2024/03/01
コラム
確かな機能性をもっと身近に。 シマノ防水基準「ドライシールド+」が目指すもの
レインウェアに最も必要な性能はいたってシンプルだ。「どんな釣り環境でも濡れないこと」——水との距離が近いアクティビティである以上、浸水から身を守る防水性能は、決して欠かすことのできない要素である。そこへさらに透湿性やストレッチ性、軽量性などが備わることで、信頼たり得るレインウェアとなる。
シマノ「ドライシールド+」は、防水性能試験において厳しい条件をクリアしたレインアイテムにのみ付与される、独自の防水認証基準である。レイン素材として誕生した2002年以降もアップデートを続け、防水性能を示す《スペックスタンダード》へと変化を遂げている。「濡れないウェア」を追究し、これまでの知見を結集させた「ドライシールド+」。そこには、長年フィッシングギアを手掛けてきたシマノの決意が表れている。
釣り場で本当に使えるウェアをより多くの人に
クオリティを証明するための
〈スペックスタンダード〉
2022年、「ドライシールド」はシマノ独自の防水基準「ドライシールド+」として刷新される。一つの素材としてではなく、ウェアの防水性能を証明する“スペックスタンダード”としての再出発である。耐水圧や透湿性、紫外線や高温多湿状況による耐劣化など、対象項目は約20項目。従来の評価項目をベースに“釣り場で信頼されるスペックとは何か”を再整理し、より厳しい基準を設定した。全ての条件のうち1つでも基準を下回れば、ドライシールド+が付与されることはない。
徹底した防水基準を生み出した背景には、今まで積み上げてきた信頼をシマノの核心的価値として形にしたいという思いがあった。シマノが生み出す防水性能を「ドライシールド+」の名で証明し、より多くの人に快適な釣り体験を届ける。釣り場で本当に使えるフィッシングウェアとは何かを考え続け、それを形にしてきた自負を、見える形で証明したい思いがあった。
数多の現場を“経験”したウェアこそ、
貴重な研究材料となる
「ドライシールド+」の評価基準はアップデートを続けており、試験条件もより厳しいものへとブラッシュアップしている。難しいテスト条件をクリアするため、欠かせないのが使用済みウェアの研究と検証だ。
釣り場で実際に使用されたレインウェアを検証する——その重要性を再確認したのは、立ち上げ当初に行ったフィールドテストでのことだった。対象のウェアは防水性に長けており、社内で実施した試験ではアウトドア環境に十分対応できる耐水圧をクリアしていた。ところが実際の釣り現場で使用したところ、ウェアに漏水が見られたのだ。漏水箇所には一般的なアウトドア環境では見られない劣化が見られたほか、構造的に水の浸入が生じていることがあった。その要因は、釣り中の姿勢や座り方、海水の影響など、釣り特有の環境や動作にあることがわかった。
現場で生じた水漏れの背景には何があるのか。何が起き、どのような過程で水漏れが起きたのか。経験に勝る学びがないように、リアルな釣りをその身をもって体感してきたウェアたちは、数々のヒントを与えてくれる。
社員自身によるテストやインストラクターからのフィードバックはもちろんのこと、ユーザーが着用していたレインウェアも重要な“研究材料”となる。長く愛用されたウェアは現場で起きた現象とその原因を探るために役立つ。より詳細な情報を得るために、漏水が起きた際の使用環境や直前の行動をヒアリングすることもある。これまで築き上げてきた全国の小売店との太いパイプも、ユーザーのリアルな声を受け取ることに大きく寄与している。
「濡れないウェア」に必要な条件を
徹底して洗い出す
使用済みウェアと向き合った結果、評価対象として重視するようになった項目もたくさんある。たとえば「海水付着と高温多湿の関係性」。ある研究対象のウェアは漏水が生じており、表面には海水や汚れが付着していた。使用ユーザーへのヒアリングによると、直前に磯の遠征へ出かけていたことがわかった。長時間を費やす遠方での釣りは、一晩を車中や船内で過ごすことも少なくない。その空間は高い湿度に覆われており、特に夏場は昼夜にかかわらずムレやすい。つまり、海水や汚れが付着したウェアを高温多湿な空間に長時間さらしたことで、通常よりもウェアの劣化が早まっていたのだ。
そこでシマノは様々な高温多湿状況を洗い出し、それらに耐えうるスペックを目指した。完成した製品がユーザーの手元に届き、現場に赴いて釣行を終えるまで、あらゆる環境を想定した。必要とされるスペックを見極め、ドライシールド+の評価基準に加えた。
もう一つは「シームテープの条件管理」だ。シームテープとは、生地の継目からの浸水を防ぐため、ウェアに施される止水テープである。シームテープは防水性を高めるために欠かせない仕様である一方、レインウェアの最大の“弱点”でもあった。実際、水漏れが発生していたウェアのうち、その多くがシームテープ部分からの水漏れを起こしていた。
同じ生地・同じシームテープ・同じ縫製だとしても、漏水するものとしないものがある。その原因解明を進めると、テープ圧着時の条件にバラつきが生じていることがわかった。
シマノだからこそ生み出せる
「付加価値」を追究しつづける
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