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2025/02/07

コラム

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Backstory of GRAVITATOR 第二話

Backstory of GRAVITATOR 第二話
Backstory of GRAVITATOR 第二話

担当者が語るグラヴィテーター秘話、第二弾。
奥田学とシマノの開発担当による理想的なキャッチボールによって、“無理難題だらけのビッグベイト”は徐々に完成へと近づいていく。

誰よりもビッグベイトを知る男

これまでに奥田学とのタッグで数々のルアーを生み出してきたシマノだが、ビッグベイトに関しては「ど真ん中の王道タイプ」に踏み込むことを避けていたという。

これは自身のブランド・シグナルでルアー開発を行なっている奥田への配慮でもありリスペクトでもある。表層特化型のBtフォース、フラットで体高のあるBtスラプターなど、ビッグベイトのなかでも変化球に近いアイテムが続いたのには、そうした背景があった。

「この方向性を転換したのが、アーマジョイントの開発でした。どうしても奥田さんのノウハウが必要だと思い、頭を下げて協力を依頼しました。今回のグラヴィテーターに関しても同じです。もちろんシマノ側としても、既存のビッグベイトの焼き直しをするつもりはありません。面白くて独創的なアイデアがあるからこそ、奥田さんの力を借りて、より良いものにしたかったんです」

誰よりもビッグベイトを知る男

世界中を見渡しても、彼ほどこのジャンルに通じているアングラーはいない――。それが奥田学に対するシマノの評価だった。具体例を挙げよう。第一話で紹介したように、グラヴィテーターのファーストサンプルには直進性の向上をねらって「胸ビレ」が装着されていた。

「伸びのあるグライドアクションを出すためには、ボディが横倒れすることを防ぐ必要がある、と考えたからです。ところが、このサンプルを奥田さんに見せたところ『そういう意図なら、背ビレや尻ビレのほうが効果があるよ』と、すぐに的確なレスポンスが返ってきた。実際に泳がせたりしなくてもわかるのは、すでに通ってきた道だからでしょうね」

とはいえ、一から十まで奥田の指示どおりに進めているわけでもないのが面白いところ。たとえばグラヴィテーターの第三弾サンプルには、前述のアドバイスを受けて背ビレが設けられたが、固定式ではなく着脱可能なエラストマー製になっている。これはシマノの開発担当の発案だった。

当初はボディーと一体型だった「背ビレ」。ジョイントの可動域が広いことを利用し、エラストマー製で脱着できるパーツを組み込むことに
当初はボディーと一体型だった「背ビレ」。ジョイントの可動域が広いことを利用し、エラストマー製で脱着できるパーツを組み込むことに
当初はボディーと一体型だった「背ビレ」。ジョイントの可動域が広いことを利用し、エラストマー製で脱着できるパーツを組み込むことに

当初はボディと一体型だった「背ビレ」。ジョイントの可動域が広いことを利用し、エラストマー製で着脱できるパーツを組み込むことに

グラヴィテーターはジョイント部分を大きく折り畳めるのだから、そこから背ビレを差し込めばいいよね、という発想である。これだけに留まらず、異なる形状の背ビレを交換可能なシステムにすれば、ユーザーがアクションを選ぶこともできるのでは――。

「さらにもうひとつ、最終的にはボツになった構造なんですが、『背ビレをずらして前後のボディを半固定式にする』という突飛なアイデアもありました(笑)。奥田さんが『アイツはすごいよね!』と言ってくれるぐらい、ウチのルアー開発担当は面白い男なんですよ」

この背ビレ交換システム、サンプルの時点では仮の案だったが、結果として製品版にも採用される重要なギミックになった。なお、パッケージ内に大小2種類の背ビレパーツを同梱したのは、これまた奥田の助言によるもの。

「『ここまでやるなら大きめの背ビレも用意しよう。レンジが稼げるようになるから』と言われて、最初はまったく意味がわかりませんでした。リップじゃなくて『背ビレ』ですよ、付けると潜るってどういうことだよ!? って。だけど、泳がせてみたら本当に50cmぐらい深くレンジが入った。あれは度肝を抜かれました」

開発の過程では「背ビレで前後のボディーを半固定」というアイデアも。ジョイントの可動域を抑え込むセッティングができるが、安定性に欠けたため不採用に

開発の過程では「背ビレで前後のボディを半固定」というアイデアも。ジョイントの可動域を抑え込むセッティングができるが、安定性に欠けたため不採用に

背ビレのデフォルトは小さいほうのパーツで、水面直下を泳ぎアクションも安定。これを大きいタイプに変えると、グライド時に側面でより水を受けて水面下50〜60cmをトレースしやすい
背ビレのデフォルトは小さいほうのパーツで、水面直下を泳ぎアクションも安定。これを大きいタイプに変えると、グライド時に側面でより水を受けて水面下50〜60cmをトレースしやすい

背ビレのデフォルトは小さいほうのパーツで、水面直下を泳ぎアクションも安定。これを大きいタイプに変えると、グライド時に側面でより水を受けて水面下50〜60cmをトレースしやすい

以心伝心のモノ作り

この第3弾サンプルでは、もうひとつ大きな変更点があった。後部ボディの下側に追加した「尻ビレ」だ。単に魚っぽいシルエットを演出するだけでなく、船でいうところのキールのような役割を果たし、直進安定性に寄与するのが目的だったが、ここへ開発担当がさらなるアイデアを重ねてきた。

「この尻ビレの形状をうまく利用すれば、キャスト時にフックが暴れて絡む可能性を減らせるのではないか、と言うんですよ。そうすれば『プチロック』を使わない、よりシンプルな構造にできる」

「プチロック」とは、アーマジョイントやメタルドライブに搭載されてきた機構のこと。ワイヤーにフックの一部を挟んで簡易的に固定することで、ボディが折り畳まれてもフック同士の絡みを低減できる。

ただしプチロックからフックが外れたらその都度セットし直す必要があるし、ボディに凹みができるので水が溜まって錆びないよう気を遣う、といった手間もあった。そこで今回はプチロックではなく、キャスト時にスプリットリング+フック側のアイがうまく収まるように尻ビレをデザインしたのだ。

キレのあるグライドアクションのために設けられた「尻ビレ」。さまざまな形状を模索し、フック同士の絡みを抑制する役割を持たせた
キレのあるグライドアクションのために設けられた「尻ビレ」。さまざまな形状を模索し、フック同士の絡みを抑制する役割を持たせた

キレのあるグライドアクションのために設けられた「尻ビレ」。さまざまな形状を模索し、フック同士の絡みを抑制する役割を持たせた

「以前は完成型だと思っていた細部も、新しいルアーを作っていくうちに課題が浮かび上がって、さらにブラッシュアップしたくなる。会議や打ち合わせで決まる部分もありますが、たとえばフィールドテストの帰り道、『プチロックをなくせたらな……』と僕が独りごとみたいに言う。開発担当は黙って聞いている。そしてしばらくすると、びっくりするような解決策が出てくる(笑)。そんなやり取りの繰り返しです」

フロントフックの近くにヒレを付ける案もあったが、外観を損なうと判断して不採用。ただしフックを抑え込むため極小の突起を残した
フロントフックの近くにヒレを付ける案もあったが、外観を損なうと判断して不採用。ただしフックを抑え込むため極小の突起を残した

フロントフックの近くにヒレを付ける案もあったが、外観を損なうと判断して不採用。ただしフックを抑え込むため極小の突起を残した

開発プロセスをさらに細かく辿ると、そもそも「尻ビレ」は本当に必要なのか? という分岐点もあったと担当者は語る。「尻ビレがなくても理想のアクションが出せるなら、排除したほうがいいかもしれない。フッキングの妨げになる可能性はゼロではないから」というのが奥田の意見だった。

「奥田さんと同船しながらテストを繰り返すなかで、『背ビレも尻ビレもあったほうが自分たちのイメージした泳ぎに近づける』という結論に至りました。テール部についても、最初はBtスラプターのパーツで代用していたのですが、泳ぎがモタついていたんです。それも『レスポンスが欲しいなら薄く切ったらええやん』(奥田)のひとことで、あっさり解決です」

それでもまだ、アメリカからリクエストのあった「キレッキレのグライドアクション」にはたどり着けていない、というのが全員の共通認識だった。当初から懸念だったジョイントの可動部分もなかなか安定せず、まだまだ課題は山積。厳格に定められた開発スケジュールの期限が刻一刻と近づいていた。

テールもグライドアクションに影響を与える重要なパーツだ。奥田のアドバイスに沿って薄く削ってみたところレスポンスが向上した
テールもグライドアクションに影響を与える重要なパーツだ。奥田のアドバイスに沿って薄く削ってみたところレスポンスが向上した

テールもグライドアクションに影響を与える重要なパーツだ。奥田のアドバイスに沿って薄く削ってみたところレスポンスが向上した

(第三話へ続く)

プロフィール

奥田 学 (おくだ まなぶ)

[インストラクター]

釣り歴は約40年。国内有数のランカーハンターとして、その名を馳せる。奇跡的な釣果とそのスタイルは、全国のバスアングラーの憧れ。 ここ数年は全国のダム湖・川・野池などへ赴き、でかバスを連発。 プロガイドではなくいち釣り人として、さまざまなメディアで活躍する生き様はまさに現代の剣豪、武芸者と呼ぶにふさわしい。

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