2020/10/02
コラム
本気度120% 百合野崇のGOTOロクマル 長崎県五島市玉之浦湾「白鳥神社」
長崎県五島列島の福江にある玉之浦湾は昔から巨チヌが釣れる場所として多くの釣り人を魅了してきた。しかし、それは簡単に釣れるということではなく、むしろそれなりに腕を磨いてきたチヌ釣り師に門戸が開かれることを意味していた。2019年ジャパンカップクロダイを制した百合野崇さんは、自らの引き出しを総て開けて未知の海に挑んだ。
ロクマルの育つ条件
百合野さんの読みはこうだ。ロクマルが育つ環境は、一番深い場所で水深40〜50m以上あり、年間を通して水温が13℃を下回らない、つまり年中捕食活動ができる海。この地形的要素に加え、養殖に使う栄養豊富なエサが玉之浦湾のチヌを育てているはずだ。ここは間違いなく良条件が揃っている。ではなぜ喰ってこないのか。一方で、こういう仮説も成り立つのでないか。水温の変化に合わせるのが苦手なチヌは潮通しの良い場所よりも湾の奥の方、つまり外洋の潮が流れ込まないところにいるのではないか。
「チヌはどこにでもいるが喰わせるのは難しい」と言った船長の言葉が頭の片隅を過る。そうか、場所選びだ。
確かに磯近くの水温は25℃以上あるが、数m沖の潮は冷水なのだ。
ならば、次に挑むのは湾奥しかない。
極翔硬調黒鯛の出番だ
玉之浦湾の西に位置する白鳥神社の裏側に小さなワンドがある。磯の上に石垣が積んであり足場は良く、水深は比較的浅い。ここなら水温は安定しているだろう。狙う場所は筏の角近くだから、アワセたあとチヌは筏のロープに巻き付こうとすることは予想できる。よし、ここは真っ向勝負のロッド、極翔硬調黒鯛の出番だ。
足元を見ると人気を気にしないチヌがゆっくりと泳いでいるではないか。逸る気持ちを抑えながらロープとロープの間にマキエを打ち込む。おそらくここのチヌは初めて見るマキエに興味津々に近寄ってくるだろう。煙幕はチヌの視界に強烈にアピールし、その中をネリエサの球体が落ちてくる訳だ。海底近くで下から見上げていたチヌは必ず喰ってくる。ここでウキに違和感を覚えた百合野さんは仕掛けをチェックする。しかし、異常はない。塩分濃度が濃く00号のウキでも沈下速度が遅い。これはツケエがよく目立ちアピール効果をもたらすことになる。
チヌは湾奥にいた
マキエを筏の角近くに投入していく。昨日と打って変わってハマフエフキの姿はない。案の定、1投目からラインが走った。予想通りチヌは必ず、ロープの下に入ろうとする。ロッド全体でチヌの突進力を吸収し、圧倒的なバットパワーでチヌを誘導して浮かせていく。ここので釣りはピンポイントでマキエと仕掛けを同調させていくだけでよい。連続ヒットはないもののコンスタントにアタリがある。中にはロープ下に強引に突っ込むチヌもいるが竿をタメているうち、限界に達したチヌが反転する。その瞬間ロープの外に連れ出し竿の反発力を利用して浮かせればよい。極翔硬調黒鯛は一度奪われた主導権を取り返すパワーも持っている。やはり、この竿で正解だった。
ポテンシャルの片鱗が見えた
ここから2時間足らずで15尾のチヌを仕留めていくことになる。中には50〜54cmのチヌも混じった。
だが、百合野さんの視線はさらに湾の奥の浅瀬でのんびりと浮いている巨大なチヌの姿に釘付けになった。いつもなら警戒心のあるチヌはマキエを打っただけでも散ってしまうことが多いというのに、何ということか。まるで我関せずだ。巨チヌの姿は幻ではなく、すぐ目の前にあるが届かないのだ。
さらに掛けたチヌも堂々としていた。エサとして捕食しているというよりは、ゆっくりと味わっていて、本気で危機迫る感じで逃げていないという印象を受けたという。ロクマルの聖地と呼ばれて久しいが、過去の実績の裏付けが取れた気がした。
ワンランクもツーランクも上の釣り場だということを痛感。玉之浦湾は先人達がそうであったように何度でも訪れたくなる場所であり、本気でぶつかっていけるフィールドだ。
次こそは66cmを超えるチヌを獲ると心に誓った。
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