阪本智子の船釣り探見!

湘南エリアのヒラメ五目釣り
ヒラメ:沖縄をのぞく日本各地の水深20~200m前後に生息。砂泥底を好み、最大で80cm~1mになる。冬の間は深場に落ちているが、春から初夏にかけての繁殖期は浅場に来る。カレイに比べて口が大きく、エサを捕る時は中層まで泳ぎ上がったり、小魚を追って長距離を移動することもできる

湘南エリアのヒラメ五目釣り

目次
  • 1:イワシが入れば季節到来!
  • 2:釣ったイワシはこまめに管理
  • 3:イワシは下アゴから上アゴに向けてハリを刺す
  • 4:根の周りで仕掛けをステイ。待望のヒット!

イワシが入れば季節到来!

4月上旬の週末、阪本さんがやってきたのは、湘南平塚の相模川河口にある庄三郎丸。お目当ては、毎年この季節になると始まる「ヒラメ五目釣り」だ。
ヒラメ五目はこの時期の庄三郎丸でも人気の釣りもの。週末とあって港は大賑わい
ライトタックルのヒラメ釣りといえば、外房で人気のマイワシを使ったライトヒラメ釣りがある。一方、ここ湘南で行なわれているのは、より小型のカタクチイワシ(以下、イワシ)をまずサビキ仕掛けで釣り、それを生きエサにして、カサゴなど他の根魚も含めてねらっていくというもの。仮にイワシが思ったように調達できない場合は、サバの身エサに切り替えての根魚五目になる場合もある。ねらいは本命のヒラメを筆頭に、状況に応じて小型のオオニベ、カサゴ、マハタ、アカハタ、マダイ、ムシガレイなど。より五目感が強いといえるかもしれない。
出港して最初に使うのはサビキ仕掛け。出船前に船で配られる。サビキ釣りでは比較的表層をねらうので、オモリは20号程度が使いやすい
イワシが充分に確保できたら、仕掛けをヒラメ用の2本バリ仕掛けに交換。船宿推奨仕掛けがおすすめだ。オモリは50号が標準
この釣りは相模湾にイワシの群れが入って来るとスタートする。その時期は例年3月中頃からで、ハイシーズンは5~7月。ヒラメが本格的にイワシに付く(よく食べる)ようになると、5㎏、8㎏といった大判ビラメも出るようになるというから、五目釣りといってもチャンスは充分でサイズもあなどれない。
今年も3月にいい群れが入ってきたそうで乗合船がスタート。幸先よくヒラメも上がったが、その後、思ったように群れが続かず一段落したという。それでも、毎年今頃からは期待できるとのことで、この日も片舷に10名ずつの満員御礼となった。風は穏やかで快晴。ただ、実は前日まで南西の強い風が吹き船はお休み。海も底荒れが予想され、「まずはイワシの群れがどこかに行ってしまっていなければいいのですが」と、期待と少々の不安とを抱えてのスタートだった。
ロッドは2019年から〝X シートエクストリームガングリップ〟を採用した、新しいライトゲームCI4+(Type73 MH225)を使用。非常に快適にパーミングができる。リールはバルケッタBB 300PGDHを用意した
「今までにないグリップで最初は驚きましたが、本当に使いやすいんです」と阪本さんもすっかりお気に入りだ

釣ったイワシはこまめに管理

6時半に平塚港を出た船は、すぐにエンジンをスローダウン。お隣の常連さんから、「なかなか群れに当たらない時は、2時間くらい走りまわることもありますよ。逆にいい時には100尾くらいすぐなんて時もあるんですけれどね」と聞いていただけに、少し驚く。
すると「仕掛け用意しておいてください。上からのタナで行きますよ」とうれしいアナウンス。どうやらさっそくイワシの魚影があったようだ。ちなみに小サバが釣れる時もよく泳ぎ丈夫なのでよいエサになるそう。
第1投目は「上から2m」の指示。仕掛けを下ろし、しばし待つと、すぐにブルブルっと喰いついた。「これならエサは心配なさそうですね」と阪本さんも声が弾む。ただ、いざ釣れてみると、掛かったイワシを手際よくハリから外すのがなかなか難しい。カタクチイワシは非常に弱りやすく、可能な限り手で握らないほうがよいのだが、バケツのヘリに当ててハリを外していくものの、これがけっこう手間取る。常連さんはハリ外しを活用していたが、非常に使いやすそうだったのでおすすめだ。
イワシのタナは海面から4~7m。タナが合えばすぐに喰いついて来る
まずはだいじな生きエサが鈴なり!
バケツには常に新鮮な海水を流しておく必要がある。船長も注意してくれるが、船の移動時などに「ホースがうっかり抜けていた」ということが起きると、せっかく釣ったイワシが全滅なんてことも。ある程度の数が釣れたら、バケツを2つに分けて管理するのもコツ。そのほか、元気なイワシが跳ねて外に出ないように、常連さんには船に備え付けのザルや持参したタオルを濡らしてバケツに被せている人がいた。
常連さんはハリ外しを持参していた
大切なのが釣ったイワシの管理。足もとにバケツを置き、常に海水を循環させておく
ホースが抜けていないかは常にチェック。船長からもたびたび「注意してくださいね」とアナウンスがある
その後は群れがバラけてしまったようで、船長が「ちょっと東に走ります」とアナウンス。到着したのは茅ヶ崎沖。すると群れが無事いたようで、結局、船中の皆さんがそれなりにイワシを確保できるまで、2時間ほどはサビキ釣りタイムとなった。

イワシは下アゴから上アゴに向けてハリを刺す

8時半を回ったところで、「そろそろ切り替えましょう」といよいよヒラメ釣りがスタート。イワシの刺し方は、ハリ先を下アゴから上アゴに抜く。水流抵抗を受けた時に、イワシの口が開いてしまうとすぐに弱るからだ。手際よくイワシをセットし仕掛けを投入するには、まず少し余裕を持ってミチイト(もしくはリーダー部分)をサオ先から出しておく。そこからは、まず上バリにイワシを刺してそのまま海に入れる。続けて、下バリにイワシを刺したら、オモリと合わせて両方を静かに海面に置くように入れる。あとは急な抵抗がイワシに掛からないように、サミングしながら仕掛けを落としていく。
東京近辺ではシコイワシとも呼ばれるカタクチイワシ。さまざまなフィッシュイーターに捕食されるが、実は食べても美味しい
イワシは下アゴから上アゴにハリ先を抜いてセットする
釣り方は基本的にオモリで底を取っていればOK。ただし、船は根周りを流すこともあるので、タナの取り直しはこまめに行なう。この日の釣り場は、最初が茅ヶ崎沖と少し西に戻って平塚沖の水深10~14mライン。すると3流し目で「今、アタリがありました!」と阪本さん。ただ、はっきりとした喰い込みはなく、魚の姿は見られなかった。他のお客さんもこれといった反応はなく、魚の活性はそれほど高くないようで、船長からは「タナは底から10cmくらいオモリを上げるつもりでやってみてください」と指示がある。

根の周りで仕掛けをステイ。待望のヒット!

9時45分、「イワシの反応はありますが、底荒れもあるみたいなので西の水深40mラインに行ってみます」と船長。船は大磯沖にやって来た。「水深42mです。ここは少し根があってヒラメのほかにニベ(ここではオオニベの幼魚のこと)もよく出ます。当たったらしっかり合わせてください」のアナウンス。
すると阪本さんと同じ左舷の胴の間にいたお客さんに45cmのきれいなオオニベがヒット。続けて右舷の前から2番目に入っていたお客さんも同じく釣りあげた。これで船中が少し活気づく。船はさらに西へ移動。水深は再び11m。すると小型ながら左舷大ドモのお客さんに待望のヒラメが来た。
船中最初の連続ヒットはオオニベ(の幼魚)。根周りにいる
すると、阪本さんが引き上げたイワシに魚の噛み跡が付いてきた。鋭い歯でやられた感じではないので、ヒラメかどうかは判別しかねたが、チャンスはあるようだ。すると3月に入ってから実績のあったという低い根周りなど、こまめにポイントを変えていくうちに、左舷の前寄りにいたお客さんが小型のヒラメ、さらにトモ寄りにいたお客さんが良型のクロダイ、さらに先ほどオオニベを釣ったお客さんが今度は1㎏弱のヒラメをヒット。皆さん、仕掛けはほぼステイ状態。サオ先で静かにトントンと底をキープしているような釣り方だ。
「アタリはけっこうあるんです。でもなかなか釣れない~」とガマンの時間が続いた坂本さん
このイワシは頭から下がきれいに喰われていた
こんな歯形が残って来たことも
11時20分、しばらく静かだった阪本さんが、「あー、今バラシちゃいました!」と声を上げる。「実は何度か喰って来ている感触があったんですけれど、〝これではまだ合わせられないな〟と感じているうちに反応がなくなってしまう繰り返しで、今日はちょっと渋いのかな~。でも頑張りますよ!」と気を取り直す。船長も「今日は潮がほとんど行って(動いて)なくて、時間はかかるんですけれど、それでも船はしっかり根の上を流れています。このポイントも掛かるところなんですけどね」。どうやらガマンのしどころだ。
すると11時50分、ついに阪本さんのサオ先がしっかり曲がり込んだ。「今のは触りがあったあとに、ドンと来たのでしっかり合わせられました!」。慎重にリールを巻くと、海面に現われたのは本命のヒラメ。集中力を切らさずねらいどおりに釣れた1尾はやっぱりうれしい。
根魚が多いポイントへ移る直前、ワンチャンスを見事にとらえて待望の本命をヒット!
「諦めずに粘って無事に釣れました!こんな1尾はうれしいです」
このあと、船はさらに西に移動。12時半頃からは国府津沖の水深50mラインをねらい、船全体でカサゴやアカハタなどの根魚が顔を見せるようになった。阪本さんもカサゴを追加。なかには「いいアタリで、ヒラメかもと思っちゃいました(笑)」という元気な良型もいて、そのまま午後1時半過ぎに沖上がりとなった。
イワシでねらう湘南のヒラメ五目は、まだまだこれからがハイシーズン。何が釣れるかの楽しみもあるので、ぜひチャンレジしてみていただきたい。
後半は船全体でカサゴがよく当たった
後半の根魚ポイントでアカハタをヒットさせた常連さん
手持ちで釣り続けても疲れにくいXシートエクストリームガングリップ。こまめなサオ操作が生きるこの釣りにはぴったりだった