2022/12/06
コラム
福岡県・玄界灘の落し込み。
「こんなことは滅多にありませんよ」
北九州市・脇田漁港の天力丸・藤野勝久船長が驚きの声をあげたのはマカジキが跳ねたときだった。
INDEX
イワシを掛ける作法
イワシはアタリを取るのではなく、
変化を感じ取る。
今年の玄界灘はウルメイワシとヒラマサなど青物の回遊が遅れていた。そして高橋哲也さんが満を持して訪れた10月中旬も状況は不安定、イワシの反応は散発的だった。
「落し込みは釣り方は合理的だけど、仕掛けは不合理」そう語る高橋さんは、イワシの掛けやすさと大物を獲れる強度という相反する要素のうち強度を優先、一般的な釣り人より太い仕掛けを使う。イワシの反応が少ないこの日も20号と18号を選択。釣具店で売れ筋だった14号には目もくれない。
潮の流れが速いとき、イワシは濃い群れを作って一定方向を向いて泳ぐ。そんなときは掛かりやすい。逆に潮が緩いとき、チャンスは一瞬になることが多い。
高橋さんは海中を想像しながら、ビーストマスター2000の探見丸スクリーンとアルシエラ落し込みMH/ H235の竿先、ミチイトを見ながら巻いては落とす、を繰り返し、太仕掛けでもウルメを掛けていく。
そして朝方は少なかった反応が増えて急にイワシが付くようになった……と思った直後、高橋さんが掛ける。
海面に浮かせたのは大きな、丸まる太ったワラサ。安堵する瞬間だが、海の中の変化を感じている高橋さんは間髪入れずに投入、次投で6kgはありそうなヒラマサを釣り上げた。
潮が速くなったときのいわゆる時合だが、その時間は短かった。もし、イワシが付かないからと細い仕掛けにしていたら、ヒラマサを釣り上げるチャンスを逃していたかもしれない。
潮が緩んでからはマダイやヒラメ、ハタ類などに期待を寄せるも、この日はフエフキダイやタテフエダイなどレアな魚ばかりが掛かり、何かがいつもと違うようだった。
その極め付けがマカジキであった。
1時間以上に及んだマカジキとのバトルは、数回船に寄せ、仕掛け上部が見えたところでリリース。
これも、仕掛けが細ければ一瞬で、何が起きたか分からぬまま終わっていたかもしれない。
大型を取るための仕掛けでいかにイワシを掛けるのか。鶏と卵ではないが、高橋哲也さんの落し込み釣りの技は、大物を釣る技術のその前、イワシを掛けるところから始まっている。
高橋哲也、落し込みの技。
タックルの作法
イワシにも大物にも通用する
タフ&コンパクトなタックルを
食の作法
ヒラマサのカルパッチョ
〜いつもの刺身に飽きたら〜
【取材協力】北九州市脇田漁港・天力丸
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