2021/02/26
コラム
水温急低下の大物海域に挑む 鹿児島県南さつま市久志「立目鼻の無名瀬」
大分県在住の田中修司さんが待ち望んでいたのは、良型のクロを期待できる鹿児島県久志への挑戦。ところが釣行直前の寒波襲来で海水温が急激に低下してしまった。環境の変化に敏感なクロは、気難しい面を見せた。
INDEX
寒波の影響
地元の釣り師が「ワカナ」と呼ぶ茶色い尾長が出ることで知られる鹿児島県南さつま市の久志。本流の中に潜んでいる尾長は70cmクラスともいわれ、3月以降のハイシーズンには目視で60cmオーバーを確認できる九州屈伸の大物海域だ。
口太も非常にコンディションが良く、渡船・松風(TEL090-5388-3498)の時任船長によると、毎年決まって54cm.3kgの口太が出ているとのこと。ただし、田中修司さんが久志を訪れたのは、この冬最初の寒波がやって来た直後。1週間前に26℃だった海水温が23℃へと急落し、苦戦も十分に予想された。
松風が案内してくれた釣り場は、北西風の風裏となる立目鼻の無名瀬で、周囲を沈み瀬に囲まれた独立礁。本日の満潮は午前10時50分だが、風によって生じた波が高かったため、午前8時前の段階で使える足場が限定されていた。
久志には初挑戦となる田中さんが手にしたのは、2.5号の道糸が巻かれたBB-Xテクニウムの替えスプール。
「中ハリス2号、ハリス2.5号でスタートします。水温が低下していることはやはり気になりますが、マキエを打ってみると深いタナにオヤビッチャと小さなグレが見えるし、バケツに汲んだ海水は暖かいと感じました」
選んだロッドは「しなやかでありながら強いロッド」と田中さんが評するシマノ/BB-XスペシャルSZⅢの1.2-500/530。操作性重視のロッドで攻略の糸口を探る。
尾長の一撃
本命の釣り座となる磯の先端部が波で洗われているため、東側のワンド向きに釣り座を構えてスタート。1投目はウキを取り囲むように8杯の後打ちマキエを投入したが、ツケエがそのままの形で残ってきた。
その後もツケエが取られず「当ててきたり払い出したり、右へ行ったり左へ行ったり、潮の流れが非常に不安定ですね。いまは表層は沖へ、中層より下の流れは手前向きの二枚潮になっていて、ラインをしっかりと張らないとアタリを取ることができません」と苦しい展開。
ツケエを5mのタナまで送り込んでも反応を得られないため、さらに2mほど深く入れてみるが、ツケエが残る。やはり水温低下の影響は顕著だった。
満潮の時刻を過ぎたところで仕掛けを変更。道糸を1.7号、ハリスを1.7号にサイズダウンし、ウキストッパーの下70cmにG5のガン玉を打って何とか最初のアタリを引き出そうとした。
大きく竿が曲がったのは、この1時間後。釣り座の足元には大きなオーバーハングがあるため、できるだけ磯の先端部に近い位置に立ってやり取りをしなければ勝ち目はない。すぐに足場を移動し、獲物の突っ込みをしのいでいた田中さんだったが、最後は残念ながらBB-XスペシャルSZⅢの穂先が天をあおいだ。
「バラしたのは50cmぐらいの尾長で、ハエ根の上で反転したのが見えました。ロッドワークで上へと誘導すればよかったのに、ここで横に引いてしまいました」
瀬ズレによって飛ばされたのは細くしたハリス。いきなりアタってきた久志のワカナは、田中さんに鮮烈な記憶を残した。
「尾長がヒットしたのはワンドの外へ出ていく潮が流れたときで、その力強い流れに足元から中間点までの潮が引かれた一瞬のタイミングでした」
この潮で必ず喰うと直感した田中さんは、出るべくして出たアタリに瞬時に対応できたが、同様の潮の流れが再び出現することはなく、エサ盗りが深ダナから浮いてくることもなかった。
大型魚を手玉に取る
「尾長は潮に付いている感じだけど、口太は潮に付いていませんね」と、極度のタフコンディションに対して打つ手なし。それでも田中さんは、再びチャンスが訪れるのを待った。
その後にアタってきたのは、4kgクラスのアオブダイと、良型のグレを凌駕するすさまじいパワーでハエ根に突っ込もうとした40cm級のニセカンランハギだったが、大きく張り出したオーバーハングをかわす必要がある釣り座では、長さ5mから5.3mへとスムーズに移行できるBB-XスペシャルSZⅢのズーム機能の優位性が際立ち、ズームUPすることでダイナミックな田中さんのやり取りが輝きを見せた。
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