阪本智子の船釣り探見!

阪本智子の船釣り探見!
タチウオ:北海道以南の全国の沿岸に生息。ぎらぎらとメタリックシルバーに輝く細長い魚で、全長は2m近くに達する。イワシなどの小魚を追い掛け回すどう猛なフィッシュイーターとしても知られる。例年の釣期は初夏6月~年末12月まで。

東京湾・猿島~下浦沖のタチウオ釣り

目次
  • 1:楽しさはタナ合わせの妙
  • 2:朝マヅメの入れ掛かり
  • 3:ねらいはドラゴン級

楽しさはタナ合わせの妙

9月中旬、阪本さんが意気揚々と訪れたのは川崎桜堀運河の中山丸。阪本さんは秋本番とともに活性が高まってきたタチウオのエサ釣りを楽しみにしていた。中山丸のタチウオ船を担当している中山勝之船長によれば、東京湾内のタチウオのエサ釣りは毎年初夏の6月ごろにスタートし、例年の釣期は年内いっぱいだが、新年以降も釣れ続くこともある。
東京湾の主要タチウオ釣り場は猿島沖から観音崎沖、久里浜沖、下浦沖に至る湾央から湾口一帯。水深は50~80mダチを中心にして浅いところで30mライン、最深部では150m以上に達する。神出鬼没の〝オバケ魚〟として知られるタチウオだけに、その日その時で遊泳層が激しく上下動することも大きな特徴だが、このように刻一刻と変化し続ける遊泳層を素早くキャッチする〝タナ合わせの妙〟がタチウオ釣り最大の面白さでもある。
東京湾の各地からタチウオ乗合船が集結し、大きな船団を作った光景はなかなか壮観!
東京湾内で釣れるタチウオは指3本または指3本半がレギュラーサイズといえ、指5本を超える大ものになると大太刀サイズとして、その怖い形相からドラゴンの敬称が与えられ、反対に指2本は小型の小太刀サイズ。本日の目標はドラゴンサイズだ。
阪本さんのロッドは大型タチウオの強い引きにも対応できる『サーベルマスター・テンビンM165』
電動リールは『フォースマスター600』。PEラインは2号
リール上面に配置したタッチドライブはロッドを握る親指1本でスピーディに操作できる
出船前、わくわくしながら準備する阪本さん

朝マヅメの入れ掛かり

この日のタックルはタチウオのエサ釣り専用のニューモデルとあって、楽しげにセッティングする阪本さん。「出身が大阪なので、丸ごと1尾のイワシエサをくくり付けるテンヤ釣りから覚えました。ここ最近はメタルジグのジギングでも、今日のような魚の切り身を使ったテンビン仕掛けのエサ釣りでも問題ありません。タチウオ釣りはどれもこれも奥が深くて面白くハマりますよ」と笑う。
船長に仕掛けなどのアドバイスを求めると、「エサ釣り用のタチウオ仕掛けは1本バリ式に限ります。東京湾でオールマイティーなのはケン付きタチウオバリ2/0、ハリス6~7号の全長2mタイプです。上下動が激しいタチウオ釣りですから、その場その場で遊泳層のタナをアナウンスします。絶対に聞き逃さないようにしてください」と話してくれた。
切り身エサの付け方
身のほうから切り身の中心をねらってごく浅くハリ先を抜く
切り身をひと回しさせ、今度は皮側から刺す
身のほうに浅くハリを抜く
最後にハリのフトコロ幅よりも少し大きく身をすくい取る
切り身の先端部をハリのチモトまでこき上げ、海中で回転して仕掛けが縮れないようにまっすぐな姿勢に切り身を整える
東京湾のテンビンエサ釣り仕掛けはケン付きタチウオ2/0の1本バリ、ハリス6~7号の全長2mタイプが基本
冷凍コノシロの切り身が配られるので、鮮度が落ちないように適量ずつ解凍して使うこと
出港時間は午前6時45分。天気予報では風力4~5程度の北向きの風と伝えていて、東京湾ではナギの部類。ところが川崎を出て横浜沖まで来ると風が強まってウネリも出始めたが、航程1時間ほどで着いた猿島沖には東京湾の各港からやってきたタチウオ乗合船が大きな船団を作った。
ウネリで海面にウサギが飛ぶ中、午前8時に釣り開始。「水深67~68m、タチウオの反応は45~50mにあります」という船長のアナウンスと同時に、手際よく仕掛けを投入した阪本さん。「魚探の探見丸にもびっしりと魚影が映っています」と言いながら指示ダナで仕掛けをストップし、ショートジャークのシャクリアクションで誘い始めた直後、船中第1号と思われるタチウオを秒速でヒットさせた。美しい円弧を描いたサーベルマスター・テンビンM165に見惚れつつ、新機能の「タッチドライブ」で、親指1本で巻き上げスピードをコントロールしつつ抜き上げたのは、レギュラーサイズである指3本のタチウオだった。
船内を見回すと、あちらこちらでメタリックシルバーに輝くタチウオが引き抜かれる入れ掛かり。朝マヅメの乱舞に沸き立っている。「ポイントが少しズレてきたので一度旋回します」と最初のサオ上げ合図があった正味50分間で、阪本さんは早くもツ抜けの10尾を達成していた。
釣り方の基本
サオ先を海面に向けた位置(20度くらい)からシャクリ誘いのスタート
リールのハンドルを押さえたまま、サオ全体でスッとあおるように45度くらいまでシャクリ上げる
今度はリールのハンドルを3分の1から2分の1回転巻きつつ、サオ先を海面に向けた位置まで戻す
同じくリールのハンドルを押さえたまま、45度くらいの位置までシャクリ上げる。この繰り返しだ
正しい取り込み方
海面上にテンビン仕掛けが見えるまで巻き上げてストップ
タックルを置きながらミチイト先のリーダーをつかむ
テンビンからさらに仕掛けハリスをつかんで抜きやすい体勢に持ち込む
タチウオを確認して一気に抜き上げて取り込む。鋭い歯でケガをしないように、ワニグリップで首根っこを押さえてプライヤーでハリを外す

ねらいはドラゴン級

「エサ釣りといっても、イワシやサバなどの幼魚を追い掛け回して捕食しているタチウオですから、釣り方自体はルアーと同じです。でも、自分のこだわりを持って楽しみたいと考えています。基本的なシャクリ方はサオ先を海面に向けた位置(20度くらい)から45度くらいまでシャクリ上げる。これの繰り返しです。釣況を確かめながら、クイックモーションでワンストロークごとにリールのハンドルを3分の1から2分の1回転巻き上げます。ジャークパターンは少しスロースピードだと思います」と自身の得意な釣り方を分析する阪本さん。
ハイピッチ&ハイスピードアクションでガッツン、ガッツンと出合い頭のアタリをハリ掛かりさせるテクニックもあるが、阪本さんを見ているとゆっくりめのシャクリパターンを駆使することで、タチウオの前触れアタリから本アタリまでを的確に捉えて確実にフッキングさせる釣り方を実践している。
時合を逃さず、テンポよく引き抜いていく
「タチウオの強烈な引き味はシビれます」と笑顔でVサイン
しばらく釣ってヒット率が落ちると船長は船を流し直し、猿島沖から走水沖に転戦した。それでもタチウオの魚影は終始探見丸の画面から消えることがなく、午後1時を過ぎた頃、突如として船中でドラゴン級が数本取り込まれた。それを見た阪本さんは、タチウオバリ3/0の大もの仕掛けに変更する。しかし、阪本さんの気合いに反して掛かってきたのは指4本半の大中型サイズ。
「指4本サイズ。次はドラゴンをねらいます」
「本日はこれまですかね。でも終日タチウオからのアタリが途切れず、本当に面白い一日でした!」といい、数えてみると27本の好釣果を叩き出していた。
念願のドラゴン級には届かなかったが、指4本半の大中型サイズを仕留めた
料理好きでも知られる阪本さん。「数多くの魚種の中でも、タチウオ料理のレシピはたくさん用意してあります。今日は刺し身を皮切りに塩焼き、蒲焼き、大葉とチーズのサンドイッチフライなど全部で7~8品作るつもりです。一番好きなタチウオの蒲焼きは、まずクシ状の背骨を背ビレごと取り除いた筒切りの切り身にし、小麦粉を振ってソテーします。ある程度火が通ったら市販のウナギのたれを絡めればできあがりです。そうそう、タラコみたいなタチウオの卵があった時はぜひ蒲焼きに加えてください。これまた美味しいですよ。頑張った後には美味しい食卓が待っています」。自宅に帰ってもうひと仕事で腕を振るう阪本さんだが、その足取りは軽い。