2024/07/05
コラム
エギングを科学する 実釣編 海野徹也×湯川マサタカ
釣り人の考察は、学術的に正しいのか?そんな疑問を解決するべく、シマノエギングインストラクターの湯川マサタカさんが訪れたのは、海洋資源研究のプロフェッショナル、広島大学の海野徹也教授。アオリイカの性質や行動を学び、釣り人の経験と研究者の知見の融合による、更なるエギングの可能性を探求していく。座学編に続くフィールドでの実釣編。
INDEX
産卵期というシーズン
実釣場所は長崎県。水温こそ適水温の21度だが、産卵末期の7月ということで、状況的には難しいタイミングだ。
基本産卵期は、藻場=産卵場=エサ場になるので、活動範囲は藻場回りに固定されそうだが、ベイトがいれば数百mは動くと海野教授。また、産卵の間隔が10日前後あるので、その間は動きまわって捕食しているという。
産卵は日中、産卵期でも群れの個体数が多ければ産卵しない個体も多くいる。
アオリイカの謎
年魚とされるアオリイカだが、死んだ個体を見ないのはなぜかという湯川さんの疑問。
「沈んでエサになっていくみたいな感じですかね」(湯川)
「そう、多分ね、ウツボとか何かが食べると思いますよ、すぐに」(海野)
そんな話をしつつ隣接する磯へ。
大型のイカは大型のエギを抱く。セオリーはあるが、自然界にはまだ解明されていないことは多い。釣れるエギのサイズは、その場のエサのサイズによるのではと海野教授。
成熟個体
ファーストキャッチは海野教授。遠投して釣れず、足元でのバイトだった。
「僕はもう十分(笑)」と笑うが、親イカ(サイズ)を釣りたいところ。
続いて湯川さんにヒット。400gクラスでも卵を持っていることに驚くふたり。一杯のメスに対して何杯のオスが産卵行動に関わっているかを調べているという海野教授にとっては、非常に興味深い個体だった。
アオリイカと色
湯川さんも海野教授も、エギは人間からの視認性が高いカラーが好きだという。
見えるカラーで潮を確認してから馴染ませるカラーに替えるが、そこには科学的根拠はないと笑う海野教授。
ではアオリイカの色、白と黒のどちらが活性が高いのか。海野教授の答えは白。
白は透明になろうとしている色で、エサから見えにくい色になろうとする、つまり捕食モードにあるということ。逆に黒はイカ墨の擬態でもある警戒モードになる。
巧妙に擬態するイカがカラーを認識できないとは思えないと再認識。色によってイカ同士が人間に分からないコミュニケーションを取っているのかもしれないなど、疑問は尽きない。
アオリイカの種と産卵
浮き輪のような役割を持つ甲があるコウイカ類は浮くのが得意だが、甲がないイカ(アオリイカも含まれる)は浮くのは苦手だが長距離を速く泳ぐことができる。
また、目の表面が薄い幕に覆われている種類のイカは、藻などに卵を産むが、覆われていないグループは浮遊性の卵を産む。前者にとって産卵場は非常に重要で、子イカは真水を嫌うので、河口付近では産卵しないことが多い。
模様や腕など、オスとメスの性差はあるが、どの段階でオスとメスになるのかはいまは分かってはいない。
「釣りしながらかたい話をするのもいいですね」(海野)
「一番の勉強ですね。頭に入ってきやすいですからね、こういう状況の方が(笑)」(湯川)
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