阪本智子の船釣り探見!

阪本智子の船釣り探見!
この日の本命はアジ。開始早々にさっそく2連掛け
マアジ(アジ):背中は暗い緑色で側面は金色、腹側は銀白色。ただし生活場所によって異なる。沿岸の岩礁に居着くタイプは体色が黄みがかっていて、比較的体高がある。沖を回遊するタイプ全体的に黒っぽく、体型も居着き型と比べて細長くなる。 おもなエサは動物プランクトンや甲殻類、多毛類など
カサゴ(上)、メバル(下):カサゴは浅場から水深200m 前後の深い岩礁域まで幅広く生息。海底の岩の隙間やテトラの間などに潜んでいることが多い。物陰を好み、夜間になると活発に泳ぎ回って甲殻類や小魚などを丸呑みにするが日中も釣れる。メバルも岩礁の周囲を群れで遊泳するが、海底を好むカサゴに比べ中層で立ち泳ぎしていることもある。 肉食性で多毛類や甲殻類のほか、小魚なども捕食する

横浜・金沢漁港沖のライトウィリー五目釣り

目次
  • 1:対象魚は何でも!のリラックスした釣り
  • 2:タナは底から3mまで。正確なシャクリが大切
  • 3:アミコマセはポロポロ放出がキモ
  • 4:ライトウィリー五目ならマダイのチャンスもある

対象魚は何でも!のリラックスした釣り

5月上旬、阪本さんがやってきたのは横浜からも近い景勝地として知られる金沢八景の金沢漁港。その中でも老舗として知られる忠彦丸だ。
ライトウィリー五目釣りは、その名のとおり「何でも釣ってみよう!」という気軽な釣り。ねらえる魚はアジ、カサゴ、メバル、マダイ、クロダイ、イサキ……季節や場所に応じていろいろだ。東京湾のほか相模湾でも盛んに行なわれている。
タックルは全体的にLTアジ釣りに似ているが、寄せエサにイワシミンチではなくアミコマセを使う。そのため、ビシカゴのタイプが異なり、サニービシなどのプラスチック製でコンパクトなアミコマセ専用のものを使う。この日のアミコマセ用ビシは40号。
船宿で貸し出していたのは中央部が折り曲がるタイプ。この中にアミコマセをしっかり詰めて使う。そして上窓は最大で半分だけ開ける
仕掛けは3本バリの吹き流し。上2本は疑似餌のウィリーバリで、一番下は空バリになっており喰わせエサとしてオキアミを付ける。LTアジの釣りに比べて、掛かってくる魚がよりバラエティーに富んでいるのが特徴だ。なお、魚の活性が高ければ、ウィリーバリには何も付けずにそのままでよいが、実際はウィリーバリにもアオイソメをチョン掛けで付け足してやるとよい。
ウィリーバリはそのままでもよいがまずはイソメをチョン掛けして使うとよい
付けエサのオキアミとウィリーバリに付け足すアオイソメ
オキアミは尻尾の先端をハサミでカットしたところにハリ先を入れ、オキアミがまっすぐになるようにセット
アオイソメは1cmほどタラシを取ってウィリーバリにチョン掛けする
サオは1.8~2.1mで7:3調子のライトな船釣り用ロッドが好適。ねらうポイントの水深は深くても30mほどまでのことが多く、手巻きの両軸受けリールで充分対応できる。水深を表示してくれるカウンターが付いていると便利だ。阪本さんは船長のおすすめもあり、『シマノ ライトゲームSS73 MH200』に『シマノ バルケッタBB300PGDH』の組み合わせを選んだ。
サオはシマノ『ライトゲームSS73 MH200』。リールはカウンターが付いて幅広い船釣りに使いやすいシマノ『バルケッタBB 300PGDH』
ライトタックルの釣りでもサオ受けは簡易的なものではなくしっかりしたタイプを使うほうが安心。シマノ『ブイホルダー』は高いデザイン性に加えて角度調整などの機能が付く
その他に忘れず用意したいのがハサミ、フィッシュグリップ、ウエットティッシュまたはタオルなどの手拭き。アジやカサゴは意外に尖った部分があるので素手よりもフィッシュグリップがあると釣りの手返しがスムーズになる。そしてウエットティッシュはこれからの季節に多くなるアカクラゲの触手やヌタを仕掛けから取り除く際の必需品だ

タナは底から3mまで。正確なシャクリが大切

出船は午前7時。「何が釣れますかね~」と、ライトタックルでの五目釣りにリラックスムードの阪本さん。竹村昭則船長によれば、今日の本命はまずはアジで、そのほかに起伏のある根周りではカサゴの期待が大きいとのこと。他にも目星を付けている対象魚はいるとのことだが、はたしてどうなるだろうか?
アミコマセが冷凍状態の時は海水を入れてとかしておく
出港後、ポイントに着いたらまずアミコマセの入ったバケツを船の外側に出す。その後は釣り終了までこの状態で釣りをする
まずは船長に基本的な釣り方をレクチャーしてもらう。「タナは底から3mまでです。底ダチを取ったら、一度大きめにシャクって、サオ先が戻ったらそのまましばらくアタリを待ちます。そのまま何もなければ、サオ先を下げながらリールを1回巻いて(約1m)、再びシャクって待つ。これを3回行なってください。これで海底から3mまでのタナを探ったことになり、最後までやって何も反応がなければ、その場で上下にビシカゴをゆすって最後のアタリを待ってもいいですね。潮流などにもよりますが、これを3~4セットやったら仕掛けを上げてアミコマセを詰め直します」
「この釣りは手返しが大切なので、もし途中で魚が釣れて仕掛けを引き上げた時、アミコマセがまだカゴに半分以上残っていたら、そのまま再投入します。釣れている時になるべく時間を空けずに次のアタリをねらうことが大切です」
魚が釣れて引き上げたカゴにこれくらいアミコマセが残っていたらそのまま再投入しよう
アタリはシャクリを入れてから巻き下げて行く時にドドンと来ることも多いとのこと。なお、サオが軟らかすぎると一連の操作がしにくいので、前述のとおり7:3以上の先調子のものを選ぶ。

アミコマセはポロポロ放出がキモ

天気はあいにくの曇り。風と波も若干ある状況だったが、水深23mのポイントをねらった1流し目でまずは可愛いサイズのカサゴが阪本さんに来た。「これはリリースサイズですね~(笑)」と阪本さん。するとほとんど間を置かず、同じ左舷のトモに入っていた他のお客さんにアジがダブルでヒット。「アジも来たよ~」と船長から発破をかけられる。すると8時30分、阪本さんにもアジがダブルでヒット。これで調子が出ると、10分後には充分お土産にできる良型カサゴを含むカサゴのダブルも来て一気に船上は賑やかに。しばらくは船の位置を変えて新しい流しをするごとにアジ、カサゴ、さらに底よりも少し上のタナでメバルがヒットしてきた。
開始まもなくはアジが順調に釣れた
ライトウィリーの釣りで大切な調整の1つがアミコマセの放出量。カゴに詰めるアミコマセはまず目一杯詰めるが、上下に窓が付いているカゴビシを使う場合は、下窓は必ず全部閉じ、上窓は半分もしくは3分の1だけ開けるようにする。コマセの出しすぎは禁物で、シャクリに合わせてポロポロと少量ずつのアミコマセが放出される状態を目指す。
○ このようなタイプのビシカゴの場合は上窓を半分だけ開けたうえで、下窓はすべて閉める
× 上下の窓が余分に開いているとアミコマセがすぐに出切ってしまうので注意
これにはシャクリ方も関係してくる。阪本さんは最初からできていたが、サオを目一杯上まであおるようなシャクリは「大きくシャクリすぎですね。誘いは小幅で鋭くが正解です」と指摘があった。シャクリはサオ先を斜め下に構えた状態から、水平位置までを基本に50~60cmの小さな幅で行なう。それによって、コマセがポロポロと少しずつ撒かれる状態が作れるからだ。
○ シャクリはサオ先を下げた状態からこれくらいの水平位置までビシッと小幅に行なう
× これは大きすぎるシャクリの例。これだとアミコマセがカゴから出過ぎてしまう
いずれにしても、大切なのはシャクッた時に振り出されたコマセの中に、仕掛けのウィリーバリが馴染んでいること。これができればアタリが得られる。
同船のお客さんも順調にヒット

ライトウィリー五目ならマダイのチャンスもある

午前中は順調にアタリがあったのだが、その後、潮止まりの10時30分を迎えるころからアタリが遠くなってきた。また、ここに来て海水温が上がり増えてきたという通称ヌタ(潮が悪い時に発生する植物プランクトンの死骸)も仕掛けを下ろすたびにハリスやミチイトに絡みつく。
他にも東京湾ではアカクラゲの長い触手が仕掛けに絡んでくることもよくある。これらがまとわり付いてきた時は、ウエットティッシュやタオルでこまめに拭き取るようにする。ちなみにアカクラゲの触手の場合、素手で触って大丈夫な人もいるが、いずれにしても刺激物であり目に入ると厄介なので必ず最後まで水で洗い流すことを忘れないようにする。最も気を付けたいのが船べりなどにこすりつけて落とした時で、これを洗い流さずそのまま放置してしまうと、乾燥したあとに刺激物となってあとから近づいた人に迷惑を掛ける。
潮止まりで船長が流してくれたのは、「ここはマダイもねらえるポイントなんですよ」という場所だった。残念ながらこの日はヒットしなかったが、オキアミを付けエサにするライトウィリー五目では、アジやカサゴだけでなくマダイも充分にねらえるターゲットだ。
良型カサゴを含むカサゴのダブルヒットも! いろいろ釣れるのがライトウィリー五目釣りの面白いところ
波っ気も強まってきたため、無理せず30分ほど早上がりとなったが、終わってみればアジだけでも20尾近い充分な釣果。手持ちのタックルで小気味よいアタリを楽しめるライトウィリー五目釣りは、船釣り入門にもぴったりの釣りものだ。