2022/06/30
コラム
四国松山・瀬戸内海 リアクションで釣る一つテンヤ
ここ数年、西日本で一つテンヤ人気が高まっている。中でも瀬戸内海発祥の「リアクション」の釣りは、急速に広まる原動力にもなっている。
瀬戸内海のリアクション釣法は、どういったものなのか。今回の富所潤さんの目的は、現地で教わることだった。
瀬戸内海のリアクション釣法
4月中旬、松山沖の水深40m台。だんだん丸の片山尚志船長はスパンカーを立て、エンジンをこまめに使い、島々の間の斜面に沿って細心の注意を払いつつ船を流していく。
富所さんが選んだテンヤは8号。活エビを付けて落とし、底ダチを取る。船の流れる速度は0.8ノット。ミチイトは小刻みに方向を変えつつも、ほとんど立っている。
ここからが「リアクション」の誘い。
富所さんは海面に向けた竿先を、キュッと一段、またはキュキュッと二段、鋭く、大きくシャクり、垂直近くに上げたのち、ゆっくり下ろしていく。
テンヤが底に着いたら一呼吸置いて、再び鋭く、大きくシャクる。
海底はほとんど根掛かりしない。船内ではホゴ(カサゴ)が上がり、しばらくすると1kg弱の真鯛が釣れ始める。
だが、富所さんにはアタリがこない。これは何かが違うかもしれないと船長に釣り方を聞いてみる。
すると、明らかにシャクリの大きさが違った。
当地でのいわゆるリアクション釣法の誘いは、海面に向けた竿先を水平やや下まで、小さく、鋭く、1回シャクるだけで、すみやかにフォールさせる。そして着底したら、待たずに再びシャクってフォール、の繰り返しだ。
「前もって勉強してきたリアクション釣法と印象が違いました。エビが海底から跳ね上がり、海底に降りる様子を演出するのは同じなのでしょうが、海底付近の狭い範囲で、小刻みに行うのは現場に来て知りました」
毎回大きく跳ね上げてしまうと真鯛が興味を示さないのか、あるいは、エビが跳ねる動作をできるだけ正確に多く繰り返すには「小さく鋭く早い」ほうが効率的なのか。色いろと考察する富所さん。
「船長も言っていましたが、竿を常に下向きに構えることでアワセが効くうえ、穂先への糸ガラミなどトラブルも少ないといった合理的な理由もあります。やはり所変われば……ですね」
真鯛釣りの本質は謎多く奥が深く楽しい
小刻みなシャクリの繰り返しの中で、時折、アクセントとして竿を高く上げ、大きくフォールさせる富所さん。 すると、その瞬間、力強いアタリが出た。
シャクリではハリの強い竿という印象だった「エンゲツXR 一つテンヤマダイ 235MH+」がしなやかに胴まで曲がり、竿の動きに呼応して「ステラC3000XG」がドラグを滑らせる。
魚と道具の感触をたっぷり楽しんで海面下に浮かせたのは、美しい、真っ赤な真鯛だった。
「松山で初めて釣り上げた真鯛、いやあ、うれしいです。リアクションの誘いに反応していた真鯛が、リフト&フォールの、イレギュラーな動きに反応した、そんな印象ですね」
次のアタリは船長に教わったリアクション=小刻みな誘いで出た。大鯛かと思わせた重厚な突っ走りは、大きなコブダイ(カンダイ)だった。
その後も海底近くを小刻みにシャクるリアクション釣法でアタリが続く。そして水深50mを流しているとき、今日一番の引き込みが訪れる。
竿が絞り込まれ、ドラグを滑らせ、浮かせた分だけ巻き取っていく。ゆっくり、じっくりと会話するように浮かせた真鯛は、乗っ込みを前にやや黒ずみ始めた2kg級であった。
「松山の真鯛は5〜6月がいい時期と聞いていたので、苦戦を覚悟していました。そのなかで船長に色いろと教わりながら本命を手にできたことは、本当に素晴らしい体験です」
感無量の富所さんだが、実はこの真鯛、リアクションの誘いの後に「巻き」を入れたところ、海底から5m上で喰ってきた。
もしかしたら、郷に入っては郷に従いつつも、常に一工夫せずにいられない富所さんだからこそ釣れた真鯛かもしれない。
流行の技あれど、真鯛釣りの本質は謎多く奥が深く楽しい。リアクション釣法は、その入り口の一つである。
リアクションの誘い
FISHING TACKLE
ROD
エンゲツXR 一つテンヤマダイ 235MH+
全長 2.35m
継数 2本
仕舞寸法 120.6cm
自重 105g
オモリ負荷 2~18号
REEL
ステラC3000XG
ギア比 6.4
最大ドラグ力 9.0kg
自重 210g
糸巻量PE[タナトル8] 1.0号400m
1.5号270m
2.0号 200m
ハンドル長 55mm
【取材協力】伊予市郡中港・だんだん丸
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