2024/01/25
コラム
和歌山・潮岬沖のフカセキハダ〜和歌山県串本袋港出船〜
3年前の10月。本州最南端、潮岬沖のブリのコマセ釣りにおいてハリス切れが頻発した。その相手を見ようと慎重にやり取りすると、海面に姿を現したのは大きなキハダだった。
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それまで潮岬沖ではキハダが釣れ盛ったことはなかったものの、フカセ釣りでカツオ漁が行われていたため、冷凍イワシをエサにキハダを狙ってみると、狙いどおりに釣れた。
これには地元の船長も漁師も、釣り人も驚いた。キハダは翌2月まで釣れ続き、初夏を迎える5月に再び来遊、ルアーキャスティングで狙ったのち、早い船は8月、取材に訪れた船では9月よりフカセ釣りを始めた。
糸が太くてもキハダが喰ってくることが分かるにつれ、12号から始まったハリスは徐々に太くなり、令和5年現在は24号以上が目安。構造はフロロカーボンハリスをそのまま100m、その下にPE8号を巻く。
キハダのサイズは30~50kgを中心にワタ抜きで98kg、100kgも釣り上げられている。
「昨年はイマイチでしたが、今年はそこそこ釣れています。釣れ続くかぎり、冬もフカセに行きたいですね」
取材は11月末、船長は魚影に手応えを感じているようだった。
釣り場は潮岬が間近に見える場所。協定時刻の6時半に釣りを開始、終了の12時まで5時間半の勝負だ。
「糸を100mまで送り出しながら探っても、50~70m出して止めて待ってもいいそうです」
初挑戦の釣りだけに富所潤さんは船長に質問しつつ釣っていく。風は強く、船は揺れつつ流され、ビーストマスター9000からたぐり出されたフロロカーボンラインはその比重と抵抗で斜めに海中へ伸びていく。
キハダが海面に跳ねることもなければトリヤマができることもない。水深は200m以上、キハダは上層のエサ目がけて不意に突き上げてくる。
「船長によると、時合は8時半と11時半だそうです」
その8時半過ぎ、富所さんのビーストマスター9000から勢いよく糸が引き出された。
慌てず竿をキーパーから外し、緩めのドラグでしっかり走らせて、止まったところで大きくアワセを入れる。
竿は最強クラスのディープソルジャー205Ⅱだが、ドラグを締めて巻き上げるとグイッと曲がり込む。全身を使ってタックルを支えてキハダの重さと引きを受け止めて寄せる。
海面に現れたのは36kgのキハダ。マグロリングを使わずにファイトタイム15分は短い。これはリールと竿の性能もさることながら、フカセ釣りならではの結び目が少なく、フロロラインがクッションの役目を果たす強度による効果もあるだろう。
その強さを再び実感することになるのが、11時半の2本目である。
1本目よりも強烈かつ重量感のある相手に、セカンドランの後にマグロリングを投入、同じく15分ほどで海面に上げたのは堂々の53kgだった。
「釣れるかどうかのチャレンジでしたから、すごくうれしいのはもちろんですが、このサイズは感動ですね!」
初のフカセキハダで50kg級を釣り上げた富所さんは、それこそ子供のように喜んでいる。
それなりの経験と道具が必要ではあるが、潮岬沖のフカセキハダはだれでも夢を描き、比較的高い確率で実現できる身近な大物釣りといえる。
その素朴さとダイナミックさは体験すべき価値がある。
FISHING TACKLE
【取材協力】和歌山県串本袋港・悠真丸
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