阪本智子の船釣り探見!

阪本智子の船釣り探見!
タチウオは北海道以南の全国沿岸部に生息。表層~水深400m前後の海底に群れて生活し、汽水域に入ってくることもある。大きさは最大で1.5mほど。全身が銀色に輝き、触っただけで切れるほど鋭い歯を持つ。サバなどの身エサを使ったエサ釣りのほか、メタルジグなどのルアーでねらう方法も人気。煮ても焼いても、あるいは刺し身で食べても美味しい

第4回 東京湾のタチウオ釣り

目次
  • 1:夏と秋冬、2回のハイシーズンが楽しめる
  • 2:トラブルの少ない1本バリ仕掛けがおすすめ
  • 3:指示ダナに届いたら誘いを開始
  • 4:小さめの誘いが奏功
  • 5:鋭い前歯に気を付ける

夏と秋冬、2回のハイシーズン

全身が銀色に輝くタチウオは、秋から冬にかけて東京湾で人気の高い釣りものの1つ。その名は刀(太刀)のような姿から付いたとも、あるいは海中を立つように泳ぐことから付いたともいわれる。
東京湾では7~8月頃の夏場にまず「夏タチ」と呼ばれる、第一ラウンドの浅場(水深10~20mほど)のライトタックルの釣りが富津~竹岡沖の千葉県側で始まる。その後、徐々に深場に落ちていくにしたがって、秋~冬にかけては千葉県側の金谷沖、さらに観音崎沖、下浦沖、走水沖などの神奈川県側の深場(水深80~100m)で釣果が聞かれるようになる。観音崎沖でよく釣れるようなシーズンは好釣果が続くことが多い。
今回乗船したのは、観音崎沖まで航程30~40分の金沢八景にある一之瀬丸のタチアジ(タチウオ&アジ)リレー乗合船。東京湾の船のタチウオ釣りは日中の釣りになる。ちなみにアジ釣りもタチウオ釣りの仕掛けにコマセカゴを追加し、仕掛けをアジ用に替えるだけでロッド、リール、ミチイトは同じまま楽しめる。
デイゲームのタチウオ釣りは、船釣りの楽しさを知るにもぴったり
大型の船はトイレもきれいで女性でも快適だ
観音崎沖は平日でもこの賑わい

トラブルの少ない1本バリ仕掛けがおすすめ

ロッドは2m前後で操作性のよい穂先としなやかな胴を合わせ持つタチウオロッドが好適。この日の阪本さんは「リアランサー タチウオ64-ML210」を使用。リールは深場を探るので電動リールがおすすめ。一之瀬丸では電動タックルのオールレンタルもできる。今回は10㎏の青もの釣りからアジ釣りまで船釣りを幅広くカバーできる「フォースマスター800」をセレクトした。ミチイトはオマツリの可能性もあるのでPE4~5号を200mほど巻いておきたい。
「リアランサー タチウオ64-ML210」は6:4 調子で30~120 号の幅広いオモリ負荷に対応。繊細なグラスソリッド穂先で食い渋り時も長時間エサを追わせ続けられる1本
「フォースマスター800」は東京湾で楽しめる幅広い船釣りに対応するオールラウンダー。400番から2000番の守備範囲を余裕でカバーするパワーと軽さを兼ね備える
仕掛けは片テンビン仕掛け。オモリは80~100号。エサはサバの切り身で、2/0か1/0のハリが付いたタチウオ仕掛けをアームの先にセットする。タチウオ用のハリはシャンク部分にエサがズレにくくなるケンが付いており、チモトにはハリスを保護するビニールチューブが被せてある。2本バリ仕掛けまたは1本バリ仕掛けで釣るが、トラブルが少ないのは圧倒的に1本バリだ。
この日は潮が速く、オモリも80号から100号に途中で変更になった
仕掛けは1本バリまたは2本バリ。この日は「1本バリのほうが釣果も出ている」とのことで1本バリを使用
片テンビンは短い側のアーム(写真のものではイトが巻かれている側)にミチイトを、長い側のアームに仕掛けを接続
サバエサの付け方
出船前、まずアドバイスを受けたのがエサの付け方。「エサは水中で回転しないように、また、シャクリなどの途中でズレないようにしっかりと縫い刺しにします」「まずは短冊の中心にハリを通すようにしてください。また、チモト部分になるべくエサの出っ張りができないようにするのもコツです。余りはハリ1本分ほどを残してカットします」。タチウオ釣りではエサを海中でしっかりと動かして誘う。この時に、エサがハリの上でズレるようだと釣果が落ちる。正確なエサ付けが好釣果の第一歩。あとは小魚が上へ上へと逃げるイメージで、シャクリながら躍らせてタチウオに食いつかせる
サバエサは船内で配られる。青い背中のほうからハリを刺し通していき、余りはハサミでカットする
皮面を手前に向けてエサを持つ。ハリを刺すのは青い背中側
なるべく端の中心部に垂直にハリを入れる
ハリ先が身側からわずかに出たらすぐに皮側に折り返す
皮側からハリ先を抜いたら、チモトのほうにエサを寄せる
エサを少し曲げながら下部の中心部に再びハリを刺す
ハリ先を身側から完全に出す
余りはハリ1本分ほどでカットすればOK。水の抵抗を受けにくいように、チモト付近(緑にパーツとエサが接する部分)に余分な出っ張りを作らないのがコツ

指示ダナに届いたら誘いを開始

タチウオは鋭い歯を持つフィッシュイーター。釣り方はシャクリによって逃げる小魚を演出し、追いかけて食いついてくるタチウオをハリ掛かりさせる。その際、タチウオは一度でエサを食い切らず、噛みついては放す捕食動作を繰り返しながら最後にエサを飲み込むとされる。エサだけを持っていかれることも多く、早アワセはバラシにつながり、遅アワセはハリスが切られる。かといって、動きの悪いエサでは食いが悪いので、ハリスにワイヤは使用しない。また釣れるパターンが日ごとに変わり、効果的な誘いが一定しないのもタチウオ。その日のアタリをいかに出すか、いかにバレや切られがないフッキングをするか、ゲーム性が高い点も人気の理由になっている。
シャクリは小さい時で30㎝ほど、大きい時でサオ先を下に向けた状態から水平まで動かす範囲で行なう。その際は、テンビンを海中でしっかり動かすイメージを持つのも効果的だ。
タチウオ釣りでは、まず魚探の反応を見ている船長からねらうタナの指示がある。この時、「底から10m」といった指示が出る場合もあるが、「60~70mで反応が出ています」とねらうタナ(水深)を直接指示されることが多い。
この時に大切なのがラインの色をよく見ておくこと。「リールのカウンターだけでなく、(10mごとの)ラインの色でもしっかりイトを出した量を把握しておいてください。カウンターの数値は潮の状況でズレが生じることもあります。特にアタリがあった時は、何色(何m)でアタリが出たかを把握しておき、次の投入もその色を目安にしてください」と船長。
また、小さく誘う、大きく誘う、早く合わせる、送り込む、その日のアタリパターンをいち早くつかむには、釣れている常連さんの誘いの幅やテンポなども参考にするとよい。

小さめの誘いが奏功

大阪湾など関西の釣り場ではタチウオ釣りの経験がある阪本さん。大阪湾でのタチウオ釣りは、大きなヘッドに大型のハリが付いたテンヤでねらうのが定番だ。テンヤのハリに冷凍のイワシを縛り付け、タチウオのいるタナで動かし、当たってきたところで頃合いを見計らって大きく合わせる。フグのカットウ釣りのように、口もと付近に積極的にハリを掛けていくのだ。
そうした釣り方のイメージも残っていたため、最初のうちは比較的大きく誘っていた阪本さん。だが、投入直後から仕掛けが大きく前方に流されるほど潮が速かったこともあり、船長が「特に潮が速い時は、あまり大きく誘ってもアタリが分かりません。誘いはもう少し小さくしていいですよ」とアドバイス。すると間もなく本命のアタリが来た。ロッドにしっかり重さが乗ったところで、サオを水平より上方まであおってフッキング。続けて電動リールで巻き上げると、グイグイと力強い引きでタチウオが抵抗する。
この日のシャクリは短めにトントンと入れる感じ。違和感のような重さを感じると、その後に本アタリが出ることが多かった。シャクって反応がない時は、2回ほどリールを巻き、少しずつ誘う層を上げながら船長の指示のある範囲を探っていく
誘い
アワセ
良型のタチウオはグイグイと充分な手応えでサオを絞り込む。巻き上げはスローだと他の乗船者とのオマツリが起きる可能性もあるので、中速以上で手早く行なう
この日はこれが1つのアタリパターン。投入後、ラインを見てタナに達したところで、トーン、トーンと小さめのシャクリを2~3回。そこからアタリを聞きつつ水平までサオを上げ、変化がなければタルミが出ないようにリールを2回ほど巻きながらサオ先を下げてからまたシャクる。これを繰り返した。「シャクリの途中でなんとなくそれまでと違う重みを感じたら、それを前アタリだと思って、そのまま誘いを続けつつも、大きくは動かしすぎないようにしました。するとググッと重くなるパターンが多かったです。でも、フッキングしたあとにハリスを切られてしまうことも結構多くて、それが悔しいんですよね~(笑)」と阪本さん。
この点について伊東船長にうかがうと、ハリスを切られる時はサオ先を下げる時にハリスがたるんでいるケースが多いとのこと。するとアタリに気づくのが遅れ、フッキングしても直後にハリスを切られるケースが多くなる。特にシャクったあと、聞き上げてからサオ先を下に戻す時にリールをきちんと巻いていないとハリス部分がたるんで飲まれるケースが増えるので注意したい。

鋭い前歯に気を付ける

取り込みはテンビンを海面近くまで引き上げたところでロッドをサオ掛けに置き、最後はハリスを手で掴んで仕掛けと魚をそのまま船内に入れる。タチウオは前歯がカミソリのように鋭くなっているが、フィッシュグリップでエラのあたりをしっかり挟めば怖くない。これで不意に頭を振ることはなくなるので、あとは気を付けてハリを外そう。海水をためたバケツに入れておき、ポイント移動の際などに早めに氷水を張ったクーラーに移しておけば美味しく食べられる。
白刃のきらめきが見えれば美味しいお土産まであと一歩!
取り込みはサオ掛けにロッドを置いて行なう。海面近くでバレることもあるので、なるべくイトのテンションを抜かずに一気に船内に取り込む
この日のタチウオ釣果は船中トップの人で20尾超。阪本さんも初挑戦で13尾と好調な東京湾を満喫した。大胆にして繊細なタチウオ釣りに、ぜひチャレンジしてほしい。