2020/03/09
コラム
1尾との出会いを楽しむ 百合野崇が水温低下中のチヌ狙い
海水温が徐々に下がっていく初冬のころはチヌ釣り師の腕がシビアに試される時期。完全に水温が下がりきって安定する寒チヌシーズンに比べてもチヌに喰い気がないため、1日に1回の貴重なアタリをキャッチできるか否かが明暗を分けることになる。百合野崇さんが訪れた南九十九島一帯はチヌの宝庫として知られるが、前日に激しい雨が降ったことはマイナス要因。大きな流入河川はないこのエリアでも、水潮になっていれば苦戦は必至だ。
INDEX
マダイはチヌの前兆
九十九島のチヌ釣りに精通する百合野さんが立てた作戦は、潮に合わせて釣り場を変更すること。
「水温が安定しない時期なので思惑通りにはいかないかもしれませんが、上げ潮では浅いポイントを狙い、下げ潮では深いポイントを狙ってみたいと思います」
百合野さんのリクエストに応えるべく、佐世保市の鹿子前より出る竹内商店の渡船が向かったのは松浦島で、かつて真珠の養殖場が設置されていたという場所に上礁。船長によると、ここは寒の時期の実績が高いポイントで、陽気に恵まれた日には大型のチヌが期待できるとのこと。水深は干潮時だと6mほどしかないが、砂地の海底には沈み瀬や溝状の起伏、養殖場の名残となる人工物が点在しているそうだ。
オキアミ生に3種類の集魚材を加えたマキエは事前に準備済み。タモを組む前に取り掛かったのは市販のネリエサを好みの軟らかさになるまで調整することで、えび粉や液体タイプの集魚材を練り込んでうまみたっぷりのエサに仕上げていく。
「ツケエは黄色と赤のネリエサがメインで、加工オキアミはエサトリの状況を見るためだけに使っています。加工オキアミがずっと原型で残るようなケースは別ですが、ちょっとでもかじられるようならネリエサで勝負します」
軟らかめに調整しているネリエサはロッドをシャクることで容易に切ることができる。1投ごとに海中に残してきたネリエサがマキエの役目も果たしてくれるため、違和感なくネリエサを口にしてもらえるというわけだ。
まずは正面向きの30mほど沖をポイントと定めてマキエを投入。
黄色のネリエサで反応を伺うと、2投目で手のひらサイズのマダイが喰ってきた。
「九十九島では小さいマダイがチヌの前兆なんです。逆に言うと、マダイが出ないとチヌも出ないという傾向があります。いきなり期待できそうな展開ですね」
その言葉が現実となったのは5投目。スーッと穂先を持っていくアタリに合わせを入れると、リンカイ アートレータ 06号 530が朝の光の中できれいな曲線を描く。
沈み瀬へ向かおうとする獲物の動きをロッドのパワーで封じてしまえば勝負あり。無理のないやり取りで取り込んだのは46cmのきれいなチヌだった。
「やっぱりマダイの後にはチヌがきましたね」
予告ヒットを達成できたことで、爆釣への期待が膨らむ。
予定通りの瀬替わり
ところが、2尾目のチヌどころか、小ダイもアタらなくなり時間が経過。みるみるうちに潮位が上がり、釣り座を後退させて遠投での釣りへと移行する。
このような場面でも心強いウキは16.3gの自重を持つ鱗海 ZEROPIT 遠投SPの00で、百合野さんは小さな板ナマリを貼ることにより海面下2~3mでホバリングさせる。ウキ止めなしで斜め下方向にツケエを送り込んでいくスルスル釣法は、マイナスG5に設定したナビストッパーW、ハリの上20cmに打ったG5のガン玉、ツケエのネリエサの重さが、絶妙なバランスで成り立っているのだ。
BB-X ハイパーフォースに巻かれているリミテッドプロ PE G5+ サスペンド 0.8号も、その細さによって遠投をサポートしてくれる。
「伸びのないPEラインならフグのアタリやツケエの有無がわかるし、ちょっとだけツケエを動かすような繊細な誘いもできます。表面張力を活かして道糸を海面に浮かべたままにすることができて、ロッド操作で下向きにラインを引いてやれば、海中に入れてサスペンドさせられる点もメリット。ツケエをゆっくりと入れたいときはラインを海面に浮かべています。張りがあるので、糸ガラミのようなトラブルは一切ないですよ」
狙うポイントを少しずつズラしていったがアタリは出ず、満潮2時間前というタイミングで予定通りの瀬替わり。後半は水深のある釣り場で勝負だ。
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