2023/10/12
コラム
東京湾・ドラゴンへの最短距離。
ドラゴン級が釣れ盛る「Xデー」はあったものの、秋を迎え大中小混じりというのが現在の東京湾タチウオ事情。
テンヤに掛かりにくい小型に翻弄され、中型の元気の良さに驚き、待ち焦がれたドラゴンに歓喜する。見方を変えれば実にタチウオらしい釣れ方で、釣り人はさまざまな手を尽くして楽しんでいる。
省エネバイブレーションの作法
テクニックやタックルを複雑にすることで答えを出すのではなく、無駄を削ぎ落としていく。
そんな東京湾でドラゴンを追い求める富所潤さんは「ひとつの釣り方を究め、ブレずに続けること」をドラゴン獲得のカギと考えている。
その釣り方が「省エネバイブレーション」。手順はシンプル。竿先を水平やや下に構え、弾くように小さくシャクりつつ、竿が下がる瞬間、わずかにリールのハンドルに触れるように巻く。
動作は断続的かつ最少限で、テンヤはフラッシングするように小刻みに動き続ける。
東京湾で流行しているバイブレーション釣法の中で最も小さな動作で、効率良くテンヤを動かす。ゆえに「省エネ」というわけだ。
「省エネバイブレーションで大切なのが竿の硬さと感度です。竿が柔らかいとクッションになってしまい、入力に対してテンヤの動きが鈍くなります」
富所さんが手にしているのはシマノ最高峰の新テンヤタチウオロッド「サーベルマスターリミテッド」。2モデルあるうちの、バイブレーション釣法に特化した「91HH170」である。
表記は9:1だが、実際に手に取ると9:1以上に先調子に感じ、テンヤはもちろん道糸の抵抗まで伝える感度に、一瞬、怖さを覚える。それほど「尖った」テンヤタチウオロッドだ。
省エネバイブレーション釣法における究極が竿への入力10に対しテンヤが10の動きをすることだとすれば、現在、限りなく理想に近い竿といえるだろう。
「テンヤが動いているか、止まっているかはもちろん、縦の潮目、タチウオの真のタナといえる潮ヨレによるテンヤの重さの変化も、サーベルマスターリミテッド91HH170は明確に伝えてきます」
ハンドルを巻く距離は1シャクリにつきハンドル1/6回転ほどから、タナを探るときは大きめ、潮ヨレなどを集中的に探るときは小さく、アタった魚を掛けにいくときは巻かずに、など、そのつど調整する。
この日、走水~猿島沖にかけてのタチウオ船団は全般に苦戦していた。その中にあって富所さんは順調に釣る。
「指示ダナを探りつつ潮ヨレを1回でも多く察知し、どの水深で、テンヤがどんな動きをしたときにアタリが出たのか、掛かったのかをしっかり覚えておきます。これら海中のイメージが明確に描ければ、1本が釣れた後、それを再現することができます。自分の中で釣果への理由付けができると、迷いなく、確信を持って釣りができます。それが、結果的にドラゴンの時合を逃がさないことにつながると思います」
富所さんの釣りは、テクニックやタックルを複雑にすることで答えを出すのではなく、無駄を削ぎ落としていく。
その答えが「省エネバイブレーション」と超硬先調子の「サーベルマスターリミテッド91HH170」。実にシンプルな、ドラゴンへの最短距離である。
【省エネバイブレーションは簡単にできる】
【省エネバイブレーション中のテンヤの様子】
タックルの作法
海の変化を察知するタックルとは。
食の作法
タチウオの炙り
~香ばしさと脂の甘さが絶妙~
【取材協力】三浦半島走水港・教至丸
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