JOURNAL
夏季解禁の姫鱒(ヒメマス)釣り

こんにちは。シマノフィールドテスターの佐藤文紀です。
6月の声を聞けば、本格的な夏の訪れを感じさせる気温となるが高緯度ゆえに冷涼な空気に包まれて、
待望の「6月1日」の解禁を迎えるのが北海道洞爺湖に代表される湖のトラウトフィッシング夏季解禁である。
ヒメマス釣りの世界
日本に生息するサケマス類のうち随一の味覚とも称されるヒメマスはベニザケの陸封型であり、ミニチュア版“ベニザケ”といった魚。
サケだけにヒメマスもまた各漁協での増殖が古来より盛んにおこなわれており、北海道から本州にかけて遊漁者向けにいくつかの湖で狙って楽しむことができる。
サケとマスの呼び名の違いがややこしいが、ベニザケの陸封形態をヒメマスと呼称するが魚の種類としてはこの2つは同一種である。

サクラマスを例にするとわかりやすいが一般的に降海遡上型のサケマスは川と海を行き来する生活史を送り、ベニザケは海と川の間に湖がないと天然繁殖が難しい魚であり、海と川がそのままストレートにつながっているだけでは自然繁殖が難しいとされている。
これはベニザケならでは、の習性であり、日本の国土ではそのような地形を有する地域がないに等しいため日本では天然資源のベニザケは古来よりほとんど漁獲されず、ヒメマスという形で人々の生活に馴染んできた。
ベニザケの分布密度の濃い地域はカナダ・アラスカ・ロシアなどではあるが日本では古くから北海道で脈々と湖内に陸封された一部個体が存在していることが知られていて、それらがのちに人の手によって増殖され日本の各地の湖に稚魚放流されることで栄えてきたのが我が国におけるヒメマスの歴史。
私達、釣り愛好家も先人たちのその恩恵を享受してヒメマスに親しんでいる。

現在、釣り客に人気があるのは多点掛けでヒメマスの数が狙えるサビキ仕掛けのトローリングによるボート釣りだが、ここでは岸から釣るトラウトフィッシングの観点からヒメマス釣りの世界に少し迫ってみたい。
ところで、一般的にトラウトのルアーフィッシングはフィッシュイーターであるターゲット(トラウト)を狙うわけであるが、ヒメマス釣りが別の意味で難しいと感じさせてくれる点はフィッシュイーターというよりもプランクトンイーターであるため、であろう。
ヒメマスは湖内を広く回遊しておりその際、水中に浮遊する各種プランクトンをエラで濾し取って捕食する習性があるため、ヒメマスはおろか、ベニザケになってもこの性質は変わらずルアーで釣るのが難しい所以だ。
極論すれば典型的なフィッシュイーターではないため、積極的にルアーを追ってくる性質のターゲットではない。

私自身、海外釣行ロケでは最北の地としてがアラスカを訪れたことがあるのだがその時はたくさんの70cm前後の真っ赤なベニザケの魚影が河川内に遡上している姿を目視し感銘を覚えたが、そこで釣りをしている人たちの様子を小一時間見学していたことがあるのだが、結局、誰の竿も曲がることはなかった。
そもそも河川内に遡上するとサケマスは食性を失いつつあるからルアーへの反応は悪くなる一方。
更に、元々がプランクトンイーターであるベニザケ相手にルアーフィッシングではどうしても釣りづらいというのもあるのだろう。
ベニザケよろしくヒメマスも同様なのだが、日本ではヒメマスの生息する湖にはたいがいワカサギもセットで増殖・放流されており日本独自のヒメマスレイクの習性として日本の湖に生息するヒメマスの場合には成長の過程でワカサギを捕食するヒメマスも一定数出現することで、ルアーにも反応しやすいヒメマスがいることで我々ルアーアングラーも楽しめるようになっている現状がある。
ワカサギもまた、日本固有の魚であることもここで付け加えておきたい。

6月は北海道洞爺湖や青森県と秋田県にまたがる十和田湖でヒメマス釣りが夏季解禁を迎える。
昨2025年6月はBS-TBS「釣り百景」ロケで6月の洞爺湖夏季解禁を訪れており、同湖でのヒメマス釣りを楽しんだ。
釣りの内容はこちらをご覧ください。
夏季は、おおむね深場の中層を群れで回遊しやすいヒメマスだから岸寄りの浅場に密度が濃い状態とはいえないが定期的に回遊してくるヒメマスの群れとルアーが鉢合わせした瞬間こそが岸釣りからもチャンスが到来する。
季節に応じてトラウトの種類によって狙いやすい時期があるが、洞爺湖では夏は主にヒメマス、冬~早春にかけてはサクラマス・ニジマスが狙い目の湖。
2024年夏季シーズンの洞爺湖ではヒメマスの他に、6月にボート釣りで82cmのサクラマス、8月には岸釣りで83cmのニジマスが釣りあげられ大いに話題となった。
サクラマスにしても、ニジマスにしても、80cmオーバーはまさに“一生もの”と言っても過言ではない大物。
ワカサギを飽食することで巨大化するサクラマス・ニジマスだから、同じくワカサギを捕食するようになるヒメマスは同湖では国内では異例の最大50cmオーバーも釣りあげられている。
ヒメマスから学ぶベニザケの生活史。
天然のベニザケは川・湖沼・海との調和こそがその根底にある。そんな可憐なサケマスとの出会いを求めて、貴方も6月のヒメマスの湖へお出かけになってみてはいかがだろうか。
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