日本古来の伝統釣法・テンカラ。道具立てがシンプルで気軽に始められるのが魅力で、キャンプや山登りのついでに楽しむ人も増えてきました。
タックルを揃えた。玉網やウェーダーも用意した。でも実際にフィールドへ出かけてみると、思うように釣れない。こんな声をよく耳にします。確かにテンカラは入門しやすい釣りですが、軽い毛バリを正確にキャストするには少々コツが必要です。また、広い川筋からポイントを見つけ出すのも、初心者ではなかなか難しいでしょう。
テンカラのイロハを学びたい。こう思ったときに目を向けていただきたいのが、各地で開催されている講習会です。今回はシマノアドバイザーの石垣尚男さん、フィールドテスターの大沢健治さんが講師として招かれた、栃木県のおじか・きぬ漁協主催の「三依テンカラ交流会」にお邪魔し、当日の様子を通して講習会に参加するメリットと楽しさをお伝えします。
日本古来の伝統釣法であるテンカラ。テンカラの楽しさを知ってもらうため、各地で講習会が開催されています。
講師を務める石垣尚男さん。各地へ招かれるだけでなく、個人でも精力的に講習会を催すテンカラの伝承者です。
もうひとりの講師が大沢健治さん。毛バリ製作のかたわら、講習会を通したテンカラの普及にも積極的に取り組む若手のエースです。
今回はおじか・きぬ漁協主催の「三依テンカラ交流会」にお邪魔しました。日本初となるテンカラ専用C&R区間は穏やかな渓相で、どなたでもテンカラを楽しめます。
●テンカラ講習会のメリット
講習会に参加するメリットは、なんと言っても実際に川を見つつ、講師から直接レクチャーを受けられる点にあります。ポイントひとつとっても、写真やイラストではなんとなくイメージが湧かないもの。講習会では石や流れを見ながらポイントの見方を教われるので、机上では得られないリアルな知識を身につけることができます。
そしてもうひとつ、エキスパートによる正しい技術指導を受けられるのも講習会の良さです。テンカラを始めて間もない人にとって、キャスティングが最初の壁になることが多いようです。キャストする際の力の入れ具合などは、動画や写真ではなかなか理解できません。講習会ではキャスティングのコツを講師から直接教われるので、上達スピードは自己流よりはるかに早いはずです。
講習会は漁協が主催するもの、自治体が主催するものなどさまざま。石垣さんは個人でも講習会を開催しています。いずれも開催の告知はホームページやSNSで行っているので、詳細はこちらで確認するとよいでしょう。
講習会に参加する際には、参加費や入漁料が必要です。また、バーブレスフックの使用など河川によって取り決めがあるので、事前に確認するようにしましょう。
講習会はエキスパートから直接レクチャーを受けることができ、リアルな知識を身につけることができます。
講習では実際に石や流れを見ながら釣り方を解説してもらえます。三依テンカラ交流会は１日10名限定の少人数講習。マンツーマンに近い細やかなアドバイスを受けられます。
ちょっとしたコツをつかむだけで驚くほどキャスティングの精度が向上します。動画や写真ではわかりにくい力加減も、講習会では丁寧に教えてもらえます。
●ビギナーやシニアアングラーにも丁寧にレクチャー
ビギナーのなかには「こんな初心者でも大丈夫？」と心配される人もいらっしゃるようですが、石垣さんや大沢さんが講師を務める講習会はまったく問題はありません。一度も竿を握ったことがない人でも初歩の初歩から教えてもらえます。そもそも講習会を開催する最たる目的は、ひとりでも多くの人にテンカラの楽しさを知ってもらうことにあります。「やってみたいな」と思ったら、気軽に問い合わせてみましょう。
講習会は険しい場所では行わないので、お年を召した方でも安心して参加できます。三依テンカラ交流会には、ご主人の定年退職後にご夫婦でテンカラを楽しんでおられる方もお見えでした。
タックルやウェーダーなどの装備は基本的に参加者自身で用意しますが、竿や仕掛け類はレンタルが可能な場合があります。これを機会に道具一式を揃えたいという方は、ページ下に石垣さんと大沢さんのおすすめ仕掛けを紹介しているので、参考にしてみてください。
三依テンカラ交流会には、テンカラを始めて1年未満の方も参加されていました。一度も竿を握ったことがない人でも初歩の初歩から教えてもらえるので安心です。
今ひとつキャスティングに自信がないという方も、1時間も竿を振れば見違えるほどスムーズに毛バリを飛ばせるようになりました。
テンカラは万人に開かれた釣り。シニアアングラーも大歓迎です。
●経験者にはハイレベルのアドバイス
ひととおりテンカラを経験した方でも、さらなる釣技のステップアップ目指す方や、いまさら誰にも聞けない疑問をお持ちの方も多いはずです。釣り人の多い河川ではどのように立ち回ればよいか、魚を警戒させない立ち位置の取り方など、講習会では個々のレベルに応じたアドバイスを受けることができます。
今回の三依テンカラ交流会でも、テンカラ歴20年以上のベテランが参加されていましたが、「新たな気づきがあった」と口にされていました。
三依テンカラ交流会にはテンカラ歴30年以上のベテランも参加。講習中はハイレベルの質問が飛び交っていました。
竿抜けポイントをどう見つけるか。魚を警戒させない立ち位置の取り方はどこか。経験者はよりハイレベルのアドバイスを受けられます。
●三依テンカラ専用C&R区間・参考タックル
【石垣尚男さんのタックル解説】
これからテンカラを始める方を意識して、今回は『天平テンカラ』の3.6mを選択しました。求めやすい価格帯の竿ですが非常に軽く、パラボリックな調子はキャスティングのタイミングをつかみやすい点がおすすめする理由です。天平テンカラには3.3mと3.6mの2アイテムがありますが、ともに一般的な渓流ではスタンダードな長さです。どちらかで悩んでいるのなら、握り方で短くも使える3.6mを選ぶとよいでしょう。
ラインはテンカラ専用のナイロンレベルラインを3m取りました。平均的なラインの長さが竿丈いっぱいなので、やや短めのセッティングになります。頭上に木が張り出しているような場所では、やや仕掛けを短くすると枝に引っ掛けるなどのトラブルを軽減できるほか、キャスティングの正確性やフッキングのレスポンス、取り込みやすさが向上します。ハリスは通常フロロカーボンの0.8を多用しているのですが、テンカラ専用区の魚は日々攻められており少々スレているので、今回はやや細めの0.6号を使用しました。
毛バリは#12〜#14のフックを用いたものを用意しておけば問題ないでしょう。今回はやや魚の活性が低かったので、フックは小さめの#14とし、小ぶりに巻いた毛バリをメインに使いました。
石垣さんが自信を持っておすすめする竿が『天平テンカラ』。三依テンカラ専用C&R区間では3.6mを使用しました。
【大沢健治さんのタックル解説】
今回は初心者の方も来られる講習会ということで、ベーシックなタックルを組んでみました。竿は『天平テンカラ』の3.3m。3.6mでも振れるスペースはありますが、軽くて振りやすい3.3mを選んだ感じですね。
ラインはフロロカーボンのレベルラインを竿と同じ長さで取り、フロロカーボンのハリスを1mというスタンダードなセッティングです。ただ、キャッチ＆リリース区間は魚がスレていることが多いので、レベルラインは平均的な3号から2.5号に、ハリスは0.8号のところを0.6号にといった具合に、やや細くしています。特にハリスは細くすることで魚へのプレッシャーが軽減され、軽い毛バリが流れになじみやすくなります。
毛バリはキジの剣羽根をパラッと巻いたシンプルなもので、特に奇抜なものは使いませんでした。これでも流れにしっかり乗せてポイントへアプローチすれば、きちんと魚が出てくれます。ただ、プレッシャーが高い釣り場ゆえに、フックは#14と小さめにしました。皆さんが三依に来られるのなら、#12と#14を用意すればOK。念のためというなら#16まで準備しておけば十分だと思います。
大沢さんは軽量で振りやすい『天平テンカラ』の3.3mを選択。短いぶん楽にキャストができ、正確に毛バリを打ち込むことができます。
次回は実際の講習会の様子をレポートいたします。
（次回へ続く）