阪本智子の船釣り探見!

阪本智子の船釣り探見!
イサキ:本州中部以南の全国沿岸部に生息。潮通しのよい岩礁域を好み、水深50m前後にかけての高根の上に群れていることが多い。旬は晩春から夏とされ、良型は40cm近くなるが、小型も脂の乗った白身で美味しい

南房・布良沖のイサキ釣り

目次
  • 1:手応えのよいアタリと食味が魅力
  • 2:釣果につながる基本のコマセワーク
  • 3:小気味よいアタリが連発!

手応えのよいアタリと食味が魅力

釣りの対象魚として全国的にもポピュラーなイサキ。内湾にはほとんどおらず、基本的に外洋に面した磯の魚だが、釣ると手応えがよく、さらに旨みの強い身で、刺し身、塩焼きとどんな食べ方をしても美味しい。春から夏にかけて沿岸部でよく釣れるようになり、関東を含めた各地で初夏を代表する魚となっている。
〝梅雨イサキ〟の言葉もあるイサキは6月からが釣りのハイシーズン
5月上旬、今年もシーズンインしたこの釣りを楽しむために訪れたのは、千葉県の外房と並んで、昔からイサキ釣りが盛んな南房(南房総)の松栄丸。宿のある布良(めら)は太平洋に面した小さな漁師町で、東京湾に突き出た洲崎をさらに南に下った緑豊かな場所にある。この日は梅雨を先取りしたようなあいにくの雨まじりの天気だったが、結果的に今シーズンの順調な開幕を実感するのに充分な好釣果となった。
緑が濃い南房総の陸を眺めながらの釣りは気持ちも和らぐ
イサキ釣りはアミを寄せエサに使ったコマセ釣りだ。松栄丸の釣り場は港からすぐの布良沖。状況によって近くの洲崎沖や白浜沖まで行くこともあるが、水深は多くの場所で30mほど。深い時は40m近くまで釣ることもあり、逆に浅場がよい時は水深10mのポイントをねらうこともあるが、「いずれにしてもシーズンを通じて手巻きリールで充分釣りになります」とは、松栄丸の二代目でまだ20代後半という若き黒川智也船長。船長は松栄丸のもう1つの人気メニューであるルアー船に乗っていたこともあるが、現在はイサキやコマセダイなどエサ釣り全般を担当している。
「うちはプラビシ60号を一応の標準にしていますが、水深もそれほど深くないですし、オマツリもほとんど起きません。ですから、軽めの40号くらいを使う人もいます。ミチイトのPEラインも60号のプラビシを繰り返し振るなら3号くらいが安心と思いますが、最近はラインの品質もよいですし、1.5~2号程度でも充分です」とのこと。
片テンビンとアミコマセ用の60号プラビシは船宿で借りられる。テンビンの先には口が軟らかいイサキのためにクッションゴムをセット
仕掛けは船宿のオリジナル。全長3.3mの3本バリ仕掛け
もちろん、船宿によってはミチイト号数が指定されていることもある。その場合は指示に従う必要があるが、松栄丸に関していえば、オモリ負荷20~80号程度のライトゲームロッドと、PEライン1~3号を巻いたベイトリール、つまりライトアジ用のタックルがあればそのまま使える。阪本さんは東京湾の多くの船釣りでも愛用している「ライトゲームSSタイプ73MH 200」と「バルケッタBB300PGDH」の組み合わせ(ミチイトはPE2号)で釣りをした。
近年はライトタックルも人気のイサキ釣り。この日は「ライトゲームSS タイプ73 MH200」と「バルケッタBB300PGDH」の組み合わせを使用
ライトタックルの釣りでもサオ受けは安定感のあるものが好適。「ブイホルダー」は軽量でもしっかり船縁に固定できる
フィッシュグリップ、プライヤー、ハサミも必需品
イサキの魅力はまず美味しさだが、それに劣らず釣りも楽しい。沖合を回遊する遊泳力を備えているため、ハリに掛かるとアタリは「ゴンゴン」とサオを通じて明確に伝わる。タナには敏感な魚で、仕掛けがずれていると極端に喰わなかったり、あるいは潮が流れない時に喰い渋るなどの手ごわい状況もあるが、基本的には船長の指示ダナにきちっと仕掛けが入っていればOKだ。釣り座の有利不利もあまりなく、群れに当たれば船中でいっせいに釣れ盛る。阪本さんも「イサキはとにかく〝タナが大切〟っていいますよね。今日はそこを意識して、ダブル、トリプルも積極的にねらってみます!」と、雨雲もなんのそので釣りを開始した。

釣果につながる基本のコマセワーク

午前5時に出船。港を出て10分もすると船長がポイントに船を付け始めた。 「タナ16mです!」と最初のアナウンス。イサキ釣りのタナ取りは通常海面から。「タナ16m」といわれたら、「投入ではプラス3m(ここでは水深19m)まで一度プラビシを落とし、そこから3回ほどのシャクリを行なって、最後にプラビシを水深16mの位置に持ってくる」という指示になる。シャクリはサオを下げた位置から水平もしくはもう少し上まで行ない、続けてリールを巻きながらサオ先を下げるという動作が1セット。1セットでだいたい1m仕掛けが上がるので、3セットすれば3mプラビシの位置が上がることになる。この間、プラビシにはサオの上下動の影響で海水が通り、それによって中のアミがポロポロと外に放出され寄せエサになる。
寄せエサはアミコマセ。レンゲですくってたっぷりめにカゴに詰める
プラビシは下の隙間を完全に閉めて、上の小窓を1/3ほど開けるとよい
付けエサの人工エサは船で配られる。小さくカットされたものが乾燥しないように銀紙に包まれているので、必要分だけを少しずつ出してつかう
人工エサはハリに1つをチョン掛けでOK
1つコツを挙げると、イサキは寄せエサを撒いてやらないと釣れないので、落とし込んだあとは急いでシャクリを始めたくなるが、イサキ用の3本バリ仕掛けは長さが3m以上ありハリスも細め。そのため重いプラビシを落とし込んだ直後に急に動かすと仕掛けが絡むことがある。プラビシが指示ダナ+3mに届いてイトの送り出しを止めたら、仕掛け部分が落ち着くのを一呼吸待つイメージでシャクリ始めるとよい。
シャクリの幅はサオにもよる。胴に掛かるやや軟らかめのサオであれば「大きめにしっかりシャクるのがおすすめ」と船長。一方、この日の阪本さんのように、少し張りのあるライトゲームロッドであれば、短いストロークでも充分に海中のプラビシを動かせるので、サオを下に向けた状態から水平くらいまでの幅で、リズムよく早めにシャクリを行なうのもよい。
どちらの場合も、意外に見落としがちなのがプラビシの窓の開けぐあいの調整。アミはドバッと一度に放出されてしまうのではなく、シャクリに応じて少しずつ撒かれる状態がよい。松栄丸の場合は、下の隙間は完全に閉じ、上の窓を3分の1ほど開けるセッティングが船長のおすすめだ。
寄せエサの出し方
イサキ釣りは軽快なコマセワークがアタリと釣果を伸ばすコツ。プラビシの小窓を、ポロポロと少しずつ寄せエサが外に出るように狭めに開けておいたら、あとは「ビシを振る→リールを巻く」のセットを3回連続して行ない、その時点でプラビシが船長の指示ダナに来るようにして、あとはアタリを待つ。
①船長の指示ダナより3m下までプラビシを落とす。PEラインの色で見るほか、リールのカウンターの数値でまず問題ない
②指示ダナ+3mになったらイトを止め、海中の仕掛けが落ち着くのを一呼吸待ったら、プラビシをビシッと真上に持ち上げる
③そのままイトがたるまないようにリールを巻きながらサオを下げる。これで1mほどプラビシの位置が上がる
②~③を3セット行ない、プラビシが指示ダナに来たら、その場でサオを保持してアタリを待つ
④イサキのアタリはサオ先を「ゴゴン」と叩くように来るので明確。1尾掛かったら他のハリにもヒットするよう、追い乗りを待つのがこの釣りのセオリー

小気味よいアタリが連発!

最初の16mダナのポイントでは船中アタリなし。静かなスタートと思われたが、次の18mダナで釣りを始めた阪本さん。「何か強いアタリが来ました!」と、この日1尾目の魚を掛けた。すると姿を見せたのは磯釣りで人気のオナガメジナ。磯釣りの経験もある阪本さん、「オナガも美味しいですよね。うれしいお土産ですね~」と意外なヒットに思わず笑顔。すると、次の流しでも立て続けにオナガが掛かった。さらに22mダナのポイントではウマヅラハギもヒット。このようすを見た船長は、船をやや南東に向け別のポイントへ移動。オナガメジナが釣れる時はイサキが釣れにくい傾向があるとのこと。
最初の流しで釣れたのは磯釣りで人気のオナガメジナ!
オナガメジナはイサキに劣らず引きも食味もよい
午前6時半、少し移動した先の指示ダナは17m。小雨まじりの空模様は出船時から相変わらずだが、空もだいぶ明るくなってきた。するとここから、船全体で好釣果に突入する。
移動後、最初のシャクリを終えてサオ先を保持する阪本さん。
「あっ、1尾乗りましたね~。今度こそイサキかな?」。まずは魚を見極めようと焦らず引き上げると、30cm弱の待望のイサキだ。するとその後は、ダブル、トリプルと連掛けも何度も出て、流しごとにイサキがよく反応してきた。「今日はこっちのポイントがよかったみたいですね(笑)」と船長も一安心。手際よく釣りあげる阪本さんの姿に、同船のベテランさんも「シャクリもリズムがよくて上手だね」と感心する。
イサキは急なテンションを掛けると口切れによるバラシが起きやすい。最後はていねいにたぐってそのままスピーディーに船内へ
イサキは口が切れやすいので、待ち過ぎはバラシの原因にもなるが、群れでいる魚なので一尾が掛かったらしばらく追い喰いを待つとよい。掛かったイサキが暴れることで寄せエサが自然に撒かれて追加の喰いが期待できる。
「イサキはタナが大切というイメージもあるので、基本的に余計な操作はせずにそのまま追加のアタリを待ちました」という阪本さん。「2尾目が掛かると少し重さが増すような感じがあって、3尾掛かった時は明らかにそれまでよりも重たくなるので、タイミングを見て巻き上げました」と見事に数を伸ばす。入れ喰いタイムに入って1時間もすると、お土産用のクーラーはすぐ一杯になってしまった。
後半からは入れ喰いモードになり絶好調の阪本さん
短時間で数度のトリプルも出てクーラーはあっという間に満タン!
美味しい梅雨イサキをねらいにぜひ出掛けてみよう。