2020/04/22
コラム
全遊動と半遊動の境界線はどこに引く?ジャパンカップ連覇・友松信彦が駆使する2つの戦略
破竹の12連勝で16年ぶりのジャパンカップ連覇を果たし、今もっとも勢いのあるアングラーといえる友松さん。緻密な全遊動釣法が強さの柱ではあるが、ポイントと条件によっては得意のスタイルを捨て去ることさえいとわない。
無名磯というより未開拓磯へ
「ガチャガチャ」の海底が鍵
伊豆半島の中でも今ホットな釣り場である田子に友松さんとやってきたのは昨年12月中旬のこと。沖に浮かぶ田子島を完全スルーして、港を出て左手にある地方の無名磯に下りた。磯に名前が付いていないのは、釣りでは誰も上がったことがないからだ。前回の釣行で船を近くに寄せてもらい、多分いけるだろうと目星を付けていたのだった。そんなポイントに上がったのにはわけがある。テーマはずばり、寒の戦略。シモリ周りに居着いて離れないグレを想定した釣りを展開するために、寒というにはまだ少し早いが、あえて選んだのだ。
船着きの正面は開けていて普通だが、左手の沖にシモリが2つ頭を出していて、そこから出るサラシと足元から出るサラシがぶつかる形となっている。逆光で水深は分からないが、底は間違いなく「ガチャガチャ」だろう。
様子見で正面を少し探ったあと、テーマに沿って狙いを左手のガチャガチャ地帯に切り替えた。いつもの全遊動仕掛けかと思えばさにあらず、ウキは少し小さめだし、それどころかウキ止めがしっかり結ばれてるではないか。一体、どういうことだろうか。
シモリに付く魚を狙うからウキ止めが必要
根ズレのリスクがあれどタナは詰めない
スタート時はサシエが残りっぱなし。
「エサが入ってないんでしょうね」
と友松さん。サラシ同士がぶつかる潮目で仕掛けが入り過ぎるのでウキを0からG3に、オモリをG7からG5に替える。意外にもすぐに反応があった。まあまあのサイズのようだが、悪いタイミングでドバンと波が押し寄せた。それでラインごと磯に押し付けられてしまい、アウト。
気を取り直してもう一度。今度は30cm強の魚をキャッチ。
「枯木灘(和歌山県)サイズですね(笑)。このサイズがいっぱいだとヤバいですけど…」
その後、2投連続でサシエが取られたあと再び良型とおぼしき魚がやってきた。
しかし、今度はガチの根ズレでやられてしまった。
「全然底が切れんかったなー。でもタナは詰めません。喰わせることが先決。寒なら取れますよ」
チャンスは再びやってきた。ロッドを必要以上に曲げ込まない独特のやり取りでキャッチしたのは38cm。納得サイズだ。
半遊動の必然
友松さんのトレードマークは10mのロングハリスに大きなウキを用いた全遊動釣法であるのはご存じの通り。ただし、寒の釣りでは半遊動にする機会も少なくない。シモリに付く魚を狙うには、やはりタナを決めてサシエをぶら下げるのが理に適っている。
距離が近い、水深も深くない、となればなおさらだろう。もちろん風や波の影響が少なければ全遊動仕掛けのままでもライン操作次第で狙えないことはないが、未知のポイントでおまけに逆光だと水深が把握できない。ならば半遊動にするのが安全だ。また、そもそも友松さんが全遊動にする理由のひとつに「大きなウキでも喰い込みがいい」ということがある。
大きなウキを使う必要がないのなら、全遊動にする必要もない、と言い換えることができるかもしれない。
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