2021/09/21
コラム
ズームで攻略 夏尾長 大分県佐伯市米水津
九州の熱血磯釣り師たちが真夏に情熱を傾けるのが日中の尾長狙い。大分県佐伯市米水津では沖黒島一帯が夏尾長の好ポイントとして知られ、酷暑の中でもチャレンジャーが後を絶たない。
澄み潮の影響
シマノインストラクターの田中修司さんが沖黒島にアタックしたのは、九州を横切る雨雲が発生していた蒸し暑い日。未明から各地でゲリラ的に激しい雨が降っていたが、出港時の米納津はその雲の東南端部となっていた。
「マキエは多目に用意しました」と言うように、水温が高い時期の難敵はエサ盗り。ところが千代丸の山田船長によると、潮の色が澄み過ぎていて状況は芳しくないとのことで、どのような展開になるかは全く予想が立たない。
船の水温計が示していた数値は25℃で、上礁したのは夏尾長の実績では申し分のないビロー下。
荷物を安全な場所へ運ぶと、さっそくロッドケースからBB-XスペシャルMZⅢ1.2-500/55を取り出し、中ハリス1.5号、喰わせハリス1.7号の二段ハリス仕掛けを組んだ。ウキはシマノ/ファイアブラッドゼロピットL00、ハリはグレバリ6号で様子を見る。
この日の干潮は午前7時過ぎで、まずは下げ潮での釣りとなる。足元にマキエを打つと、澄みわたった海中でマキエを追っているのはハコフグのみ。潮目が生じている10mほど沖へ投入すると、良い感じでウキがシモっていったが、生命反応はなく、ツケエのオキアミはそのままの姿で残ってきた。
見出せない勝機
釣り開始から30分ほど経過したところでアタってきたのは30cmほどの口太。喰わせたのは瀬際から5mほどのポイントで、それまで右流れだった潮が左流れに変わった瞬間にウキストッパーがスーッと走った。
「満ちの流れが入ってきたようですね。沖から突っ込んできた上げ潮が沖へ向かって跳ねる状況になればチャンスはあると思います」
しかしアタリは散発で、次に喰ってきたタナは水深8mほど。ハリ掛かりしていたのは小型の尾長だったが、これで狙うべきタナに迷いが生じてしまう。ビロー下は基本的に瀬際が狙い所となるのだが、たまにイスズミらしき魚が見えるものの、すぐにその姿も消えてしまう。
潮は右に流れたり左に流れたりと不安定で、しかも上潮だけ滑る状況も見られる。ハリスにガン玉を打ってみたり、ハリを細軸軽量のタイプに変えてみたりしても活路を見出すことができないが、ここでハリスを細くしてしまうと本命である良型尾長を仕留めることはできないだろう。
「一見良さそうに見えても、泡がフワフワとしているのは偽物の潮目です。船長が言っていた通りで潮が澄んでいるので、マキエの濁りを活用したいところですね」
大量のマキエを打ち続ける田中さんに疲労の色はなく、午前10時に2回目のマキエ作りを行い後半戦へ突入。この時点で数尾ずつ仕留めた口太と尾長は、いずれも田中さんが納得できるサイズではなかった。
逃がさなかったワンチャンス
巡るスリリングな攻防がスタートする。ここの海中には明確な段差があり、瀬ズレによるラインブレイクを生じさせやすいが、最初の締め込みをかわしたところでBB-XスペシャルMZⅢを5mから5.5mへとズームアップ。強気のやり取りで一気に勝負に出る。
危なげのないやり取りでタモに導いたのは40cmの尾長で、厳しい状況下での値千金の1尾。いつも冷静な田中さんも思わず安どの表情を浮かべた。
「喰ってきたタナは2ヒロ。一瞬だけ沖へ出る潮になったので狙ってみたのですが、仕掛けを抜いてマキエを打ったら、仕掛けが斜めになっている状態から引っ張っていきました」
5号のグレバリは完全に飲まれていたが、最後までしっかりと持ちこたえてくれた、ファイアブラッドEXフロロ ハード-タイド1.7号。そして何より、BB-XスペシャルMZⅢ1.2-500/55のパワーが、尾長の逃亡ルートを封鎖した。
秘められたポテンシャル
「BB-XスペシャルMZⅢの長所は、バット部分がしっかりしているのでブレがないこと。竿がブレるほど魚が走ってしまい、スムーズなやり取りができなくなりますからね。SZⅢが繊細な釣りを得意とする竿であるのに対し、MZⅢは穂先に張りがあり、重たいウキとも好相性。型の良い口太や尾長を狙ったり、流れの中を狙うのに適した竿だと言えます」
その後アタってきた50cmオーバーのサンノジ(ニザダイ)やイスズミの暴力的ともいえる強烈な引きさえ、まったくものともしなかったBB-XスペシャルMZⅢ。
「足場の高い釣り座では5.5mにズームアップすることで、ラインメンディングが容易に行えるし、この長さは魚とのやり取りでも有利。ハンドル1回転で107cmの最大巻上長を誇るBB-XテクニウムC3000DXXGと組み合わせれば、魚を一気に寄せてくることができます」
大物狙いに闘志を燃やす田中さんのタックルは、さらに盤石の体制となった。
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