イサキ:本州中部以南の全国沿岸部に生息。大きさは最大で50cmほど。最盛期は初夏(5~7月)。潮通しのよい岩礁域を好み、根の上に群れていることが多い。産卵期は5~8月ごろで、稚魚は水深の浅い藻場などに群れ、大きくなるとやや深い場所に移動する。幼魚のうちは体に黒っぽい縦縞が走る。この模様がイノシシの子どもに似ていることから、ウリンボなどと呼ばれる
釣り味、引き味ともに◎
5月上旬、阪本さんが訪れたのは、外房・大原にある長福丸。ターゲットはこれからトップシーズンを迎えるイサキだ。小気味よい鋭い引きと食味のよさから人気の釣りものである。
この日は平日にもかかわらず満船の大盛況
仕掛けに関してだが、片テンビンにプラビシをセットした吹き流し式を使用する。今回お世話になった長福丸ではプラビシは60号。それに合わせるロッドは2m前後の7:3調子のライトゲームロッド。リールはPEライン2~3号を巻いた小型両軸受けリール、もしくは電動リールだ。
“Xシートエクストリームガングリップ”を採用した新しいライトゲームCI4+。パーミングがしやすい
仕掛けはエリアによって変わるが、外房では3本バリのカラーバリ仕掛けを使うことが多い。基本的にエサは付けないので、手返しよくねらえるメリットがある。長福丸ではイカタンが配られ、魚の活性が低い時や、目先を変えたい時にセットするとよい。ただし、ウマヅラハギを寄せることになるので、状況を見極めて使いたいところ。
仕掛けは長福丸のオリジナルを使用。3本バリのカラーバリ仕掛けだ
基本はカラーバリの空バリだが、イカタンを付けてねらうのもよい
常連さんの話では、ハリスの太さは1.5号が標準で、喰いが悪い時は1.2号まで落とすこともあるという。ハリスの太さは喰いに影響するので2号は使わないとのこと。良型が掛かる状況でも、太くても1.75号までとのことだ。長福丸のオリジナル仕掛けは1.5号でいろんな状況にマッチする。
指示ダナを守ることが何より重要
4時半に大原港を出た船は40分ほどでポイントに到着。「指示ダナは2~3mの幅を持たせて伝えますので、その範囲で探ってください。指示ダナは水面からビシまでの距離。リールのカウンターに頼りっきりだとタナがボケやすいから、ラインのカラーマーキングもしっかり見てください。水深20m、まずは16~13mで探ってみてください」と藤井大佑船長。釣り方のアドバイスもしていただいた。
イサキ釣りでは軽快なコマセワークが大事であり、プラビシの小窓からポロポロと少しずつ寄せエサが外に出ていくようにすることがキモ。プラビシの上穴は3分の1くらい開けて、下はしっかり閉めること。アミコマセが出すぎないように注意したい。まずは指示ダナの深いほうの水深まで仕掛けを落とす。そこでビシを振って、リールを巻いて、止めて待つ。数回に分けて、プラビシを振りながら、下から上に指示ダナの範囲で誘って行く。そして、寄せエサの煙幕の中に自分の仕掛けが入っているイメージを持つことが大事とのこと。シンプルな釣りだが、イメージをしっかり持って、考えて釣ることで釣果に差が付くという。ビギナーはとにかく指示ダナを守ることに徹してほしいとのことだ。
アミコマセがポロポロと出ていくことが重要。上窓は3分の1ほど開けて、下窓はしっかり締めること
タックルと仕掛けをひと通りセットし終えて、阪本さんも仕掛けを投入。まずは16mまで仕掛けを落とし、ビシを振りつつ、1mずつ上げて待つという釣り方で探っていく。すぐに船長から「18~15m」というタナ変更のアナウンス。何回か仕掛けを落とし直すがアタリはない。船中1尾も出ずに、ひと流し目が終了した。
「ここ最近寒暖の差が激しくて、水温も安定していないみたいです。昨日は一気に水温が下がりましたしね。魚の活性も下がり気味。そんな時はイカタンを付けてアピール力を上げるのも1つの方法です」と常連さんからのアドバイス。
「タナは16~13m」とのアナウンスがあり、ふた流し目がスタート。するとすぐに右舷のトモの釣り人にヒット。続いて、右舷ミヨシの常連さんにも1尾目が掛かり、ポツポツと当たり始めた。
「15~12m」、「13~10m」とタナが短いスパンで変わっていく。指示ダナをしっかり守り、その範囲のどこで反応が見られるか探っていく阪本さん。するとほどなくして待望の1尾目が掛かったが、喰いが浅かったようで、取り込む直前でバレてしまった。やはり水温の低下が響いていて、魚の喰いは悪いようだ。
リールにカウンターが付いていても、それに頼り切らず、ラインのカラーリングも見て、正確にタナを合わせることが大切だ
続いてのポイントは水深23mでタナは16~13m。この流しで阪本さんに待望の1尾目がヒット。陽が昇り始めると魚の反応もよくなり、船内が賑やかになっていった。
最後まで抵抗をみせる元気いっぱいのイサキ
釣れるのはこのサイズが多く、阪本さんには“ウリンボ”は1尾も混ざらなかった
最後はハリスを持って一気に抜き上げる
サオを絞る大ものの正体は?
飽きないほどにアタリがあり、気温が上がってきたこともあり、船内は少しまったりムードだ。すると眠気を覚ますようなアタリが訪れた。「イサキじゃないと思います」という阪本さんのサオが大きな弧を描いている。「何が掛かったか、姿が見たい……」といい、ドラグを緩めに慎重にやり取り。執拗な抵抗を見せるが、徐々に上がってきた。ハリスを手繰り寄せ、取り込みにかかろうとすると、船底に潜り込み最後の抵抗を見せる。だが、船長の的確なアシストでタモの中へ導かれた。魚の正体は42cmのメジナ。思わぬゲストに阪本さんも興奮気味だった。常連さんからは「2~3日置いて刺身にすると美味しいよ!」と言われると「楽しみ~」と阪本さん。
バッドからサオを絞る。慎重にやりとりをする坂本さん
大ものの正体は42cmのクチブトメジナだった
「最初は1mずつ誘い上げていましたが、途中から50cm刻みに変えました。こっちのほうが、アタリは多かったですね。魚の活性が低かったので、待つ時間も長めにとりました」という。喰い渋りの中であったが、しっかりツ抜けし、良型メジナも混じるという満足いく釣果になった。
「前日に水温が下がった影響で、底は冷たい感じでなかなか喰いが続かず苦労しました。朝一は数は出ない代わりに良型主体。ポイント移動しながら、トリプルヒットも出ましたし、後半は持ち直しました。イサキはコンスタントに釣れる魚ですし、釣り自体はシンプルなので、ビギナーの方にもおすすめです。これからがまさにハイシーズンで、8月くらいまで楽しめますので、ぜひいらしてください」と藤井船長。脂がのってますます美味しくなってくるイサキ。この初夏におすすめのターゲットである。