2024/01/17
コラム
サクラマス。始動準備。
モニターの佐藤文紀です。
時は、2024年。今年は早くもサクラマスシーズンが、すぐそこに迫っている。
今年のサクラマスシーンにおける大きなトピックは、これまで1月20日だった降海遡上型サクラマスの河川釣りの最速解禁日が、20日間早まって1月1日に変更となる点だ。
今年もサクラマスに思いを馳せる。
先陣きって河川のサクラマス釣りが解禁されるのは東北随一の大河、北上川水系のうち宮城県側の二大河川「新北上川」と「旧北上川」がそれにあたる。
新北上川といえば今から31年前に私自身初めてのサクラマスを狙いに行った川としても思い出深い。
いずれも30年以上見続けてきた勝手知ったる両河川だけに、2024年もその動向には注視したいと思っている。
新北上川の姉的存在にあたる旧北上川は、いわば北上川の本筋とも言える母川。
この川の豊富な水量ゆえの洪水対策として治水を目的に歴史上人的整備され、流れを2つに分流化して誕生したのが妹分の新北上川である。
旧北上川は底質が泥で周囲は藪で覆われた場所も多く、釣り人の侵入をこばむエリアが豊富で一層その攻略を難しくさせている。
覆い茂った藪との格闘にはなるが、竿抜け箇所が多いだけに流域を広く釣り歩いて探る釣りが可能だ。
対して、新北上川はサクラマスアングラーの間では通称、追波川と呼ばれこの川の主たる底質は砂。
平均して250mほどの川幅があり、左岸も右岸もほとんどの場所はコンクリートで護岸化されていて釣りができる最上流部まで干満の影響を受けるタイダルリバー。
極端な話、スパイク付きのニーブーツでもサクラマス釣りができてしまう新北上川であるからエントリー層の釣り人も多く、とにかく釣り人が多いがゆえ混雑時には任意のタイミングでの場所移動が難航するのもこの河川の特徴だ。
なぜスプーンで狙うのか。準備の時間も特別なひととき。
ある意味、異様な光景とも思えるほど隣り同士の間隔が狭くズラリと横並びしてサクラマスを狙う風景は私の知る限りでもこの川と3月の解禁当初の山形県赤川くらいではなかろうか。
中規模河川で川幅が比較的狭い釣り場が多い北陸サクラマス河川に比較し、全体的に水深が深くゆったりとした流速で、川幅も広いビッグリバーが複数連なる東北サクラマス河川では攻略の糸口もまた別角度からの視点が求められる。
重厚な流れの中でルアーをより遠くに、より深く、といった戦略も東北の大河のサクラマスと向き合う上では欠かせないメソット。
ルアーの存在をサクラマスに気づかせることが、まずは最優先だ。
新北上川のような大河ではミノーの飛距離と潜行レンジだけでは到達できない領域は多々あるゆえ、ミノー以上にスプーンが古くから多用されてきたのもこれまた納得なのである。
PEラインに20g~25gほどのサクラマススプーンをセットすれば昨今のタックルなら70m~80m超の飛距離は容易に到達できるので岸寄りに遡上ルートをとらない沖の流芯をのぼっていくサクラマスの群れの口先にまでルアーを届けて釣ることもこの川では当たり前におこなわれてきた。
そんなスプーンにセットするスイミングフックは大半が自作。
年末ともなると、好みの素バリをタイイングしスイミングフック作りを開始する。
1本につき3〜4分程度だが、シーズンを通して消費の目安となる100本ほどは作るためこれがなかなかの作業時間となる。
地道な積み重ねが大切。来るべきチャンスのために万全の備えを。
サクラをすくうランディングネットのケアもおこたらない。
特にハンドクラフトの銘木ネットはクレモナ糸の編み込みのほつれや穴の開き具合も要チェック。
そして次なるシーズンも快適に使用し、少しでも永く使うためには柄の部分の傷の修復・ケアもおこないたい。
リンシードオイル(亜麻仁油)を刷毛で塗り、層を重ねて塗っていくと見た目にも美しさを取り戻すだけでなく剥がれ落ちたコーティングで傷が露出した状態の銘木の品質維持にもつながる。
こういった時間さえも、『優美なトラウトフィッシングのひととき』としてじっくりと楽しめるのも「味」ではないだろうか。
愛すべき道具で愛すべき大鱒を釣る。
我々トラウティストに与えられた至福の時間はいつも身近に存在する。
いずれも小さな作業の地道な積み重ねに過ぎないが、野生下の大鱒と対峙するということはそういうこと。
事前の下準備をどれだけ丁寧におこなうか。
いざ釣り場に立ったとき、こういった積み重ねが釣果へもたらす影響をいつもつくづくと感じるのである。
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