2022/10/11
コラム
富山湾のライトアカムツ
港を出てわずか10分、それもゆっくりと走った所で、アカムツが釣れる。これには富所潤さんも驚いた。
日本で初めてアカムツ放流を実現した富山湾の可能性
深海から一気にせり上がる富山湾の湾奥、神通川の河口沖は、陸を目の前にして水深100mを超える。
岩瀬漁港・大将軍丸の本田雅人船長はこまめに、それこそピンポイントで水深120m前後を探っていく。PE1号ならオモリ80号。アカムツ釣りで最も軽い仕掛けは、いわゆるライトゲームロッドでの釣りとなる。仕掛けはホタバリ16号、ミキイト8号、ハリス5号、枝間130cmの胴つき2本バリ。アピールアイテムなど仕様は関東と同じである。釣り方も同様。砂泥底に刺さったオモリを引き抜いて竿いっぱいに誘い上げ、ていねいに下ろす。底スレスレでアタリを待つか、オモリを着底させてゼロテンションで待つか、である。
ただ、明らかに違うのが、ライトならではの軽さと快適さと、圧倒的なアタリの多さ。小さな場所移動のたび、投入直後にアタる。驚くことに、そのほとんどがアカムツなのだ。
「アタればほとんどアカムツって、ここぐらいですよね?」
富所さんが目を丸くする。中層でサバが掛かったほかは、ゲストは船中でウッカリカサゴ、イズカサゴ、アマダイが1尾ずつ釣れたのみである。
「投入してすぐにアタリがきて、掛からないとエサを取られています。これ、アカムツですよね?」
フォースマスター200で巻き上げてはテンポよく再投入する富所さん。想像以上にアカムツにエサを取られることも驚きだ。
「アタリはほとんどベタ底です。ゼロテンションも釣れますが、オモリを離しても釣れます」
難しい誘いも、タナ取りも、仕掛けをアレンジする必要もなくアカムツが釣れてくる。アタリは明確に竿先に出る。そしてアカムツならではの強い引きを堪能した後、海面下に赤い魚体が踊る。これが夜明けから沖揚がりの11時まで続くのだから、面白くないわけがない。
好調の理由を船長に聞けば、ポイント選定のほか、ここ数年は放流の成果もあるのではないかと言う。その言葉どおり、富山県農林水産総合技術センター水産研究所では平成23年よりアカムツの種苗生産技術の研究に取り組み、日本で初めてアカムツの人工種苗生産技術を確立、平成27年度から令和3年度までの7年間で計18万尾以上の放流に成功している。アカムツ放流が昨今の富山湾の好況に影響しているか確証はないものの、船長の持つ印象と放流時期の一致は注目すべきだろう。釣り場が近く、浅く、釣果が安定していてポイントが無数にある。そして日本で唯一、放流が行われている。近い将来、富山湾がアカムツ王国になる可能性は高い。
【エサの付け方考】
【ゼロテンションで待つ】
FISHING TACKLE
【取材協力】富山県岩瀬港・大将軍丸
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