2025/06/11
コラム

たどりついた究極のメタルスッテロッド。セフィア リミテッド メタルスッテ開発ストーリー。

メタルスッテゲーム用ロッドのフラグシップモデル「セフィア リミテッド メタルスッテ」が、2025年5月にモデルチェンジした。開発に携わったのは、イカ先生の愛称で知られ、メタルスッテゲームのパイオニアでもある富所潤さん。このロッドの完成に至るまで秘密裏に行われていた開発現場の声とは…。
本気の現場。本物のリミテッド完成まで。
「これダメ。これじゃない。今のアングラーの皆さんは、分かるから。もうね、ごまかせない…」。富所さんのやや強めの口調から本気度が伝わる。
近年、釣って楽しく、食べて美味しいことから、ライトなボートゲームは人気だ。その中でもメタルスッテゲームはは非常にゲーム性が高く、釣果にも差が出る奥が深い釣り。また、釣果を最優先するアングラーだけでなく、ウキウキトップの釣り(視覚的なアタリ取る釣り)のように、釣り方そのものを楽しむアングラーも増えている。いずれにしても、メタルスッテの釣りを極めようとするアングラーは、タックルセレクトがシビアだ。
前作のセフィア リミテッド メタルスッテは5年ほど前にリリースされたモデルであり、その仕上がりには富所さんも満足していた。それだけにNEWモデルをリリースする話があったとき「本当に前作を超えるものができるのか?」と疑問を投げかけたという。しかし、シマノ開発陣は「時間をかければ、ちゃんと作れます」と返答した。NEWモデルをリリースするために、使える技術の蓄積があったのだ。
その開発はまさに、現場で鍛え上げた一流のアングラーと一流の技術者との静かな戦いのようでもあったのである。

シマノ開発陣から富所さんに、次期セフィア リミテッド メタルスッテの開発についての話があったのは現在から3年程前のことだった。

高評価を得ているセフィア XTUNE メタルスッテ。このロッドの上位機種に位置するのがセフィアリミテッドメタルスッテだ。
新規炭素繊維トレカ®M46Xを使用することで、異次元のロッドに。
現在、全国的に流行しているメタルスッテゲームは、釣り方が細分化され、数多くのメソッドが誕生している。そして、アングラーのテクニックは飛躍的に向上し、タックルにも相応のスペックが求められている。
この釣りで使うロッドとして最高峰に位置するのが、セフィア リミテッド メタルスッテである。2020年に発売された前作は、掛け調子のベイトモデルが3機種リリースされた。発売当初は「このロッドを超えるモデルはできないのではないか」と囁かれた。しかし、メタルスッテゲームの進化のスピードは速く、それに劣らずロッドを作る技術もここ数年で飛躍的に向上した。
NEWモデルではブランクスに最新の炭素繊維トレカ®M46Xを使用。タフテック∞を採用したメタルスッテ調子のファーストテーパーモデルが2機種、オモリグ対応のレギュラーテーパーモデルが2機種、ウキウキトップ(グラスソリッド)を搭載したベイトモデルが1機種、計5機種のラインナップとなっている。新規炭素繊維トレカ®M46Xとシマノ独自のスパイラルXコアを融合させることで細身に仕上げられ、パワーも併せ持つモデルとなっている。

実釣テストに持ち込まれたプロトモデル。ファーストプロトでは、どのような技術を投入したかは、富所さんにはあえて伝えられなかったという。
ゼロベースからスタートしたロッド開発。
NEWセフィア リミテッド メタルスッテの開発にあたっては、現行品をベースにするのではなく、ゼロベースからスタートした。シマノ開発陣から富所さんへは、現時点で技術的にどのようなことができるのかは伝えず、どういったモデルが作りたいのかということだけ伝えた。
5年前に手掛けた前作を経ての課題は、尖がっている部分をどうするのかということだった。
「リミテッドとして尖がっている部分が尖がり過ぎていると感じている方もいたし、逆にこれじゃなきゃダメなんだという部分もあったんです。課題の部分として僕らが一番感じていたのが、ロッドの調子やパワー。同じM、同じML、同じMHだとしても、今回のリミテッドはどのように作るのかと」(富所さん)
シマノの開発陣としては、2つの側面を盛り込みたいというテーマがあった。
「ひとつはラインナップを今のメタルスッテのシーンに合わせること。もうひとつはやはり技術で、特に今回は新しい素材とスパイラルXコアの融合によって【真の軽さ】をテーマにして開発を進めました。それは自重だけではないんです。釣りをする際には竿は止まっていない。動いているときの軽さは違う。リールが付き、ガイドにラインが通り、スッテが付いて、それを動かす。そしてイカが掛かる。そういった一連の中での【軽さ】を突き詰めていくと、重量だけでなくブランクスの細さが重要です。そういったところは前作でわかっていたので、そこをさらに突き詰めていきました」(シマノ開発陣)

2024年6月6日、鳥取でのテスト釣行。数多くのオモリグ対応のロッドを持ち込んだ。

2024年8月27日。福井でもオモリグ対応ロッドのテスト。開発陣がその場でヒアリングを行い、次なるプロトを製作する。

穂先のカラーにもこだわった。ライトが当たっている場所、当たっていない場所(やライトの種類)による視認性の良さを追求。
「やり切った感、満載です。だからこそ、しばらくはこのロッドに触れなくてもいいかな…」
フィールドでのテストは過酷だった。ロッドを作る側はもちろん、それを使うアングラーにも相当な労力が費やされた。実釣はさまざまなフィールドで行われ、釣行毎に大量のプロトモデルが持ち込まれた。一晩で20本近いロッドを持ち込む時もあった。ときには現場で修正をしてテストを続けた。
すべてのテストが終わり、量産品のベースが仕上がった。この段階では修正が効かないので、通常であればロッドをテストすることは稀。しかし、富所さんとシマノ開発陣は、製品版を持って岩手県宮古の海に出た。そこでひとつひとつのパーツの細部までチェックをして、「いける!」と確信した。
「僕らは研ぎ澄ますという言葉を使っていますが、研ぎ澄ますというと、かなりシャープなイメージだと感じてしまうと思うんです。ただ今回に限っていうと、研ぎ澄まして丸くしているんです。よりマイルドにするために、いろいろなところを研ぎ澄ましていった感じです。より使いやすくて、馴染みやすくて、釣りやすくするために、いろいろな素材、シチュエーション、バリエーションを考えて、どんどん角を落としていく作業です。最終的に『あっ、使いやすい竿にやっぱりなってる』という確認ができたという印象があります」(富所さん)
今回のリミテッドの開発について富所さんは「やり切った感、満載です。だからこそ、しばらくはこのロッドに触れなくてもいいかな…」と語る。
リミテッドという名前にふさわしい、究極を追い求めたのモデルが完成したことに間違いはなさそうである。

2024年11月12日。組み上げたロッドの細部に至るまでチェックをするために、岩手県宮古釣行を実行。

ユーザーがハッピーになれるロッドを、という想いで、アングラーと技術者が一緒に作り上げたロッドがリミテッドだ。

2025年5月。誕生までに約3年を要したリミテッドがついに発売。
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