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2020/04/16

コラム

シマノジャパンカップ2連覇V4友松信彦、頂点の技術。

2018年大会では新進気鋭のPE釣法を駆使し、シマノジャパンカップで3度目の頂点に立った友松信彦さん。連覇のかかる2019年大会でも6戦6勝の完全試合でV4を達成した。連勝記録を12に伸ばしてつかみ取った栄冠。その技術は一段と先鋭化されている。

連覇をかけて意識した3つの課題

令和初となった35回目のジャパンカップ磯。五島列島福江の海でファイナリスト24名の熱戦激闘が繰り広げられた

11月15日、2019シマノジャパンカップ磯(グレ)釣り選手権全国大会の前夜祭。ディフェンディングチャンピオンの友松信彦さんは乾杯の挨拶で次のように語った。
「私が全国大会に出場するのは10回目です。今大会で連覇の権利があるのは私だけ。負ければ次の優勝までおあずけです。この16年間、連覇をした選手は出ておらず、それだけレベルの高い大会だからこそ成し遂げたい。1年間この日のために準備をしてきた練習の成果をぶつけたいと思います」

前夜祭。ディフェンディングチャンピオンとして乾杯の挨拶をする友松さん。連覇にかける思いを熱く語った

いわば友松さんの強い決意表明で幕開けとなったジャパンカップ磯。そしてその言葉どおり第19回大会優勝の江頭弘則さん以来、実に16年ぶりの連覇という快挙を成し遂げたのである。ジャパンカップ35回の歴史の中でV6の立石宗之さん、V5の江頭弘則さん、V4の小里哲也さんらレジェンドに並ぶ、4度目の優勝となる。
友松さんは2018年大会でV3を達成した時点で、次の3つの課題を意識して1年間調整に励み、本番に挑んだ。

表彰台に立った3名。左から沖縄の幸喜一樹さん。22歳の若武者で2017年大会に次ぐ2度目の準優勝である。優勝の友松さんは江頭弘則さん以来16年ぶりに連覇をした。3位の上田泰大さん2015年大会の覇者で京都のエキスパート

1、的確な状況判断。
2、ミスをしない釣り。
3、穂先やり取りの会得。

ジャパンカップは予選が5試合行なわれる。マンツーマン形式で競技時間100分以内に7尾の釣果の総重量を競い、各試合の勝ち点と相手選手との釣果の差(重量差)が試合毎に加算される。決戦の舞台となるのは、長崎県五島列島福江島である。東シナ海に浮かぶ五島周辺は魚種多彩な豊穣の海である。グレはクチブト、オナガともに良型が釣れる。重量差で競うとなればクチブトのほうが重い。クチブトは大型ほど浮きにくいため、ある程度の深ダナに照準を絞るのだが、深ダナねらいだけでは数が出にくい。そこで「リミットメイクの7尾を揃えにいくか、大型を釣るか」の状況判断も必要になる。もちろん試合の流れによって条件はさまざま。友松さんが掲げた1つ目の課題「的確な状況判断」とはどんなものか。

五島の海は潮を釣れ

友松さんの基本の釣りスタイルは、遠投してウキを沈め、カウントダウンでタナを探る。五島の海は表層だけでなく底付近までしっかりと潮が流れ、潮目に生じる潜り潮のストロークも長い。根際よりも潮の中で素直にグレが喰ってくることが多い。

愛用ウキの「コアゼロピット DVC タイプD」。五島でメインに使用するのは000号

ウキを沈めた釣りは再現性が難しい。ヒットを量産させるには、どの位置、どのタナで喰わせたのかを把握しなければならない。そこで友松さんはカウントダウンを行う。ウキが着水した瞬間からカウントをはじめ、アタリダナを見極める。また、回収時にどの位置からウキが上がってくるのか、リールを何巻きすれば水面に浮上するかまで計算し、当たる位置とタナを割り出していく。
そしてタナを見極めたところで重要な操作が、イトの張りを強めること。すなわち「ホバリング」の操作である。たとえばカウント70で当たったのなら、そこでイトの張りを強めて仕掛けをステイさせる。前述のとおり潮が利いていれば、ウキが潮をつかみタナに留めることもしやすい。が、当然ながら海は刻一刻と変わる。

「グレ釣りの本質はイトの張り加減にある」と友松さん。ミチイトに極細PEを使うようになってホバリング操作の精度が高まり、仕掛けを流したいコースに送り込むことも容易に行ないやすくなったと話す

ヒットを量産すべく再現性を高めるためにカウントダウンでタナを計る友松さん

友松さんの釣り方はウキに多くの仕事をさせる。もちろん一辺倒の浮力では対応できないのだが、五島で最も多用したウキは「コアゼロピット DVC タイプD」の000号。浮力の調整ができるDVC(ダイビングコントロール)システム搭載のハイテクウキだ。シリンダーを回すだけで表示浮力から-g4まで調整が可能で、ウキ自体の交換もイトを切らずに行なえる。手数が少なく状況に対応できるのでトーナメントには優れた戦力となる。加えて000号は、流れの強い潮の中も浮き上がりにくく、深ダナをサーチしやすい。DVCの調整ひとつでウキの沈下を速めることもスローにすることも容易。ちなみに友松さんはDVCを最大浮力から1回転ずつ調整していく。浮力変化の目安は1回転で-g8強、2回転で-g7強、3回転で-g4というぐあいだ。
また、ハリスに角度を付けたい時や深ダナを一早く探りたい時はジンタンも多用。といっても使うジンタンはg8~g7がほとんど。ちなみにg8は0.07g、g7は0.09gと極めて微かな重さである。しかしこのジンタンが沈降するウキのホバリングの粘りを変え、釣果アップの大きな役割を担うのだ。

当て潮時の状況判断

当て潮を探る「巻き巻き釣法」。リーリングしながら手前に向かって探り、当て潮が磯にぶつかって反発する潮筋を見つけだす

さて状況判断の話である。それは100分という短時間で魚がどの位置で喰うのかを見極めること。試合は50分ハーフで前後半が分かれ、釣り座交代となる。潮はその時間内でも刻々と変わる。ウキフカセは仕掛けを流して釣るので有利なのは潮下である。コマセを溜めやすいのも、境界線を気にせず流しやすいのも断然潮下だ。ゆえに選手は潮時を読み、潮がどの向きで流れるかのシミュレーションを欠かさない。が、試合では絶対に潮上で釣らなければならない局面があり、そこで技術の差もはっきりと出る。友松さんの予選1試合目はまさに当て潮での1尾が勝敗を分けた。

予選第一試合は高知のエキスパート、野口真平さん

対戦相手は野口真平さんである。高知在住のエキスパートで全国大会には4年連続で出場している。舞台は屋根尾島の北浦バナ。水道筋に面した激流釣り場で当日はヒラマサ、キメジといった青ものが回遊し、派手にナブラを立てていた。試合スタート同時にまずまずの型を掛けたのは野口さんだった。その後は両者ともコッパの釣り合いとなり、2人は早々に7尾のリミットメイクを果たす。こうなると重量のある大型を掛け、いかに入れ替えに成功するかが問題だ。前半潮下の釣り座だった友松さんは本流に引かれる沖に出ていく潮を探ったものの、サイズアップができず後半戦に突入。後半は潮上の釣り座である。激流が磯をかすめ潮下に流してもあっという間に境界線を越えてしまい、仕掛けが落ち着くポイントがない。そこで繰り出したのは「巻き巻き釣法」である。当ててくる潮に合わせてリーリングし、仕掛けの張りを保って小さなアタリを取っていく釣り方。この釣法も漫然と探ったのでは釣果は出にくい。コマセが溜まり、グレが沸き立つ潮目を捜すのが肝要である。友松さんは仕掛けよりも沖にコマセを打つと当ててくる潮に合わせてイトを巻く。そうして手前に探りながら潮がぶつかり反発して沖に出る潮目を感じ取った。すると良型のクチブトグレが口を使って入れ替えに成功。

激流がかすめる磯。潮上の釣り座で良型をヒットさせた

この1尾が勝敗を分けて野口さんに185g差で勝利した。友松さんは言う。
「潮上を釣る最大のコツは、反発して少しでも沖に払い出す筋を見つけ出すこと。それは強弱があって一瞬だけ生じることもあります。見た目で判断できることもありますが、概ね仕掛けの投入点を変えて潮の変化を探るしかありません」
なお当て潮時の巻き巻き釣法では、穂先からサシエまでをピンと張り、イトをたるませないことも重要。その場合イトの張りを強めるのでサシエも浮きやすくなる。そこで友松さんはハリスにg7を2つ段打ちにし、ハリスの角度を立て気味に保ち探っていった。

コマセワークとサシエワーク

予選2試合目、3試合目は潮止まり時刻と重なり、グレの活性が上がらないタフコンディションとなった。どの磯もコッパの釣り合いで重量差が僅差の試合ばかり。象徴的な試合が今大会2位となった幸喜一樹さんと時吉長稔さんが対決した2試合目。グレが全く沸かないまま終了時刻が近づく。幸喜さんは根際にチョロチョロと見えたコッパを掛けるべく、ハリスを0.8号に落としてハリを1号に替えた。そうして何とか掛けたのが手のひらに満たない90gのグレ。この1尾が勝敗を分けたのだった。
友松さんも3試合目はタフコンディションに苦しめられた。関東勢のひとり安西優さんとの対戦である。舞台はサザエ島のエーバナ。この時、磯際にはスズメダイに混じってコッパが沸いていて、沖をねらっても沈黙。魚が根から離れない状況だった。友松さんは小型でも7尾揃えることが先決と判断を下し、五島では使ったことがないという1.2号の細ハリスを結んだ。なんとか7尾を揃えながら、友松さんはスズメダイやコッパグレがどこまでの距離ならコマセに反応し沖に出ていくのかを観察した。

コマセを撒いて海の中を観察。どこで仕掛けを合わせるかを判断する

超遠投はダメ。根から5m以内なら出る。となれば7m沖とエサ取りが出ていかないギリギリのラインにエサを打ち、反応を探った。遊泳力が強い大型であれば、この距離なら沖で喰うという判断で釣りを組み立てると、40cmオーバーがたて続けに2尾ヒットしたのである。いずれの魚もサシエは芝エビのムキ身だ。コッパやエサ取りが吸い込みにくいムキ身は、オキアミより重く仕掛けが立つのも早い。エサ取りの層を突破しやすいから大型との遭遇率も高まる。このコマセワークとサシエワークによって勝ち点を重ねた。

友松さんの芝エビのムキ身。エビの味噌と味の素に漬け込んで仕上げたものを指でちぎって使う。重さがあり速い潮の中でも仕掛けが立ちやすくエサ取りの層も突破しやすい勝負エサだ

青ものが回遊していると、グレは沖に出ていこうとしにくい。他魚の動向も狙いどころを絞る判断基準となりうる

友松さん以外の選手もムキ身が活躍する場面は多かったと話す。幸喜さんや森井陽さんも揃って「ムキ身が効いた」と言う。ムキ身の使い手として凄かったのは友松さんと2試合目に対戦した村岡利彦さん。多彩なサシエワークを行なうクロダイ王国・広島のエキスパートで、サシエのこだわりは半端ない。ムキ身にしたエビをハリに合わせてサイズを揃え、真空パックに入れて携帯していた。

友松さんの予選2試合目の相手は広島のエキスパート・村岡利彦さん。村岡さんの勝負エサのムキ身は真空パックにきれいに袋詰めされていた

「コマセとサシエの距離感、同調させるタイミングは極めて大事。それにはよく魚の動きを観察すること、もちろん正確なコマセワークとキャスティング技術も必要です」
と友松さん。もはや遠投が主流といえる五島福江の全国大会では、沖で大型を集めるべくコマセを集中砲火のごとく撒く。対戦相手よりも魚を集めるために上手な選手ほどエサを撒く量は多いといえる。問題はサシエをどこで合わせるか。そのタイミングにある。2018年大会3位のシード選手で優勝2回のファイナリスト常連、田中修司さんのコマセワークは神技のようである。

ファイナリストの常連で優勝2回の田中修司さん。今大会は不調だったものの、トーナメントシーンでの影響力は計り知れず、友松さんもその技に感銘を受けたひとり

予選4試合目では良型オナガを手にして勝利した田中さん

というのもコマセを先打ちしかしない場面が多いのである。普通は先打ちと追い打ちでサシエをサンドイッチにして大型を浮かせるタイミングを計るのだが、田中さんは先打ちだけで大型を選り分けて釣る。それは先打ちしたコマセがどのタナまで沈んでいるのかをイメージし、仕掛けの投入位置を考えタイミングをカウントする。たとえば自重のあるムキ身を使う時は、沈下が早いためコマセを先打ちしてから90秒カウント。沈んだコマセの煙幕が残った位置のやや潮下に仕掛けを投げ込むというぐあいだ。コマセがある程度沈んで流れ着いた先に大型が沸くと想定し、かつエサの沈下速度を考慮して仕掛けの投入点とタイミングを探っていくのだ。

的確な状況判断で行うコマセワークが勝敗を分ける大型魚を引き出す

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