2021/05/21
コラム
決め手は喰い込ませるチヌ竿 長崎県西海市大瀬戸「平倉のハナレ」
北部九州地方の桜は例年より10日も早く開花し、花びらを透かす明るい陽射しが春の訪れを告げた。そんな長崎県西海市大瀬戸に良型のチヌを求めてやって来たのは、岡山県在住の磯釣り大好き女子・山口美咲さん。このエリアでの竿出しは初めてで、完全に白紙の状態から戦略を組み立てていく。
移り行く季節
長崎県西海市の松島周辺にはチヌの好ポイントが多いが、季節の変わり目は釣況が安定せず、つい先日まで絶好調だった釣り場がすっかり沈黙してしまっていた。そこで渡船・RYUSEIの柴原船長が選んだ釣り場は平倉のハナレ。本格的な乗っ込みシーズンに入れば50cmオーバーを含む数釣りを期待できる磯だが、この春はまだ誰も上げていないそうだ。
午前6時20分に大瀬戸港を出て、釣り場到着までの所要時間はわずか15分。「船着けから遠投で狙ってみてください。水深は竿2本ぐらいです」というのが上礁時のアドバイスで、最干潮からのスタートとなる。
まず最初にタモを組み、続いてロッドケースから取り出したのはシマノ/鱗海スペシャルの0号530。リールはBB-Xテクニウム2500DXG S LEFT(スプールは夢屋1700DA)をセットした。
「遠投できる5Bの円錐ウキを使った半遊動仕掛けで、道糸は1.7号、ハリスは1.5号を3ヒロ、ガン玉は浮力調整用の5Bと、ストッパーの下にG5を一つです」というのがスタート時の仕掛けで、ハリはチヌバリの2号を選択。ウキ止めは竿2本弱の位置とした。ポイントを30mほど先と定めてマキエを投入すると、潮はほとんど動いていない。わずかに上潮が右方向へと滑っているが、これは南風の影響だろう。
正解へのプロセス
1投目、2投目とツケエの加工オキアミがそのまま残ってきて、3投目に練りエサを使ってみたが反応なし。このところ人が入っていない釣り場だけにマキエが効くまでに時間がかかることも考えられるが、ここで積極的に動いていくのが美咲さんのスタイルだ。「ガン玉はそのままでウキだけを3Bに替えて、仕掛けがなじんだらウキごと沈むようにします」という判断を下したのは釣り開始からわずか15分後。ウキ止めを付けている竿2本弱のタナから、ゆっくりと底まで探っていく作戦とした。
その効果はすぐに表れて、仕掛けを沈めきったところでラインにアタリが出たが、アワせると抜けてしまった。しかし「ボトムでアタる。喰い込みは良くない」という情報がインプットされ、一歩ずつ正解へと近づいていく。
やがて上潮が左流れとなったが、底潮は動いていない状況で、ツケエは加工オキアミだと取られるものの、練りエサは残ってくる。エサ盗りはフグのようで、手を焼くほどの数ではない。それよりもやっかいなのは強まってきた南風。真横から吹き抜ける強風は仕掛けを投入するたびに道糸を膨らませようとするので、ロッドを大きくあおってのラインメンディングは必須。このような場面では鱗海スペシャルの軽さが大きなアドバンテージとなってくれる。
導き出した答え
「ボラとフグの姿が見えだしましたよ」と言った直後にスッと道糸が張ったがそれ以上は持っていかず、喰い込ませる時間をしっかりと与えてアワセを入れると、確かな手ごたえが伝わってきた。
ズッシリとした魚の重量を竿の胴に乗せて引きを楽しみ、時間をかけて浮かせたのは丸々とお腹を膨らませた43cmのチヌ。
「あれだけ待ったのに、ハリは口元に浅く掛かっていましたね」と、ホッとした表情の美咲さん。喰わせたツケエは加工オキアミ、アタったタナはベタ底だった。
底に着いたツケエを居喰いするチヌに対し、穂先の存在を気付かせない鱗海スペシャル。同様のヒットパターンで40cm、37cmとチヌを連発させたところで、ロッドを06号530に持ち替え、さらなるサイズアップを目指す。
勝負の仕掛け
その後、南風がさらに強まったため釣り座を変更。風下に向かって竿を出すことにしたが、北側のポイントは沈み瀬が複雑に入っていて水深に乏しい。3Bのウキを使った半遊動仕掛けで中層から探ると、待ち受けていたのはフグの猛攻。フグをかわすために00号のウキで組んだ半遊動仕掛けを沈めてみたが、このパターンでもアタリは得られず、残り1時間を切ったところで元の釣り座へと戻った。
最後の勝負をかける仕掛けは、3Bのウキを5Bのガン玉で沈める半遊動仕掛け。すでに結果を出している仕掛けだが、ウキ止めをウキストッパーの近くまで下げて、遊動幅をなくした。
「遊動幅が大きいと、仕掛けがなじむのを待っている間に強風で道糸が取られてしまう状況です。それに加えて潮の流れが緩くて仕掛けを張りづらいので、ガン玉で強引に仕掛けを落ち着かせます」というのがウキ止めを下げた理由。道糸が風に取られないよう、丁寧なラインメンディングを行って仕掛けを入れていくと、その1投目で明確なアタリが出た。
アワせた瞬間に胴から曲がった鱗海スペシャルが掛けた獲物の大きさを伝えてきたが、#4、#5の設計の見直しとコアブランクスの相乗効果は絶大で、引きの強いチヌが相手でも鱗海スペシャルなら安心してやり取りができる。
すんなりとタモへと導かれたチヌは45cmで、体形はスリムながら、たくましい生命力を感じさせる精悍な風貌。ハリ掛かりはくちびるの皮1枚だった。
「すごく元気なファイトですね」と、美咲さんが絶賛する大瀬戸のチヌ。爆釣のシーズンはすぐ目の前に迫っている。
問い合わせ/RYUSEITEL090-3328-3556
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