DISRUPTION
SHIMANO
DISRUPTION

CONCEPT

既成概念を捨て去り
「特定のルアーにフォーカス」したルアー専用ロッド。

ディスラプション(DISRUPTION)とは、 “創造的破壊”を意味します。理想という未踏の大地へ最初の一歩を踏み出したい。その前に立ちはだかる最も大きな障壁は妄信的な自己肯定であり、疑うことを忘れた既成概念です。ターゲットルアーを絞り込み、そのルアーが持つポテンシャルを最大限に引き出すには何が必要なのか。素材のセレクトからテクノロジーに至るまでゼロベースから考え、仮説と検証を繰り返しました。そして導き出された最適解が、ディスラプションというルアーロッドです。古びた概念や常識は必要ありません。ディスラプションが求めるのは“本物”のみです。

NEXT LURE
CATEGORY

ディスラプションの次なるターゲットルアーは、
トップウォーター&シャロークランクベイト。

“何よりもルアーありき”がディスラプションシリーズの基本思想です。1つのルアーの持ち味をフルに活かすロッドであること。安易にスペックの裾野を広げると、性能を最大公約数で着地せざるをえません。ディスラプションが掲げる思想を貫くためには、ターゲットルアーを一点に絞り込む必要がありました。
2023年に発売されたディスラプションのファーストアイテムは、2ozクラスと4ozクラスのビッグベイトにフォーカスしたパワーモデルでした。そして2025年、これに続くディスラプションの第二弾として産声を上げたのが、「トップウォーター」と「シャロークランクベイト」です。
なぜトップとシャローにレンジを限定するのか。それは、レンジによってルアーに掛かる水圧が変化するからです。クランクベイトひとつとっても、シャロ…

“何よりもルアーありき”がディスラプションシリーズの基本思想です。1つのルアーの持ち味をフルに活かすロッドであること。安易にスペックの裾野を広げると、性能を最大公約数で着地せざるをえません。ディスラプションが掲げる思想を貫くためには、ターゲットルアーを…

“何よりもルアーありき”がディスラプションシリーズの基本思想です。1つのルアーの持ち味をフルに活かすロッドであること。安易にスペックの裾野を広げると、性能を最大公約数で着地せざるをえません。ディスラプションが掲げる思想を貫くためには、ターゲットルアーを一点に絞り込む必要がありました。
2023年に発売されたディスラプションのファーストアイテムは、2ozクラスと4ozクラスのビッグベイトにフォーカスしたパワーモデルでした。そして2025年、これに続くディスラプションの第二弾として産声を上げたのが、「トップウォーター」と「シャロークランクベイト」です。
なぜトップとシャローにレンジを限定するのか。それは、レンジによってルアーに掛かる水圧が変化するからです。クランクベイトひとつとっても、シャロータイプとリップの大きいディープダイバーでは引き抵抗が大きく異なります。この双方に対応しようとすると必要なスペック要素が広く分散してしまい、高レベルな性能を1本のロッドにまとめ上げることが困難になります。
究極を探求するディスラプションにおいてレンジが固定されるルアーに着目したのは、ある意味、必然ともいえるものでした。

「操作系ルアー」と「リトリーブ系ルアー」どちらにフォーカスするか。

ターゲットルアーを絞り込むにあたり、もうひとつ考慮しなければならないことがあります。それは“どのように使うルアーなのか”ということ。簡単に言えば、ロッド操作でアクションを加える「操作系ルアー」か、巻きによってバイトを誘う「リトリーブ系ルアー」のどちらにフォーカスするかということです。
たとえばトップウォータープラグの場合、ペンシルベイトやポッパーはトゥイッチなど積極的にアクションを加えていく操作系ルアーですが、スイッシャーやクローラーベイト、プロップベイトはリトリーブ系のルアーです。アクションの“間”で喰わせるルアーとリトリーブでの“泳ぎ”で誘うルアーでは、ロッドにも違った操作性が求められるであろうし、感度の意味合いも変わってくるはずです。
操作と巻きの双方を欲張ると、目指す理想への焦点がぼやけてしまいます。ターゲットルアーの系統を明確にすることは、ディスラプションにとって出発点を決めるための重要な作業でした。

スペックありきの発想を捨て、
ゼロベースでテクノロジーをセレクトする。

ディスラプション『TOPWATER C68 Type1』と『CRANKING C68 Type2』の開発には1年11ヵ月を要しました。この間は仮説と検証、トライ&エラーの連続。ここまでの時間が掛かったのは、スペックありきの発想を捨て、ゼロからテクノロジーを選択したからです。
先進的な技術や高価な素材は、高級ロッドのステイタスと呼べるものかもしれません。しかしこれらは、あくまでロッド性能を理想に近づけるための手段にすぎません。この技術は本当に必要なのか。固定概念や先入観はないか。開発陣はこう自身に問いかけ、基本設計構造からトライ&エラーを繰り返しました。ゼロベースから必要なテクノロジーをセレクトして誕生したロッド。これがディスラプションなのです。

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TOPWATER C68 Type1
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CRANKING C68 Type2
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BIG BAIT C610-XX &
BIG BAIT C78-XXXX
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    TOPWATER C68 Type1

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    TOPWATER C68 Type1

    PENCIL BAIT
    90-110mm 1/2-3/4oz.(14-21g) class
    掲げたのは自己をも否定する創造的破壊。ゼロベースからスペックを構築したトップウォーター専用モデル。国内外で最も多用される90〜110㎜のペンシルベイトにフォーカスしてチューンナップ。スパイラルXコアとハイパワーXのダブルX構造により、キャスト精度を低下させるブランクスのつぶれやネジレを抑制。ティップ先端に硬さを持たせることで、伸びやかな飛距離とレスポンスのよい操作性を同時に獲得。

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    CRANKING C68 Type2

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    CRANKING C68 Type2

    SHALLOW CRANK BAIT
    0-120cm depth 1/4-3/8oz.(7-10g) class
    シャロークランクの泳ぎを余すことなく引き出す専用モデル。へら竿からヒントを得たタングステン巻きエキサイトトップを搭載。適度な重みが過度な跳ね返りを防ぎ、クランクベイト特有の振動をとらえる感度と、グラスコンポジット並みのモタレ感を同時に実現。ダブルX構造によりキャスト時の入力パワーをロスなくルアーの射出パワーへ変換。空気抵抗の大きいクランクベイトの失速を抑え、精度の高いキャストが可能。

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  • BIG BAIT C610-XX

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    BIG BAIT C610-XX

    適合BIG BAIT #2-3oz.

    2-3oz.のビッグベイトを操るための操作タイプのファストアクション。キャスト負荷が低い分、思いっきり操作性を高める調子を選択。UBD(アルティメットブランクスデザイン)を採用し、高速巻きや、ピンスポットでの連続ジャーク&トゥイッチのバランスを高次元にまとめ上げ、ビッグベイトロッドとは思えない軽快性能を獲得。

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  • BIG BAIT C78-XXXX

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    BIG BAIT C78-XXXX

    適合BIG BAIT #4-6oz.

    4-6oz.のビッグベイトをストレスなくキャスト、操作しバイトに持ち込むレギュラーファストアクション。フルサイズゆえのキャスト負荷に対応しつつ、高い操作性も獲得したワン&ハーフ設計。リーリングからの瞬発入力や8の字操作などロッド全身をフル活用させたストロングなブランクス設定。

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TOPWATER C68 Type1

開発ストーリー

PROCESS 1 特性の考察

「トップウォーターの種類とサイズを絞り込む」

トップウォータープラグは操作系とリトリーブ系が混在し、クロダイやトラウトを狙う5g前後の小型から、マグロやヒラマサ狙いで用いる100gクラス大型まで多岐にわたるなかで、ディスラプションがフォーカスしたのは操作系の代表格であるペンシルベイトです。国内外で最もベーシックなサイズとされる14g前後のトップウォーターを快適に扱えるロッドを「TOPWATER Type1」とカテゴライズし、狙ったポイントへ確実にルアーを撃ち込める飛距離、アクションの多くをアングラーのインプットに依存するペンシルベイトを的確に泳がせる操作性を、いかにして高めていくかを検討しました。

一般的トップウォーター
プラグの操作方法
カテゴリ定義(トップウォーター)
サイズ定義:90-110mm 1/2-3/4oz.(14-21g) class

ブラックバス・シーバス・クロダイ・
ピーコックバス・ タライロンなど国内外のターゲットを狙える ベーシックサイズ

スケートタイプ/スライドタイプ スケートタイプ/スライドタイプ

浮き姿勢が水平寄りのものは、左右のスライドエネルギーを持っていかれるため動きがワイドになる
(スケートタイプ/スライドタイプ)

水平姿勢のトップウォータールアー

水平姿勢の
トップウォータールアー

ドッグウォークタイプ ドッグウォークタイプ

浮き姿勢が垂直寄りなものは、初期エネルギーを水中に沈んだボディの水押しに持っていかれるため移動距離が抑えられ、スプラッシュやターンのキレが出る(ドッグウォークタイプ)もっと姿勢が垂直に近づくとダイビング系に。

垂直寄り姿勢のトップウォータールアー

垂直寄り姿勢の
トップウォータールアー

サイズや使い方が多岐にわたるトップウォーターにあって、ディスラプションは国内外で最も基本的なサイズである14g前後のペンシルベイトにフォーカスしました。

「ペンシルベイトの能力を引き出すために必要なこと」

ターゲットルアーを絞り込むことによって、ルアーの能力をフルに引き出すためには何が必要なのかが見えてきます。『ディスラプションTOPWATER C68 Type1』は操作系トップウォーターに特化したロッド。開発に際しては課題を明確にし、かつ優先順位を付けることで操作系ロッドとしての水準を高めました。

1.キャスト精度

釣りの基点を作るという意味で、キャスト精度は何よりも優先される性能。狙った場所へ正確にルアーを投入するためには、キャスト時に生じるティップのネジレを抑える必要があります。

2.飛距離

トップウォーターに限らず、広範囲を探るための飛距離は不可欠。飛距離はロッドのレングスに多くを依存しますが、操作性に重きを置くなら過度に長くはできません。限られたレングスの中で最大限の飛距離を得るには、キャスト時の入力エネルギーをロスなく射出パワーへ変換する曲がりと反発力が求められます。

3.ルアー操作性

艶めかしいスライド、キビキビと首を振るドッグウォーク。こんなペンシルベイトならではの楽しさを存分に味わうためには、トゥイッチの微妙な入力アクションをダイレクトにルアーへ伝えるレスポンスを高める必要があります。
TOPWATER

ペンシルベイトはロッド操作でルアーに動きを入力

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PROCESS 2 ブランクス構造の追求

PROCESS 2 ブランクス構造の追求

「X構造でつぶれとネジレを効率的に追放する」

キャスト精度を阻害する最も大きな要因は、ブランクスのつぶれとネジレにあります。ディスラプションTOPWATER C68 Type1においてはハイパワーXとスパイラルXコアのダブルX構造によって、ブランクスのつぶれとネジレを抑える手法を採りました。ハイパワーXは強化構造、スパイラルXコアは基本構造という違いはありますが、ともにカーボンテープでブランクスを締め上げるというシマノ独自のテクノロジーです。一般的なロッドは繊維状のカーボンをシート状に加工したものを、伸方向(ロッドに対して縦方向)と周方向(横方向)に重ねて成形しますが、X構造はカーボンテープを緩い角度で巻けばしなやかに、円周方向に立てて巻けば粘り強くといった具合に、テープを巻き付ける角度、つまりカーボン繊維の方向を自由に設定できるという強みがあります。ゼロベースからブランクス構造を見直した結果、入力エネルギーを効率よくルアーに伝えるトップウォーターロッドの構造として、あらためてX構造が適していることに気づかされました。

1981年に誕生したロッドの最外層にカーボンテープをクロス状に巻き上げるXライン。1982年にはハイパワーXに名称を変えてシリーズ化を始めました。

ロッド縦繊維の内層と外層に、カーボンテープを逆方向斜めに密巻きした三層の基本構造。スパイラルXコアはナノアロイテクノロジーにより実現した高強度樹脂を用いたカーボンテープを使用し、つぶれ、ネジレともにさらなる強度を得ることに成功しています。

「入力エネルギーをロスなく伝達する素材配置」

6フィート8インチというレングスで最大限の飛距離を出すためには、入力エネルギーをロスなくルアーへ伝達する“調子”が重要です。ルアーのウエイトをしっかりつかむベリー、無段階に曲がり込む軽量かつパワフルなバットを備えたうえで、特にトップウォーターロッドとしては水面に浮いたルアーを正確に操るため、ベリー部分へ意図的に低弾性素材を配置したいという思いがありました。目的に応じた自由な素材配置。これを実現してくれるのがUBD(アルティメットブランクスデザイン)です。スパイラルXコアは、最下層からカーボンテープ(順巻き)、カーボンシート(伸方向)、カーボンテープ(逆巻き)の三層構造になっています。2層のカーボンテープは一般的なロッドの周方向のカーボンシートにあたり、主につぶれやネジレに対する剛性を高めるパートになります。中間層のカーボンシートはロッドの調子を司るパートとなり、ここへ適材適所の素材を自由に配置できるのがUBDというテクノロジーです。現在シマノが保有しているカーボン素材は軽く100種類を超え、含有樹脂の劣化を防ぐため徹底した鮮度管理がなされています。またへら竿や鮎竿といった繊細なノベ竿から高負荷に耐える船竿まで手がけてきた歴史があり、それぞれのノウハウがディスラプションにも活かされています。

従来構造

UBD(アルティメットブランクスデザイン)

材料の無駄な重複が少なく、適材適所の材料使いで軽く、メリハリの利いたアクションを実現。
これもSPIRAL X CORE のサンドイッチ構造ゆえに可能な構造

「しの字調子・への字調子」

調子は飛距離だけでなく、ルアーの操作性にも大きく影響する部分です。つぶれとネジレを抑えるカーボンテープの横繊維、調子を司る縦繊維。ロッドの構造は常に「縦と横の配置関係」にあります。トップウォーターロッドとしてベストな操作性を得るには、どのような繊維配置で、どのような調子を作ればよいのか。TOPWATER C68 Type1は次なる検証段階へ入りました。調子の分析に際する大きなテーマは、ティップ先端が軟らかく無段階に曲がり込む『し』の字調子と、ティップ先端を硬質に仕上げ、曲がり込んだのちスナップのように押し出す『へ』の字調子のどちらがよいのか、という点です。分析作業はグレートアマゾンワールドフィッシングラリーのタイトルホルダーである秦拓馬プロとともに行いました。

ロッドの構成は、縦+横
しかし、それだけではロッドに発生する『ネジレ』を防げないネジレを抑えるには斜めの繊維が必要

『し』の字調子

ティップ先端が柔らかく、無段階でバットまで曲がり込む。

『へ』の字調子

ティップ先端を硬質に仕上げ、曲がり込んだのち、スナップのように押し出す。

調子の分析は、グレートアマゾンワールドフィッシングラリーのタイトルホルダーである秦拓馬プロとともに時間を掛けて行った。

テストサンプルを
4バージョン設定

『し』の字はティップから素直に曲がり込んでベリーが硬質な、いわゆる先調子。一方の『へ』の字はロッドの最軟部を先端部よりやや手前に設定した調子。テストサンプルを4バージョン設定して検証したところ、『し』の字調子は曲がりが非常に綺麗な反面で細かい操作がティップに吸収されてしまい、アクションのレスポンスは今ひとつ。飛距離においても思ったほど伸びませんでした。逆に『へ』の字調子は曲がりこそ特徴的ではあるものの機敏なアクションを付けやすく、キャスト時も硬質のティップがリリース直前にルアーを押し込むためか、とりわけ10〜14gの軽量トップウォータープラグでは『し』の字ティップよりも飛距離が出るという結果を得られました。シマノにおける硬質ティップといえば、鮎竿用として開発されたエキサイトトップがすでに存在しています。指先の爪のように先端に硬度を持たせ、重量を意図的に設けることで、振動感知性能と操作レスポンスを高めるというエキサイトトップの理論は、ルアーロッドにおいても多くのメリットをもたらしてくれることが明らかになりました。

鮎竿に採用されているエキサイトトップ。先端部へ意図的に硬さと重さを持たせることにより、感度とリニアな操作性を得られる穂先です。

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PROCESS 3 グリップの仕様

PROCESS 3 グリップの仕様

「高密度ラバーコルクをグリップエンドに搭載」

軽さや感度は実釣における強力な武器であることは確かですが、使用環境や対象魚によっては必ずしも理想の形であるとは限りません。1984年の直管グリップ、2013年のカーボンモノコックグリップ、 2018年のフルカーボンモノコックグリップ、2024年の開口端設計と高感度化を追求してきたなかで、ディスラプションTOPWATER C68
Type1では、高密度のラバーコルクをグリップエンドに搭載しました。その理由は、世界のビッグフィッシュと対峙するフリースタイルロッドであるからです。アマゾンに生息する巨大なフィッシュイーターのファーストランは強烈で、ルアーを吸い込むやいなや一気に走り、ロッドエンドを跳ね上げます。このときのヒジに受ける衝撃の強さは、実際に経験した人でなければ理解できないでしょう。ビッグフィッシュと渡り合うためには、快適性も不可欠なのです。
急激なロッドエンドの跳ね上がりからヒジへの衝撃を緩和する高密度ラバーコルクをグリップエンド。ビッグフィッシュと真っ向勝負を挑むための快適装備です。
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PROCESS 4 ガイドセッティング

PROCESS 4 ガイドセッティング

「ガイドは過酷な使用下にも耐えるタフネス性を考慮」

ディスラプションTOPWATER C68 Type1は海外遠征も視野に入れたフリースタイルロッドという位置づけです。長時間の移動、数日にわたる釣行。遠征は釣り人だけでなくタックルにとっても過酷です。一生に数度もない遠征をガイドトラブルによって棒に振ることがないよう、ガイドセッティングは何よりも頑丈さを優先しました。一般的にティップには糸絡みの少ない高剛性のガイド、ベリーには調子を妨げない軽量のガイドを配置するのが普通ですが、TOPWATER C68 Type1にはトップからベリー最上部にかけては剛性の高い冷間鍛造のXガイド3Dチタン、バットからベリーにかけてはFujiチタンフレームダブルフットというタフネス仕様としました。

トップからベリー最上部にかけては冷間鍛造のXガイド3Dチタン、バットからベリーにかけてはFujiチタンフレームダブルフットを装備したタフネス仕様。

IMPRESSION

秦 拓馬 TAKUMA HATA

ペンシルベイトに絡む水流を操り、自由に“音色”を奏でられるロッドです。

僕がペンシルベイト用ロッドに求める条件とは、狙った場所へ気持ちよく遠投できて、掛けた魚をしっかりキャッチできるパワーと粘りを備えていること。そのうえで自分が思ったようにルアーを操作できることです。ペンシルベイトは釣り人側が操作しないと動かないルアーですから、特に操作性は重要ですね。
僕はペンシルベイトを“楽器”だと思っているんです。操作する中でどのように水を絡めるかによって音色が変わるんです。水を散らしたり纏わせたり、掻き回してみたり、柔らかく水を持ち上げてみたり。水の膜を自在に操ることって、不要に水を切りすぎるロッドだと難しいんですね。
その点、ディスラプションTOPWATER C68 Type1の調子は絶妙です。硬めのティップが細かいアクションをレスポンスよくルアーに伝えてくれるので緻密な操作が可能。またキャスト時もリリース直前にティップがルアーを押してくれるのか遠投が効くし、その距離感もつかみやすい。
グリップジョイント仕様なので国外にも持ち出しています。アマゾンのピーコックバス、マレーシアのトーマン狙いでも活躍しましたし、国内ならチヌもおもしろい。ディスラプションTOPWATER C68 Type1はよく飛び、ルアーへの水の絡みを自在に表現できるロッドですね。

SPEC

品番 全長
(m)
継数
(本)
仕舞寸法
(cm)
自重
(g)
先径
(mm)
ルアー
ウェイト(g)
適合ライン
ナイロン・フロロ(lb)
グリップ長
(mm)
テーパー カーボン
含有率(%)
本体価格
(円)
商品
コード
TOPWATER C68 Type1 2.03 2 174.3 未定 2.0 7〜28 8〜16 235 R 98.4 未定 381071 **

※2025年6月発売予定

TOPWATER C68 Type1

製品情報サイト

CRANKING C68 Type2

開発ストーリー

PROCESS 1 特性の考察

「シャロークランクベイトの種類とサイズ定義」

クランクベイトはシャローランナーから4m以上も潜るディープダイバーまで様々。その中で、水面直下のサーフェスレンジから120cm前後をカバーするシャロークランクベイトを「CRANKING Type2」とカテゴライズ。サイズはラージマウスバスやスモールマウスバス、スポッテッドバス、シーバス、ロックフィッシュなどの標準とされる1/4〜3/8oz(7〜10g)を想定しています。ひと口にシャロークランクベイトと言ってもルアーによってリップの大きさに差があり、リトリーブした際に感じる抵抗も違います。ディスラプションCRANKING C68 Type2では小さなスクエアビルタイプにフォーカス。クランクベイト本来の使い方である定速リトリーブを前提とし、極めて弱く抜けるような振動をリアルに感じつつ、ルアー本来の泳ぎを引き出す追従性に重きを置いてチューニングを施しました。

レンジ定義(クランクベイト)

サイズ定義:
0-120cm depth 1/4-3/8oz.(7-10g) class

ラージマウスバス・スモールマウスバス・スポッテッドバス・シーバス・ロック
フィッシュなど淡水・海水ターゲットを狙うシャロークランク標準スペック

メインのシャロークランクベイトにはスクエアビルタイプを想定。ディスラプションCRANKING C68 Type2は抜けるような弱い振動を手元へ感じつつ、ルアー本来の泳ぎを引き出すことに重きを置いて開発しました。

「シャロークランクベイトの能力を引き出すために必要なこと」

一定速でリトリーブするだけで細かく振動して魚にアピールするクランクベイトですが、きちんと泳がせないことには仕事をしてくれません。ルアー本来の泳ぎを邪魔せず、そのポテンシャルをフルに引き出すこと。これがクランクロッドの必須条件といえるでしょう。

1.しなやかさ

クランクベイトが生み出す小刻みな首振り。この持ち味をスポイルさせないためには、細やかな振動や抵抗に対して俊敏に追従するしなやかさが不可欠です。

2.高感度(目•手)

クランクベイトがきっちり泳いでいるかは、ティップの振れや手に伝わる振動で感じ取るもの。また巻いている最中にウィードがフックに引っ掛かったり、水中の障害物にルアーが当たるなどの情報を察知するためにも感度は重要です。

3.飛距離

空気抵抗の大きいクランクベイトは、元来さほど遠投が利くルアーではありません。しかし失速せずに狙ったポイントへキャストできるという意味での飛距離は必要。そのためにはキャストの入力エネルギーをロスなくルアーの射出へ伝える曲がりが要求されます。

SHALLOW CRANK BAIT

クランクベイトは一定速度でのリトリーブが基本操作

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PROCESS 2 ブランクス構造の追求

PROCESS 2 ブランクス構造の追求

「軽さが常にしなやかさに直結するとは限らない」

ディスラプションCRANKING C68 Type2の開発に際し、最も優先される要素はしなやかさ。つまりクランクベイトの細やかな振動に対する追従性能です。ここで開発陣は、シマノのリールカテゴリーである「マグナムライト(MGL)」と「コアソリッド」の設計思想に注目しました。
マグナムライトは低慣性で初動レスポンスが高く、コアソリッドは動き出した後の運動エネルギーの維持性能に優れるといった特長がそれぞれにあります。このマグナムライトの理論をロッドに持ち込んでみたらどうだろうか。追従する部分、つまりティップを軽くすれば、低エネルギーでも反応しやすくなるのではないか。開発陣はこう考えたわけです。
ディスラプションのトップウォーターモデルはすでにハイパワーX仕様のティップでテストがスタートしていましたが、シャロークランクモデルでは軽量化を目的として、あえてハイパワーXをティップ部から外したサンプルも用意してテストに臨みました。しかし、この案は採用に至りませんでした。

SHIMANOリールのカテゴライズ

【マグナムライトシリーズ】
ベイトリールはスプール、スピニングリールはローターを中心に軽量化を徹底し、初動レスポンスを高めたリールカテゴリー。低慣性で回転の立ち上がりがクイックである一方、短時間で回転が停止する。

【コアソリッドシリーズ】
マグナムライトシリーズに比べて初動時にエネルギーが必要。加速は緩やかだが慣性が強く働くため一定の運動エネルギーが保存され、いったん動き始めれば軽い力で巻き続けることができる。

テストサンプルを
4バージョン設定

軽量化を目的としてハイパワーX

テストには軽量化を目的としてハイパワーXをティップ部から外したサンプルも用意。しかし、求めていたたものとは真逆の結果が出てしまいました。

ハイパワーXを外し、重量増につながるパーツ類も変更し、さらにUBDの設計上でも軽量化を図った4パターンのサンプルを製作。このサンプルを用いて検証作業に入った開発陣でしたが、その結果は意外なものでした。開発陣の期待とは裏腹に軽いティップは振動の戻りが速く、ルアーの動きから滑らかさが失われてしまったのです。手感度や目感度も期待していたレベルには達していません。追従性や感度、しなやかさを得るために施した軽量化ですが、我々が求めていたものとは真逆の結果が出てしまったのです。
結論はティップから重量を奪ってはならず、むしろ適度な重みは載せたほうがよいということ。ハイパワーXも必要であると全員の意見が一致しました。であるならばトップウォーターモデルとリンクする設計理論があるのではないか。これはこの検証における最大の収穫でした。
その後、ハイパワーX をティップまで入れ、先端部へ局所的に重量を残したサンプルを試したところ、過度なティップの跳ね返りがなくなってロッドそのものが曲がるバランスへ変化しました。ルアーもよく泳ぐ。手感度、目感度ともに良好。何より調子が実にしなやか。軽いカーボンベースのロッドでも、グラスコンポジット並みの柔軟さが作れることに気づきました。

曲がりのバランスがあるクランキング

ティップまでハイパワーXを入れたバージョンも試作したところ、曲がりのバランスが好転。クランキングに求められるしなやかさと、軽快な操作性を両立することに成功しました。

最終的にハイパワーX、スパイラルXコア、UBDを採用。検証での失敗により、まったくの別軸で開発を始めたトップウォーターモデルとの共有要素が見えてきました。

「ルアーロッドに用いられていなかった特殊材料を採用」

なぜティップに重量を載せると追従性としなやかさを得られるのか。この理由は、古典物理学であるニュートン力学の運動方程式で理解することができます。
ma=F(質量×加速度=力)
これが「運動の第二法則」と呼ばれる方程式です。このままではわかりにくいので、具体的な釣り用語に置き換えてみましょう。
「ティップの重さ×ティップの動き=巻く力」
クランクベイトの場合、基本的にリトリーブは一定。水流抵抗など外的要因を加味しなければ、アンサー部分の「巻く力」は常に一定ということになります。であるならば、ティップの重さが増すほどティップの動きが遅くなり、結果、ロッドの調子は曲がりやすく、しなやかな方向へ移行する、という理屈です。

(*ロッドのしなやかさの変位は単振動のω=√(k/m)として、重量の増加で振り速度を抑えることができる。)

ルアーを引く力(F)が一定であれば、ティップの質量(m)が増すと、ティップの加速度(a)は遅くなります。ティップをあえて重くすることでしなやかさが増し、ルアーに対する追従性が向上することの証明といえるでしょう。


開発陣が求める加速度、つまりロッドのしなやかさは絞られています。そこで先の運動の第二方程式を参考にしつつ、目指すしなやかさに対する適正なティップの重量を1〜3gまでグラム刻みで解析していきました。テストをする中で「ティップを重くするのであれば、タングステンを巻いてみてはどうか」というアイデアが出ました。
穂先に重量のあるタングステンを巻くというのは、2003年に発売されたへら竿『特作 一天』で採用された手法。穂先に重量を持たせることによって、振り込みを安定させることが狙いです。1970年から始まった釣り具メーカーとしての歴史の中で、シマノは多くのノウハウを培ってきました。素材使いもそのひとつ。へら竿の技術をルアーロッドへ取り込むという発想も、多くのロッドを手掛けてきた智の蓄積が可能にしたといえるでしょう。失敗から始まったティップの検証は着実に進み、テストサンプルは9バージョンに上りました。

へら竿に用いられたテクノロジーを応用し、タングステン素材のエキサイトトップを採用。あえて重量を乗せることで、しなやかで追従性の良いティップを実現しました。
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PROCESS 3 実地検証

PROCESS 3 実地検証

クランクベイトのスペシャリストとともに行ったフィールドテスト」

各種テストサンプルを持ち込んだフィールドテストは、クランクベイティングのスペシャリストであり、加藤誠司プロとともに行いました。加藤氏からのリクエストは「ルアーの泳ぎを損ねないしなやかさ」と「ルアーの泳ぎ、挙動をつぶさに感じ取れる感度」の両立です。しなやかさと言葉にするのは簡単ですが、ただロッドを軟らかくしただけでは感度がぼやけてしまいます。逆に感度を上げるにはロッドを硬くすればよいのですが、これではルアーの泳ぎがスポイルされてしまいます。
ここでよい結果を出したのが、やはりタングステンを巻いた重めのティップでした。リトリーブしてルアーの抵抗が乗ったところでゆったりとロッドに曲がりが入り、ティップは跳ね上がることなくクランクベイトのプルプルという心地よい振動だけを表現してくれます。
「カーボンなのにグラスコンポジット並みのモタレ感が出ています。素晴らしいですね」
海外のトーナメントでも活躍するクランクベイトのスペシャリストが太鼓判を押す出来映え。開発プロジェクトがスタートしてから、1年11ヵ月の月日が流れていました。

クランクベイトのスペシャリスト・加藤誠司プロ

実釣テストはクランクベイトのスペシャリスト・加藤誠司プロに依頼して行いました。追従性と感度の両立。ここでよい結果を出してくれたのは「重めのティップ」でした。

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PROCESS 4 グリップの仕様

PROCESS 4 グリップの仕様

「快適さをプラスするコルクコーティング仕様のフルカーボンモノコック」

感度面の話をすると、重量を持たせたティップは主に目感度に貢献するパート。手感度に関わるのはグリップになります。ディスラプションCRANKING C68 Type2に搭載されているのは、これまでも高い評価を得ているフルカーボンモノコックグリップです。ただ、クランキングは常にリールを巻き続ける釣りです。グリップには感度以外にも、握りごこちやグリップポジションの自由度など、快適さの面でもプラスαのメリットを求める声が少なくありません。
そこで、従来のフルカーボンモノコックグリップの外装のみに極薄のコルクをコートする仕様を取り入れました。中空ブランクスの軽さはそのままに、温もりのあるコルクの手触り。グリップの構成パーツが増えながらも、従来のストレートグリップとの比較で6gの軽量化を達成しています。

コルクコーティング仕様のフルカーボンモノコックグリップ。従来の感度に温もりのある手触りがプラスされました。

フルカーボンモノコックにコルクコーティングを施すことで、グリップ長を36mm延ばしたにもかかわらず、従来のストレートコルクグリップと同重量に収めています。

IMPRESSION

加藤 誠司 SEIJI KATO

正確にキャストできて小技の効くシャロークランキングロッド。
手元へ響く振動感が心地いいね。

魚を迎えに行くのではなく、魚を動かして喰わせる釣りが好きな僕にとって、表層で小刻みに首を振って魚を刺激するシャロークランクベイトは大好きなルアーのひとつ。シャローエリアのみならず、ディープエリアでも多用しています。
ディスラプションCranking C68-Type2は狭いエリアでゆっくりボートを流しながら、50〜65mmのシャロークランクを岸際に落としてテンポよく探るような釣りをイメージしてテストしました。僕がクランキングロッドに求める最も大きな要素は、クランクベイトの泳ぎを妨げないしなやかさと、手元へルアーの振動を伝える感度。よい意味でのダルさというか、グラスのようなモタレ感を軽いカーボンで出したかった。
こんな無茶ともいえるリクエストを実現してくれたのが、タングステンを仕込んだ重めのティップでした。過度な反発が抑えられ、ティップがきちんと振れてルアーが綺麗に泳いでいることを知らせてくれます。手元にもクランクベイトの振動感がリアルに伝わってきて、釣りをしていて心地いいですね。
飛距離も申し分なく、狙った場所へ正確にルアーを落とすことができます。この1本でクランクベイトの釣りがさらに面白くなりました。

SPEC

品番 全長
(m)
継数
(本)
仕舞寸法
(cm)
自重
(g)
先径
(mm)
ルアー
ウェイト(g)
適合ライン
ナイロン・フロロ(lb)
グリップ長
(mm)
テーパー カーボン
含有率(%)
本体価格
(円)
商品
コード
CRANKING C68 Type2 2.03 2 174.3 未定 2.5 5〜21 7〜14 235 R 86.3 未定 381088 **

※2025年6月発売予定

CRANKING C68 Type2

製品情報サイト

BIG BAIT C610-XX &
BIG BAIT C78-XXXX

開発ストーリー

PROCESS 1 素管構造

ハイパワーXの採用

SHIMANOロッドは、これまでアングラーが操作するためのエネルギーロスを無くすことを常に考えてきました。
操作とは、キャスト、ルアーアクション、フッキング、ファイトといった一連のゲームフィッシング特有の動作のことを指します。
全ての状況で変わらないこととして、アングラーがロッドに加えた力をラインの先のルアーであったり、ターゲットにダイレクトに伝えたいという欲求が伴う事は言うまでもありません。
シマノバスロッドではこのエネルギーロスを「つぶれ」と「ネジレ」と理解しネジレを防ぐためにロッドの斜めの補強を搭載してきました。
最もネジレやすい穂先部分から一貫して搭載することが必要不可欠であり、今回求めたビッグベイトロッドのようなティップがネジレを起こしてはならないロッドに於いてこの技術が40年以上前に提唱され、変えてはいけないものだと改めて認識しました。

スパイラルXコア の採用

次に、つぶれに対して。つぶれとは?たとえばストローをつぶしていくと楕円のようになり、最後にペシャンとつぶれることと同じ。そして、つぶれの最終着地点は「破損」です。
ロッドに於いてこのようにつぶれる、折れることは如何なる手段を持っても防がなければなりません。極端なことを言えば、重量を無視して中身が詰まったロッド(無垢)はつぶれません。ただし、1日600~1000投にも及ぶキャストでロッドを振るのに、それだけ中身が詰まった重いモノを振り続けるのも不可能。
SHIMANOでは、2010年よりスパイラルX構造をロッドに採用。バスロッドではファイナルディメンションアンリミテッドが先陣を切って搭載しました。従来の横繊維だけのロッド強度補完を上下逆方向のテープ巻き構造に切り替えたことで、無垢のロッドに迫るほどのつぶれ強度と、無垢のロッドには実現しえない軽量ブランクスを実現したのです。スパイラルXコアになり、さらにその効果は向上。ビッグベイトの重い負荷を支える基本構造としてこのテープによる補強構造は無くてはならないものと改めて認識できました。

つぶれとは?

スパイラル
Xコア

一般的
カーボン

グラス
コンポジット

スパイラルXコアの採用
-スパインの減少

スパイラルXコアのもたらしたビッグベイトロッドへの恩恵は、強度実現と軽さだけではなく、カーボンテープの密巻き構造によって材料の重複量が少なくなったことでの「スパイン」減少に役立っています。これは、細身のロッドに於いて顕著に感じやすく、今回のビッグベイトロッドに於けるXX(2oz.~3oz.クラス)のモデルC610-XXにて体感する事が出来ました。
C610-XXはビッグベイトをターゲットとしたロッドながら、ルアーを操るという狙いを達成するためにロッドのバランス、アクションによるロッド負荷の緩急に敏感なロッドとして設計されています。ハンドルジャークのようなリーリング負荷だけで瞬間的にティップを曲げて、ルアーをスライドさせるスタイルではスパインによるルアーの自走幅の制約は阻害要素でした。極端な言葉ではありますが、スパイラルXコアだから、ルアーのスライド幅が伸びる。C610-XXは、スパイラルXコアの恩恵を大きく感じることの出来るモデルに仕上がりました。

∗C78-XXXXではロッドパワーが強すぎて極端には感じることができませんでしたが、スパイン要素以外の高強度という面ではスパイラルXコア以外に選択の余地はありませんでした。

スパインができる理由

シートの端は斜めにまたがり、必ずしも一方向とはならない。結果として部分部分に偏肉がおこり、硬い方向と柔らかい方向ができる。

カーボンの重なりの部分が硬くなる
=スパイン(背骨)

テープとテープの微量な重なりだけでロッドを構成する事が出来、その重なりもロッド全体に分散される。
特定のスパイン(背骨)に位置するようなものが存在しにくくなる。

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PROCESS 2 各材料

PROCESS 2 各材料

カーボンテープは100種類以上に及ぶ素材から選定

今やロッドに採用されていることが一般的となったカーボン材料ですが、これも昔は多岐にわたる選択肢がありました。シマノでは、1978年にカーボンロッド「秘宝」をリリース。カーボン繊維とガラス繊維を併用する、それまで主流だった製法を変更し、カーボン繊維とケブラー繊維を独自の構造で組み合わせることで、折れやすさを克服したのがはじまりでした。
カーボン材料とは非常に面白いものである一方で、難しいものでもあります。良い材料を手にしても、生かすも殺すも設計者次第。不確定要素も含んだ少しのほころびが、コントロールできない状態へと繋がります。設計者としては、このような不確実要素も全てコントロールしたい。その中では、バスロッドだけを作っている訳ではなく、製品カテゴリーを複数に持ち、その分材料の選べる幅が広いSHIMANOは恵まれています。
今回のDISRUPTIONは自社の保有する100種類以上の材料から掛け合わせた無限とも言える選択肢にて設計。
トライ&エラーによって決定した材料を採用しています。
その中には超高強度高弾性材もあれば、超低弾性材料も勿論含まれています。

複数釣種全て自社設計のSHIMANOだから保有する100種類以上の材料選択肢

狙いによって変化するブランクス構造の“答え”

C610-XXでは積極的に取り入れた材料構成と設計があります。それが2014年のPOISON ULTIMAより導入されてきたアルティメットブランクスデザイン(UBD)です。
C610-XXはビッグベイトを操作することに比重をおいたロッド。つまり、1本のロッド中に役割をもつ部位が複数存在します。リーリングに反応し、瞬時に曲がりラインスラックをつくりルアーを押し出すパワーに変えるティップ。
瞬間的なバイトにも、パワーロスによって遅れることなくバスの口にフックアップさせることの出来るベリー。
ファイト時のバラしに繋がるゴツゴツ感を逃がした、反発力と柔軟性を兼ね備えたバット。
現場検証の末、操作のC610-XXだからこそ、求められるこれらの要素が明確になりました。
同時にC78-XXXXでは、このUBDが提供するパワーの緩急がキャストフィールを阻害することが現場検証にて判明。ルアーの飛行姿勢に於いては変化のない単一的な荷重移行が良いことが判明し、素直にUBD採用を撤廃しました。そのうえで、ファイト中のバットパワーを求める構造は必須要素と判断。
1995年スコーピオンEVより採用され、提案し続けているワン&ハーフが有効であると仮説立てを行い、現場検証にて狙い通りの効果を確認しました。C610-XXはUBD、C78-XXXXはワン&ハーフ。狙いごとにブランクス構造の選択を変えるという結論に至りました。

中弾性

中高弾性

高弾性

UBD(アルティメット・ブランクス・デザイン)は必要な材料だけを必要な部分に配置するテクノロジーで、これによってリニアな調子作りが可能になり、軽さ、感度、パワーとも飛躍的に向上します。

ワン&ハーフはあえてジョイント構造にすることによって継ぎ位置の径を強制的にワンランクアップさせ、フッキングパワーやバットパワーなどロッドコンセプトに必要な強さを高める構造。C78-XXXXではリフトパワーを高める狙いによりショートバット型のワン&ハーフを採用。特にハード系ビッグベイトの飛距離UPに大きく貢献しました。

ワン&ハーフがハード系ビッグベイトの飛距離UPに貢献した検証データ

キャスター(被験者) A B
ルアー ARMAJOINT 280SF(開発中プロトモデル)
ライン フロロ6号(22lb)
ロッド DISRUPTION C78-XXXX 当社従来品
同等適合ルアーモデル
DISRUPTION C78-XXXX 当社従来品
同等適合ルアーモデル
1投目 39.1m 36.2m 40.3m 36.7m
2投目 39.7m 36.4m 43.6m 37.7m
3投目 40.8m 38.4m 47.4m 42.5m
4投目 41.3m 38.5m 47.4m 42.5m
5投目 42.6m 39.6m 47.5m 43.2m
6投目 40.1m 37.8m 45.7m 38.2m
7投目 40.6m 38.1m 45.8m 38.7m
8投目 40.8m 38.1m 46.1m 39.4m
9投目 43.2m 40.5m 47.7m 43.8m
10投目 43.7m 42.3m 47.8mv 44.0m
最大計測飛距離を
除いた上位5投の平均
41.7m 39.0m 47.2m 42.3m
飛距離比較結果 107% 112%
被験者2名の増減平均 110%

※計測状況

気温 湿度 気圧
6.4℃ 70% 1013.5hpa

・ 被験者A、Bが比較品当社従来モデル同等適合ルアーモデルとDISRUPTIONにて投擲比較
・ 比較データを被験者A、Bで平均したところ109.5%の飛距離の伸びを計測

ドームでの検証投擲
計測器を用いたエビデンス検証
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PROCESS 3 想定される
使用リールとの照合

PROCESS 3 想定される
使用リールとの照合

想定される使用リールとの照合

次に手掛けたのが合わせるリールとの高さと位置です。つまりライン放出メカニズムにおけるシステムプロダクトです。
23年はアンタレスDCMDやカルカッタコンクエスト MD300/400が発売される年であり、他にも21アンタレスDC、スコーピオンMDなど、セッティングが想定されるリールがある程度明確でした。リールの高さ、ガイドの高さ、放出ラインによる痩せ具合を考慮して、バットの曲がりによる角度の開きの調整幅を意識しつつ角度を決める。そういった検証を行いました。
バットガイドには適正リールに則した高さが求められます。この高さがあるからこそ、不要なバタつきを抑えラインの整流効果を手に入れることが出来ます。検証の結果、明確に飛距離の差が出る特別なセッティングを見出す事は難しかったものの、効果的な設定位置という枠では得るものがありました。リール、ロッド、ライン、全て一体として考えた先にあるノウハウです。

太糸によるスプール上のライン痩せが起きても、キャスト負荷によるバット側のバットガイドの上部を叩かず、放出ラインの暴れでブランクスを叩くリスクも低い配置。

DISRUPTION開発チーム想定システムプロダクト

ロッド リール ライン ルアー
DISRUPTION C610-XX 21 アンタレスDC フロロカーボン16lb ダウズスイマー180SF(ジャッカル)
DISRUPTION C610-XX 23 アンタレスDC MD フロロカーボン20lb アーマジョイント190SF(シマノ)
DISRUPTION C78-XXXX 23 カルカッタコンクエストMD 300/400 フロロカーボン25lb~30lb ダウズスイマー220SF or 240∞(ジャッカル)
DISRUPTION C78-XXXX 23 カルカッタコンクエストMD 300/400 PE4号~5号+リーダー30lb~50lb アーマジョイント280SF(シマノ) ※開発中プロト
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PROCESS 4 グリップの選択

PROCESS 4 グリップの選択

カーボングリップはあえて不採用

設計、調子、材料使い、リールとの照合を終えてついに部品の細かな選定に辿り着きます。先ずはグリップ。SHIMANOはグリップに対して長年拘りをもって取り組んできました。1984年にBantamが投じたファイティンロッドは直管グリップを採用し、ロッドから伝わるアタリをダイレクトにアングラーの手元に届ける画期的な構造。2013年のポイズンアドレナではグリップの後端側をカーボンモノコックに進化。そして2018年第二世代ポイズンアドレナでは再びグリップに革命を起こし、フルカーボンモノコックを展開、その後もスピニングロッドに於けるフロントグリップのカーボン化で実現したカーボンシェルグリップを投入してきました。強度が担保できていれば、軽量であるほど高感度。これはSHIMANOの信念です。しかし、今回の DISRUPTIONで感じた事は、ビッグベイトに於ける感度だけでないグリップのしなりの必要性。キャスト負荷を受け止めるバットの靭性が必要でした。
結論、カーボングリップは不採用という選択に至ります。

グリップのしなり、靭性といったキーワードからEVAを主体とした開発に着手。

2018 POISON ULTIMA
1610L-BFS
2020 POISON ULTIMA
1611ML+
2022 POISON ULTIMA
1610M

SHIMANOテクノロジーの粋を集めたカーボンモノコックグリップ。軽量かつ高感度な特性をもたらすグリップですが、求めるコンセプトを優先してDISRUPTIONではあえて不採用。

解決策は“開発”で生み出す

グリップの拘りはそれだけではありません。前述のグリップのしなりによって生まれた副産物「歪み」に悩まされることになりました。
MAX6oz.級のルアーをひたすら毎日遠投することで感じたのが、リールシートとグリップとの間の歪み感です。
2つのパーツが別部品としてコネクトしている故に、ロッドが曲がる事で隙間が開くような感覚が発生していました。
細部に至るまで徹底的にこだわり抜きたいDISRUPTIONチームとしてはなんとかこの隙間による歪みをゼロにできないかという検討を行い従来のリングとは比較にならないほど肉厚の大型リングを開発。
キャスト時のパーツの歪みによるパワーロスを解消しました。

超硬質EVAグリップの採用

開発チームの中で、兼ねてより”ビッグベイトロッドに搭載するグリップの要件”として検討していた項目がありました。
・如何なるシーンでも滑らない
・パワーロスをしないためにしっかり握れる硬さが必要
・モンスターフィッシュによる尋常じゃないファーストランによってロッドエンドが跳ね上がっても、アングラーが痛い思いをしない
この目的を達成するために、グリップには滑りにくいEVAグリップを採用しました。
しっかり握れる硬さを求めてDISRUPTIONのために配合を検証し、これまでのSHIMANOルアーロッドでは採用したことのない領域の超硬質EVAグリップを完成させました。
例えるならば黒い金棒。ビッグベイトロッドだからこその拘りが普段は然程気にかけないストレスにも気づかせてくれました。

EVAは製品決定した硬度より更に硬質なものも試しましたが、あまりにも硬いEVAは手が痛くなり逆効果。不採用となりました。

BIG BAIT C610-XXには超硬質EVAストレートグリップを採用。多様なキャストシーンを想定して握る位置の自由度を求めました。

BIG BAIT C78-XXXXはリールシート直下のグリップには超硬質EVA、エンドグリップにはラバー素材を採用。モンスターとのファイト時に脇挟みしやすく、ファイトやバイトで咄嗟にロッドエンドが跳ね上がりアングラー側と接触しても負担の少ない設計。

パーフェクションシートの採用

次にリールシートです。シマノではビッグルアーを支えるブランクスの径に合わせて多様なリールシートを作ってきました。今回のDISRUPTIONでまず採用を想定したのが、パーフェクションシートです。握りによるパワーロスの低減、キャスト時の快適な指の掛かり具合、ファイトにおける極限の負荷でも快適な握りごこちを実現するパーフェクトなリールシートを目指す。こういった信念の下、これまで6度の進化を遂げてきました。
今回のDISRUPTIONではそれぞれのアイテムのための新規試作を仮説・検証を繰り返しながら実施。しかし、最終的にC610-XXにはパーフェクションシートXT、C78-XXXXにはパーフェクションシートCI4+が最も快適に適合するという検証結果となり、どちらも従来品の採用となりました。開発チームとしては盛大に無駄な試作をしてしまったという気持ちもありますが、新しいモノではなくすでに作ってきたモノの採用という感慨深い結果にもなり、培われてきたパーフェクションシートの完成度を再確認出来た工程となりました。

パーフェクションシートXT

パーフェクションシートCI4+

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PROCESS 5 調子

PROCESS 5 調子

ビッグベイトジャンルの中核を成す2種類の重量帯

DISRURTIONの調子決定に於いては、まず前提としてビッグベイトというルアーのどの特性に軸足を置くのか?という議論から始まりました。
アクションの方向性?泳ぎの質感?形状?
多くの議論の結果、2-3oz.クラス、4-6oz.クラスという2種類の“重量帯”に軸足に置くという結論に至りました。
この結論に至る前の検討材料として、国内外問わず市場に存在する50種類以上のビッグベイトを検証。
いわゆるマスターピースとして評価されているものから、特定の状況において替えが効かないとされているものまで、様々なビッグベイトを検証していきました。
その中で見えてきたのが、特にフィッシュイーターへの実績として評価が高いビッグベイトを中心に、2-3oz.クラスという括りでの中・小型ビッグベイト、4-6oz.クラスという括りでの大型・ジャイアントビッグベイトという2つのクラスに集約されるケースが非常に高いという実態です。
この2つのクラスは、日本の淡水・海水フィールドに於いてどこでも実績を出す事が可能なスペックです。
これ以上、これ以下のウェイト領域がある事も把握した上で、ビッグベイトを扱う上で最も使用頻度の高いロッドとして完成させたいという願いと、特定のエリア・特定のシチュエーションだけに特化したロッドでは再現性のある検証、共感を得られるモノ作りが出来ないと判断し、設計都合ではありますが、ビッグベイトカテゴリーの最も本流のあたるスペックをターゲットに据えました。

社内外、国内外問わず50種類以上のビッグベイトを検証。

C610-XXではアーマジョイント190SF、ダウズスイマー180SFなどの2-3oz.中小型ビッグベイトを想定。

C78-XXXXではアーマジョイント280SF(写真は開発中プロトモデル)、ダウズスイマー∞240などの4-6oz.ジャイアントビッグベイトを想定。

ハード系ビッグベイトに特化したモノ作り

今回はビッグベイトの中でも、ハード系ビッグベイトにフォーカスしたロッド創造というテーマを据えました。
これまでのシマノバスロッドシリーズでは、SB(Swim & Big Bait)という表記を用い、ソフトプラスチック製のスイムベイトとハード系ビッグベイトの双方に対応するモデルを作ってきました。
ソフト系スイムベイトは頭部から腹部にかけてウェイトを持ち、ボディ後部はソフトマテリアルによって構成されます。
この重量一点集中構造ゆえにキャスト負荷が低く、ことソフト系スイムベイトにおいては非常にヘビーウェイトのモノまである程度のロッドで投げることが可能となります。
しかし、ハード系ビッグベイトはそうはいきません。
水中の姿勢に拘ったビッグベイトほど、重量が分散しており、キャスト負荷も一気に高くなる傾向となります。
求められるアクションも柔らかい素材を使ったソフト系スイムベイトとは勿論異なります。
DISRUPTIONはハード系ビッグベイトにのみ要求仕様を絞ったことで、操作性と調子を明確に表現できることになりました。取捨選択をしたことで適合ルアーウェイト幅は狭くなったように感じるかもしれませんが、適正ルアーウェイトはカバーしており、特化させたことで得る実の多さを取りました。

ソフト系スイムベイトは重量一点集中構造ゆえにキャスト負荷が低く、投げるためのハードルが下がる一方で、ハード系ビッグベイトは重量が分散する傾向にありキャスト負荷も一気に高くなります。ソフト系スイムベイトとハード系ビッグベイトを切り分けて特化させることで、よりモノ作りの方向性を明確に定めました。

ハード系ビッグベイトに特化させた仕様を取ることで硬質素材ならではの瞬間的なキレ、リアクション性能を存分に引き出すことが可能。重量が重いビッグベイトになるほどこういったロッドの設計から受ける恩恵は大きく、C78-XXXXではフルキャストした先のジャイアントビッグベイトを巻き出しからしっかりと操作できるブランクスの張り感を特に重視しました。

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PROCESS 6 ガイドセッティング

PROCESS 6 ガイドセッティング

実釣主義、適材適所の選択

ガイドセッティングの工程についても試行錯誤が繰り返されました。
SHIMANOのガイドの考え方を一言で言えば「適材適所」です。キャストされるラインを整流し、アタリを手元まで届けるガイドはロッド構造において悩ましい要素も多分に含んでおり、無くてはならないものである一方、糸巻きなど総重量でロッドバランスや意図していた調子をガラリと変えてしまう存在です。
SHIMANOでは独自コンセプトで生み出したXガイドを2016年より展開しています。
Xガイドの糸巻きタイプに於いては穂先部のXガイドにあたる3Dチタンタイプは超高強度かつシームレスな冷間鍛造ガイドです。ベリーからバットで使用するXガイドには振り抜きの軽快さと、ライン放出性能を捉えたラウンド形状のエアロタイプを採用。リングにはセラミックよりも放熱性の高い鏡面仕上げの特殊金属を採用しています。しかし、DISRUPTIONのC610-XX、C78-XXXXには検証の結果、結論Xガイドは不採用。これまでのビッグベイトロッドの仮説・検証から見えてきたものは、このロッドに求められるのは剛性と軽さのバランス。悪く言えば、基本性能が満たされていれば「何を使うかではなく、どう使うか」によってコントロール出来る事実でした。Xガイドの超高強度冷間鍛造のバットガイドが欲しいと検討したこともありましたが、あくまで実釣におけるモノの完成度を優先して、採用を見送りました。

ガイドは当初ソルトロッドで採用している大型ガイド検討も視野に入れて開発。78XXXXが対象とする4-6oz.クラスのビッグベイトにおいて遠投性、剛性ともに理に適った選択に思えましたが、現場での実投テストでは想定と乖離した結果となり、最終的に不採用となりました。仮説が実際の検証で崩される開発シーンの一つです。

2016年より展開しているSHIMANO独自コンセプト、Xガイド。冷間鍛造による超高強度素材ながら、今回のDISRUPTIONでは不採用。最新のテクノロジー搭載が当たり前という潜在意識に一石を投じるDISRUPTION開発ハイライトシーンの一つです。

“ねじれない#1 × ねじれない
#2
= 継ぎ目のねじれ”という最後の障壁

スパイラルXコア × ハイパワーXによるネジレの徹底的追放。
素管構造の項でそれは証明されましたが、ねじれないのであればそのネジレを生み出すエネルギーはどこに行くのでしょうか?
ロッドのティップからくるネジレはスパイラルXコアのようなネジレ強度の高いブランクスで且つ細径であれば、既存の汎用性の高いロッドであれば影響のない範囲でエネルギーが分散していきます。しかしビッグベイトロッドのような先から極めて太いロッドではどうなるのでしょうか?
そのエネルギーは、エネルギーの捌け口(継ぎ目)へと伝播されることがわかりました。フルワンピースを選択したC610-XXは検証の結果対策不要と判断されましたが、ワンアンドハーフ設計でキャスト負荷が特大にかかるC78-XXXXでは、継ぎ目に集中するエネルギーをどこかに分散出来ないか?もしくは継ぎ目の構造を見直すことで解決できないか?
そこからガイドも含めた最後の可能性を探りはじめることとなりました。

ロッドが曲がろうとする際に発生するエネルギーが捌け口を求めて継ぎ目へ移行。結果、継ぎ目で徐々に#1と#2がずれる現象が発生。

スパイラルガイドセッティングの検討から不採用と、継ぎ目の分析

・ネジレを追放したブランクスだからこそ、曲がり負荷を180度反対側で受け止めるスパイラルガイドが必要ではないのか?
・継ぎ目となるアワセの長さを再検討する事で解決できないか?
この2つを現場で検証するために、調子決定後のサンプルベースに再試作を行いました。
まずスパイラルガイドセッティングの検証です。スパイラルガイドの検証には左側方向と右側方向にスパイラルするサンプルをそれぞれ作成。回転角度も45度なのか60度なのか?様々なパターンを作成して検証を行いました。結果、スパイラルガイドセッティングではネジレ以前に、リール内においてキャストで傾けた方向にラインが寄って巻かれてしまうことが判明。これはPEなどの繊細なラインを使用している場合致命的なラインブレイクを誘う傾向にあり、一気に採用が却下の方向に傾きました。
続いてアワセの長さについての検証です。スパイラルガイド検証と同様、アワセの長さに変化を持たせたサンプルをパターン作成。1cm単位、ミリ単位で変化を持たせたサンプルを検証するという非常に繊細な検証を行いました。また、アワセの長さ検証と並行して接続部を外しやすい専用ロッドベルト試作品も持ち込み検証。どこまでネジれない継ぎ目を検証したとしても、固着を恐れた緩い繋ぎになってしまうと結局ネジレを払拭することが出来ません。繋ぐ力加減の個人差を減らし、積極的な繋ぎを行えるようにする。そのために、万が一の場合でも外しやすいツールとしてロッドベルト裏部のグリップ性を有効に使いやすい専用ロッドベルトを開発しました。最終的に、アワセ部を長くする、しっかり継ぐためのアワセマークを入れる、万が一の場合でも接続を外しやすい専用ロッドベルトを作成する。辿り着いたこれら3つの選択肢を束ねることにより最終関門をクリア。C78-XXXXが完成しました。
結果的に継ぎ目のアワセ部にフォーカスした細かい調整が最適解となりましたが、過程においてSHIMANOのキャスティング前提のルアーロッドでスパイラルガイドを選択肢に入れるという異例の工程となりました。SHIMANOではタイラバロッドのベイトモデルなど、実際の現場においてキャストが前提に無い一部のロッド、且つ穂先のガイドを下に向けることで更に高い実釣性能を狙うことが出来る一部の釣種においてのみスパイラルガイドを採用しております。キャスティングが前提にあるルアーロッドでは基本的に不採用。ネジレを素管のテクノロジーで追放出来るからです。今回の工程はまさに常識を疑い、一から再構築するというDISRUPTIONのコンセプトを象徴するものとなりました。

近年のSHIMANOロッド開発においてキャスティングが想定されるモノ作りでのスパイラルガイド検証は異例。

スパイラルガイドの設計も左側に45度、60度回転していく位置なのか、右側に45度、60度回転していく位置なのかといった多様なパターンサンプルを作成して検証。

スパイラルガイド採用を却下するに至った決定的な検証結果です。20lbを超える太号数のフロロやナイロン、PEを使用するという限定的な状況においてはキャスティングとリトリーブを常用的な範疇で繰り返した際にラインがリールの片側に偏る現象が発生。ラインの偏りはキャストやリトリーブの再現性を下げるだけでなくPEラインの使用においてライントラブル発生に繋がるケースもあるため太号数の使用が当たり前のビッグベイトジャンルにおいては致命的と判断。この場面でもまた、現場検証が仮説の否定に繋がる結果となりました。

継ぎ目のアワセ部分についても㎜単位でのサンプルを作成して検証。調子に関わる部分でもあるため、アワセの長さ一つ取っても繊細な調整が必要。見た目は地味ながら、長きにわたるモノ作り完成に向けた最後の詰めの場面です。

IMPRESSION

  • 奥田 学

    MANABU OKUDA
  • 秦 拓馬

    TAKUMA HATA

奥田 学 MANABU OKUDA

ビッグベイトを駆使して、
「仕掛けに行く」スタイルを開拓できるロッド。

まず言っておきたいのは「ディスラプションはバス専用ロッドではない」ということ。素材も製法も、シマノの最高峰技術を注ぎ込んだ、ベイトキャスティングロッドのまったく新しいシリーズです。
過去にとらわれずゼロベースから立ち上げた、特定のルアージャンルに特化したロッド。今回自分が担当したのはビッグベイト、ジャイアントベイトが使える専用ロッドであり、よりハードベイトにフォーカスを当てたロッドです。
ラインナップは、C610-XXとC78-XXXXの2本からスタートします。特定のターゲット専用ではなく、ルアーと釣り方にフォーカスを当てた、いわばフリースタイルロッドです。ビッグベイトの重さはメーカーによって異なりますが、C610-XXが6~8インチ、C78-XXXXが8~12インチに対応できるロッドと考えてもらえればいいと思います。淡水ならバスや大型トラウト、ソルトウォーターならシーバスや青物など、幅広いジャンルで戦えるロッドに仕上がっています。
ビッグベイトは、ベイトタックルを使うことが大前提ですが、ソルトウォーターではベイトを使ったことがない人もいるでしょう。バスフィッシングを通過せず、ソルトウォーターから釣りを始めた人も多いですから、スピニングしか使ったことがない人もいると思います。
でも、今、世の中は変わりつつあります。ビッグベイトの威力に気付いて、その愛用者は確実に増えています。スピニングしか使ったことのない人も、今こそ自身の釣りをアップデートするときです。
例えば、シーバスがターゲットのコノシロパターン。8インチクラスのコノシロにジャストサイズのビッグベイトを投げるとしたら、スピニングのシーバスロッドではパワー的にどうしても無理が生じます。
また、ビッグベイトの釣りでは、どんなターゲットを狙う際にもジャークやトゥイッチが必要。小ワザを効かせないと、最後のバイトに持ち込めないからです。そんな時、スピニングでもできないことはないですが、非常に厳しいと思います。ただ巻くだけならよいですが、ラインスラックを使ってロッドで弾く“ドッグウォーク”をさせるときに、ライントラブルが頻発してしまうでしょう。ビッグベイトの釣りでは、パワー面や利便性などを総合的に考えると、ベイトタックルが圧倒的に優位になります。
ベイトリールのライントラブルが怖い? それはもう過去の話。現代のDCブレーキ搭載リールは非常にキャストしやすく、電子制御によりトラブルも抑えられています。まずはC610-XXにアンタレスDCやアンタレスDC MDを組み合わせて、大き過ぎないビッグベイトをスローに投げることから始めて、徐々に体を慣らしていけば、いつの間にかロングキャストもできるようになっているはずです。
ピッチングで狭いスポットに入れるなど、C610-XXでビッグベイトのより細かい操作を覚えることができたら、ジャイアントベイトとC78-XXXXへスイッチ。思いっきり遠投して、リーリングでジャークアンドストップさせると、また新たな世界が見えて来ると思います。
この2本は長さとテイストが異なるだけで、テーパーが似ているため持ち替えてもキャストフィーリングに違和感はあまりありません。そして共通するのは、圧倒的なパワー。曲がりに対しての戻りは早く、反転バイトも掛けやすいのが特長。ビッグベイトで仕掛けに行くスタイルには、ディスラプションが欠かせない存在であることに、いつしか気付くことになると思います。

秦 拓馬

TAKUMA HATA

「手の延長」のような使用感で
ビッグベイトの可能性を広げる1本。

ビッグベイトを2つのグループに分けて考えた、今までの規格にとらわれないパワー設定が特徴です。
C610-XXは、2~3oz.クラスの使用が基準。全長で例えるなら180mmクラス程度ですね。C78-XXXXは4~6oz.クラスで、220mmや240mmクラスになります。
従来のビッグベイトロッドは「SB」と呼ばれるモデルで、僕はポイズンシリーズのSBモデルを担当していましたが、今回はバンタムシリーズを担当する奥田学さんと一緒に開発しました。そのため、バンタムチームの開発コンセプトも取り入れて、互いに性能を追求してやってきた概念をミックスするなど、今までにない手法で完成したビッグベイト専用ロッドです。
そもそもビッグベイトの釣りは、近年、急激に進化してきた背景があります。
進化の方向性としては2つあり、1つは自ら仕掛ける釣り。積極的に操作していく釣りですね。以前は投げて巻くだけだったところに、自ら食わせのチャンスを作ることが求められるようになってきました。
もう1つは、ビッグベイトの釣りがバスにとらわれず、魚種のボーダーを超えてきたという点です。シーバスをはじめ、淡水と海水問わず、さらには怪魚など様々なフィッシュイーターに、ビッグベイトが有効であることが認知されてきました。
まず第一の、「自ら仕掛ける」という部分において、ディスラプションはルアーの操作性に非常に長けたロッドになっています。従来から求められている「ロングキャスト性能」と「正確性」を高めたうえで、さらに「ルアーを自在に動かせる」という点にもこだわりました。トゥイッチやジャークをしたときの感覚は、ルアーの動きが今までのSBモデルと全然違うと思います。ひとことで言うと、より動かしやすくなったのですが、例えるなら『自分の手でルアーを持って動かしている』ように感じる動きを見せてくれます。自分のロッド操作が、ダイレクトかつ正確にルアーに伝わっている感覚ですね。
これは単にロッドが軽くなっているからではなく、ルアーを動かすために必要なパワーが上がっているためです。アクションのキレは今まで以上で、魚の反応も非常にいいです。パワーが有り余っている感じで、アクションさせているだけで勝手に掛かってしまうような強さがあります。逆に言うと、パワーがあり過ぎてハリが伸びてしまうのではないか…と、いらぬ心配をしてしまうくらい、パワーがあるのは事実です。
フッキング時のパワー伝達も的確で、ドカンとフックポイントに力を込められます。これもまた『自分の手でルアーを握って口にハリを掛けている』かのような感覚です。ぜひ体感してほしいですね。
今後ディスラプションで狙ってみたい魚は山ほどいます。例えばオーストラリアのマーレーコッド。そして、同じくオーストラリアのバラマンディ。日本で言うアカメの一種ですね。その他、世界にはパイクや、アマゾンのピラルクといった巨魚や怪魚がたくさんいますから、どれも狙ってみたい…。
国内なら海の釣りですね。シーバスはもちろん、青物全般、カツオも全然イケますよ。

SPEC

品番 全長
(m)
継数
(本)
仕舞寸法
(cm)
自重
(g)
先径
(mm)
ルアー
ウェイト(g)
適合ライン
ナイロン(lb)
グリップ長
(mm)
テーパー カーボン
含有率(%)
本体価格
(円)
商品
コード
BIG BAIT C610-XX 2.08 2 171.9 160 2.2 18〜72 MAX25 313 F 89.1 58,000円 332554 **
BIG BAIT C78-XXXX 2.34 2 130.0 262 2.9 42〜168 MAX35 444 RF 96.6 68,000円 332561 **

BIG BAIT C610-XX &
BIG BAIT C78-XXXX

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