2016/04/13
コラム
山本太郎直伝 黒鯛流儀 三重県各地の産卵期におけるチヌの行動を考える
春先、鳥羽周辺での釣果が不安定な理由
さて、三重県鳥羽周辺において早春のチヌの行動を観察してみると、チヌは「巨大な群れで一斉に大移動して湾内に差し込んでくる」といったものではなく、「数グループに分かれて、ある程度時間のズレを生じながら順に差し込んでくる」といったもののようだ。春先、筏やカセで釣れるポイントが安定せず、コロコロと日替りで変化し易い理由は、派閥(予め形成された群れ)があり、移動性が強いためと考えられる。また釣れたチヌは抱卵の状態がバラついていて、すでに産卵を終えた、と思える細い魚体や今にも産卵しそうなお腹の大きな魚体が混ざることもある。おそらく産卵のタイミングも個体によって差があるのだろう。それも1度に産み落としてしまうのではなく、数回に分けて産む。
また産卵は、海藻やシモリ根等に産み付けるのではなく、完全な浮遊性と聞いている。したがって、産卵場としては湾際奥部の静かなワンドや潮溜まり等、波静かで潮通しの悪いような場所が考えられる。三重県・鳥羽周辺の釣り場が例年GW頃に悪くなるのは、筏・カセから離れてしまい、ポイントではない産卵場に移動してしまうからかも知れない。
では、三重県南部はどうか?
次に三重県・南部の釣り場を見てみると、中部・鳥羽周辺の地形とは異なり、海岸線はかなりリアス式が複雑になる。五ヶ所湾・アゴ湾あたりを境に、そこから南部ではほぼ3方向が山に囲まれて、外洋が見えない地形となる。水深も中部とは違い、総体的に深めが目立つが、潮流は穏やかなところが多い。実際にはチヌはある程度の規模で外洋からも差し込んではいるのだろうが、鳥羽周辺の釣り場ほどメリハリはなく、いつ乗っ込みが始まり、いつ産卵行動が終わったのかも把握出来ない…というのが正直なところ。私自身もこれまでに何度も経験しているが、1~2月の厳寒期にパンパンに抱卵したチヌを釣ったこともある。同じ三重県でさえ、若干のエリア、地形的な条件が違うだけでチヌの行動に随分と差があるが、乗っ込み期の釣り場選択はそれだけに大変重要!「乗っ込み期イコール開幕!」と、安易に受け取らず、地形的な条件の違い、産卵行動のタイミングの差等々を充分に理解しておきたい。
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