阪本智子の船釣り探見!

阪本智子の船釣り探見!
アジ:背中は暗い緑色で側面は金色、腹側は銀白色。生態によって色や体型が多少異なる。沿岸の岩礁に居着くタイプは体色が黄みがかり体高がある。一方の回遊型は全体的に黒っぽく、体型も居着き型と比べて細長い。尾ビレの前に「ぜんご/ぜいご」と呼ばれるトゲのようなウロコが並んでいる。おもなエサは動物プランクトンや甲殻類、多毛類

第9回 東京湾・横浜沖のライトアジ釣り

目次
  • 1:アジ本来の引きが楽しめて船釣り入門にも最適
  • 2:タナ取りはこまめに確実に
  • 3:コマセの中にエサを漂わせるイメージを

アジ本来の引きが楽しめて船釣り入門にも最適

今回のターゲットはアジ(マアジ)。釣りの対象魚として、食べて美味しい魚として、押しも押されもせぬお馴染みの魚だ。
近年、そのアジをねらう釣りの中でも、通称「ライトアジ(LTアジ)」と呼ばれる、より手軽で扱いやすい道具立ての船釣りが人気を高めている。特に東京湾はライトアジの乗合船が非常に多い。今回乗船した「渡辺釣船店」でも定番の釣りものとなっている。
船は探見丸も搭載した大型船で快適
理由は明快。ほぼ一年中、ビギナーからベテランまでレベルに応じて楽しめ、よく釣れて味も非常によいからだ。また、午前便と午後便の2便制のところも多く、都合に合わせて余裕を持って楽しめるところもうれしい。
今回ねらった横浜沖のアジはとりわけ美味しいと評判。特に夏場の産卵が終わる11月頃からは型もよくなり数もねらえる。この日も阪本さんのほかに12人のお客さんを乗せての出船となった。出船は午前7時(午前便)。横浜の中華街が近い、上空には高速道路が走る都会の街中の水路から船は出る。
タックルはいわゆるビシアジ釣りのものをそのままスケールダウンしたもの。ビシアジ釣りとは、120~130号ほどの重いカゴビシ(アンドンビシ)にコマセを詰め、これを海中で振って魚を寄せてから、ハリに付けたエサを食べさせる釣り方で、ライトアジでは水深30mほどまでの浅場に絞ってねらうため、カゴビシが30~40号と軽めになる。それにともない、ロッドやラインもよりライトなものが使われるというわけだ。
今回使ったタックルは、ロッドがシマノ『ライトゲームSSTYPE73 MH200』にリールは『バルケッタBB300HG』。ミチイトはPEライン1.5号
カゴビシは30~40号(今回の船宿指定は40号)、テンビン(片テンビン)は腕長20~30cmのライトタックル用で船宿のものを使用。仕掛けは全長2mの2本バリタイプ
他にはハサミ、魚を掴むフィッシュグリップ、手拭き用のタオル、飲料水&食料があればOK
使うエサや釣り方そのものはビシアジ釣りもライトアジもまったく一緒。ライトアジで釣りの基本を覚えれば、通常のビシアジ釣りも問題なくできる。
ライトアジの醍醐味は、なんといってもアジ本来の引きを堪能できること。エサに喰いついたあとから仕掛けを巻き上げている間まで、筋肉質なアジの抵抗はなかなか小気味よい。それが群れにあたれば連発で味わうことができる。

タナ取りはこまめに確実に

横浜沖のアジ釣りは一度経験があるという阪本さん。「とにかく船長の指示ダナをしっかり守って、軽快な引きを楽しみたいです」とさっそく準備を整える。
船に乗ったらまず釣り座を整える。ロッドのガイドにラインを通しスナップを結んでおく作業は船が動く前までに済ませておくとよい。コマセを入れるオケやリングは船の上で貸し出される
コマセのイワシミンチ(右)はなくなっても追加をもらえるのでケチらずに使おう。付けエサはアオイソメ(左)または赤タン(赤く着色したイカの身をサイコロ状にカットしたもの)が一般的だ。どちらも船上で配られる
コマセを入れたオケは釣り始めになったら船の外側にセット
最初のポイントは船宿からわずか10分ほどにある横浜沖の灯標周り。水深は20mほど。アジ船を担当して6年という杉村船長に、まずは基本的な釣り方をアドバイスしてもらう。
「ねらうのは底から2mまでです。アジ釣りで大切なのは、とにかくコマセでアジの足を止めること。コマセが利いていない人のハリには、周りがどんなに釣れていても喰いつきません。隣の人のコマセでそのうち自分のハリにも掛かるのでは……ということも、実際はほとんど起きませんね。あとはコマセの煙幕の中にしっかり喰わせエサを入れられれば魚は釣れます」
船宿からわずか10分ほどのポイントに到着すると『探見丸』にも魚の反応がびっしり
コマセはイワシのミンチ。これを目の粗いカゴ状のビシに詰める。2本バリ仕掛けにはアオイソメをセットする。アオイソメは外れなければ繰り返し使えるため、頭の硬い部分をチョン掛けにするとよい。
アオイソメは頭をハリにチョン掛けして余りを1cmほどにしてカット
カゴビシにイワシミンチを詰める時は付属のスプーンやヘラを使う
「コマセは基本的にカゴいっぱいに詰めて構いません。ただ、煙幕を作るためにシャクった時に、よりスムーズに中身が出るように7~8分目にしておくのも効果があります。特に女性の方など、シャクる力が弱い人にはおすすめです」
「仕掛けを投入したらまずカゴビシを着底させ、イトフケを取ります。そこからリールを巻いて1mカゴビシを上げたら、シャクってコマセを出す。そのあとさらにもう1mリールを巻いてアタリを待ちます。アタリがなければそこから同じことをもう1回やってください」
シャクリは短めのストロークでしっかり2~3回。カゴビシにしっかり水圧が掛かるようにまっすぐ持ち上げるとよい。コマセが海中に拡散したところで、仕掛けの長さ分リールを巻き、付けエサ(喰わせエサ)がコマセの煙幕の中に同調するようにしたら、穂先を止めて静かにアタリを待つ
これで喰わせエサが底から2mまで動く。つまり、コマセの煙幕を作っては、その中に喰わせエサを入れてアタリを待つという操作を指示ダナの範囲でやる。ここまでやってアタリがなければ、再び着底させてねらい直せばよい。
なお、アジは基本的に底近くで釣れることが多いが、同じ横浜沖でも底から5mくらいまでは指示ダナになることがある。その場合は、あらかじめ指示ダナの上限から2m下でシャクリ始めるようにする。また、コマセが切れてしまった状態では釣りにならないので、アタリがなくても3分に1度くらいは仕掛けを上げてコマセ切れになっていないか確認したい。
開始早々、「来たよ~」というお客さんの声とともに、船中のサオがぽつぽつ曲がり始めた。「焦っちゃいますね。でも、コマセをしっかり振れば私にもくるはず」と阪本さん。船長も言うとおり、アジはとにかくコマセに寄る魚なので、周りが釣れ始めれば船に魚が寄ってきている証拠だ。
この日のロッドは『シマノ ライトゲームSS TYPE73 2m』。ライトアジの釣りでは、カゴビシをしっかり動かしやすい、1.8~2mで先調子のライトゲームロッドが使いやすい。このロッドもまさにそうしたタイプ。すると間もなく、阪本さんにも最初の1尾がヒット。太って金色に輝くコンディションも抜群のアジが上がった。
取り込みはまずカゴビシを置き、最後はひと息に抜き上げる!
取り込みはまずテンビンが海面から出るところまでリールを巻く
なるべくラインを緩めないようにしながらテンビンを掴んでオケに置く
そのままサオを置いたらハリスの下のほうをしっかり掴み……
アジを船べりに当てないように気を付けながら一気に抜き上げて船内に入れる
フィッシュグリップで頭を掴みハリを外せばOK
アジが釣れたら足もとに置いたバケツに生かしておきすぐに次をねらう。持ち帰る時はポイント移動などの時間にエラをハサミで切ってしばらく泳がせ、血抜きしてからクーラーにしまうと味もよい

コマセの中にエサを漂わせるイメージを

その後は指示ダナをしっかり守って着実に釣果を伸ばす阪本さん。群れの反応もよいようで、船長はパラシュートアンカーを下ろしてじっくりねらう体勢に入る。船全体でもよくサオが曲がるようになってきた。
たまにキャッチ寸前でバレてしまう魚もいたが、これは口の軟らかいアジではある程度起きること。ただし、バラシを最小限に抑えるためには、船ベリに魚をぶつけないように注意して一気に魚を取り込むなどいくつかのコツがある。
「コマセの中に付けエサがうまく漂っているイメージを持てた時に、実際にググンとアタリが来て答えが出るのが面白いですよね。それにしても丸々太ったアジは美味しそうです(笑)」と阪本さん。
船は午前10時半を前に一度だけポイントを移動。後半は大黒海釣り施設の沖でやや浅い12mほどのポイントをねらった。終わってみれば船宿からわずかな距離だけで、中型の脂の乗ったアジが船中トップで51尾、阪本さんも26尾の好釣果だ。
上バリにアジ、下バリにイシモチのダブルヒットもあった
「もう少し寒くなってくると横須賀沖の30mくらいのポイントまで移動しますが、アジは水温が10℃を下回らなければよく釣れます。昨年(2015年)は年明けの1月までよく釣れました」と杉村船長。
横浜沖はたまに釣れるイシモチやサバも美味しい。東京湾のライトアジは今が旬だ。
職場の同僚に「初めてでも釣れる釣りに連れて行って」と頼んだという小日向哲也さん。レンタルタックルでしっかりアジの引きを楽しんだ
キンメやクロムツもよく釣りに行くという野島智彰さん。「ここのアジは旨いからよく来ます」
気持ちのよい青空の下で良型アジの引きを満喫。阪本さんも26尾と充分な釣果を楽しんだ