2025/01/10
コラム
25SS ウェーディングシューズ奮闘記_PROのためのウェーディングシューズとは【ジオロック/BOAシステム編】
アパレル担当のエドワードです。
今回は25年1月発売になる「ジオロックウェーディングシューズPRO」(通称:PROウェーディングシューズ)についての記事になります。ありがたいことに、PROウェーダーの記事はたくさんの方に読んでいただき、様々な方から「欲しい!」という声を頂いています。
今回のウェーディングシューズの記事でも、皆様に魅力的に思っていただけるよう、思いを込めて文章に起こします。PROウェーディングシューズは2回の記事にてお話しをします。今回はその第一弾として、「PROのためのウェーディングシューズとは-ジオロック/BOAシステム編-」というお題で解説をします。
製品スペックとPR
さっそくPRになってしまいます。すみません。まず、製品はすでにホームページ、鮎/渓流カタログで公開になっています。宣伝担当のいしどじょう氏をはじめとしたプロジェクトのメンバーたちと、期限間近(公開前日の夜)まであーでもないこーでもない言いながら、ギリギリに完成した製品サイトです。
●ジオロック ウェーディングシューズPRO カットフェルト[FS-240Y]
●ジオロック ウェーディングシューズPRO カットピンフェルト[FS-241Y]
そして、ここまで5回の記事でお届けしてきた、PROウェーダーもついに公開されました。
●DSストレッチウェーダーPRO Z ソックス[FF-062Y]
PROシリーズですが、ユーザー様にとって大きなお買い物になることも認識していますので、しっかりと製品情報をお伝えすべく、Webページ、YouTube、SNS、雑誌社様など様々な媒体で、様々な方法でコンテンツを充実させており、今後も五月雨式に投入いたします。
早速、Instagramのリールには、めちゃくちゃに拘って作ったショート動画が上がっています。
私たちが、PROシリーズを起草している時から「こんな人に使用していただきたい」とイメージしていたアングラーの方々にお声がけをし、実際に長時間使用していただいた感想をいただき、撮影したものです。
製品の企画者として、ターゲットにしていた方に実際使っていただき、それをコンテンツとして収められる、という夢のような経験をさせていただきました。今後、誰が出演するか、ぜひ楽しみにお待ちください!
「ジオロック」とは?
まずは、製品名の頭についている「ジオロック」についての解説からです。「やっとジオロック搭載のウェーディングシューズが出た」と喜ぶアングラーもいらっしゃる方もいるかもしれません。ジオロックについてご存知の方は、次のチャプターからお読みください。
一言でいうとジオロックとは、「ソールを自分で簡単に変えられる」システム。
実はこの「ジオロック」、特に鮎釣りや磯釣りをするアングラーにはとても認知度の高い、シマノ独自の技術です。釣りで専用シューズを履く意味、一番は「滑らない」ことではないでしょうか。
トラウトの釣りで多く使われるのは、フェルト系のソールかと思います。
しかし、フェルトの欠点は、摩耗が早いこと。細かいフェルトの素材が膨潤することで、つるっとして濡れた石などの地形で特にしっかりと踏ん張ることはできますが、その過程でソールはどんどんと摩耗をしていきます。
また、カットピンフェルトに含まれているステンレスのスパイクピンも、同じく削られながら摩耗し続けます。体感ですが、フェルト系のソールは使い始めて2日目くらいが、一番グリップが効きます。
フェルトが膨潤により若干の柔らかみを持つようになり、ステンレスピンのエッジが立っている、この状態が一番踏ん張れます。これが続けばよいのですが、残念ながらそうはいきません。
理想のグリップ力を発揮させながら釣りをするために、ソール貼り替え修理を高頻度で行うのがベストです。しかし、シーズン中に修理出しを何度も行うのは、コスト的にも、時間的にもなかなか厳しいものがありますよね。
シマノも、フェルト直貼り系のシューズは貼り替え修理を承っていますが、お預かりから返却まで、早くても2週間程度は頂いています。
ですので、基本はシーズンオフに修理に出し、メーカー修理でソール貼り替えを行うことが多いですよね。釣行頻度の多いアングラーは複数持ちで、シーズン中でも入れ替えつつ貼り替えを行うこともあるかもしれません。
しかし、ジオロックシステムであれば、自身のタイミングで、簡単に貼り替えを行うことができます。
↑の動画を見ていただくのが一番わかりやすいです。準備するのは、製品として購入できる替えソールと、マイナスドライバーのみ。ベルクロ(面ファスナー)でソールが貼られているため、それを剥がし、新しいソールを張り替えればOKです。5分もかからずにその作業は出来るので、とても楽です。
修理に出した場合の金額と、ジオロックソール単体での金額は以下の通りです。
①修理に出していただいた場合の修理金額
②ジオロックソールの一例
もちろん、ソールの貼り付けの力も強力です。いざマイナスドライバーを使い作業するとわかりますが、かなり強い力を使わないとソールは剥がれません。ですので、ご使用中に剥がれることは、(ご使用方法さえ守っていただければ)ありません。
ここまで、ジオロックのメリットを、「摩耗したタイミングで、コスパよくスピーディーにソールを交換できる」とお伝えしました。それに加えて、もう1つ大きなメリットがあります。
それは、「フィールドに応じて、ソールを適宜付け替え可能」ということです。ジオロックソールには、様々な種類のソールが展開されています。
こちらがジオロックソールの一覧表になります。ジオロックソールは、ソールの形によって現在は3タイプに分かれており、今回のシューズは「タイプA」になります。
タイプAには、現在、カットフェルト、カットピンフェルト、羊毛フェルト、羊毛ピンフェルト、カットラバーピンフェルト、ラジアルの6種類が展開しており、前者4つは渓流シーンにぴったりなものになっています。
上記の説明文の通り、それぞれ得意、不得意な地形があります。つるっとした石の多い場所ではフェルト系の素材、ごつごつしていたり、ぬるっとしたアカのある場所ではピンフェルト系の素材が優れているといえます。
そして、「羊毛フェルト」というソールがシマノにはあるのをご存知でしたでしょうか?名前の通り、羊の天然繊維を使用したソールで、耐滑性が非常に高いソールです。
鮎釣り師にはとても認知度の高いソールで、とにかくグリップがしっかりと効き、踏ん張れることが特徴です。私も夏になると鮎をやりますが、急流の中で胸近くまで立ちこみ、苔の多い石の上で踏ん張るような状態で、このソールへの信頼はとても高いものがあります。
羊毛フェルトのメリットばかり述べてきましたが、デメリットもあります。それは「価格の高さ」、「ケアの難しさ」、「摩耗の早さ」。天然の繊維のため、川の水を含んだままだとバクテリアが繁殖してしまうことがあります。
ですので、しっかりと水洗いをし、素早い陰干しをする必要があります。また、しっかりとグリップする分、摩耗は早く、買い替えのコストがかかってきます。
しかしこれらを凌駕してしまうほど、一度使ったら離れられない素材、それが羊毛フェルトになります。たしかに、自身の安全に投資していると思えれば、納得できる買い物ですよね。
※商品リンクは下記になります。
ジオロック 羊毛フェルトキット A[KT-660Y] 11,200円 (税別)
ジオロック 羊毛ピンフェルトキット A[KT-661Y] 12,200円 (税別)
私は、エントリーまで時間のかかる源流域は通常のフェルト系ソール、本流や湖で立ちこみ中心になる場合は羊毛、のようなの使い分けをしています。
このように、ジオロックであれば、一足で様々な環境での釣りを可能にしてしまうのです。北海道に釣りに行った際、朝と夕のマズメ時は磯から海サクラ狙い、昼は渓流でレインボー狙い、というプランを組みましたが、磯では「カットラバーピンフェルト」を使用し、本流エントリー前に「羊毛フェルト」に変更する、というような、一日でもソールのローテーションをすることができ、とても楽だったのを覚えています。
遠征のような荷物の限られるタイミングや、様々なフィールドで釣りをするアングラーには、ぜひ知っていただきたい、シマノオリジナルの機能になります。当シューズも、渓流シーンだけでなく、ソルトでも様々なシーンでテストしていますので、マルチな釣りをされる方も安心してお選びしていただけますよ。
最強のBOAシステム
今回のシューズには、BOAのワイヤーレースでの締め込み構造を採用しています。BOAシステムを使用することにより、紐を結ぶ時間を短縮できる、紐がほどける心配がないなど、私のような面倒くさがりにはとにかくメリットが享受できます。
しかし反面、ウェーディングシューズにBOAシステムを採用するのは、製品開発スタッフとして怖い面もありました。
理由としては大きく二つ。
①ワイヤーが切れる可能性が0ではない。
②しっかりと締めても紐靴のようなフィット感が出しきれない
この2点がネックとなり、足周りの感覚が特に重要で、かつフィールドでトラブルが起こったら命にも関わる可能性のある渓流シーンでは、採用を見送っていました。
ただ、BOAシステムの良さ、楽さを他のフィッシングシューズで感じている私としては、どうにかしてウェーディングシューズで採用できないか、今回のフラッグシップとなる当製品を構想している中で悩んでいました。
その中で、「BOA Mシリーズ」という、今までシマノが採用していたBOAシステムよりアップデートされたものの存在を知りました。過酷な条件下での使用を想定し、耐久性と強力な締め付けに重点を置き完成した、BOA社が自信を持って勧めるダイヤルです。
早速パーツを取り寄せ試作を完成させましたが、履いた瞬間違いに愕然としました。まずはワイヤーの太さ。金属ワイヤーが太くなり、更に上からラバーコーティングされています。今まで使用していたワイヤーに対し、耐久性の違いが見た目で分かります。
そして、ダイヤルのトルク。回した時の音が違います。擬音語で申し訳ないですが、今までのが「チチチッ」となっていたものが、今回のダイヤルだと「ガチガチガチッ」という高音が奏でられます。足先から足首まで、全体がしっかりとバランスよく締まっていく感覚があります。足全体を包み込むようなフィット感を達成し、紐靴のフィット感にかなり近いものを再現することができました。
そして実際に使い込むことで見えてきた、想定していなかったメリットがもう一つありました。それが、「途中で簡単に履き心地を調整できること」。通常のウェーディングシューズで良くあることですが、しっかり締めたつもりでも、いざ歩いてみると、クロロプレンソックスの厚みなどから締まり感の無さを感じ、釣り中やエントリー中に立ち止まり、紐靴を結びなおす、というシーン、心当たりのあるアングラーも多いかもしれません。
気持ちが昂っている中で、グラベルガードをずり上げ、紐靴を結びなおす、、ストレスのたまる作業ですよね。
それが、BOAシステムを採用したウェーディングシューズだと、グラベルガードの上から簡単に微調整ができます。
これだけBOAシステムがアップデートされればしっかりとトラウトアングラーにも良さを分かっていただける、そう思いウェーディングシューズに採用するに至りました。
そして、細かいですが製品企画者として一つのこだわりが。このワイヤー、非常に強力になり耐久性が高いのですが、「絶対に切れない」とは言い切れません。エキスパートアングラーにとって、不安は少しだったとしても取り除きたいですよね。
そのため、レースのガイド(下の写真の黄色囲み部分)には、敢えて穴があるものを採用しました。そうです、万が一切れてしまったとしても、緊急用の紐を持っていれば、靴紐のような使い方をしてしのぐことができるのです。
ご安心ください。シマノでもBOA社でも過酷なテストをパスし、さらにいろいろな人が現場を通じて履いた中でも、まだ切れたという報告はもちろんありません。ですが、「備えあれば憂いなし」、ターゲットに安心して履いていただくために一工夫を加えました。
とにかく一度、履いてみてください
今回の記事では、「ジオロック」「BOA」という、わかりやすい名前の付いたシステムを中心にこのシューズの凄さをお伝えしました。どちらも、一度使用すると離れられなくなる、アングラーにとってメリットの分かりやすい機能です。
当シューズ、様々なところで展示をしますし、多くのお店様に展開していただく予定ですので、是非一度履いてみて、その良さを体感していただきたいです。
履いた瞬間に良さを体感していただけると、自信を持ってお勧めできますので!
次回の記事では、使用している素材や、ウェーディングシューズとして初めて採用されたプチ便利機能をご紹介します。2月の公開になると思いますので、お楽しみにお待ちください!
タックル&装備
カメラ:α7Ⅲ(SONY)/iPhone15pro MAX(Apple)
レンズ:GM24mmF1.4 (SONY)
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