2023/03/24
コラム
サクラマスの原点へ。 私のヤマメ物語。
東北〜北海道のエリアを中心に釣行しているシマノモニターの佐藤文紀さん。対象魚としては、ヤマメやイワナはもちろん、サクラマスやロックフィッシュが中心で、山から海へと幅広い魚種を狙って1年の釣りを楽しんでいるという。そんな佐藤さんにとって渓流の釣りは、また特別な思いがあるそうだ。その思いについて釣行を交えながら語ってもらった。
源流部で渓魚を探すということ。思い入れの深いサクラマスとのつながり。
佐藤さんの場合、最初の渓魚との出会いはサクラマスだった。当時はまだPEラインなども普及していない時代。ナイロンラインを巻かれたリールに柔らかいロッドを片手に、厳しく冷え込む川に立ち込んでひたすらキャストを繰り返す。それがサクラマス釣りというものだった。このサクラマスだが、解禁の日だからといって簡単に釣れるものではない。「はじめて釣り上げるまでに7年かかりました」。と当時を振り返りながらその日のことを教えてくれた佐藤さん。苦節7年。これだけの時間をかけて手にしたサクラマスなのだから、思い入れが深いというのはうなずける。それからサクラマスの釣りにのめり込んでいくわけだが、渓流の釣りといったいどんな関係があるのだろうか。
ヤマメもサクラマスも種は同じ。源流部で追いかけることの意味。
ご存知の方も多いと思うが、ヤマメとサクラマスは名前や見た目こそ違えど同じ魚だ。そこで佐藤さんはサクラマスの原点でもある、ヤマメには強い魅力を感じているという。1本の連なった川で生まれる生命のドラマ。山から海へ下ったかと思えば、産卵のためにまた同じ川へ戻ってくる。いまだハッキリと解明されていない点の多いこの魚達の帰巣本能にはいつも驚きと感動が満ち溢れている。そんな感慨深いものを背景に起きつつ、源流部でヤマメを追うことは、思い入れの強いサクラマスを想像することでもある。以前にサクラマスを追いかけた辛くも楽しい日々を思い出しながら、源流部を歩いて同じ魚のことを考えるのは、また違った趣があるとのことだった。
産卵前のセンシティブな状況。鼻先の小さなバイトを逃さないために。
そしてこの実釣は9月の下旬。もうあと数日で渓流の釣りは禁漁となるタイミングだった。この時期の渓流の魚達は、産卵を意識し始めるためエサの喰いが悪くなる。つまりルアーに対して鼻先で突っつくようなアタリをヒットに持ち込む必要があるのだが、そのためにどのような工夫を取り入れるかが重要だ。こうして入ったある川で、深い落ち込みがあるポイントが現れた。魚の気配はいかにもありそうであるが、水が濁っていてルアーを見つけにくいと想定されるようなポイントである。そこで佐藤さんはまずセオリー通りに下流側からアップクロスにキャスト。すると予想通り魚のチェイスがあった。「デカイですよ」その一言に緊張が走るも、魚は途中でUターン。ルアーに対する好奇心は強そうな様子であったことから、すぐさま次のキャストはせずに、佐藤さんはポイントを休ませることにした。この一瞬の判断が後に功を奏する事となる。
狙いをアップからダウンに変更。わずか数投の駆け引きの中で。
しっかりとポイントを休ませて魚の警戒心も薄れたと思われるころ。同じポイントに対して佐藤さんが再び動き出した。「どうしようかな。今度はダウンで攻めてみましょうか」。狙いはもちろん先ほど見えていた大きなシルエットの魚。そうして落ち込んで白泡が立っている所にルアーを落とし、流れに乗せてトゥイッチを繰り返す。そしてルアーが流芯に入ったその時。ギラッと真下から突き上げるようなバイト。「喰った」その一言と同時にロッドが絞り込まれて緊張が走った。高ぶる興奮を抑えながらドキドキの感情でネットインしたのは30cmを超える尺イワナだった。1回目のチェイスからすぐさまポイントを休ませて、狙いを切り替えてヒットからのキャッチ。なんとも見事な1匹だった。
操作性に優れたミノー。カーディフの「リフレイン50HS」。
そんな釣りに柔軟に対応してくれたルアーがカーディフの「リフレイン50HS」。使いやすさにこだわって設計された基本性能の高いミノーである。この実釣では、この尺イワナをはじめ、佐藤さんにとって思い入れのあるたくさんのヤマメにも出会えた。シーズン終盤のタイミングでこの釣果はなんとも良い締めくくりになったのではないだろうか。また来年もお願いします。楽しませてくれた渓魚にお礼を言いつつ自然に感謝。秋を感じさせる涼しげな空気を肌で感じつつ、渓流のせせらぎが足音と共に少しずつ遠のいていった。
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