2024/12/27
コラム
25SSフラッグシップウェーダー奮闘記⑤PROウェーダーから始動する、新たな試み
アパレル担当のエドワードです。
私、7月からお届けしている、フラッグシップウェーダー・ウェーディングシューズ(通称:PROウェーダー・ウェーディングシューズ)の開発奮闘記を担当しています。PROシリーズですが、1月の正式な情報公開に向けて、着々と準備は整ってきております。Webサイトや動画など、これまでのウェーダー以上に力を入れていますので、皆様の反応が楽しみな今日この頃です!
さて、開発奮闘記も、第5回となりました。
過去4記事は下記になります。
25SSフラッグシップウェーダー奮闘記① アングラーにとって“至高の”ウェーダー、ウェーディングシューズとは
25SSフラッグシップウェーダー奮闘記② 生地の選定
25SSフラッグシップウェーダー奮闘記③ ソックスについての考え
25SSフラッグシップウェーダー奮闘記④ 製品の快適性
今回の記事のトピックは主に2点。ウェーダーのパターン、アフターサービスについて重点的にお話しいたします。アフターサービスも新たな試みを始めますので、是非ご一読を!
こだわりのパターン
近年のウェーダーは、スリムシルエットで足を綺麗に見せるスタイルがトレンドです。そのトレンドに倣い、PROウェーダーも、はじめ立体的なシルエットを出そうとパターン設計をしました。
具体的には、生地同士の接合部を内股側に持ってきて、更に股関節周りにマチを設けるパターンです。そうすることにより、体にフィットしやすく、接合部が見えづらいために、シンプルでスリムなシルエット設計が可能になります。
特に太もも、ヒップ周りがスッキリ見え、立ち姿が非常にスマートな印象を与えます。
しかし、このパターンにすると、どうしてもウェーダーが長持ちしません。長期間使用すると、内股部分が擦れて、穴が開いてくるのです。
PROシリーズの開発に協力いただいたガイドさんに、内股に生地の接合を持ってきているウェーダーサンプルを1年間履きつぶしていただいた結果が驚愕でした。下の画像をご覧ください。
内股のマチ部分が擦れ続けることで摩擦熱が発生し、タバコを押し当てたような穴がたくさん空いていました。 パッチを何度も貼りカバーしようとするのですが、次から次へと穴が出現する、悲惨な状況でした。
この現状を目の当たりにし、私たちは基本に立ち返りました。今回のPROウェーダーを開発するにあたって、一番大事にしていたキーワード。
それは「耐久性」。
スリムさやシルエットを追求することで、この耐久性が犠牲になっては元も子もありません。
着用時、擦れの多い内股部分。ここには接合部を持ってこないことを第一前提に、パターンを組みなおしました。下がその前提をもとに完成した、パターン図になります。
シルエットは犠牲になります。ただ、この生地の特徴はストレッチ。伸びをもった生地のおかげで、ある程度スリムに、ダボっと見えないパターンで設計しました。
また、縦の接合部(青矢印で示した線)が、若干ながら膝の外側に逃げるようにもってきました。足を上げて石などを乗り越える際に、がに股になると思います。その際にストレスなく、ウェーダーが追従する設計です。また、膝をついたときに、弱点となる接合部が少しだけ地面から逃げるようにしています。
縫製+シームテープもしっかり。
どこに接合部を持ってくるかにこだわることで、耐久性をUPさせたことを前章ではお話ししました。加えてもちろん、接合部自体もこだわっています。
まずは糸と縫い方。
ここまでのウェーダーの話で理解されているかと思いますが、ウェーダーは「出っ張り」が悪さをします。縫製も同じです。
上の写真、糸が白くなってほつれているのがわかるでしょうか?ずっと擦れ続けることで、糸にダメージがきているとこうなります。
ですので、糸はしっかり高強度なものを選びました。耐摩耗が強くほつれたり、切れたりし辛い縫い糸になります。
そして縫い方にもしっかり工夫を加えました。表面に見える糸、高強度とはいえども、表面に出ていることでダメージを受け続け、ほつれることで浸水につながりかねません。ですので、表側の縫製(下の図の縫製①)に加え、見えていない、生地同士の折り返して重なっている部分(下の図の縫製②)にも、縫いを入れる工夫をしています。
左が通常のモデル、右がPROウェーダーの構造です。
そして、縫い方を工夫したうえで重視しなくてはならないのが、シームテープ。
ウェーダーは、内側にシームテープを貼ることで、防水の構造になっています。
図にすると、このような感じです。
ただし、シームテープは経年と共に剥がれてくるもの。防水ウェアの宿命ともいえます。
ですので、PROウェーダーは、まずシームテープがしっかりくっつく条件を、様々な検証を重ねて実現させました。
その上で、幅の異なるシームテープを2枚重ね付けすることにしました。
緑色で図示したシームテープの上から、青色出図示したシームテープの二重張りで、物理的に「強い」構造を作り出したのです。具体的には、20㎜のシームテープの上から、28㎜のシームテープを貼っています。
これにより、耐久性、防水性を飛躍的に向上させることに成功しました。(実はこの構造、DS+4ウェーダーシリーズでも採用しています!)
モノづくり、目に見えないところに魂が詰まっています。一つ一つ、「耐久性」を最重視して作ったことで、様々な取り組みを進めることができました。
アフターサービスに誠意を
それでも、ウェーダーにはピンホールや突き刺しなどの穴あきや、生地擦れによる破れ、パーツの破損など、トラブルが起こってしまいます。
愛用するウェーダー、できる限りリペアをして、永く使いたいですよね。かくいう私も、特に釣具に関して、それぞれに自分と歩んできたストーリーが刻まれている気がして、新しいものが出ても古いほうを使い続けてしまうことがあります。
ですので、しっかりと、ユーザー様の希望に添えるよう、一から修理体制を見直しました。
まずは、シマノのウェーダー修理の強みと弱みを整理します。
強みは、丁寧なサービスだと考えています。釣具屋さんやシマノのカスタマーセンターから預けて頂いたウェーダーは、国内の専用修理工場にて、一つ一つ丁寧にベテランのスタッフが修理をしています。修理工程を見せていただいたことがありますが、その丁寧な手作業に驚きました。修理前の水漏れ検査はもちろん、修理後も再度検査をして、万全の対象で返却をしています。(その分時間もかかってしまうのが正直なところですが、丁寧な修理を優先しています。)
弱みもあります。それは、修理サービス範囲。ここまでのシマノのウェーダーですが、ブーツ(ソックス)やファスナーなどが交換不可なモデルがありました。修理に出していただいても、修理不可で返却してしまう、ということが存在していたのが事実です。
そこで、PROウェーダーですが、修理の範囲を広げました。修理を考慮しながらパターンを組み立てたことにより、ファブリック部分やソックスなど、トラブルに応じて修理可能な設計になっています。実はこれが難しく、ソックス交換が出来ないモデルも世の中には存在します。ウェーダーを選ぶ際に、リペアや修理のことも考えて選ぶことも、大切な要素なんです。
また、ファスナーやベルトなどのパーツも豊富に準備しています。下記が現在手配しているパーツになります。(発売時と異なる場合がございます)
バックルが割れてしまった、ファスナーを破損させてしまった、などの不意の事故に対してもしっかり修理します。
「PRO」のためのアフターサービス
また、エキスパートに向けて、さらなる修理のサービスを準備しています。
それが、
「購入から2年間、ピンホールを無償修理する」
というもの。なんと、使用のうえで空いてしまった穴も、期間内であれば何度でも修理を承ります。シマノとして初めて行いますし、かなりチャレンジングな内容です。
まずは、ピンホールの定義から。「茨や釣り針などで空いてしまった穴を指し、直径2mm以下の貫通穴を含む穴」と定めています。
過酷な環境下で使用するエキスパートたち。どんなに注意しながら使用しても、ピンホールは避けられないことが実情です。特に足回り。藪漕ぎ中にはバラやタラ、ツタなど、進路を遮る草木が多い茂っていますよね。
そんなピンホールの修理ですが、通常であれば一回出すたびに3,300円~の修理費用が掛かってきます。何か所穴が開いているかによって修理代金は変わってくる仕組みで、一か所目が3,300円~ 2か所目以降で1,650円~ 追加工賃が必要です。
本来であればそれだけかかってしまう修理代金を頂くことなく、購入から2年間、何度でも承ります。
ただ、条件も設定しています。
・多数のピンホールが集中している場合
・生地自体に劣化が認められる場合
このような場合ですと、「穴を埋める」という修理ではなく、「生地自体を取り換える」という対応しかできなくなってしまうため、ピンホールが発生してしまった場合、なるべく早く修理に出してください。また、購入証明となる保証書とレシートは必ず保管しておいてくださいね!
ウェーダーを着用する人ほど、そして過酷なフィールドに向かう人ほど、ピンホールが開いてしまう可能性が高いですよね。そのようなエキスパートたちのために、プレミアムなアフターサービスになるのでは、と考えています。
あると嬉しい、ソックスサイズ変更サービス
まず、製品として展開するサイズ設定のお話から。当製品ですが、Sから2XLまで、8ラインナップがあります。ウェスト/脚回りは S,M,L,XL,2XLと、5サイズ設定しており、()内がソックスのサイズを表しています。例えば、【S】はウェスト/脚回りはSサイズ、足サイズもSサイズ(24-25㎝)です。【S(M)】はウェスト/脚回りはSサイズで、足サイズがMサイズ(25-26㎝)になります。
しかし、、
フィッシングショーなどで、小柄な女性や、大柄な男性から悩みを相談していただくことが多々あります。それが、「自分の足サイズに合わずに困っている」ということ。
「ウェアの中で、足のサイズ感が一番重要。ですが自分のサイズがなく困っている。」「奥様と釣りに行きたいが、女性用のぴったりサイズがない。」などなど、悩みは様々です。
ウェーダーは、足と身長、両方のサイズ感がマッチしないと「信頼できる」製品にはなり得ません。ですので、お客様にとって、しっかりと自分の体形にフィットして着用することができるよう、「ソックス修理交換サービス」をPROウェーダーでは対応します。元々のスペックにはない、【23-24㎝】や【29-30㎝】のソックスサイズを追加し、ウェスト/脚回りと、足のサイズ感で、ユーザー様一人ひとりがフィットするウェーダーを履けるように、修理にて対応します。
下記で、白抜き文字のものが、ソックス別注対応できるサイズになります。(変更修理は、現在1万円程度を検討しています。)
より選択肢が広がったことで、足のサイズにしっかりと合ったものを履けるようになり、安心して着用できるようになりますよね。これも、PROウェーダーだからこそ対応する、新たなサービスです。(フィッシングショーで奥様のサイズがないと相談していただいたお客様、是非おそろいのウェーダーを着用してくださいね!)
PROユースを突き詰めたサービス
ウェーダーのアフターサービス、いかがでしたでしょうか。
フラッグシップゆえに、私たちは様々なアングラー様や、お店様に相談をさせていただき、新たな試みを考えています。ご購入後も満足していただくことで、さらにシマノを好きになっていただけたら嬉しいです。そんな想いを込めたウェーダーです。
発売まで2か月。開発奮闘記として、PROウェーダーの記事は今回が最後になります。
まだお話ししきれていない情報があった場合、またどこかで記事を投入します。
次回は、PROウェーディングシューズについて。この製品も自信作ですよ。お楽しみに!!
タックル&装備
【Photo】
カメラ:α7Ⅲ(SONY)/iPhone15pro MAX(Apple)
レンズ:GM24㎜F1.4 (SONY)
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