2020/03/31
コラム
東伊豆のティップエギング
アオリイカが徐々に深みに落ちる冬場、ティップエギングはいかにシグナルを見逃さないかが大切になる。今期で9シーズン目を迎えた東伊豆宇佐美の二階屋丸で、この釣りのパイオニア・富所潤さんが大切にしている「条件」を教えてもらおう。
INDEX
「スタートからフィニッシュまで、同じ動作を、同じレベルで続ける必要があるんです」 陸上競技ではないが、ある意味、今回はスポーツの話。 伊豆の山並みと海の間に宇佐美と伊東の街並みが白く浮かび始めた6時半過ぎ、手石島周り20メートルダチでの1流し目。
– シュッ、シュッ、シュッ……。 富所潤さんは5回、鋭く、力みなくシャクると、ロッドで半円を描きつつダブルハンドルを弾くように回して糸フケを取り、竿先を海面へ向けて静止させた。
「釣りを続けていると、だれでも疲れます。とくにティップエギングは同じ筋肉を使い続けますから、意識している以上に後半は疲れが出るんです」
筋肉や関節にかかる負担を熟知する整形外科医の言葉は説得力がある。
– 風と潮がぶつかっているのか、水深の割にエギは流されない。28グラムのアントラージュS1でも、前方へ投げて角度を付けたほうがよさそうだと、富所さんはキャストしてシャクる。
「だれでも朝イチは元気よく、イメージどおりにシャクリが決まるものです。それが後半になると……お!」
朝日に切り取られた手石島を背に、セフィアエクスチューンS610LISがシームレスなアーチを描き、ヴァンキッシュC3000が静かにアオリイカとの距離を詰める。
12月としてはやや小さい400グラムほどのアオリイカが取り込まれ、撮影で長い時間持ち上げられた末、富所さんに潮鉄砲を浴びせる。
「後半になってもスタート時と同じ動作を続けるには、タックル、とくにリールは軽く、しっかりしているほど疲れず有利になります。そして、数多く釣行しても、クオリティーが変わらない耐久性も大切です」
これが、富所さんがティップエギングにヴァンキッシュを愛用する理由。
– 船は水深30〜40メートルを転々と探っていく。
「ヴァンキッシュとステラの使い分けですか? ステラはもっと深い場所を狙うときに使います。水深が50、沖縄などでは70メートルになると、シャクリよりも巻きの時間が圧倒的に長くなります。そんなときはステラの巻きの力強さ、滑らかさが疲労を軽減させてくれます」
この日は乗りが散発で、森昌史船長は南へ北へと船を走らせる。
沖では風が吹いて船が流され、山影に入れば緩慢になる。
– 富所さんはこまめにアントラージュの重さを変える。当然、シャクリの感触は毎回変わる。その都度、強さ、回数に変化を付けて、探っていく。
「こんなとき、疲れているから重く感じる、では、後半は思うように釣れなくなります。スタートからフィニッシュまで、同じ動作を、同じレベルで保つために、軽量かつ、ブレないリールとロッドが不可欠なんです」
– ティップエギングにハマり、上達した後、「壁」に突き当たってしまった人は、リール、そしてロッドを見直してみてはどうだろう。
「とはいえ、今日は澄み潮のせいか、アオリイカの機嫌が悪いですね。おいしいものでも食べて、出直しましょうか」
6時半から昼の沖揚がりまで、変わらず、正確なシャクリを繰り返した富所さん。 不調の日を楽しくしてくれるのもまた、いい道具の条件である
タックルデータ
ティップエギング専用ロッド3傑。 フラッグシップモデル「セフィア エクスチューン ティップエギング」(下)、性能はCI4+の2ピース版と言われる「セフィアSSティップエギング」(中)、エクスチューンに迫る感度と操作性を持つ「セフィア CI4+ ティップエギング」(上)
ティップエギング専用エギ・アントラージュ。左からS0(25g)、S1(28g)、S2(35g)、S3(43g)、S4(55g)。全4色
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