2023/03/24
コラム
東京湾喰い渋りタチウオ攻略の糸口
アタリはわずか手に伝わる程度、気のせいと思わせるほど、かすかなものだった。しかし、それがタチウオのアタリであることは、イワシに残された噛み跡と呼べないほどの小さな傷が物語っている。
INDEX
魚群探知機にも濃密な反応が出ている。なのに、テンヤには喰わない。
「いろんな釣り場を見てきて言えることは、タチウオは反応があれば、ほとんどの場合は釣れる、ということです。ところが、東京湾だけは違います」
急速に全国へ広がるタチウオフィールドの先端を知る富所潤さんは、この、いても喰わない現象こそ、冬~春の東京湾ならではの面白さだと言う。
船長や釣り人はこの状況を悶絶、あるいは苦行と表現して楽しむ。
手がかりはわずかな、1回きりのアタリとイワシの傷と、同船者。タチウオを釣り上げた人の誘い方、竿の調子、テンヤの色、そしてときにタナを聞き、自分と照らし合わせていく。
富所さんはまず、タチウオが捕食しやすいよう海中でテンヤを安定させる狙いで、竿をサーベルマスターエクスチューンテンヤ91H173から、73M190に変更する。
この日は北風が10m近く吹き波も荒い。7:3調子の穂先はシグナルを目で捉えるのにも有効。しかし、肝心のアタリは出ない。
フォースマスター600のさそい速を1~3と変更しつつ、省エネバイブレーションと微速巻きで潮の重さが変わる場所、タチウオの喰いダナとなる「潮ヨレ」を探す。
ところが、この潮ヨレが微妙で把握しにくく、変化するうえ、ようやく見つけても簡単にはアタってこない。
富所さんは竿を再びサーベルマスターエクスチューンテンヤ91H173に戻し、潮ヨレが生じる狭い範囲で小刻みなバイブレーションを繰り返しようやくアタリを出させる。だが、アタリは1回きりで弱く、掛からない。
「テンヤのシルエットを小さくします。シルエットが小さいほど良いといわれているメタルジグが、ここにきて口掛かりしているんですよ」
小さなベイトを上に追っている状況。富所さんはサーベルマスター船テンヤβ40号に、小さくカットしたイワシを装餌する。
指示ダナは60~50m。省エネバイブレーションで2mほど誘ったところでテンヤが軽くなり、潮ヨレを確信。すると、穂先が小さく弾かれた。
瞬間、竿を上げてアワせるも掛からず。その竿を今度はゆっくりと下ろし、竿の長さ分、フォールさせ、静止。
「コン」
待ち焦がれた強い魚信が9:1調子の竿先を跳ね上げる。時間にして0コンマ数秒ながら、釣り人はこの瞬間だけで、ハリ掛かりを確信できる。
富所さんは素早くアワせ、親指でフォースマスター600のタッチドライブを押し込む。
「今日はβに助けられました。2回目の強いアタリが出たのも、シルエットの小ささが答えだったと思います」
イワシの小さな傷を糸口にたどり着いたタチウオは指幅6本の大型。これだからテンヤタチウオは面白い。
FISHING TACKLE
【取材協力】三浦半島鴨居大室港・五郎丸
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