阪本智子の船釣り探見!

東京湾・横浜沖のライトアジ釣り
アジ:背中は暗い緑色で側面は金色、腹側は銀白色。生態によって色や体型が多少異なる。沿岸の岩礁に居着くタイプは体色が黄みがかり体高がある。一方の回遊型は全体的に黒っぽく、体型も居着き型と比べて細長い。尾ビレの前に「ぜんご/ぜいご」と呼ばれるトゲのようなウロコが並んでいる。おもなエサは動物プランクトンや甲殻類、多毛類

東京湾・横浜沖のライトアジ釣り

目次
  • 1:深場から浅場に広がったアジ釣り場!
  • 2:余裕のある7時半出船。朝一の釣り場は根岸沖
  • 3:寄せエサをしっかり効かせてアタリを待つ
  • 4:タフな状況でもアジ&イシモチが連続ヒット
  • 5:ラストは30cmの金アジで締めくくり

深場から浅場に広がったアジ釣り場

3月上旬、阪本さんが訪れたのは横浜の金沢漁港にある忠彦丸。忠彦丸は東京湾で釣れる多彩なターゲットを、一年をとおして追っている船宿だ。
釣り座は受付で番号札を取る。乗船券も同じ場所にある券売機で購入
なかでも人気が高いのが「ライト(LT)アジ」。東京湾のアジ釣りは、もともと潮の流れが速い深場での釣りがメインだった。そのため、ビシカゴは130号といった重たいものを使い、ロッドも重いビシ専用で硬いタイプのものを使っていた。
しかし近年、東京湾の水温が高くなったせいか、浅場でもアジが一年中釣れるようになった。そこで、浅場のアジを釣るのに30~40号といった軽いビシカゴを使うようになり、ミチイトのPEラインも細く、そしてロッドも7:3調子くらいの軟らかいタイプのものを使うようになった。こうしてタックルが軽くなったことで、「ライトアジ」と言われるようになったのである。
ロッドはさまざまな船のライトゲームに使える「シマノ ライトゲームSS TYPE73 M190 RIGHT」。リールは「シマノ バルケッタFカスタム150DH」を使用。ミチイトはPE1.5号
東京湾のライトアジ釣りはビシ40号が標準。テンビンは短い側(取っ手が付いていることもある)が上で、下側のアームの先に市販仕掛け(2本バリまたは3本バリが多い)を接続する

余裕のある7時半出船。朝一の釣り場は根岸沖

浅場で釣れるアジは大きめで、引きが強い。そして東京湾のアジは、同じマアジなのに外洋のアジとは少し違うタイプである。外洋のアジは、背中が黒く、丸い形をしていて、俗に黒アジとも呼ばれる。それに比べ、東京湾のアジは背中が茶色く、平たい形をしている。体側が全体的に黄色を帯びていて、黄アジと呼ばれる。黄色が金色にも見えるため、金アジと呼ばれることが多い。外洋の黒アジと比べると脂の乗りがよく、食味は断トツに美味しい。
今シーズンは春先の天候不順が続いて、アジの釣果もバラツキがあるようだが、はたしてどうだろうか。この日お世話になった黒川船長に聞くと、「この時期にしては水温が高くて、全体的にアジの型が小ぶりです。ちょうど魚の入れ替わり時期なので、これから天候と水温のバランスがよくなれば釣果も安定しそうですよ。状況はコロコロ変わるので、なんともいえないですが充分楽しめるでしょう」とのこと。
青い海に浮かんで半日のんびり。東京湾のライトアジは、船釣り入門にもうってつけの釣りものだ
阪本さんが乗船したのは、ライトアジの午前船。午前7時30分のゆっくり出船である。港内の建物で受付をしたら、船上で乗船券と引き換えに氷をもらう。その後、エサのイワシミンチとアオイソメが配られる。また、ビシカゴとテンビンは船上でレンタルすることができる。
今回のビシカゴは、東京湾のライトアジで標準的な40号。金沢漁港を出た船は八景島シーパラダイスを左手に見ながら東京湾に出た。それからまずは北に向かって走る。船長から「ポイントまで30分ほど走ります」とコールがあった。最初のポイントは横浜の根岸港沖、水深22m。指示ダナは底から2mである。

寄せエサをしっかり効かせてアタリを待つ

東京湾のライトアジ釣りは、これまでにも何度か経験がある阪本さん。「手軽で引きもよいですし、今日も楽しみです!」と語る。阪本さん流のライトアジのコツは、まず寄せエサ(コマセ)のイワシミンチは、ビシカゴに7~8分くらいに詰める。ぎゅうぎゅうに詰めてもいいが、その場合はシャクリ方が強くないと、コマセが外に出にくいので、シャクリをきつくやりたくない人はこれくらいがちょうどよい。
そして、ハリに刺す付けエサのアオイソメは、ハリに通し刺しにし、ハリから外に出すタラシは1cmくらいになるように短めにカットする。
寄せエサのイワシミンチはビシカゴに7~8分目くらいで詰めるとよい。数回使ってカゴの中にイワシの皮などが付着してきたらきれいに落としてから使う。なお、たとえば潮が速い時はコマセの出がよいので、いっぱいに詰めるのもよい
付けエサのアオイソメもていねいに付けることで何度かそのまま使えるなど手返しがよくなる。タラシは短めが基本だ
エサ付けが終わったら、仕掛け投入はハリが先。続けてビシカゴを入れ、そこからはいよいよ釣り開始だ。リールのクラッチを切り、仕掛けが底に着いたら、リールを巻いて底から仕掛けを1m上げる。続けてロッドを1回シャクってコマセを振り出し、さらにリールを巻いてもう1m仕掛けを上げ、ロッドをもう1回シャクって追加のコマセを振り出したら、あとは動きを止めてアタリを待つ。これが基本になる。
イメージとしては、エサが常にコマセの煙幕の中にあるようにすることだ。コマセの煙幕にアジが群がってくるところで、付けエサを喰わせるという流れをしっかり頭に入れておく。しばらく待ってアタリがなければ、もう一度底まで仕掛けを落として、同じ動作を繰り返す。2度アタリを待ってこなければ、仕掛けを回収し、付けエサをチェックし、コマセを入れなおして、同じ動作の繰り返しをする。
アタリがあったら、ぐっと引き込む本アタリを待ち、それから焦らずサオを立てればOK。あとは一定速でリールを巻く

タフな状況でもアジ&イシモチが連続ヒット

この日の予報は昼に向けて風が弱くなるはずだったのだが、朝から吹いていた北風が一向に弱まらず、思いのほか寒く釣りにくい状況だった。この日最初のポイントでは、阪本さんもコマセの入れ直しを何度かやったが、アタリが来ない。「今日はちょっと渋いですね~。まだこれといった反応がないので、釣れたらラッキーと思えるくらいですね。なかなか経験できないタフさです(笑)」と、ちょっと苦笑いしながら釣り続ける。
とはいえ人気のライトアジ。根気よくコマセを振り出し続けると、やがてしっかりとしたアタリがサオ先に出た。アタリは手にも伝わるが、ここでびっくりしての大アワセは禁物。アジは口が弱いので、強いアワセを入れると口切れしてバラシにつながる。基本的にアワセは入れず、アジが掛かったのを確認したら、あわてずにリールを巻けばOK。リールの巻きは一定を心掛け、速すぎず、遅すぎずで巻いてくる。
まずは一尾をキャッチ
最後の取り込みはテンビンに手が届くまでリールを巻いたら(巻きすぎないように注意)、まずテンビンとビシオモリをキャッチしてコマセバケツに入れ、続けて手を伸ばしてハリスの下のほう(=できる範囲で魚に近いほう)を掴んで、一気に船内にアジを抜き入れる。阪本さんの最初のアジは、20cmオーバーの金アジだ。「型がいいので、引きが強くて楽しいですね!」と、ようやくライトアジらしい小気味よい手応えを味わえた。
取り込みはビシカゴをエサ用のバケツに置いたら、焦らずに魚に近いハリスを持って、そのままアジを船にぶつけないように注意しながらためらわず船内に抜き上げる
しかし、この日はその後もアジのアタリが少ない。その代わり、コマセのシャクリ直しの時に底にエサを落とすと、今の時期にアジと並んで楽しめるイシモチが喰ってきた。イシモチは金沢八景の船宿では、アジと並んでビギナーがライトタックルで気軽に楽しめるターゲットとして人気。新鮮なものは塩焼きやつみれ団子も美味しい。
前半はゲストのイシモチがよく当たった。新鮮なものは食べても美味しいのでよいお土産になる
阪本さんは「とはいえ本命はアジなので、できるだけ着底から仕掛けをすぐに上げるようにしているんですが、どうしてもイシモチに喰べられちゃいますね……」と引き続きアジにねらいを定める。

ラストは30cmの金アジで締めくくり

結局、根岸沖ではアジよりもイシモチのアタリのほうが多かった。そこで午前9時を回ったところで船はポイント移動。次は福浦沖の水深32mだ。
ポイント移動すると待望の時合が到来。心地よい重みが繰り返し乗る
黒川船長からは、「ちょっと深めですが、底から2mに反応が出ているので、しっかりタナをキープして釣ってください」とアナウンス。すると、釣り始めてすぐに、指示どおりの底から2mのタナでアジのアタリが来た。釣れたのはやはり20cmオーバーの美味しそうな金アジ。このポイント移動が吉と出て、他のお客さんも次々とアジが釣れだした。皆さん、手にするのは型揃いのアジである。
阪本さんも「アタリが出るようになりましたね。数が期待できそうです!」と、次々とアジをヒットさせていく。どうやら時間が来て上げ潮になり、アジが集まってきたようである。そして、沖上がり直前の午前11時に阪本さんのロッドを大きく曲げたのは、この日最大の30cmの金アジだった。「浅場でこのサイズのアジが釣れると、かなりスリリングで面白いです。アジは釣ったあとの料理も楽しみでいいですよね」と、うれしい締めくくりとなった。
「何度やっても楽しい釣りです!」と阪本さん
同船のお客さんたちも心地よいアタリを楽しんだ。春休みの楽しみにもぴったり
締めくくりはこの日一番のグッドサイズ