阪本智子の船釣り探見!

阪本智子の船釣り探見!
釣って楽しく、食べて美味しいシロギスは最初の船釣りにも最適

第2回 東京湾のシロギス釣り

北海道南部以南の全国沿岸に生息。釣れるのは20㎝前後が大半で、最大で30㎝ほど。大ものは「ヒジタタキ」、小ものは「ピンギス」と呼ばれる。繁殖期は梅雨時で、この前後には産卵のために浅場に近づいてくるので特に釣りやすい。冬場はやや深いところに移動する。釣期は3~12月
目次
  • 1:船釣り入門にピッタリ
  • 2:絶対に釣るための2つのポイント
  • 3:入門者はドウヅキ仕掛けがおすすめ
  • 4:基本の釣り方。仕掛け投入からアワセまで
  • 5:キャストのコツと注意点
  • 6:よく起きるトラブルの対処法は?
  • 7:美味しく持ち帰るには?

船釣り入門にピッタリ

シロギス釣りは船釣り入門にピッタリ。手軽にできる反面、突き詰めると奥が深く、初心者からベテランまで大人気の釣りものだ。入門者でも基本を守ればアタリがよく分かり、20尾、30尾といった釣果もねらえる。ハリ掛かりしてからの引きもよく、釣って楽しく、お土産(釣果)もほぼ確実に手にできる。
ベテランなら100尾を超える「束(そく)釣り」をねらう人がいたり、一発大型をねらう人がいたり、あるいは仕掛けを操作してアタリを出す釣り方にこだわって楽しむ人などがいる。どんな人も、レベルに応じて十人十色の楽しみ方ができるのがシロギス釣りなのだ。
乗合船は受付で乗船名簿に名前と住所を記入し、必要な仕掛けなどを購入して、釣り支度も済ませたうえで30分前には集合場所へ。釣り座は先着順の場合が多い
この日はレンタルタックルの入門者が多数乗船。出船前には船長が基本的な釣り方や注意点を分かりやすくレクチャーしてくれた
冬は深場をねらうが、初夏から夏にかけてはシロギスの産卵期にあたり、10mより浅い場所にも群れが入ってくるので特に釣りやすい。東京湾では周年乗合船が出ている。相模湾では産卵親魚を保護するため、葉山町地先~湯河原町地先までのエリアで9~12月が禁漁期になるが、やはり夏がハイシーズンだ。

絶対に釣るための2つのポイント

どんな釣りにも共通して言えることだが、まずはエサを丁寧に付けること。そして、アタリが出ない時ほど、なるべく新鮮なエサに付け替えることが大切なポイント。船長が教えてくれるエサの付け方や長さがある時はしっかりと守る。
エサのアオイソメは船宿で用意してくれる。長さの調節は指や爪でできるが、爪を汚したくなければハサミを用意しておこう
エサ付け(アオイソメ)
①アオイソメは頭の近くを軽くつまんだら、口を開けるタイミングでスッと吸い込ませるようにハリ先を中に入れ、最後にハリ先をアオイソメの中心から外に抜く
②きちんと中心から抜けるほどハリスが撚れずに長持ちするため手返しがよくなる。余りは3㎝かそれ以上とってもよいが(アピール力が高まる)、活性が高く魚の食いがよければ短く切ってOK
そしてもう1つの大切なポイントが、オモリをしっかりと底に付けながら釣ること。ミチイトの張り加減は仕掛けによって変わる部分もあるが、シロギス釣りではオモリが浮いてしまっている状態ではまず釣れない。まずはこの2点を守ることが大切になる。

入門者はドウヅキ仕掛けがおすすめ

シロギス釣りで使う仕掛けはおもに2タイプある。1つはテンビンを使用した1本バリもしくは2本バリ仕掛け。もう1つはドウヅキの1本バリもしくは2本バリ仕掛けだ。両者の使い分けだが、テンビン仕掛けはより遠くに投げて誘う釣りに向いている。ただし、慣れないと仕掛けとミチイトが絡むトラブルも起きやすい。ドウヅキ仕掛けは特に1本バリであればこうしたトラブルが起きにくい。入門者であればまずはドウヅキ仕掛けから始めるとよいだろう。
ただし、テンビン仕掛け、ドウヅキ仕掛けは、船宿でどちらかをすすめられることもあるので確認することも大切だ。釣り場の状況によって、どちらかの仕掛けだとアタリが少ないというケースも実際にある。
ロッドは船のシロギス釣りに対応したものを使用。リールはスピニングの2000~3000番にPE0.8~1号を巻いておく
市販の購入できるドウヅキ仕掛け。このままでもまったく問題ないが、ビギナーは枝スを1本にしてみるのもよい
オモリは船宿指定の重さを使用する

基本の釣り方。仕掛け投入からアワセまで

足もとには釣れた魚を泳がせておくバケツを用意。タックルのほか、手拭きタオル、ハサミ、フィッシュグリップ(メゴチバサミ)は用意しておこう
隣の人のラインなどにも気を配り、基本的に自分の正面を釣るようにする
エサを付けたら、自分の正面に軽くアンダースローで仕掛けをキャストして釣りを開始。ドウヅキ仕掛けの場合、オモリの着底を確認したら、すぐにミチイトを張らず緩めずにしてアタリを待つ。スピニングリールであれば、この時にすぐベールを戻してしまわず、意識的にサオ先に若干のイトフケを作るようにするとよい。
ドウヅキ仕掛けの釣り方
①シャクリはサオ先を高くかかげてしっかり入れる
②サオ先でポンと弾いてオモリをしっかり跳ね上げるイメージ
③跳ね上げたオモリを再着底させたら、再びイトフケを作ってアタリを待つ
「し」の字のイトフケをキープ
キャスト後はリールのベールをオープンにしてオモリの着底を待ち(ただし風にあおられない程度にスプールには指を添える)、オモリの着底後はすぐにラインを張らず、サオ先に「し」の字ができるくらいにイトフケを作る。これによりオモリの浮き上がりを防ぎシロギスがエサを吸い込めるタルミを作ることがポイントだ
シロギスは海底付近をエサを探しながら泳いでおり、エサが落ちてくるとそれに食いつく。最初はプルプルプルと分かりやすい手応えが伝わり、次にしっかり食い込んだところでグググと一段階強い抵抗に変わる。アワセは向こうアワセでよく、しっかりハリ掛かりするのを待ってからリールを巻いてサオを上げる。最初の感触だけで乗らないことが多発する場合は、途中でミチイトが張ってしまっている場合が多い。その時はアタリがあってもあせって合わせず、むしろサオ先を下げて少しラインを送り込むようにしてやる。



着底からしばらく待ってアタリがなかったら、仕掛けを少しずつ手前に引いてきてアタリを見るが、その際はまずロッドで大きく仕掛けをあおって、オモリを海底から跳ね上げ、再着底させたらまたイトフケを作ってしばらくアタリを見るという動作を繰り返す。船下までオモリが来たら回収して最初からやり直しだ。
この一連の動きがシロギス釣りの基本。ただし、キャストが苦手という場合は、最初から船下にまっすぐ落とすだけでもよい。その場合はオモリが着底したら、定期的にトントンとオモリで底を叩きつつ、叩いた後はやはり若干のイトフケを作ってしばらくアタリを待つようにする。プルプルというアタリが来たあとの動作はキャストした場合と同じだ。なお、日並みや時間帯によって、キャストするよりも船下をねらったほうがシロギスが釣れる場合がある。その時はもちろん、無理にキャストする必要はない。
小気味よい引きで楽しませてくれるシロギス。20㎝以上になれば思いのほか重量感もあり、少し沖め、船のすぐ下など、無理のない範囲で柔軟にねらうとよい

キャストのコツと注意点

アンダースローのキャスト
①サオ先をある程度曲げた状態でリールとオモリが写真のような位置関係になるようにミチイトの長さを調節。ベールを開けて人差し指にミチイトを掛けたら、投げ始めはオモリを船べりの外側の低い位置に持っていく
②オモリの重量をロッドに乗せ、ロッドの真下から振り子の動きでオモリが送り出されるようにアンダースロー
③スプールから指を放してラインをリリース。ロッドアクションにもよるが、オモリは水平よりやや上空に向けて飛ばすようにすると飛距離が出やすい
いきなり遠投できなくてもキャストは積極的に挑戦してみよう
シロギス釣りでは、船は潮に流されながらゆっくり移動している。そのため船下をねらっているだけでもある程度の範囲は探れるが、一度のキャストで沖側から手前まで一定の範囲を探れるほうが群れに出会える確率は上がり、釣果も当然伸びる。けっして遠投する必要はないが、やはりキャストはできたほうがよいし、何より楽しい。
ただし、混雑している時はもちろん、入門者であればまずは周りの人の仕掛けの位置をよく確認したい。船の動きや潮の速さなどで、隣の人とラインが交差しそうな場合は無理をせず待つ。慣れてきたら周囲のようすを見ながら、斜めにキャストしたりもできるようになる。

よく起きるトラブルの対処法は?

混雑していなくてもオマツリ(ほかの人の仕掛けと自分の仕掛けが絡まること)は起きる。オマツリした時は、必ず一言「すみません」と声に出せばお互い嫌な思いをせずにすむ。
ほどけるオマツリはほどき、難しい場合は自分の仕掛けを切る。絡み方によっては、人の仕掛けを切らなくてはならない場合もあるが、その時は必ず了解を得てから切るようにする。対処法がわからない時は、恥ずかしがらずに指示を仰ぐことも大切だ。
また、シロギス釣りをしていると、仕掛けやテンビンなどにクラゲの触手(写真参照)が付いてくることがよくある。アカクラゲは素手で触るとかぶれたりするので、必ずティッシュペーパーや使い捨ての手拭きタオルなどで取るようにしよう。
ハリスにこのようなアカクラゲの触手がついて来た時は、素手で触らずに必ずティッシュペーパーや使い捨てのタオルで拭き取る
シロギスにハリを飲まれた時は、写真のようにエラに指を入れ、しっかり固定した状態でハリスを力強く引き抜くと「ズルズル」と抜けることが多い

美味しく持ち帰るには?

食べて美味しいシロギス。釣り上げたあとは鮮度を保って持ち帰るため、必ずクーラーを持参する。クーラーに船宿でもらえる氷を入れておき、シロギスが浸るくらいの海水を入れる。海水を入れ過ぎるのはすぐに氷が解けてしまうので逆効果だ。釣れた直後は足もとのバケツに泳がせておけばよいが、ある程度の尾数がまとまったら、あまり弱らないうちにクーラーに移す。その時、シロギスの体が曲がらないように気を付けよう。体が曲がるとあとでウロコを取る時やおろす時にまっすぐにしなければならず、そのときに身が割れてしまう。
20㎝以上の大きさがあれば天ぷらや刺身が美味しい。15㎝ほどのいわゆるピンギスは数が釣れるとさばくのも大変なので、ウロコを取り頭と内臓だけ落としたら、小麦粉をまぶして油で揚げてから南蛮漬けにするのがおすすめだ。
さばきがいのある天ぷらサイズ! シロギスの活性が上がった時は、アオイソメの頭の硬い部分から3㎝くらいを使用すると一度付けたエサで10尾くらい釣れて手返しが早くなる
シロギスのほかにも多様な魚が楽しませてくれる。阪本さんのこの日のファーストフィッシュはマルアジ。マアジに比べて胸ビレの先端とゼイゴの位置が離れていることなどで区別できる
シロギス釣りの外道としてポピュラーなイシモチ(シログチ)。塩焼きが一般的だが、ハサミでエラを切ってバケツで泳がせ、血抜きをきちんとしておくと刺身も美味しい