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concept

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持論を否定する事。

それは最も難しい決定の一つです。
しかし、振り返りが無ければ進歩もありません。
本当に「適切なモノづくりをしてきたか」を判断するために自己の歩んだ道を見つめ直す。
古きを知り、時には素直に誤りを認め、新たな提案へとつなげていく。
それが創造的破壊=DISRUPTIONです。
DISRUPTIONでは、“特定のルアー分野に特化した”ロッド作りを展開。
単純なモノづくりではない、この1本に人生を懸けたモノづくり。
SHIMANOバスロッドには
Bantam、JACKALL×SHIMANO、そしてフリースタイルと
数多くの製品と提案の歴史があります。
その1つ1つが繋がって、最新モデルに落とし込まれて来た歴史があります。

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PROCESS

PROCESS1素管構造

ハイパワーXの採用

SHIMANOロッドは、これまでアングラーが操作するためのエネルギーロスを無くすことを常に考えてきました。
操作とは、キャスト、ルアーアクション、フッキング、ファイトといった一連のゲームフィッシング特有の動作のことを指します。
全ての状況で変わらないこととして、アングラーがロッドに加えた力をラインの先のルアーであったり、ターゲットにダイレクトに伝えたいという欲求が伴う事は言うまでもありません。
シマノバスロッドではこのエネルギーロスを「つぶれ」と「ネジレ」と理解しネジレを防ぐためにロッドの斜めの補強を搭載してきました。
最もネジレやすい穂先部分から一貫して搭載することが必要不可欠であり、今回求めたビッグベイトロッドのようなティップがネジレを起こしてはならないロッドに於いてこの技術が40年以上前に提唱され、変えてはいけないものだと改めて認識しました。

スパイラルXコア の採用

つぶれとは?

次に、つぶれに対して。つぶれとは?たとえばストローをつぶしていく楕円のようになり、最後にペシャンとつぶれることと同じ。そして、つぶれの最終着地点は「破損」です。
ロッドに於いてこのようにつぶれる、折れることは如何なる手段を持っても防がなければなりません。極端なことを言えば、重量を無視して中身が詰まったロッド(無垢)はつぶれません。ただし、1日600~1000投にも及ぶキャストでロッドを振るのに、それだけ中身が詰まった重いモノを振り続けるのも不可能。
SHIMANOでは、2010年よりスパイラルX構造をロッドに採用。バスロッドではファイナルディメンションアンリミテッドが先陣を切って搭載しました。従来の横繊維だけのロッド強度補完を上下逆方向のテープ巻き構造に切り替えたことで、無垢のロッドに迫るほどのつぶれ強度と、無垢のロッドには実現しえない軽量ブランクスを実現したのです。スパイラルXコアになり、さらにその効果は向上。ビッグベイトの重い負荷を支える基本構造としてこのテープによる補強構造は無くてはならないものと改めて認識できました。

スパイラルXコアの採用 -スパインの減少

スパイラルXコアのもたらしたビッグベイトロッドへの恩恵は、強度実現と軽さだけではなく、カーボンテープの密巻き構造によって材料の重複量が少なくなったことでの「スパイン」減少に役立っています。これは、細身のロッドに於いて顕著に感じやすく、今回のビッグベイトロッドに於けるXX(2oz.~3oz.クラス)のモデルC610-XXにて体感する事が出来ました。
C610-XXはビッグベイトをターゲットとしたロッドながら、ルアーを操るという狙いを達成するためにロッドのバランス、アクションによるロッド負荷の緩急に敏感なロッドとして設計されています。ハンドルジャークのようなリーリング負荷だけで瞬間的にティップを曲げて、ルアーをスライドさせるスタイルではスパインによるルアーの自走幅の制約は阻害要素でした。極端な言葉ではありますが、スパイラルXコアだから、ルアーのスライド幅が伸びる。C610-XXは、スパイラルXコアの恩恵を大きく感じることの出来るモデルに仕上がりました。

∗C78-XXXXではロッドパワーが強すぎて極端には感じることができませんでしたが、スパイン要素以外の高強度という面ではスパイラルXコア以外に選択の余地はありませんでした。

スパインができる理由

シートの端は斜めにまたがり、必ずしも一方向とはならない。結果として部分部分に偏肉がおこり、硬い方向と柔らかい方向ができる。

シートの端は斜めにまたがり、必ずしも一方向とはならない。結果として部分部分に偏肉がおこり、硬い方向と柔らかい方向ができる。

カーボンの重なりの部分が硬くなる
=スパイン(背骨)

テープとテープの微量な重なりだけでロッドを構成する事が出来、その重なりもロッド全体に分散される。
特定のスパイン(背骨)に位置するようなものが存在しにくくなる。

PROCESS

PROCESS2各材料

カーボンテープは100種類以上に及ぶ素材から選定

複数釣種全て自社設計のSHIMANOだから保有する100種類以上の材料選択肢

今やロッドに採用されていることが一般的となったカーボン材料ですが、これも昔は多岐にわたる選択肢がありました。シマノでは、1978年にカーボンロッド「秘宝」をリリース。カーボン繊維とガラス繊維を併用する、それまで主流だった製法を変更し、カーボン繊維とケブラー繊維を独自の構造で組み合わせることで、折れやすさを克服したのがはじまりでした。
カーボン材料とは非常に面白いものである一方で、難しいものでもあります。良い材料を手にしても、生かすも殺すも設計者次第。不確定要素も含んだ少しのほころびが、コントロールできない状態へと繋がります。設計者としては、このような不確実要素も全てコントロールしたい。その中では、バスロッドだけを作っている訳ではなく、製品カテゴリーを複数に持ち、その分材料の選べる幅が広いSHIMANOは恵まれています。
今回のDISRUPTIONは自社の保有する100種類以上の材料から掛け合わせた無限とも言える選択肢にて設計。
トライ&エラーによって決定した材料を採用しています。
その中には超高強度高弾性材もあれば、超低弾性材料も勿論含まれています。

狙いによって変化するブランクス構造の“答え”

C610-XXでは積極的に取り入れた材料構成と設計があります。それが2014年のPOISON ULTIMAより導入されてきたアルティメットブランクスデザイン(UBD)です。
C610-XXはビッグベイトを操作することに比重をおいたロッド。つまり、1本のロッド中に役割をもつ部位が複数存在します。リーリングに反応し、瞬時に曲がりラインスラックをつくりルアーを押し出すパワーに変えるティップ。
瞬間的なバイトにも、パワーロスによって遅れることなくバスの口にフックアップさせることの出来るベリー。
ファイト時のバラしに繋がるゴツゴツ感を逃がした、反発力と柔軟性を兼ね備えたバット。
現場検証の末、操作のC610-XXだからこそ、求められるこれらの要素が明確になりました。
同時にC78-XXXXでは、このUBDが提供するパワーの緩急がキャストフィールを阻害することが現場検証にて判明。ルアーの飛行姿勢に於いては変化のない単一的な荷重移行が良いことが判明し、素直にUBD採用を撤廃しました。そのうえで、ファイト中のバットパワーを求める構造は必須要素と判断。
1995年スコーピオンEVより採用され、提案し続けているワン&ハーフが有効であると仮説立てを行い、現場検証にて狙い通りの効果を確認しました。C610-XXはUBD、C78-XXXXはワン&ハーフ。狙いごとにブランクス構造の選択を変えるという結論に至りました。

UBD(アルティメット・ブランクス・デザイン)は必要な材料だけを必要な部分に配置するテクノロジーで、これによってリニアな調子作りが可能になり、軽さ、感度、パワーとも飛躍的に向上します。

ワン&ハーフはあえてジョイント構造にすることによって継ぎ位置の径を強制的にワンランクアップさせ、フッキングパワーやバットパワーなどロッドコンセプトに必要な強さを高める構造。C78-XXXXではリフトパワーを高める狙いによりショートバット型のワン&ハーフを採用。特にハード系ビッグベイトの飛距離UPに大きく貢献しました。

ワン&ハーフがハード系ビッグベイトの飛距離UPに貢献した検証データ

キャスター(被験者) A B
ルアー ARMAJOINT 280SF(開発中プロトモデル)
ライン フロロ6号(22lb)
ロッド DISRUPTION C78-XXXX 当社従来品
同等適合ルアーモデル
DISRUPTION C78-XXXX 当社従来品
同等適合ルアーモデル
1投目 39.1m 36.2m 40.3m 36.7m
2投目 39.7m 36.4m 43.6m 37.7m
3投目 40.8m 38.4m 47.4m 42.5m
4投目 41.3m 38.5m 47.4m 42.5m
5投目 42.6m 39.6m 47.5m 43.2m
6投目 40.1m 37.8m 45.7m 38.2m
7投目 40.6m 38.1m 45.8m 38.7m
8投目 40.8m 38.1m 46.1m 39.4m
9投目 43.2m 40.5m 47.7m 43.8m
10投目 43.7m 42.3m 47.8m 44.0m
最大計測飛距離を
除いた上位5投の平均
41.7m 39.0m 47.2m 42.3m
飛距離比較結果 107% 112%
被験者2名の増減平均 110%

※計測状況

気温 湿度 気圧
6.4℃ 70% 1013.5hpa

・被験者A、Bが比較品当社従来モデル同等適合ルアーモデルとDISRUPTIONにて投擲比較
・比較データを被験者A、Bで平均したところ109.5%の飛距離の伸びを計測

  • ドームでの検証投擲

  • 計測器を用いたエビデンス検証

PROCESS3想定される使用リールとの照合

PROCESS

次に手掛けたのが合わせるリールとの高さと位置です。つまりライン放出メカニズムにおけるシステムプロダクトです。
23年はアンタレスDCMDやカルカッタコンクエスト MD300/400が発売される年であり、他にも21アンタレスDC、スコーピオンMDなど、セッティングが想定されるリールがある程度明確でした。リールの高さ、ガイドの高さ、放出ラインによる痩せ具合を考慮して、バットの曲がりによる角度の開きの調整幅を意識しつつ角度を決める。そういった検証を行いました。
バットガイドには適正リールに則した高さが求められます。この高さがあるからこそ、不要なバタつきを抑えラインの整流効果を手に入れることが出来ます。検証の結果、明確に飛距離の差が出る特別なセッティングを見出す事は難しかったものの、効果的な設定位置という枠では得るものがありました。リール、ロッド、ライン、全て一体として考えた先にあるノウハウです。

太糸によるスプール上のライン痩せが起きても、キャスト負荷によるバット側のバットガイドの上部を叩かず、放出ラインの暴れでブランクスを叩くリスクも低い配置。

DISRUPTION開発チーム想定システムプロダクト

ロッド リール ライン ルアー
DISRUPTION C610-XX 21 アンタレスDC フロロカーボン16lb ダウズスイマー180SF(ジャッカル)
DISRUPTION C610-XX 23 アンタレスDC MD フロロカーボン20lb アーマジョイント190SF(シマノ)
DISRUPTION C78-XXXX 23 カルカッタコンクエストMD 300/400 フロロカーボン25lb~30lb ダウズスイマー220SF or 240∞(ジャッカル)
DISRUPTION C78-XXXX 23 カルカッタコンクエストMD 300/400 PE4号~5号+リーダー30lb~50lb アーマジョイント280SF(シマノ) ※開発中プロト

PROCESS4グリップの選択

PROCESS

カーボングリップはあえて不採用

設計、調子、材料使い、リールとの照合を終えてついに部品の細かな選定に辿り着きます。先ずはグリップ。SHIMANOはグリップに対して長年拘りをもって取り組んできました。1984年にBantamが投じたファイティンロッドは直管グリップを採用し、ロッドから伝わるアタリをダイレクトにアングラーの手元に届ける画期的な構造。2013年のポイズンアドレナではグリップの後端側をカーボンモノコックに進化。そして2018年第二世代ポイズンアドレナでは再びグリップに革命を起こし、フルカーボンモノコックを展開、その後もスピニングロッドに於けるフロントグリップのカーボン化で実現したカーボンシェルグリップを投入してきました。強度が担保できていれば、軽量であるほど高感度。これはSHIMANOの信念です。しかし、今回のDISRUPTIONで感じた事は、ビッグベイトに於ける感度だけでないグリップのしなりの必要性。キャスト負荷を受け止めるバットの靭性が必要でした。
結論、カーボングリップは不採用という選択に至ります。

グリップのしなり、靭性といったキーワードからEVAを主体とした開発に着手。

SHIMANOテクノロジーの粋を集めたカーボンモノコックグリップ。軽量かつ高感度な特性をもたらすグリップですが、求めるコンセプトを優先してDISRUPTIONではあえて不採用。

解決策は“開発”で生み出す

グリップの拘りはそれだけではありません。前述のグリップのしなりによって生まれた副産物「歪み」に悩まされることになりました。
MAX6oz.級のルアーをひたすら毎日遠投することで感じたのが、リールシートとグリップとの間の歪み感です。
2つのパーツが別部品としてコネクトしている故に、ロッドが曲がる事で隙間が開くような感覚が発生していました。
細部に至るまで徹底的にこだわり抜きたいDISRUPTIONチームとしてはなんとかこの隙間による歪みをゼロにできないかという検討を行い従来のリングとは比較にならないほど肉厚の大型リングを開発。
キャスト時のパーツの歪みによるパワーロスを解消しました。

超硬質EVAグリップの採用

開発チームの中で、兼ねてより”ビッグベイトロッドに搭載するグリップの要件”として検討していた項目がありました。
・如何なるシーンでも滑らない
・パワーロスをしないためにしっかり握れる硬さが必要
・モンスターフィッシュによる尋常じゃないファーストランによってロッドエンドが跳ね上がっても、アングラーが痛い思いをしない
この目的を達成するために、グリップには滑りにくいEVAグリップを採用しました。
しっかり握れる硬さを求めてDISRUPTIONのために配合を検証し、これまでのSHIMANOルアーロッドでは採用したことのない領域の超硬質EVAグリップを完成させました。
例えるならば黒い金棒。ビッグベイトロッドだからこその拘りが普段は然程気にかけないストレスにも気づかせてくれました。

EVAは製品決定した硬度より更に硬質なものも試しましたが、あまりにも硬いEVAは手が痛くなり逆効果。不採用となりました。

BIG BAIT C610-XXには超硬質EVAストレートグリップを採用。多様なキャストシーンを想定して握る位置の自由度を求めました。

BIG BAIT C78-XXXXはリールシート直下のグリップには超硬質EVA、エンドグリップにはラバー素材を採用。モンスターとのファイト時に脇挟みしやすく、ファイトやバイトで咄嗟にロッドエンドが跳ね上がりアングラー側と接触しても負担の少ない設計。

パーフェクションシートの採用

パーフェクションシートXT

パーフェクションシートCI4+

次にリールシートです。シマノではビッグルアーを支えるブランクスの径に合わせて多様なリールシートを作ってきました。今回のDISRUPTIONでまず採用を想定したのが、パーフェクションシートです。握りによるパワーロスの低減、キャスト時の快適な指の掛かり具合、ファイトにおける極限の負荷でも快適な握りごこちを実現するパーフェクトなリールシートを目指す。こういった信念の下、これまで6度の進化を遂げてきました。
今回のDISRUPTIONではそれぞれのアイテムのための新規試作を仮説・検証を繰り返しながら実施。しかし、最終的にC610-XXにはパーフェクションシートXT、C78-XXXXにはパーフェクションシートCI4+が最も快適に適合するという検証結果となり、どちらも従来品の採用となりました。開発チームとしては盛大に無駄な試作をしてしまったという気持ちもありますが、新しいモノではなくすでに作ってきたモノの採用という感慨深い結果にもなり、培われてきたパーフェクションシートの完成度を再確認出来た工程となりました。

PROCESS5調子

PROCESS

ビッグベイトジャンルの中核を成す2種類の重量帯

DISRURTIONの調子決定に於いては、まず前提としてビッグベイトというルアーのどの特性に軸足を置くのか?という議論から始まりました。
アクションの方向性?泳ぎの質感?形状?
多くの議論の結果、2-3oz.クラス、4-6oz.クラスという2種類の“重量帯”に軸足に置くという結論に至りました。
この結論に至る前の検討材料として、国内外問わず市場に存在する50種類以上のビッグベイトを検証。
いわゆるマスターピースとして評価されているものから、特定の状況において替えが効かないとされているものまで、様々なビッグベイトを検証していきました。
その中で見えてきたのが、特にフィッシュイーターへの実績として評価が高いビッグベイトを中心に、2-3oz.クラスという括りでの中・小型ビッグベイト、4-6oz.クラスという括りでの大型・ジャイアントビッグベイトという2つのクラスに集約されるケースが非常に高いという実態です。
この2つのクラスは、日本の淡水・海水フィールドに於いてどこでも実績を出す事が可能なスペックです。
これ以上、これ以下のウェイト領域がある事も把握した上で、
ビッグベイトを扱う上で最も使用頻度の高いロッドとして完成させたいという願いと、
特定のエリア・特定のシチュエーションだけに特化したロッドでは再現性のある検証、共感を得られるモノ作りが出来ないと判断し、設計都合ではありますが、ビッグベイトカテゴリーの最も本流のあたるスペックをターゲットに据えました。

社内外、国内外問わず50種類以上のビッグベイトを検証。

C610-XXではアーマジョイント190SF、ダウズスイマー180SFなどの2-3oz.中小型ビッグベイトを想定。

C78-XXXXではアーマジョイント280SF(写真は開発中プロトモデル)、ダウズスイマー∞240などの4-6oz.ジャイアントビッグベイトを想定。

ハード系ビッグベイトに特化したモノ作り

ソフト系スイムベイトは重量一点集中構造ゆえにキャスト負荷が低く、投げるためのハードルが下がる一方で、ハード系ビッグベイトは重量が分散する傾向にありキャスト負荷も一気に高くなります。ソフト系スイムベイトとハード系ビッグベイトを切り分けて特化させることで、よりモノ作りの方向性を明確に定めました。

ハード系ビッグベイトに特化させた仕様を取ることで硬質素材ならではの瞬間的なキレ、リアクション性能を存分に引き出すことが可能。重量が重いビッグベイトになるほどこういったロッドの設計から受ける恩恵は大きく、C78-XXXXではフルキャストした先のジャイアントビッグベイトを巻き出しからしっかりと操作できるブランクスの張り感を特に重視しました。

今回はビッグベイトの中でも、ハード系ビッグベイトにフォーカスしたロッド創造というテーマを据えました。
これまでのシマノバスロッドシリーズでは、SB(Swim & Big Bait)という表記を用い、ソフトプラスチック製のスイムベイトとハード系ビッグベイトの双方に対応するモデルを作ってきました。
ソフト系スイムベイトは頭部から腹部にかけてウェイトを持ち、ボディ後部はソフトマテリアルによって構成されます。
この重量一点集中構造ゆえにキャスト負荷が低く、ことソフト系スイムベイトにおいては非常にヘビーウェイトのモノまである程度のロッドで投げることが可能となります。
しかし、ハード系ビッグベイトはそうはいきません。
水中の姿勢に拘ったビッグベイトほど、重量が分散しており、キャスト負荷も一気に高くなる傾向となります。
求められるアクションも柔らかい素材を使ったソフト系スイムベイトとは勿論異なります。
DISRUPTIONはハード系ビッグベイトにのみ要求仕様を絞ったことで、操作性と調子を明確に表現できることになりました。取捨選択をしたことで適合ルアーウェイト幅は狭くなったように感じるかもしれませんが、適正ルアーウェイトはカバー
しており、特化させたことで得る実の多さを取りました。

PROCESS6ガイドセッティング

PROCESS

実釣主義、適材適所の選択

ガイドセッティングの工程についても試行錯誤が繰り返されました。SHIMANOのガイドの考え方を一言で言えば「適材適所」です。キャストされるラインを整流し、アタリを手元まで届けるガイドはロッド構造において悩ましい要素も多分に含んでおり、無くてはならないものである一方、糸巻きなど総重量でロッドバランスや意図していた調子をガラリと変えてしまう存在です。
SHIMANOでは独自コンセプトで生み出したXガイドを2016年より展開しています。
Xガイドの糸巻きタイプに於いては穂先部のXガイドにあたる3Dチタンタイプは超高強度かつシームレスな冷間鍛造ガイドです。ベリーからバットで使用するXガイドには振り抜きの軽快さと、ライン放出性能を捉えたラウンド形状のエアロタイプを採用。リングにはセラミックよりも放熱性の高い鏡面仕上げの特殊金属を採用しています。しかし、DISRUPTIONのC610-XX、C78-XXXXには検証の結果、結論Xガイドは不採用。これまでのビッグベイトロッドの仮説・検証から見えてきたものは、このロッドに求められるのは剛性と軽さのバランス。悪く言えば、基本性能が満たされていれば「何を使うかではなく、どう使うか」によってコントロール出来る事実でした。Xガイドの超高強度冷間鍛造のバットガイドが欲しいと検討したこともありましたが、あくまで実釣におけるモノの完成度を優先して、採用を見送りました。

ガイドは当初ソルトロッドで採用している大型ガイド検討も視野に入れて開発。78XXXXが対象とする4-6oz.クラスのビッグベイトにおいて遠投性、剛性ともに理に適った選択に思えましたが、現場での実投テストでは想定と乖離した結果となり、最終的に不採用となりました。仮説が実際の検証で崩される開発シーンの一つです。

2016年より展開しているSHIMANO独自コンセプト、Xガイド。冷間鍛造による超高強度素材ながら、今回のDISRUPTIONでは不採用。最新のテクノロジー搭載が当たり前という潜在意識に一石を投じるDISRUPTION開発ハイライトシーンの一つです。

“ねじれない#1 × ねじれない#2 = 継ぎ目のねじれ”という最後の障壁

ロッドが曲がろうとする際に発生するエネルギーが捌け口を求めて継ぎ目へ移行。結果、継ぎ目で徐々に#1と#2がずれる現象が発生。

スパイラルXコア × ハイパワーXによるネジレの徹底的追放。
素管構造の項でそれは証明されましたが、ねじれないのであればそのネジレを生み出すエネルギーはどこに行くのでしょうか?
ロッドのティップからくるネジレはスパイラルXコアのようなネジレ強度の高いブランクスで且つ細径であれば、既存の汎用性の高いロッドであれば影響のない範囲でエネルギーが分散していきます。しかしビッグベイトロッドのような先から極めて太いロッドではどうなるのでしょうか?
そのエネルギーは、エネルギーの捌け口(継ぎ目)へと伝播されることがわかりました。フルワンピースを選択したC610-XXは検証の結果対策不要と判断されましたが、ワンアンドハーフ設計でキャスト負荷が特大にかかるC78-XXXXでは、継ぎ目に集中するエネルギーをどこかに分散出来ないか?もしくは継ぎ目の構造を見直すことで解決できないか?
そこからガイドも含めた最後の可能性を探りはじめることとなりました。

スパイラルガイドセッティングの検討から不採用と、継ぎ目の分析

・ネジレを追放したブランクスだからこそ、曲がり負荷を180度反対側で受け止めるスパイラルガイドが必要ではないのか?
・継ぎ目となるアワセの長さを再検討する事で解決できないか?
この2つを現場で検証するために、調子決定後のサンプルベースに再試作を行いました。
まずスパイラルガイドセッティングの検証です。スパイラルガイドの検証には左側方向と右側方向にスパイラルするサンプルをそれぞれ作成。回転角度も45度なのか60度なのか?様々なパターンを作成して検証を行いました。結果、スパイラルガイドセッティングではネジレ以前に、リール内においてキャストで傾けた方向にラインが寄って巻かれてしまうことが判明。これはPEなどの繊細なラインを使用している場合致命的なラインブレイクを誘う傾向にあり、一気に採用が却下の方向に傾きました。
続いてアワセの長さについての検証です。スパイラルガイド検証と同様、アワセの長さに変化を持たせたサンプルをパターン作成。1cm単位、ミリ単位で変化を持たせたサンプルを検証するという非常に繊細な検証を行いました。また、アワセの長さ検証と並行して接続部を外しやすい専用ロッドベルト試作品も持ち込み検証。どこまでネジれない継ぎ目を検証したとしても、固着を恐れた緩い繋ぎになってしまうと結局ネジレを払拭することが出来ません。繋ぐ力加減の個人差を減らし、積極的な繋ぎを行えるようにする。そのために、万が一の場合でも外しやすいツールとしてロッドベルト裏部のグリップ性を有効に使いやすい専用ロッドベルトを開発しました。最終的に、アワセ部を長くする、しっかり継ぐためのアワセマークを入れる、万が一の場合でも接続を外しやすい専用ロッドベルトを作成する。辿り着いたこれら3つの選択肢を束ねることにより最終関門をクリア。C78-XXXXが完成しました。
結果的に継ぎ目のアワセ部にフォーカスした細かい調整が最適解となりましたが、過程においてSHIMANOのキャスティング前提のルアーロッドでスパイラルガイドを選択肢に入れるという異例の工程となりました。SHIMANOではタイラバロッドのベイトモデルなど、実際の現場においてキャストが前提に無い一部のロッド、且つ穂先のガイドを下に向けることで更に高い実釣性能を狙うことが出来る一部の釣種においてのみスパイラルガイドを採用しております。キャスティングが前提にあるルアーロッドでは基本的に不採用。ネジレを素管のテクノロジーで追放出来るからです。今回の工程はまさに常識を疑い、一から再構築するというDISRUPTIONのコンセプトを象徴するものとなりました。

近年のSHIMANOロッド開発においてキャスティングが想定されるモノ作りでのスパイラルガイド検証は異例。

スパイラルガイドの設計も左側に45度、60度回転していく位置なのか、右側に45度、60度回転していく位置なのかといった多様なパターンサンプルを作成して検証。

スパイラルガイド採用を却下するに至った決定的な検証結果です。20lbを超える太号数のフロロやナイロン、PEを使用するという限定的な状況においてはキャスティングとリトリーブを常用的な範疇で繰り返した際にラインがリールの片側に偏る現象が発生。ラインの偏りはキャストやリトリーブの再現性を下げるだけでなくPEラインの使用においてライントラブル発生に繋がるケースもあるため太号数の使用が当たり前のビッグベイトジャンルにおいては致命的と判断。この場面でもまた、現場検証が仮説の否定に繋がる結果となりました。

継ぎ目のアワセ部分についても㎜単位でのサンプルを作成して検証。調子に関わる部分でもあるため、アワセの長さ一つ取っても繊細な調整が必要。見た目は地味ながら、長きにわたるモノ作り完成に向けた最後の詰めの場面です。

こうして6工程の検証を1つずつ潰していき、仕上がったのがDISRUPTIONの2モデル。
C610-XXとC78-XXXXです。
この2モデルにはDISRUPTION開発チームのモノ作りへの想いが注ぎ込まれています。
一人でも多くのアングラーがビッグベイトを通じた”感動”を体験して欲しい。
自分の思い描く操作や動きをビッグベイトに注ぎ込み、ターゲットを狙い通りにバイトへと導く瞬間の昂り。
そして夢を手にする喜び。
このような“感動”をビッグベイトゲームで得るためのたいまつとして、DISRUPTIONは誕生しました。
SHIMANOのテクノロジーの歴史を振り返り、全て闇雲に採用するわけではなく、本当に正しいかを見直す創造的破壊姿勢。DISRUPTIONには、SHIMANOのモノ作りの姿勢が込められています。

LINEUP

LINEUP

BIG BAIT C610-XX

BIG BAIT C610-XX

適合BIG BAIT #2-3oz.

2-3oz.のビッグベイトを操るための操作タイプのファストアクション。キャスト負荷が低い分、思いっきり操作性を高める調子を選択。UBD(アルティメットブランクスデザイン)を採用し、高速巻きや、ピンスポットでの連続ジャーク&トゥイッチのバランスを高次元にまとめ上げ、ビッグベイトロッドとは思えない軽快性能を獲得。
BIG BAIT C78-XXXX

BIG BAIT C78-XXXX

適合BIG BAIT #4-6oz.

4-6oz.のビッグベイトをストレスなくキャスト、操作しバイトに持ち込むレギュラーファストアクション。フルサイズゆえのキャスト負荷に対応しつつ、高い操作性も獲得したワン&ハーフ設計。リーリングからの瞬発入力や8の字操作などロッド全身をフル活用させたストロングなブランクス設定。
品番 全長
(m)
継数
(本)
仕舞寸法
(cm)
自重
(g)
先径
(mm)
ルアー
ウェイト(g)
適合ライン
ナイロン(lb)
グリップ長
(mm)
テーパー カーボン
含有率(%)
本体価格
(円)
商品
コード
BIG BAIT C610-XX 2.08 2 171.9 未定 2.2 18〜72 MAX25 313 F 89.1 58,000円 332554
BIG BAIT C78-XXXX 2.34 2 130.0 未定 2.9 42〜168 MAX35 444 RF 96.6 68,000円 332561
※2023年6月発売予定
Impression
MANABU OKUDA

ビッグベイトを駆使して、
「仕掛けに行く」スタイルを開拓できるロッド。

奥田 学
MANABU OKUDA

ビッグベイトを駆使して、
「仕掛けに行く」スタイルを開拓できるロッド。

まず言っておきたいのは「ディスラプションはバス専用ロッドではない」ということ。素材も製法も、シマノの最高峰技術を注ぎ込んだ、ベイトキャスティングロッドのまったく新しいシリーズです。
過去にとらわれずゼロベースから立ち上げた、特定のルアージャンルに特化したロッド。今回自分が担当したのはビッグベイト、ジャイアントベイトが使える専用ロッドであり、よりハードベイトにフォーカスを当てたロッドです。
ラインナップは、C610-XXとC78-XXXXの2本からスタートします。特定のターゲット専用ではなく、ルアーと釣り方にフォーカスを当てた、いわばフリースタイルロッドです。ビッグベイトの重さはメーカーによって異なりますが、C610-XXが6~8インチ、C78-XXXXが8~12インチに対応できるロッドと考えてもらえればいいと思います。淡水ならバスや大型トラウト、ソルトウォーターならシーバスや青物など、幅広いジャンルで戦えるロッドに仕上がっています。
ビッグベイトは、ベイトタックルを使うことが大前提ですが、ソルトウォーターではベイトを使ったことがない人もいるでしょう。バスフィッシングを通過せず、ソルトウォーターから釣りを始めた人も多いですから、スピニングしか使ったことがない人もいると思います。
でも、今、世の中は変わりつつあります。ビッグベイトの威力に気付いて、その愛用者は確実に増えています。スピニングしか使ったことのない人も、今こそ自身の釣りをアップデートするときです。
例えば、シーバスがターゲットのコノシロパターン。8インチクラスのコノシロにジャストサイズのビッグベイトを投げるとしたら、スピニングのシーバスロッドではパワー的にどうしても無理が生じます。
また、ビッグベイトの釣りでは、どんなターゲットを狙う際にもジャークやトゥイッチが必要。小ワザを効かせないと、最後のバイトに持ち込めないからです。そんな時、スピニングでもできないことはないですが、非常に厳しいと思います。ただ巻くだけならよいですが、ラインスラックを使ってロッドで弾く“ドッグウォーク”をさせるときに、ライントラブルが頻発してしまうでしょう。ビッグベイトの釣りでは、パワー面や利便性などを総合的に考えると、ベイトタックルが圧倒的に優位になります。
ベイトリールのライントラブルが怖い? それはもう過去の話。現代のDCブレーキ搭載リールは非常にキャストしやすく、電子制御によりトラブルも抑えられています。まずはC610-XXにアンタレスDCやアンタレスDC MDを組み合わせて、大き過ぎないビッグベイトをスローに投げることから始めて、徐々に体を慣らしていけば、いつの間にかロングキャストもできるようになっているはずです。
ピッチングで狭いスポットに入れるなど、C610-XXでビッグベイトのより細かい操作を覚えることができたら、ジャイアントベイトとC78-XXXXへスイッチ。思いっきり遠投して、リーリングでジャークアンドストップさせると、また新たな世界が見えて来ると思います。
この2本は長さとテイストが異なるだけで、テーパーが似ているため持ち替えてもキャストフィーリングに違和感はあまりありません。そして共通するのは、圧倒的なパワー。曲がりに対しての戻りは早く、反転バイトも掛けやすいのが特長。ビッグベイトで仕掛けに行くスタイルには、ディスラプションが欠かせない存在であることに、いつしか気付くことになると思います。
TAKUMA HATA

「手の延長」のような使用感で
ビッグベイトの可能性を広げる1本。

秦 拓馬
TAKUMA HATA

「手の延長」のような使用感で
ビッグベイトの可能性を広げる1本。

ビッグベイトを2つのグループに分けて考えた、今までの規格にとらわれないパワー設定が特徴です。
C610-XXは、2~3oz.クラスの使用が基準。全長で例えるなら180mmクラス程度ですね。C78-XXXXは4~6oz.クラスで、220mmや240mmクラスになります。
従来のビッグベイトロッドは「SB」と呼ばれるモデルで、僕はポイズンシリーズのSBモデルを担当していましたが、今回はバンタムシリーズを担当する奥田学さんと一緒に開発しました。そのため、バンタムチームの開発コンセプトも取り入れて、互いに性能を追求してやってきた概念をミックスするなど、今までにない手法で完成したビッグベイト専用ロッドです。
そもそもビッグベイトの釣りは、近年、急激に進化してきた背景があります。
進化の方向性としては2つあり、1つは自ら仕掛ける釣り。積極的に操作していく釣りですね。以前は投げて巻くだけだったところに、自ら食わせのチャンスを作ることが求められるようになってきました。
もう1つは、ビッグベイトの釣りがバスにとらわれず、魚種のボーダーを超えてきたという点です。シーバスをはじめ、淡水と海水問わず、さらには怪魚など様々なフィッシュイーターに、ビッグベイトが有効であることが認知されてきました。
まず第一の、「自ら仕掛ける」という部分において、ディスラプションはルアーの操作性に非常に長けたロッドになっています。従来から求められている「ロングキャスト性能」と「正確性」を高めたうえで、さらに「ルアーを自在に動かせる」という点にもこだわりました。トゥイッチやジャークをしたときの感覚は、ルアーの動きが今までのSBモデルと全然違うと思います。ひとことで言うと、より動かしやすくなったのですが、例えるなら『自分の手でルアーを持って動かしている』ように感じる動きを見せてくれます。自分のロッド操作が、ダイレクトかつ正確にルアーに伝わっている感覚ですね。
これは単にロッドが軽くなっているからではなく、ルアーを動かすために必要なパワーが上がっているためです。アクションのキレは今まで以上で、魚の反応も非常にいいです。パワーが有り余っている感じで、アクションさせているだけで勝手に掛かってしまうような強さがあります。逆に言うと、パワーがあり過ぎてハリが伸びてしまうのではないか…と、いらぬ心配をしてしまうくらい、パワーがあるのは事実です。
フッキング時のパワー伝達も的確で、ドカンとフックポイントに力を込められます。これもまた『自分の手でルアーを握って口にハリを掛けている』かのような感覚です。ぜひ体感してほしいですね。
今後ディスラプションで狙ってみたい魚は山ほどいます。例えばオーストラリアのマーレーコッド。そして、同じくオーストラリアのバラマンディ。日本で言うアカメの一種ですね。その他、世界にはパイクや、アマゾンのピラルクといった巨魚や怪魚がたくさんいますから、どれも狙ってみたい…。
国内なら海の釣りですね。シーバスはもちろん、青物全般、カツオも全然イケますよ。