2022/11/30
コラム
福井県・越前の落し込み“タテ釣り”。
「世の中、イワシで回っています」
日本海は福井県の嶺北、いわゆる越前地方では「タテ釣り」と呼ばれ、毎年9月ごろよりウルメを中心としたイワシ類の来遊で幕を開け、冬まで続く。
「タテ釣りの名の由来は仕掛けを立てて、縦に釣るという意味だと思います。こちらでは春のフカセ釣りで横方向へ仕掛けを出して釣りますから、横に対して縦なのでしょう」
イカ先生・富所潤さんは当地のフカセ釣りやタテ釣りにも明るい。
釣り場は沿岸の水深50~60m台に点在する魚礁。三国港より出船した神海丸・藤田吉則船長は九頭竜川河口からリサーチを開始。ところが、魚礁をいくら回ってもイワシの反応はなく、探索の旅となる。
越前岬が見える場所へ南下してようやく反応を発見。サビキ仕掛けを落とすとミッドゲームエクスチューン73H190の穂先が持ち上げられ、イワシが掛かったことを知らせる。
そのまま海底まで落し込むと竿先が激しく暴れ、一気に引き込まれる。しっかりと重さを竿に乗せてからビーストマスター2000で巻き上げを開始、海面に浮かせたのは2kg近いヒラメだった。
タテ釣りに限らず、西日本の落し込みでヒラメは非常に喜ばれる。越前では1kg前後を中心に安定して釣れることから、主役級の人気魚だ。
「ベイト(エサ)の反応は30mから出ています。水深50m、根掛かりに注意してくださいね」
船長はこまめにベイトの反応と海底の様子をアナウンスする。イワシが付いた後、海底まで落して大丈夫なのか、上げて待ったほうがいいのか。魚礁狙いではこの情報がとても重要だ。
イワシの群れは時間の経過とともに濃くなっていく。それに比例して船内ではカサゴ、ヒラメ、真鯛、そしてキジハタ、それも40cmほどの大型が顔を出している。
そして昼を過ぎると、いよいよ青物が回り始める。
「船長、ここ、魚礁ありますか」
「ここからは平らやね」
「なら走らせます」
海底から離してもなかなか抵抗をやめない青物に対して、ハリス10号に合わせてビーストマスター2000のドラグを調整する富所さん。タモに収まったのは4kgほどのワラサだった。
午後になるとイワシの群れはさらに濃密になる。もはやエサはおかわり自由、掛からなければ電動で巻き上げ、反応へ再び落とせば掛かる。
そして同船者のヒラマサに続き、富所さんが再び大きな青物らしき魚を掛ける。これまでより明らかに重く、長く走ったその正体は、目測6kgを超えるブリであった。
「これで5目を超えましたか。いや、何目でもいいです。とにかく、最高に面白いです」
朝方、イワシが空っぽだったのが嘘のように、午後は濃密な反応が出続けた。そしてイワシとともに、底から中層まで、あらゆる魚が活性化した。
「世の中、イワシで回っています」
活性化したのは、富所さんとお客さん、そして船長も同じであった。
FISHING TACKLE
【取材協力】福井県三国港・神海丸
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