魚を移すと乗っ込み個体のような超重量グレが数尾混じる。そして結果は6837g! ほぼ1kgフィッシュが揃うという記録的な重量をだして勝利した。   
友松さんとともに決勝の檜舞台に上がったのは5戦5勝の幸喜一樹さん。同郷沖縄の先輩、上原康平選手に2351g差をつけて予選1位のトップ通過である。

対戦結果は友松6837g、森井5330g。ジャパンカップ史に残る激闘を繰り広げて友松さんが決勝の舞台へ。ちなみに友松さんの予選5試合の総釣果は1万9804g。ダントツ1位の重量である

進撃のトップトーナメンター

決勝の舞台に上がる直前。友松さんからは張り詰めた緊張感が漂っている

14時。ホーンが鳴り響き最終決戦の幕が上がった

11月17日、午後2時。いよいよ決勝の幕が上がった。檜舞台は久賀島の金剛崎の沖に位置する通瀬(とおりぜ)。幸喜さんが優勝すれば2016年の覇者である藤原誠太さんの最年少優勝記録(23歳)を塗り替える22歳での栄冠となる。一方、友松さんが優勝をすればV4、連覇という快挙である。
潮が右から左に流れている下げ潮の利いた時間帯。風波は高く、特にハエ根のきつい右の先端釣り座はしぶきがかかる。予選1位通過で優先権のある幸喜さんは、海に向かって左の釣り座を選んだ。こちらは潮下となり、右の釣り座に比べ風も波もまともには受けない。

幸喜さんの釣りもまたスタイリッシュである。愛竿はファイアブラッド グレ クレバーハント。竿尻を魚に向けるようにして思い切り曲げ込むやり取りは豪快だ

一方で風と喧嘩する釣り座となる友松さんは穂先をなるべく海面近くまで下げ、ミチイトをサラシに乗せる。波しぶきを浴びながらも前に出て釣りを組み立てるほかない状況である。逆巻く波濤が押し寄せて磯を洗い、そのうちバッカンも波が被った。友松さんはバッカンに侵入した水を大急ぎで掻き出すも時すでに遅く、コマセは多量の水分を含んでドロドロに溶けてしまった。

バッカンに波が被り、万事休すとなった友松さん

幸喜さんは苦しむ友松さんにわき目もふらず目の前の海に対峙していた。2017年の準優勝以来ジャパンカップにかける思いは熱く、グレの少ない沖縄の海で今大会のことばかり考え練習してきたという。仕掛けはミチイトとハリスの間に中ハリスとなるフロロ1.5号をセット。ウキは大粒の00号でジンタン8号相当の板鉛を張ってチューニング。ウキを深く入れ過ぎず、仕掛けを立ててかつ沈め込む釣り方で攻める。投入点を変え大型の出る筋を淡々と探り、予選で何度もサイズアップに成功したという「芝エビのムキ身」や配合エサの粉と沖縄の黒糖シロップに漬け込んだ「熟成オキアミ」をローテーション。集中砲火のように大量に先打ちしたコマセの煙幕の先でサシエを合わせる巧みなキャスティングも披露する。ウキのすぐ側にサシエを落とす「ノンサミングキャスト」は師と仰ぐ田中修司さん直伝の投げ方。潮目のピンスポットにウキとサシエを離さず投げ込むことでコマセとずれにくいうえ、イトを弛めて落とすフリーフォールはサシエの沈下が早い。かつノンテンションになるため喰い込みもよいという高度なキャスティング技術である。そして試合開始15分後に竿引きするほどの大アタリを得る。浮上したのは40cmオーバーの良型だ。エンジンのかかった幸喜選手は畳みかけるように良型3尾を釣り上げ、愛竿「ファイアブラッドグレクレバーハント」を気持ちよく曲げる。竿尻を魚に向けるようにして曲げ込む豪快なやり取りは、1号相当の竿が最大限のパワーを発揮。良型を難なく浮かせてしまう。

正確なキャスティング技術で前半リードする幸喜さん

良型を立て続けに掛ける

前半戦の友松さんは終始耐える釣りである。コッパだがリミットメイクの7尾は釣った。しかし数は揃えても良型を持っている幸喜さんが優勢なのは明らか。後半に賭けたいが、飛ばないコマセでは精度の高い釣りはできず、後半戦がスタートしても簡単にサイズアップとはならない。
状況が好転したのは後半20分が経過したころ。潮が緩んだ時間帯である。000号の「コアゼロピットDVCタイプD」で25mほど沖の深ダナを探り、回収をしようとしたところでドスンと竿に激震が走った。待望の良型だ。しかしやり取りの途中で転倒して膝を強打。熱戦を見守るギャラリーが立ち上がり舞台は騒然となる。が、魚はバレておらず長いやり取りの末に40cmオーバーのクチブトがタモに収まる。この1尾が友松さん挽回のターニングポイントとなる。

後半約20分が経過したところで友松さんの竿に激震が走った

友松さんは冷静になり、水で溶けたコマセも飛ばせるような追い風になる立ち位置を選ぶ。大型に居喰いされていたことから、ジンタンg7を外し、スローに入れ込む浮力に調整した。試合終了まで残り15分。時合をリズムよく釣っていきたいところで、マダイ、イスズミと大型の他魚が邪魔をする。50cmに迫るマダイを取り込んだことでグレの群れが固まったのか、次の1投では良型グレの追加に成功!

この1尾の大型魚がタービングポイントとなり、友松さんは自身の釣りを取り戻していく

深くウキを入れ過ぎずにパターンを見出した

終了5分前にも良型をキャッチ

対する幸喜さんは釣り座交換をしてから終始コッパに翻弄されたまま。残り5分、友松さんはアタリを絞り出すかのように集中して潮、タナを見極め、コマセとサシエを的確に撃ち込む。そしてビシッとアワセが決まり、愛竿が弧を描く。やがて逆転を決定づける良型魚がタモに滑り込んで間もなく、試合終了のホーンが潮騒をかき消した。
逆境から立ち上がった強靭なメンタル、見事な釣りの組み立て、まさに心技体を兼ね備えた友松さんの姿に選手・スタッフが惜しみない拍手を送る。友松さんは2018年大会で予選5試合と決勝で6戦6勝の完全試合を成し遂げた。そして今大会でも6戦6勝。2大会のトータル12連勝という格好でV4を達成したのである。

前半リードを許した幸喜さんに後半逆転した友松さん。2018年大会から数えて12連勝し、2連覇V4を成し遂げた

「負けたらダメなんです。1試合も落とさず、勝ち続けなければ連覇は絶対にできない。そんな強い気持ちで試合に挑みました。次は18連勝、3連覇を目指します」
表彰台でそう話したトップトーナメンターの進撃はどこまで続くのか。2020年も目が離せない。

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