阪本智子の船釣り探見!

阪本智子の船釣り探見!
ズッシリとした良型カサゴは釣り応えも食味も充分
アカハタ:沿岸の浅場やサンゴ礁から深場まで広く生息。背ビレの外縁が黒くなる特徴を持つ。ハタ類の中では小型で、最大で40cmほどになるが釣れるのは20~30cmが多い。荒磯に多く、上品な白身は蒸し料理や椀物に向く
カサゴ:カサゴは浅場から水深200m前後の深い岩礁域まで幅広く生息。海底の岩の隙間やテトラの間などに潜んでいることが多い。物陰を好み、夜間になると活発に泳ぎ回って甲殻類や小魚などを丸呑みにするが日中も釣れる

南房総・千倉沖のアカハタ&カサゴ釣り

目次
  • 1:アタリが明快な根魚ねらい
  • 2:釣り場は近海。自由にタックルをセレクト
  • 3:一つテンヤは6~8号、ただし重い12号も出番
  • 4:釣果安定のドウヅキ仕掛け
  • 5:避けられない根掛かりには焦らず対処

アタリが明快な根魚ねらい

7月上旬、阪本さんがやってきたのは、千葉県の南房総市、太平洋に面した千倉の白間津港。小さな漁港に浮かぶ大きめの船は、よく手入れされており船体もとてもきれいだ。
この日チャレンジするのは、毎年、海水温が上昇してくる6~10月がシーズンという、松大丸の「アカハタ・カサゴ釣り」。船長の山口一夫さんはビギナー大歓迎。この釣りはもともと南房の磯場に多い、地元のアカハタや良型のカサゴを、サバの身エサを使ったドウヅキ仕掛けでねらうもので、そこに2年ほど前から若い人にも人気が高い一つテンヤも加えた。とはいえ、釣り方は基本的に自由。「何でも試してください(笑)」となっている。
明るいオレンジ色が美しいアカハタ
アカハタもカサゴも共通するのは、釣り方がシンプルということ。どちらも「根」と呼ぶ海底の岩礁帯を棲み処にし、近くに来たエサに対しては積極的に喰いついて来る。難しい誘いは必要なく、ドウヅキ仕掛けでも一つテンヤでも、基本的にオモリが海底から離れないように、こまめに底を叩くようにしていると「ゴゴゴン」と明確なアタリが手に伝わる。そしてここ千倉沖では、どちらも最大で1.5㎏クラスの良型がねらえるというのが大きな魅力だ。
房総半島南端の太平洋沖がこの釣りのフィールド。起伏に富んだ海底が多数の根魚を育てる

釣り場は近海。自由にタックルをセレクト

出船は朝5時。釣り場は千田から白間津にかけての千倉沖。水深は20~30m。どこも港を出て15分もあれば到着する。「釣り場が近くて楽ですね! 陸地が見えて景色もよいですし、船も大きくて快適です」と阪本さん。
この日は阪本さんの他にも3名のお客さんが乗船。皆さん「アカハタ・カサゴ」乗合には何度か乗船しており、一つテンヤタックルとドウヅキ仕掛けタックルの2つを持参している。一つテンヤとドウヅキ仕掛けの決まった使い分けはなく、よりダイレクトな操作感がある1つテンヤで釣れる時はそちらを楽しみ、潮が速くて一つテンヤでは底を取りにくい時や、2本バリ仕掛けのほうが明らかに魚の喰いがよい時はドウヅキ仕掛けにする。
一つテンヤのサオはシマノの炎月シリーズ。左はハイレベルなエントリーモデルとして注目の『炎月一つテンヤマダイSS 240MH』。右はテンヤの吹き上がりを抑えてタナをキープしやすい『炎月一つテンヤマダイM245』。リールは堅牢かつ軽量で一つテンヤにもぴったりの『ストラディックC3000』をセレクト。ミチイトはPE1号
注意点としては、一つテンヤで使用するエビエサは船では取り扱っていないので持参になること。また、ドウヅキ仕掛けとオモリは船でも購入できるが、ドウヅキ仕掛け用のサバの身エサは、船上に用意された冷凍の半身を自分でカットして使う。まな板は用意されているが、ナイフは持参したほうがよい。その他、カタクチイワシなどの自前のエサの持ち込みも自由。なお、対象魚がマダイでなく根魚のこの釣りでは、一つテンヤのハリにサバの身エサを付けても釣りが楽しめる。
松大丸ではエビエサは持参する。釣具店やスーパーで購入したものを解凍して使用
エビの付け方はいくつかあるが、まずは基本となるものを1つマスターしよう

一つテンヤは6~8号、ただし重い12号も出番

この日は長潮で朝から快晴。ただし太平洋の大海原に面したエリアだけに潮は複雑。朝方はウネリもあり、船長が目当てのポイントに船を付けても「参ったな~、潮がかっ飛んでるな~」と落ち着いて釣るのが難しい時間がしばらく続いた。
一つテンヤで釣る場合、テンヤの号数は通常であれば6~8号が船長のおすすめ。ただし、この日のように潮が速く底が取りにくい場合は、迷わず重い号数に変更する。この日は潮止まり前後に8号のテンヤでカサゴがヒットしたが、それ以外は重めの12号が使いやすかった。
アタリが明快な根魚は一つテンヤの釣りを覚える相手としても面白い
一つテンヤは沈みがよく潮が速い時も底取りがしやすいカブラタイプ(左面:『炎月TG 一つカブラⅡ』)と、底が平らでユラユラとフォールするテンヤタイプ(右面:『炎月一つテンヤⅡ』)を用意。潮が緩ければ6~8号で釣れるが、この日も重い12号まで出番があった
一つテンヤの収納には専用の『炎月一つテンヤ・カブラケース』が便利
ミチイトの先にはFGノットで根ズレに強いフロロカーボンのリーダーをセット
一つテンヤでの基本的な釣り方は、サオを水平にした状態でテンヤをフリーフォールさせ、イトのタルミで着底を感知したら、根掛かりを回避するために素早くベールを戻して跳ね上げる。その後は、テンヤを潮に乗せるようにしてゆっくりとテンションフォールし、再着底したらまた跳ね上げるという誘いを繰り返す。根魚だけにエサが底を離れた状態で喰ってくることはほぼないので、底付近を集中的にねらうつもりで操作するとよい。ベラなどの他魚が「コココン」とエサを突ついて来る感触が得られていれば、アカハタやカサゴのいるポイントでは本命のヒットが得られる。

釣果安定のドウヅキ仕掛け

一方、松大丸で購入できるドウヅキ仕掛けは、丸セイゴのネムリバリ14号が付いた全長1.1mのカサゴ用2本バリ仕掛け。こちらは船釣り用のベイトタックルが向いており、オモリは30号または40号を使う。底ダチを取ったら、こまめに仕掛けを上げ下げして、ハリに付けたサバの身エサを魚にアピールする。
2本バリのドウヅキ仕掛け。オモリは30~40号を使用
サオは汎用性の高い『ライトゲームSS TYPE73 MH200』をチョイス。リールは『バルケッタ300HG』。ミチイトはPE1.5号
エサはサバの身エサ。船上に冷凍の半身が用意されているので、自分で必要な分をナイフ等でカットして使う。船が揺れている時に無理に作業しないように注意
サバは黒い背中側の皮からチョン掛けでOK
潮が速くエサが回転しやすい時は腹の身をカットするとよい
エサはカタクチイワシもよい。その際は下アゴから頭にハリ先を抜いてセットする
船長や通い慣れた他のお客さんが言うように、この釣りは当たりエサがその日の状況で変わることも多く、この日は「サバの身エサのほうが明らかに当たる感じだね~」とのこと。その点も含めて今日はドウヅキ仕掛けのほうがいいかもしれないという。
そこで「私もドウヅキにしてみます!」と、阪本さんもさっそくタックルをチェンジ。オモリを着底させ、イトフケを取ったあとは、サオ全体はあまり動かさず、サオ先でこまめにオモリを動かし、海底を小突くようにさぐっていった。すると「仕掛けに付いたサバが、ヒラヒラと海中で動いてアピールするイメージですかね。あっ、来ましたよ!」と、潮の速い時間帯にさっそく1尾目を釣りあげた。

避けられない根掛かりには焦らず対処

日が高くなるにつれ、幸い海は穏やかになってきた。するとペースをつかんだ阪本さん。ドウヅキ仕掛けでカサゴを順調に掛けて行く。「カサゴもいいですけれど、アカハタが釣りたいな~」と表情にも余裕が出てきた。
アカハタはカサゴに比べてさらに荒い根にいることが多い。朝イチで「ここはアカハタがよく出る場所です」という根に、船長が一度船を付けてくれたのだが、その時は潮が「巻いている」という状況で、一度他のポイントに移っていた。しかし、時間をおいて再びそのポイントを探ったところで、阪本さんもねらいのアカハタがヒット。「日差しが当たった時のオレンジ色が本当にきれいですね!」と笑みがこぼれる。
突起の多いカサゴやハタの仲間からハリを外す際はフィッシュグリップが必需品。背ビレとエラブタのトゲには特に気を付ける
そんな阪本さんも、何度か苦労したのが根掛かりだ。荒根をねらうこの釣りでは、気を付けていても根掛かりは避けられない。一つテンヤでもドウヅキ仕掛けでも、外せない根掛かりが起きた時は、まずサオを折らないように焦らず対処する気持ちが大切だ。
サオとイトを一直線にできる時は、ドラグを強く締め、ハンドルをしっかり手で押さえたら、そのまま船の動きで仕掛けを切る。イトが船の下に入り、サオと角度が付いてしまう時は、すばやくクラッチを切ってイトのテンションを一度フリーにし、サオを船内に置いたら、濡れたタオルなどを巻き付けた手にミチイトを巻いて同じように船の動きで仕掛けを切る。この時、素手で細いPEを掴むと大変危険なので絶対にしないこと。また、タオルが乾いていると、摩擦でそこからイトが高切れしてしまうこともある。
「一つテンヤを根掛かりさせて、リーダーから先がなくなってしまった時に、船の上で素早く結び直せなかったのは反省点です。でも、明快なアタリが多くて楽しい釣りですね。家に帰ってからの料理も楽しみです!」と阪本さん。
終わってみれば、沖上がりとなる午前11時半までにカサゴ6尾にアカハタ2尾を見事に釣りあげた。ちなみにサオ頭となったお客さんはカサゴ10尾にアカハタ8尾の釣果だった。
波が穏やかになった後半はカサゴが順調にヒットした
県内の佐倉市から来ていた廣田久さんはインチク型ブラクリにサバの身エサを付けて快釣
松大丸のアカハタ・カサゴ釣りはこれからがハイシーズン。南房総ののどかな景色も楽しみながら、ぜひ気軽に挑戦してほしい。