2022/11/14
コラム
相模湾のコマセキハダ。キハダ釣りの核心。
「ソナーから反応が消えません。これはキハダがコマセに付いてますね」
操舵室で梶ヶ谷昇船長が言う。
これまで現れては消え、そのたび移動を繰り返していたキハダが、午前10時を過ぎると船に着くようになった。
INDEX
コマセキハダの作法
船長のアナウンスと反応を読む
アタリを出させる核心は手返しにある。
アタリはない。だが、流し続ける船長の意思を察して、松本さんは再び手返しする。と、巻き上げるその瞬間に、ビーストマスターキハダ180の竿先が鋭く震えた。
即座にスプールを親指で押さえ竿を振り上げてアワせる。最初はサバか何かと思うような曖昧な動きだったのが、突如、圧倒的な力で走り始めた。
「これはさっきのよりデカい」
2時間前に釣り上げた10kg級よりも重く、ファーストランも長い。100mほど走らせたところでキハダが止まると、巻き上げにかかる。
時折キハダが走ればドラグを滑らせ、キハダが止まれば今度はドラグを少し締め、巻き上げ速度もジワッと上げる。そして最後は、サメをかわすために一気に巻き上げる。
海面に現れたのは、後検量20.5kgのキハダ。9月中旬まで大型が釣れていなかった相模湾の状況に鑑みれば、値千金の1本である。
沖上がり直前にも10 kg級を釣り上げたこの日、松本さんは4回のアタリをとらえ、3本のキハダを手にした。
コマセキハダでは「いかに大型を捕るか」が注目されるが、それ以前に「いかに喰わせるか」が大切。そのために最も重要なのが「手返し」だと松本さんは言う。
手返しを的確に行うには、船長のアナウンスを聞き逃さないこと。また同じ指示ダナでも、ハリス分落としてからコマセを振り出すのか、ビタ止めから振るのか、それだけでキハダの喰うタイミングが変わるし、当然、投入に遅れれば確率は下がる。
悩ましいのは流し続けているときだ。キハダが近くにいるのか、いないのか。もうすぐ流し変えるのか、流し続けるのか。
「この釣りでは、本当に探見丸があったほうがいいですよ。キハダの反応が見られるのはもちろん、反応が出ていないときも状況判断に役立ちます」
冒頭の操舵室のソナーを思い出してほしい。あのとき、探見丸にはまだキハダの反応が映っていなかった。しかし、探見丸に反応がなくても船長が流し続けているということは、船の周囲にキハダがいるということだ。と、松本さんは考えた。
ゆえに、船長が手返しを促す直前に、コマセを入れ替え、見事に喰わせた。
「基本的に自分のコマセと付けエサがシンクロするよう早めに手返しします。乗合船ではなおのこと、自分のコマセにキハダをまとわりつかせるイメージで、手返しします」
情報と観察、アワセ損ねないよう手持ちで続ける根気、そして的確なファイト。コマセキハダはトータルで沖釣りのスキルが試される釣りともいえる。
「間違いなく今年も10月は大型が釣れます。もう1回、やりましょう」
20kgでは飽き足らない松本さんの挑戦の続きは、動画にて。
タックルの作法
モンスター級とのファイトが楽しみになるタックルを。
食の作法
〜キハダの中落ち丼〜
釣り上げたキハダならではの極上丼
【取材協力】三浦半島長井漆山港・昇丸
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