阪本智子の船釣り探見!

阪本智子の船釣り探見!
ホウボウ:北海道南部以南の沿岸部、水深25~600m前後までの砂泥底に生息。肉食性でエビ類のほか海底に棲む小魚なども食べる。鮮やかな青緑色に瑠璃色の縁取りと斑点がある胸ビレが特徴。脚のような軟条があり、海底を歩くように移動することができる。

湘南・平塚沖のホウボウ釣り

目次
  • 1:冬がチャンス!
  • 2:ライトタックルで気軽に挑戦できる
  • 3:潮が動かない間も集中力を持続
  • 4:エサ付け、オモリ、誘い。工夫を重ねてアタリを創出

冬がチャンス!

2019年の1月4日。年も改まったところで、阪本さんがやって来たのは、湘南の平塚港にある庄三郎丸。ビギナー向けの船釣り講習会も定期的に開催している、入門者も大歓迎の船宿だ。そんな庄三郎丸で、5年ほど前から本格的に営業を始めたのが、ホウボウ釣りの乗合船になる。
庄三郎丸は相模川河口にある老舗船宿。茅ヶ崎海岸ICを下りてすぐにあり、毎朝早くからたくさんの釣り人で賑わう
出船前に釣り方のレクチャーもあるので初めてでも安心
ホウボウは雌雄を問わず鮮やかな瑠璃色をした胸ビレを持っており、海底を這うように移動しながら、エビ、カニ、小魚などの好物を漁っている。名前はこの「ほうぼうを歩く」姿から付けられたとも、浮き袋を使って「グウグウ」「ボウボウ」と鳴くことがあり、そのようすから付けられたともいわれる。
「もとは12~13年くらい前、サワラねらいのジギング船で、サワラだと潮が濁っていないとなかなか釣れないといったムラがあるのに対して、ホウボウは安定してよく釣れました。しかもルアーだけじゃなく、ライトウイリー仕掛けに身エサを付けたエサ釣りでもよく釣れることから、本命のターゲットにしてみたら面白いんじゃないかということで注目するようになったのです。それで5年ほど前から、今のような乗合船を出すようになりました」とは、この日の操船を担当してくれた中村友紀船長。ホウボウ乗合のシーズンは例年12月から翌年3月の春の濁り潮が入り始める頃まで。潮が濁ってしまうと魚はいても反応が悪くなるそうだ。
そして「ホウボウといえば、知る人ぞ知る高級魚ですよね」と阪本さんもいうとおり、上品な白身の肉は、ブツ切りにして鍋にするもよし、刺し身、蒸し物、焼き魚、船長おすすめの天ぷらと何にしても美味しいのが大きな魅力だ。
宝石のような胸ビレ。浮き袋で「ボウ~」と鳴くこともある

ライトタックルで気軽に挑戦できる

ホウボウねらいの仕掛けは、腕長30cmの片テンビンに30号のオモリと船宿オリジナルの2本バリ仕掛けをセットしたもの。この日、宿で購入した仕掛けの全長は1.5m。2本バリのうち、上バリは魚皮を使ったバケ(疑似餌)で、下バリに船で配られるサバの身エサを刺す。「ホウボウはジグでもよく釣れることから分かるように、好奇心旺盛な魚です。そのため、身エサもハリにチョン掛けしたあとは、基本的には常に動かしてやるように意識します。底にいる魚ではあるのですが、上への誘いに反応しやすい。こうした特徴を押さえて釣るといいですね」と中村船長。
常に誘う釣りなので、ロッドは操作性のよい8:2調子や7:3調子のものがおすすめ。阪本さんは『ライトゲームBB TYPE82M200』をチョイス。リールはカウンターも付いた『バルケッタBB 300PGDH』をセットした。ミチイトは船宿推奨のPE2号である。
サオは操作性のよいライトゲーム用ロッドでOK。阪本さんは『ライトゲームBB TYPE82 M200』(8:2調子)、リールにカウンターも付いてパワーも充分な『バルケッタBB300PGDH』を使用。ミチイトはPE2号
仕掛けは腕長30cmのテンビンに、30~40号のオモリと吹き流し式の2本バリ仕掛け(上バリは疑似餌のバケ)をセットして使う
バケにも反応がよいのがホウボウの特徴だ
下バリには船上で配られるサバの身エサを付ける。海中でエサがしっかり踊るように端の中心にハリを刺す
「ねらうタナは底から2mほどまでです。夏のタチウオ釣りをやったことがある人なら、夏タチのショートピッチのシャクリそのままでOK。活性がいい時なら、上までエサを追い掛けてきますので、その間でエサがヒラヒラと動き続けるように、ハンドルを4分の1とか6分の1とかこまめに巻き上げながら行なうショートピッチのシャクリでねらってください。仕掛けの長さがある分、オモリを3mまで上げてエサが2mくらいになります」と船長。
ほかにも「乗るまでに何度か前アタリのような感触があることも多いので、アワセは焦らし続けて重さが乗ったところでしっかり入れるイメージ。口が硬い魚なので、乗らずにバレることもよくあります。そんな時、魚はまだ近くにいるので、仕掛けをすぐに落として誘い直せばチャンスです」
「釣り座のよしあしはあまりありません。それでも、よく当たる人とそうでない人の差が出ることがありますが、理由はエサの動き。アタリが遠い時も集中力を切らさずにしっかり誘い続けてください」とアドバイスが続く。
「釣り場は港を出てすぐからです。二宮沖までの水深10~25mラインを7時間かけてゆっくり流していきますので、焦らずマイペースで頑張ってくださいね(笑)」とお客さんにエールが送られたところで、午前7時過ぎに河岸払いとなった。
基本の誘い(シャクリ上げ)
サオ先でツンと小さくオモリ跳ね上げては、その分のたるみを取るようにリールのハンドルを小刻みに動かす(1/4回転もしくはもっと細かな回転幅でもOK)の繰り返し。慣れればけっして難しくない。
底ダチを取ったら、サオ先を下げミチイトにたるみがない状態でスタート
最初はサオ先を小さく下げながらリールを1/4回転ほど巻く
ツンとサオ先を跳ね上げると同時にさらに1/4回転ほどリールを巻く
またサオ先を小さく下げながらリールを1/4回転ほど巻く。あとはこれの繰り返し

潮が動かない間も集中力を持続

「今年はこれが初釣りです! 美味しい魚をぜひ釣って帰りたいな~」と阪本さん。海は凪いで絶好の釣り日和だが、朝方の気温は4℃ほどで空気はキリリと冷たい。とはいえ、おかげで陸地のほうを見渡せば、雪化粧をした富士山、箱根、丹沢の山々がくっきりと見える。日が高くなれば気温も上がるはず。まずは船長からレクチャーのあった、こまめなシャクリの感覚を掴むべく、一投目からロッド操作に集中する。
穏やかな海上から富士山を間近に望むロケーションは新年の釣りにもぴったり!
ホウボウ船はエサ釣りとルアーの相乗り。ルアーではバケとジグ(20~80g)の組み合わせが使われる
この日は大潮で干潮が朝の9時40分。しかし、朝からしばらくは目の前の海面に浮かぶ泡もほとんど動かず「潮が動きませんね~」と船長。ポイントとしては、「川からの真水が入ってくるエリアのちょっとしたシャロー(カケアガリ) をねらっています。エサがたまるのがおそらくそんな場所なんですね」とのこと。
開始から1時間で7回ほどの流しがあったが、たまに周囲で型が見られるものの、阪本さんにはまだアタリが来ない。ようやく「あ、バレちゃいました!」と声が上がったのは8時55分。この日、9回目の流しでのことだった。船全体でも厳しそうな状況だったので、誘いはあまり上までやらずに、底近くをトントンと集中的にねらっていたところで反応。そして9時10分、この日10回目の流しで、ようやく1尾目がググンとサオを絞り込んだ。
釣れる時は連続ヒットしやすいので、釣った魚は足もとのバケツに泳がせておき、血抜きなどの処理はあとでまとめて行なうとよい
「今のは何回か当たってくるのが分かりました。ホウボウ釣りの感触が掴めてきたと思います」。するとその10分後にすぐに2尾目をキャッチ。「この流しはよく当たりますね~。数を伸ばすなら今のはず。頑張りますよ!」。
3尾目の反応はその次の11回目の流し。ところがこの一尾は海面まで引き上げたところでまさかのリリース。「あ~、今のもまとわりついてくる感じがあったんですけど、ドラグをちょっと緩めちゃっていました。それでフッキングが甘かったかもしれません。この釣りはバラシ要注意ですね!」。日が上がるにつれ、阪本さんの釣り座にも日差しが届くようになったこともあって、ようやくエンジンが掛かって来た。
サオに乗ったあとは力強い引きで抵抗!
型のよい40cmクラスも出た

エサ付け、オモリ、誘い。工夫を重ねてアタリを創出

その後も船全体で連発するような時はなかなかなく、船長も粘り強くポイントを入れ変えていく。すると10時40分、この日15回目の流しで待望のグッドサイズが来た。「細かいピッチで誘っていたら、今度は前触れなしでズドンと強いアタリが来ました。これはうれしい!」というホウボウは良型の40cmほど。その後も、「惜しい、今のは2回くらい触った感じだったのに乗らなかった~」といったぐあいに、時折りチャンスが訪れる。
好奇心が強い魚なのでオモリのカラーチェンジなども効果がある可能性は高い。エサをダブルで付けてアピールするのもあり
姿はよく似ているが胸ビレに派手さがないカナガシラもヒットした。「この子は小さいのでリリースしますね(笑)」と阪本さん
阪本さんはその間、ピンクだったオモリを夜光のグリーンに替えてみたり、またピンクに戻したり、エサを2つ掛けにしてみたりと常に試行錯誤。エサをダブルにした時は「明らかに効果があったみたいです」とすぐに一尾を追加した。終盤は「やっぱり魚の活性自体は全体にスローのようなので、まずは底でエサをしっかり見せてから、フワッと優しくシャクっては少し巻く、という感じのシャクリでやってみています」と自分なりのイメージも持っていた。いろいろと工夫を重ねながら楽しんだところで、最後の5尾目はカナガシラ。「これは置きザオで来ちゃいましたね(笑)。でもそれも今日の海の状況なんですよね」と2時の沖上がりを迎える。この日、同じくエサ釣りでねらった人の最多は7尾だったので、充分健闘といえるだろう。
「ホウボウ乗合は初めてでしたけど、これは楽しいですね!」と、笑顔での帰港となった阪本さん。釣って面白く食べて美味しい高級魚に、ぜひ挑戦してみてほしい。