阪本智子の船釣り探見!

東京湾エリアのカワハギ釣り
カワハギ:北海道以南の全国沿岸に分布する。最大で30cmほどに成長。沖釣りではほぼ周年ねらえる。水深200m以浅の砂泥底、岩礁域に生息。産卵期は夏場で、沿岸の砂底に産み付ける。幼魚は浅海の海藻帯などに見られ、成長するにつれ沖へと出て行く。エサを捕食する際は、水を口から砂地に吹きつけ、海底の甲殻類や多毛類などを巻き上げて食べる。キモが大きくなる冬場が旬。刺身やキモ和え、ちり鍋が美味しい。夏はキモが小さいものの、肉質は冬に優るとされる

東京湾エリアのカワハギ釣り

目次
  • 1:ステファーノグランプリのプラクティスもかねて出船
  • 2:ハリはこまめに交換すべし
  • 3:底トントンの誘いが有効

ステファーノグランプリのプラクティスもかねて出船

今回、阪本智子さんがカワハギねらいで訪れたのは千葉県勝山の宝生丸。カワハギはエサ取り名人の異名を持ち、釣り人に気づかれることなく仕掛けからエサを奪い取っていく。カワハギは偏平な魚体の上下に1枚続きのヒレを持っており、これをヒラヒラさせながら、水中でホバリング。ほぼ静止状態で上手にエサを捕食する。仕掛けの動きに合わせて自由に動けるため、アタリが出にくい。どうやったらアタリが出て、エサ取り名人をハリに掛けられるか? エサ取り名人との知恵比べに熱中する釣り人は多く、競技会も盛んに行なわれている。
このおちょぼ口でエサだけきれいに取っていく
阪本さんもそんなカワハギフリークの1人だ。毎年、シマノ主催のステファーノグランプリに予選から参加し、昨年は決勝大会に進出したほどの腕前の持ち主だ。
「カワハギは沖釣りのなかでも好きな釣りものです。実は明日、ステファーノグランプリの勝山予選に参加するんですよ! 今日の取材は明日のプラクティスも兼ねています。今年もなんとか決勝に出たいですね!」と阪本さんの声は明るい。
「シーズンの走りでまだ群れが固まっておらず、数釣りという展開にはなりにくいですが、良型が喰ってくる可能性が高いのが魅力ですね」とは高橋賢一船長。
遠くには富士山がうっすらと見えた
5時40分に出船。船上でタックルの準備をしながらポイントへ向かう

ハリはこまめに交換すべし

出船時間までの間にタックルの準備に取り掛かる阪本さん。今回阪本さんが用意したのはロッドがシマノ『ステファーノ攻 S180』。リールはPEライン1号を巻いた『ステファーノ SS100HG』。仕掛けは『幹糸仕掛けアピール 4号』にハリは『カワハギ糸付鈎 吸わせ』7号を組み合わせた。
ロッドはシマノ『ステファーノ攻 S180』
リールはPEライン1号を巻いた『ステファーノ SS100HG』
一般的にカワハギ釣りに用いられるのはアタリを出しやすい高感度の穂先を備えたカワハギ専用ザオ。長さは1.8~2.1mで、8:2~9:1の先調子が主流だ。リールは小型の両軸受けタイプにPE ライン0.8~1号を巻いておく。巻き上げの早いハイギアタイプがよい。
仕掛けは上部の幹イトを長めに取り、ハリス間隔を短めに取った2~3本バリ仕掛け。ハリスは自動ハリス止めを介して幹イトにセッティングする。ハリ先が甘くなったり、ハリスがよれたりした時にハリスのみ交換すればよく、手返しよく釣っていけるメリットがある。ハリスをセットする際は、ハリ先がカワハギの口を素早く捉えるように必ずハリ先は上を向くようにしたい。
仕掛けは『幹糸仕掛けアピール』4号にハリは『カワハギ糸付鈎 吸わせ』7号を組み合わせた
オモリは30号を使用
ハリス付きのハリは消耗品であり、魚がハリを飲み込んだ時は即交換。もしくは1~2尾釣ると、ハリ先は甘くなるので、この時も交換のタイミングだ。
予備バリは磁石にくっつけておくと手返しよく交換できる
オモリは集魚の役目も果たすので、カラーや形状もこだわって選びたい。号数は船宿の指定になるが、25~30号が標準的だ。
仕掛け最上部には集寄をセットすることが多い。その主な目的は好奇心旺盛なカワハギを寄せるためと、タタキ釣りや弛ませ釣りを行なう時に支点や仕掛けを沈めるアシストになるからだ。今回、阪本さんは小突き主体の誘いを行なったため、集寄はつけなかった。
エサはアサリのムキ身を用意する。船宿で調達できるところもあれば、自分で用意しなければならない場合もあるので、事前に確認しておきたい。消費量は個人差があるので、難しいところだが、エサ切れは釣り終了を意味するので多めに準備しておきたい。エサを締めるリキッドやパウダーも販売されているので、これを使うとエサ付けが楽になり、手返しアップにつながる。
エサ付けや、仕掛け交換の際にはロッドレストがあると便利。阪本さんの愛用はシマノ『船べり楽々竿掛け』
エサの下準備
アサリはザルに空けてしっかり水気を取る
塩をまぶす
しっかりと混ぜ合わせて締める。こうすることでエサ付けがしやすくなる

底トントンの誘いが有効

5時40分ころに出船し、10分ほどでポイントに到着した。西よりの風がそよそよと吹き、心地よい。「水深16m、始めてください」と船長からアナウンス。アサリを手際よくハリ付けして仕掛けを投入。底立ちをとってから、リズミカルに底をトントンと小突いて誘いをかけていく。ときおり、スーッと聞き上げを入れ、再び小突き。仕掛けを上げてみるが、エサはいっさい取られていない。このパターンで誘いをかけていくが、アタリはなかった。カワハギ釣りではタタキ、弛ませ、ゼロテンション、聞き上げ、誘い下げなど多彩な誘いがあり、その日の当たりパターンを見つけていく。
トモに入った常連さんは幸先よく2尾掛けていた。「ゼロテンからのタタキで喰って来ました。スローな釣りが効果的なようです」とのこと。ふた流しめも浅場の水深13m。ここではカワハギ釣りの代表的なエサ取りのトラギスがすぐに掛かってきた。するとすぐに小気味よい引きが阪本さんに訪れた。「これは間違いなく本命ですね」と抜き上げたのはワッペンサイズのかわいらしいカワハギ。しかし、待望の本命に破顔一笑だ。この後も単発的だが、アタリを捉えて数を伸ばしていった阪本さんだった。
この日はワッペンサイズが多かった
「誘い上げても喰わず、ベタ底で喰ってくることが多かったですね。また、キタマクラやトラギスが多く、エサ取りを避けるのが大変でした。魚がいるところといないところがはっきりしていました」と阪本さん。
カワハギ釣りの定番ゲストといえば、トラギス
「今年の夏は風が強い日が多く、ニゴリがなかなか抜けなかったです。水温も高めで推移していました。水温が下がってくると魚もかたまりだし、数釣りが楽しめるようになってきます。今日は出なかったですが、夏から初秋にかけては大型が出るのが魅力ですね。とはいえ、いい時はこの時期でも良型混じりで40尾ほどの釣果が出ることがあります。繰り返しになりますが、水温の低下と魚のかたまりしだいです。1月後半までロングランで楽しめるので、ぜひいらしてください」と船長。
テクニカルな釣趣で釣り人を熱中させるカワハギ釣り。これからはキモが肥大した〝キモパン〟が釣れるいい季節。刺身のキモ和えは絶品だ。釣って楽しい、食べておいしいカワハギ釣りをぜひ楽しんでいただきたい。
サイズ以上の小気味よい引きをみせたカワハギ。最後は一気に抜き上げた
底トントンの誘いで喰わせた
群れがまとまってくると数釣りが楽しめる。これからに期待したい