2023/12/27
コラム
内房勝山港出船のコマセマダイ。コマセマダイは攻略もクリアもない自然相手のゲームである。
朝日に浮かび上がる房総半島の輪郭を背景に、フォースマスター600のドラグサウンドとモーター音が交互に、適度な間を置いて軽快に響き渡り、松本圭一さんの愛竿・舳20-270がしなやかに弧を描いては伸びる。
「そこそこ、あるよ」
両手を広げて慎重にハリスを6回ほどたぐると暗い海中にポッと白い影が現れ、みるみる膨らんだかと思うと重みのある婚姻色のマダイが浮かび上がった。
コマセマダイの作法
誘うというより”探す”。探見丸を見ながらのシューティング・ゲーム。
「きましたね。早く次、いきましょう」
松本さんは手を休めず投入する。水深65m、指示ダナは45m。50mまでコマセカゴを落としたらハリスがなじむのを待つことなく、タッチドライブスピードロックを活用しながらすばやくコマセを振り出し45mに合わせる。
「乗っ込みの魚は上を意識しているから、できる限り低い所にビシを置かず、マダイの視界から早く消したいんです」
すばやいコマセワークの理由はマダイを警戒させないため。ハリスもすばやくなじませるため中央部に3B相当のオモリを加えている。
「底と宙層に反応があるんです。底から上がってくるのか、宙層から横に追ってくるのか……どっちかなあ」
探見丸を凝視しながら呟く松本さん。
「さっきは底だったけど、今は上かな」
独りごちながら指示ダナより5m上げてマダイを探す。すると、再び舳の竿先が突っ込んだ。
手慣れた電動ポンピングで浮かせたのは鮮やかな朱色の1kg級のマダイ。フグを始めとしたエサ取りと思っていた反応を読んで喰わせた。
しかしそれがパターンというわけではなく、その後は底周辺の魚影をじっくりと浮かせる展開になる。
そして8時過ぎ、明らかに大魚と思われる引きが訪れる。激しく首を振り、舳が絞り込まれ、ドラグを滑らせたフォースマスター600のカウンターは70mを超えた。
「でかいよ。間違いない」
疾走を受け止め攻守交代、やり取りを始めたとき、それまで圧倒的だった重さが抜けた。根ズレによるハリス切れだ。
「魚の勝ちです……悔しいなあ」
松本さんも船長も、あれは大ダイだったと語る強烈な引き。そのインパクトは、昼までに中、小ダイを追加しても消えることはなかった。
「悔しいなあ。午後もやりませんか」
いつも後ろ髪を引かれる松本さんだが、この日ほど悔しそうな姿はない。
「僕はけっこう大ダイを逃してます。でも、だから飽きないし、楽しいんです。探見丸を駆使したコマセマダイはゲーム的だと思いますが、絶対に攻略やクリアがない自然相手のゲーム。だから、面白すぎて、やめられないんです」
ちなみに、探見丸を見ながらブツブツといっている松本さんの呟きは、独り言ではなく「自然との対話」。つまり、松本流・コマセマダイの作法である。
【電動ポンピング】
松本さんはタッチドライブの操作性を活かしたポンピングでマダイとのやり取りを行なっている。
※やり取りでは必ずドラグを緩めておく。
【フォースマスター600 in コマセマダイ】
タックルの作法
マダイとのやり取りと的確な手返し。必要機能を高次元で満たす相棒を。
食の作法
マダイのソテー
~皮目も味わう簡単でおいしい料理~
【取材協力】内房勝山港・利八丸
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