2023/10/18
コラム
日置 淳が語るNEW『パワーエアロTD(ツインドラグ)』
大物狙いで必要かつ有効な「ツインドラグ」
TD(ツインドラグ)とは「ドラグノブ」と「プリセットノブ」の2つで構成される、シマノ独自のドラグ機構です。これは置き竿での投げ釣りにおいて、とても重要な役割を担ってくれます。
大物を狙う置き竿での投げ釣りではドラグの締緩(ていかん)を頻繁に行います。投げるときは締める、アタリを待つときは緩める、そしてアワせる前に締めてファイトするといった具合です。
アタリを待つ間にドラグを緩めておくと、スプールからラインが引き出されやすい状態になります。これを「アタリ待ち状態」といいます。
対象魚がエサをくわえて動いたときに与える負荷を極力抑えて違和感を覚えにくくし、エサを食い込みやすくすることができます。
そしてアワせる前にドラグを強く締め込んでロックしてアワセへと移行します。ハリまでしっかり力が伝わる状態なので、大型の魚の硬い口にもハリを貫通させやすくなります。
このアタリ待ち状態のドラグ調整は対象魚ごとに変わります。たとえばエサを吸い込んで一気に走り出す大ギス狙いや、逃げ回る活きエサを捕食するマゴチやヒラメ狙いではドラグを緩めにして負荷を減らして違和感を与えないようにしています。
一方、マダイやコロダイ、今回のイシダイといったエサをついばんで食い、走り出す魚が対象魚の場合はドラグは少しだけ緩めて、ある程度の抵抗を残しておきます。魚がエサを食い込んで走った際にこの抵抗のおかげでハリが魚の口の横に掛かりやすくなるからです。
このようにドラグの使い方が重要となるのですが、エサをうまく食い込ませることができた、ハリ掛かりにつなげられたドラグ設定を、ひとつのドラグでそっくり再現するというのはなかなか難しいところです。これを解決したのが「ツインドラグ」なのです。
投げるときは「ドラグノブ」を締めます。そして投げたあとは「ドラグノブ」を適当に緩め、「プリセットドラグ」を調整してアタリ待ち状態を作り出します。そのままアタリを待ち、アタったあと、アワせるときは「ドラグノブ」を締め込むと「プリセットノブ」の設定に干渉することなく、ドラグ全体がロックできるので思い切った大アワセが可能となります。
「プリセットノブ」の設定が変わっていないので、そのあとも「ドラグノブ」を緩めると同じアタリ待ち状態になります。ベストなアタリ待ち状態を簡単に持続できる。これが「ツインドラグ」最大の特徴です。
この機構自体は『パワーエアロ』シリーズにはすでに搭載されていますが、NEW『パワーエアロTD』ではドラグノブ組を一から見直してサイズが一新されています。外径は『パワーエアロ スピンパワーTD』ではφ64mm ですが、『パワーエアロTD』はφ57mm に小型化。指が当たる部分、回しやすさはそのままに、10g以上、軽量化されています。
使いやすさはもちろんですが、リールの前部が軽量化されることで、持ち重りが軽減しています。わずか10gですが、持ち重りは大きく変わります。これによりキャスト時の振り抜け感も向上し、飛距離アップ、コントロールの精度も上がります。
正確なキャストとロングキャストを可能にする「リジッドキャスト」
オモリが重くなるのに従って、フルキャスト時にリールには大きな衝撃がかかるようになります。その際にリールにたわみが生じてしまうのですが、このたわみが指からラインをリリースするタイミングを微妙にずらしてしまい、飛距離とコントロールに影響を及ぼします。
今モデルに搭載された「リジッドキャスト」は剛性が高く、重量は軽くして最適なバランスになるよう設計されていて、衝撃によるたわみを最小限に抑えてくれます。これによりリリースのタイミングが安定し、結果的に飛距離とコントロール性能がアップします。今回の釣行では35号のオモリを使いましたが、ブレることなく快適で正確にキャストできました。
また剛性の高さはリジッドキャスト、ハガネボディ(金属ボディ)との相乗効果でファイト時の安定度も高めて、滑らかでスムーズな巻き上げを可能にしてくれます。実際に60cmクラスのイシダイを相手にリールをゴリ巻きしましたが、まったくパワー負けすることなく釣り上げることができました。
キャストだけでなく、ファイト時にもその効果を発揮してくれる、それが「リジッドキャスト」です。
滑らかなパワーファイトを実現する「インフィニティドライブ」
大物がヒットするとハンドルの巻き上げにかかる負荷が大きくなり、ファイト時はその負荷に耐えながらの巻き取りが常となります。インフィニティドライブが搭載されたことにより、大きな負荷がかかった状態でも滑らかに積極的に巻き上げることが可能となりました。
また、大物とのファイトでは、ロッドをポンピングして一気にリールを巻いたり、ロッドを立てた状態でリールのゴリ巻きだけで引き寄せないといけないケースがあるのですが、インフィニティドライブのおかげで素早く巻き上げられ、ゴリ巻きファイトもスムーズになりました。魚に主導権を渡すことなく常に釣り人側が主導権を握ったまま優位にパワーファイトが行えます。
新材料で圧倒的耐摩耗性を誇る「デュラクロス」
もともと『パワーエアロ』シリーズは滑かなドラグ回転が特徴のひとつで、『パワーエアロTD』には新材料を採用したドラグワッシャーを搭載しています。従来のドラグワッシャーを構成する繊維方向に直交する形で新しい繊維を織り込み材料を強化しています。これがデュラクロスで、滑らかなドラグ性能はそのままに圧倒的な耐摩耗性を実現しています。
大物釣りではドラグを締めてファイトするのが基本ですが、それでも想像以上のサイズの魚がヒットした場合はドラグを使ってのファイトとなります。圧倒的な耐摩耗性を誇るデュラクロスのおかげで、強い負荷がかかった状態でドラグを回転させながら強い引きに耐えるファイト、急激な魚の走りにもしっかり対応してラインを滑らかに送り出して、大物とのファイトをフォローしてくれます。
滑らかさと静粛性を両立する「サイレントドライブ」
サイレントドライブはボディ全体の基本設計、駆動関連部品をひとつひとつ見直し、部品間の繊細なガタ、隙間、揺れを細部に至るまで徹底的に排除した機構です。これにより、負荷がかかった状態でも駆動部分はガタつくことなく、滑らかに静粛性を保って駆動するので精密で滑らかな巻き心地を実現しています。
リジッドキャスト、インフィニティドライブとの相乗効果もあって、有利にそして快適にファイトできるので、釣り上げた魚が思った以上に大きかったという感触が得られるでしょう。
3モデルで対象魚は多彩
NEW『パワーエアロTD』には糸巻き量の違う3モデルがラインナップされています。「HYOJYUN」はナイロンなら2〜4号、PEは1.5〜3号。「FUTO」はナイロン4〜6号まで、PEなら3〜5号です。そして「GOKUHUTO」はナイロンなら6〜10号でPEでは5〜8号に対応します。
今回の釣りでは「GOKUHUTO」を持参。ナイロン10号を150m巻いて挑みました。これを『プロセレクト』425BX-Tと組み合わせました。このセッティングでは35号のオモリを80m投げることができ、50cmオーバーのイシダイは問題なく釣り上げています。そのときにそれ以上のサイズのイシダイとも戦える実感を得ました。
大物狙い、根が荒い場所の対策としては「GOKUHUTO」にナイロン20号を120m巻いて、『プロセレクト』425AX-Tと組み合わせました。
本来の規定にない使い方なので、糸巻き量は落ちてしまうのですが、狙う距離を80m前後に設定した場合、とても心強いセッティングとなります。実際にこれで60cmオーバーのイシダイを手にすることができました。
関連記事
RELATED COLUMN