2023/12/07
コラム
支流の水源まで登るからわかること。正者勇人が「トラウトワンNS」の4ピースモデルを駆使して晩秋のシビアなトラウトを攻略する。
支流にある水源。つまり川の始まり。この場所を求めて険しく果てしないかのように思える道のりを、川を登りながら釣りをして楽しんでいるというのが、シマノモニターの正者勇人だ。この源流部の釣りは、上へ登っていくほど、川の幅が狭くなるだけでなく水量も少なくなりがち。一見すると魚の姿も見えなくなりそうであるが、それでも登り続けることで思わぬ所でいい魚と出会えたり、いつも新しい発見があるという。ここでは、そんな正者勇人が晩秋の源流部で釣行する様子をご紹介したい。この釣りは体力と根気も必要なスタイル。さらにシビアな状況の中でヒットに持ち込むその姿は、多くのアングラーにとって参考になるはずだ。
晩秋の源流部へ。産卵を意識したシビアなトラウトをどう攻略するか。
シマノのモニターである正者さんは岐阜県在住のトラウティスト。釣行したのは9月の中旬に差し掛かったタイミングで、朝晩にははっきりと涼しさを感じられるような時期であった。こうして秋らしさを感じられるようになると、川の魚たちも次第に秋の動きを見せ始める。トラウトに関して言えば、産卵を意識し始める時期で、ルアーへの反応もシビアになる季節。つまりショートバイトが増えるため、ヒットに持ち込むことが難しく、鈎掛かりも浅く、バラしも多くなりがちだ。そんなタイミングで正者さんが釣り場として選んだのは、長良川に面する支流。幅の狭い峠道を車で走りながら、朝日が昇り始める頃に釣り場に到着した。
携行性の高い4ピースモデルで入渓流時も安全。特性の異なる2つのモデルを使い分ける。
そして、今回の正者さんが使用するタックルは新しくなった「トラウトワンNS」の4ピースモデル。そのうちラインナップにある「S47UL-4」と「S48UL-G/4」の2種類を使い分けながら釣行していく。「入渓時に両手が自由に動かせるので、4ピースは便利で安全性も高いです」と正者さん。特に「S48UL-G/4」はグラスコンポジットのタイプになっており、しなやかなブランクス設計が特徴だ。「どんな使い心地なのかとても興味深いです」とその言葉から、楽しみな様子が伝わってきた。こうして草木をかき分けてポイントに入ったら、いざ実釣開始。まずは正者さんが強い関心を持っている「S48UL-G/4」の使い心地を確かめていくことにした。
トゥイッチのレパートリーはいくつある?引き出しの多さが貴重な1匹につながる。
使用したルアーはカーディフ「リフレイン50HS」。正者さんはフリップキャストを中心にテンポよくキャストを繰り返していく。「ロッドがしなやかなのでリリースポイントがつかみやすいですね」と「S48UL-G/4」の使い心地に好印象を抱いている様子だった。こうして釣り場をサーチしながら川を登っていくと、すぐに川幅が狭くなってくる。また浅い場所も多くなり、トラウトへのアプローチにより繊細さが求められるような状況になってきた。さらに時折反応してくるトラウトの様子を見ていると、ルアーには興味を示すけれど、簡単にバイトしてくれないという状況。その後もキャストすると2度3度と追っては来るけれど、やはり口を使ってくれないというシビアな展開となった。そんな状況に正者さんは「1投ごとに、トゥイッチのパターンを変えながら誘ってみます」とのことで、リズムやテンポに工夫を交えながらトラウトの反応を確かめていくことにした。それは、ティップ部分を用いて小刻みにトゥイッチを繰り返して激しめにアクションさせたり、 トゥイッチを入れる間隔を長めにとって喰わせの間を長くしたりと、トラウトが口を使いたくなるアクションを探している様子。このような工夫は「S48UL-G/4」というタイプの得意分野でもある。「このときのレパートリーの多さがシビアな状況のときほど釣果に影響しますね」と正者さん。厳しい時でも釣果に繋げられるよう、普段からいろんなアクションを試していると教えてくれた。そして狙い通りにトラウトがヒット。それは良型のイワナで、小気味良い引きで楽しませてくれた。「ロッドがよくしなるので、魚とのファイトがより楽しめる印象でした」とロッドの使い心地について教えてくれた。
水源を求めて川を登る理由。その活力は底しれない探究心が原動力。
そんな正者さんが、今回のような源流釣りを本格的に楽しむようになったのは、この釣行日(2023年9月下旬)から2〜3ヶ月前であるとのこと。もともと中流域のような川幅の広いところでサツキマスを狙うことが多かったという正者さん。「まさか自分が水源を求めて川を登るようになるとは思わなかったです」とのことだった。では、その活力はいったいどこから来るのかと言うと、それはやはり、魚について知りたいという強い思いが原動力になっているという。この川ではどこまで魚が登っていけるのか、他の支流とはどんなところが違うのか、そのようなことを細かく確かめておきたいという探究心が、思わずそうさせると教えてくれた。そして「登っていくと滝が目の前に現れることが多いです。そこも登ってみるのですが、魚が忽然といなくなることがあります。さすがにこの滝は魚が登れないんだな、ということも先日のプライベートの釣行で発見できたことでした」とまだまだ知らないことだらけだと正者さんが語ってくれた。
釣り場からは想像できない良型アマゴが登場。源流部はいつも新しい発見に溢れている。
こうしてトゥイッチに工夫を入れながら「S48UL-G/4」のモデルで一通りトラウトをキャッチした正者さん。今度はロッドを「S47UL-4」のモデルに変えて釣行を再開。こちらはカーボン特有のシャープさが特徴。ルアーをキビキビとアクションさせたい方には特に使いやすい設計だ。「シマノの調子設計に慣れている方には、こちらの方が慣れ親しんだ感覚があると思います」と正者さんが違いについて教えてくれた。こうしてロッドの違いを確かめながら釣り進んでいく正者さんだが、あるポイントで足が止まった。「いいサイズのアマゴが反応してきましたよ。これは喰わせたいな」とひときわ慎重になる正者さん。ここでもトゥイッチに違いを持たせて探ると、チョンとルアーのテールをついばむような瞬間を目にすることができた。そこですかさずアワセを入れる正者さん。その直後に大きく「トラウトワンNS S47UL-4」が弧を描いた。強引にならないよう落ち着いて魚をいなしたら、丁寧に足元に寄せてネットイン。狙い通りに立派なアマゴをキャッチできた。「今度は強めにトゥイッチを入れて、ダート気味にルアーを動かしてみました」とのこと。工夫を凝らして喰わせた実力も見事であるが、まだまだ底しれない実力を秘めている様子の正者さんであった。
秋らしいトラウトの動きを実感した釣行。積み重ねを繰り返してどんなときでも釣果を出せるアングラーを目指したい。
そして今回は時間が来た所で脱渓するため引き返すことに。水源までは足を運べなかったが、釣果も十分で、シビアな状況ながらとても楽しめた結果であった。また「今回はアマゴとイワナの釣れる位置がはっきりわかれていましたね」とのことで、日を追うごとに深まる秋の気配を確かめられた様子。「禁漁となる前にもう一度足を運びたいです」と、その探究心はとどまることを知らない正者さんであった。今回、朝からお昼すぎまで釣行して9時間ほど歩き続けた釣行であった。それでも水源を目指すとなると、やはりそれなりの根気が必要である。正者さんいわく「体力もあって、足腰が元気なうちにいろんな釣り場を確かめておきたいです」とのこと。渓流は10月になると多くの釣り場が禁漁となる。年が明けて再び解禁となれば、さっそく源流部でいろんな調査を試みていることだろう。そんな解禁後ならではの源流部での釣行についても、正者さんの考えを聞いてみたいものだ。
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