2024/12/05
コラム
湯川マサタカ×伊豆半島 慣れぬポイントと悪条件下での1杯へのプロセス
紀伊半島をホームにするエギングのエキスパート湯川マサタカさんが、春の伊豆半島で春イカに挑んだ3日間。慣れない場所と悪条件下をどう思考し、どう攻略したのか? エキスパートの思考を追った。
春の伊豆アオリイカに挑む
早春、春イカのシーズンが始まるか始まらないかという頃が、大型のイカが出るタイミングだ。ただしそれは「一発出るか出ないか」の釣りでもある。エキスパート湯川マサタカさんは「1杯に賭けたいね」と、春の伊豆に釣行した。
初日、午後4時、身支度を整えタックルをセット、リーダーを組んで釣り場に向かう。午後5時伊豆の磯に立った。
「普段は足で稼ぐ釣りがメインやけど、春の一発狙いは、潮で回ってくるヤツを狙うから、海遊待ちの釣りがメインになる感じかな」
この時期の大型を獲るにはスローに釣るのを意識するのがいい。そういう釣りは着底がわかりにくく敬遠されがちだが、底を取れなくてもいいから軽いエギでソフトに沈めるのがいいという。
キャストを繰り返すが、正面からの冷たい風で波も高い。いったん湾内で状況を見る。タックルで海中の状況を感じるとともに、目で状況変化を捉えるのが重要だという。
「海面にみえる切れた海藻や泡が動き出したりした時が潮の変わり目。サラシの中の白い泡が伸びたら、潮の流れが出てきてる」と解説。イカの活性は少しの状況変化で上がる。だが、潮の動き出す夕方にも、この日ヒットはなかった。
低下した水温に苦戦
2日目の早朝4時、暗いなか車で釣り場へ向かう。寒波で水温が下がり気味とみて、まずは南方面へ向かった。
「水温は一つのキーワード。春イカの第一陣は15℃から16℃になってくる境目あたりの早め(に来る)。釣れ出してからではちょっと遅い」
釣果情報が上がりはじめる前が、一発大物のチャンスだという。
5時30分、目的の釣り場に着いた。ところが、風裏にもかかわらず波がある。マズメを外すのは痛い。スマホでポイントを探しさらに南へ向かう。風は予報である程度予測できるが、波は現場で見るまでわからないことが多い。
6時30分にポイント到着。YouTubeの視聴者だという釣り人に会い状況を聞くが、普段はいいが今日はダメだという。潮も動いていない。翌日の予報も悪いため、ここでロッドを出すことにする。
「大きな湾の中にある小さいワンド。こういう所は(イカが)溜まりやすい。エサを追い込んで捕食でき、藻場があれば産卵しやすく、孵った子供も流されない。条件が整ってるからね」
正午まで投げたが、ヒットはなく、昼食をはさんで午後3時にふたたび磯に立った。エギは3.5号ノーマルに替えた。
「シャローやと送り込みにくくなったな……ええ感じやけどなあ」
寒波のせいか、この日も日暮れまでヒットはなかった。
雨中のキロアップ
「たどり着けるかどうかわからへんけど、まぁ行ってみようか」
最終日となる3日目の朝6時、昨晩考えたという東伊豆の釣り場へ向かう。山道を抜けて磯に出るが、竿が出せる場所ではなく、ふたたび移動。予報では午後は雨だ。
「何もできんと終るんじゃないか?」
不安とともに次の釣り場へ。出会ったエギングアングラーに聞くと、アタリはあるとのこと。前日何の反応もなかっただけに、うれしい情報だ。
10時30分ようやく釣り開始。空は暗く11時には雨が降り出した。
「潮も風も変わったな。真南に風が変わった。急に変わったね。潮が張り出してたから穏やかになってたんやけどね。風向きと潮が変わったから先端見に行ってみようかな」
そう言って移動。イカの溜まりそうな波の穏やかなところで投げる。
「雨が降るとデイでも釣れやすくなる。叩きつけられた雨が酸素を運んで活性が上がるとか、ローライトになるからとか……やっぱり波風あると警戒心が薄らいでエサを喰いやすかったりする。安全を考慮した上で、多少の雨なら絶対行った方がいい」
冷たい雨の中のキャストは続く。
「よし。潮止まりの一撃!」
立てたロッドが弧を描いた。ドラグを鳴らして走るイカをロッドの弾力でいなし、少しポンピングをまじえて寄せてくる。そしてイカが水面に浮いた。
「よっしゃ、いい所に掛かってる」
ネットに収まったのはキロアップのアオリイカ。一緒にいたと思われるオスに噛まれた跡があった。
「ありがとう。これは価値ある1杯やったね」
低水温低気温で3日間投げ続け、ついに手にした貴重なアオリイカだった。
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