阪本智子の船釣り探見!

阪本智子の船釣り探見!
イシモチ:標準和名はシログチ。ニベ科シログチ属の魚で東北地方以南の日本各地に生息する。一般的に釣れるのは20~40cmクラスだが、50~60cmに成長するものもいる。船釣りでは12月から翌年3月頃がハイシーズン

東京湾・本牧沖のイシモチ釣り

目次
  • 1:チャレンジしやすくて奥が深い
  • 2:基本は底ねらい。釣り始めると意外に忙しい
  • 3:時合が来たら手返し重視!

チャレンジしやすくて奥が深い

気軽に心地よいアタリが楽しめて、食べても美味しいのが東京湾のイシモチ釣りだ。年が明けた1月上旬、やってきたのはこの釣りの予約乗合船を実施している「金沢八景 鴨下丸」。出船は午前7時30分。最寄り駅からの送迎もしてくれる。
秋から春までロングランで楽しめるイシモチ釣りは船釣り入門にもぴったりだ
イシモチ釣りのシーズンは、例年9月の後半から5月の前半頃まで。ある程度の低水温期に、近場の砂泥底で群れになっているところをねらう。鴨下丸の場合、釣り場は北隣の本牧沖やすぐ前の金沢八景沖の水深30 m前後か、南下してもう少し深場の猿島沖や観音崎沖の水深40~60mのポイントだ。仕掛けはミチイト2号、オモリ30号が指定。この日は本牧沖が主な釣り場になった。
サオはシマノ「ライトゲームSS TYPE73 MH200」、リールはシマノ「バルケッタBB 300PGDH」。ミチイトは船宿指定のPE2 号。置きザオでもねらえるので、しっかりとしたサオ受け(シマノ「ブイホルダーSP」)もあると便利だ
イシモチ船の舵を握ってくれたのは親方の鴨下芳徳船長。イシモチ釣りは複雑なことはないが、アタリを継続的にだすにはこまめな底取り、定期的なエサのチェック、魚の活性に合わせた誘いやアワセといった基本がだいじになる。だから船長も「この釣りは船釣りの基本を身に付けるのにぴったり。それでいてやり込む面白さもあります」と太鼓判を押す。今シーズン最大といわれる寒波が上空に入り、朝は0℃とかなり冷え込んだ東京湾だったが、「風と海は穏やかですし、美味しいお土産をしっかり釣れるように頑張ります!」と阪本さんもさっそく準備にとりかかった。
ムツバリ3本の船宿仕掛けは受付で購入できる。オモリは30号
エサは船上でアオイソメが配られる
釣れたイシモチの口からスムーズにハリを外せるよう、しっかりと魚をホールドできるフィシュグリップ(上)も用意。ハサミは魚を締めるのにも使う
冬場の釣りに欠かせないのがフィッシンググローブ。スムーズにエサ付けできるよう、シマノ「クロロプレンEXS フィンガー3カットグローブ」など指先が出ているものがよい
寒い季節は足もとも濡れに強い長靴タイプがベストだ

基本は底ねらい。釣り始めると意外に忙しい

八景島シーパラダイスを眺めて出船
この日は気温こそ低いが、風は比較的穏やかで海もよい凪だった
澄んだ空気の向こうに富士山がくっきり
ずんぐりとした大きな頭で、エサを丸呑みしそうな風貌のイシモチだが、「実際は吸ったり吐いたりしながらエサを喰べているようです。だから適当なアワセをしていると、たまたま釣れる時はよくても後が続きません」と船長。エサはアオイソメ。これをムツバリに縫い刺しし、タバコ1本分ほどのタラシを残す。「どんな釣りでもエサ付けって大切ですよね。今日も船長のアドバイスをしっかり聞いてやります」と阪本さん。
アオイソメの付け方
アオイソメの口の下を指の腹で上下から押し、口が開いたらハリ先を入れて外に抜く
そのままだとチョン掛けだが、2~3回ハリ先で縫い刺しにし、チモトのほうにこき上げたら、フトコロからタバコ1本分(6cmほど)タラシを残して余りをカットする
タラシが切れたら、縫い刺しにした余りはそのまま軸に残して新しいエサを追加する
アタリはサオ先に明確に出ることが多いが、口の周囲が硬いこともあって、掛け損ないやハリ外れもよく起きる。
「魚の活性が高ければ、上バリも含めて丸呑みされる釣れ方もありますが、渋い時はアタリを感知してからの〝聞く動作〟と〝掛けるためのアワセ〟の2段階をうまく使い分けられるといいよね。聞く動作で魚の重さが乗ってないなと思ったら、速やかに仕掛けを送ってやる。それでしっかり吸い込ませてから、もう一度聞いて合わせる。この駆け引きを2、3度やったところで釣れることもよくありますよ」
アタリのシグナルのあと、聞きアワセを挟んでしっかり魚を乗せられると「ねらいどおり!」の快感
オモリが着底したら、あとはサオを水平近くに構えた状態で、船の揺れで時折りオモリが底を叩く程度に調整。基本は底近くでエサがゆらゆらと揺れていればOKだ。その状態で置きザオでもよいが、手持ちの場合はオモリが底から離れすぎない範囲で、ゆっくり誘ってやるのもよい。
水平を基本にこまめに底ダチを取り、オモリを底から離しすぎないようにして「ガガガン」とサオ先を揺らすアタリを待つ
スタートから快調な阪本さん。イシモチは意外に力強く引き味もよい
「魚は底付近。こまめに底を取りつつ、しばらくアタリがなければ、たまに大きく仕掛けを巻いて入れ直すのもいいですよ」と船長。のんびりしているようで、実は忙しい釣りなのである。

時合が来たら手返し重視!

本牧沖に到着した午前8時に釣り開始。周囲には他にもイシモチねらいの船が数隻浮かぶ。と、開始から15分ほどで、さっそく阪本さんのサオ先がガクガクと揺れた。この日は穂先がグラスソリッドで一定の長さもある、シマノ「ライトゲームSS TYPE73MH200」をチョイス。
「ものすごく寒いせいか、たまに誘ってもみるんですけれど、基本的に動かしすぎないようにしているほうがアタリが出るようです」と阪本さん。あとは船長のアドバイスを思い出しながら、焦らず聞きアワセも入れて、手応えを得たところで大きくあおる。簡単に連発とは行かないものの、たまに30cmを超える良型も顔を出した。
この日のグッドサイズは31cm
さっそくペースを掴み始めた阪本さんに、船長も「どんな魚もそうだけれど、イシモチは潮の動きによって、よく喰う時間帯となかなか釣れない時間帯とが分かれます。数を伸ばすには、周りも含めてパタパタッと釣れている時は特に集中。その時はエサもちょっとハリに残っていれば大丈夫なので、なるべく早く次をねらうといいね」とさらにアドバイス。エサ付けでしっかり縫い刺しをするのもこのためだ。
日が高くなるにしたがい、かじかみがちだった手も温まってきて「グングン引く手応えもいいし、とっても楽しいです(笑)」と阪本さん。
標準和名にある〝グチ〟は、釣りあげた時に「グー、グー」と鳴く音が、まるで愚痴をこぼしているようなので付けられたという
最初は静かに待つのが奏功するケースが多かったが、活性が高まってくるにしたがって、「今度は誘いを入れると当たるようになって、そのあと何度か駆け引きしたところで乗ってくるようになってきました!」という場面も見られた。
釣れる時にはテンポよく釣れつつ、渋い時間帯は下バリのエサがなくなっていたり、短いままのエサではなかなかアタリが出ないことも多い。状況判断がテキパキとできるほど、釣果がアップするところもこの釣りの奥深さだ。
「よく引くと思いました(笑)」と思わず笑顔の一荷もあった
午前10時過ぎには、良型混じりで10尾を超えて美味しく食べられる量も充分に確保。クセのない白身は、ヌメリのあるウロコだけしっかり落としてやれば、刺し身、塩焼き、空揚げ、なめろう、さらには干物とどんなふうに食べても美味しい。アタリにくわえてアフターフィッシングもばっちり満喫できる身近なイシモチ。シーズンはまだまだこれからなので、ぜひ挑戦してみてほしい。
釣ったイシモチは船上で血抜きすると鮮度が長持ちする。エラの下からハサミを横向きに奥まで入れ、切ったら足もとのイケスにしばらく泳がせ、折りを見て氷を入れたクーラーに移せばOK
持ち帰る際は、氷の他に魚がひたひたに浸る程度の海水を入れる「潮氷」で。これで旨みが逃げない